弁理士の日々

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安倍元首相襲撃事件の警備問題

2022-07-12 15:52:24 | 歴史・社会
銃撃でお亡くなりになった安倍元首相のご冥福をお祈りします。

襲撃事件に際しての、元首相を守るための警備体制が問題になっています。
台の上で演説をする安倍さんの背後が隙だらけで、手製の銃を持つ犯人の接近と2射の発射を許してしまいました。2射目6発のうちの1発の弾丸が安倍さんに命中し、致命弾となってしまいました。

要人警備のプロフェッショナルが、1人でも安倍さんの背後を警戒していたら、近づいてくる犯人を不審者と見抜き、事前に取り押さえられた可能性があります。今回は、背後を警備する警護者の中にプロが1人もいなかったわけで、なぜそうなったかはこれからの検証待ちです。
「1射目の銃声を聞いてから2射目発射までの3秒間に、安倍さんを抱きかかえるなどの防御措置を講じるべきだった」との声があります。たしかに、映画に登場する優秀なSPであればその通りです。しかし、そのような対応が可能になるためには、そのような場面を常に想定し、反復訓練を重ね、事件の当日も常に動作のイメージトレーニングを続けているほどのプロでないと対応はできないと思います。

私は、危機に瀕しての瞬発的な動作について、佐々淳行さんの著書に記憶があります。
「香港領事 佐々淳行 香港マカオ騒動、サイゴンテト攻勢」(文春文庫)という本です。
警察庁の官僚だった佐々淳行さんは、1967年当時、外務省に出向して香港駐在領事に就いていました。その当時、英植民地香港で「香港暴動」が発生したのです。
中国本土で文化大革命が始まったのが1966年、そしてベトナム戦争への米軍の本格介入が始まったのが1965年です。そんな状況下で、香港における北京系中国人の反英感情に火がつき、香港暴動が始まりました。至る所で手製爆弾が発見され、爆発しています。
そんな状況での1エピソードです(220ページ)。

『ヴェトナムの戦場で活躍していた平敷安常さんという毎日のカメラマンが来港したことがある。
昼間の街中を案内していた時、近くで爆発音が響いた。
とたんに平敷カメラマンの姿が消えた。文字通り一瞬にして体を投げ出すようにして物陰に伏せたのだ。
ヴェトナムの前線ではこの反射神経の速さが生死をわけるのですと、きまり悪そうに身を起こした平敷さんの弁をきいて、上には上があるものだと感心した。』

今回の襲撃事件も、「1射目から2射目までの3秒間に何ができたか」については、反射神経にまで研ぎ澄まされた動作でない限り、実現は不可能だったでしょう。襲撃の態様として、刃物や鈍器は念頭にありますが、銃器については、もちろん「想定内」ではありましょうが、反射神経にまでは至っていなかったはずです。

今回の凶器は、手製の散弾銃(1射あたり6発で2射可能)でした。命中精度は非常に低いものと推定できます。そのような武器を用いて、2射のうちの1射で安倍さん1人に致命傷をあたえ、近くに大勢いたその他の人には一発も当たらなかった、というのは、ほぼ奇跡に近いだろうと思います。
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