弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

中国が空自AWACS模型を破壊

2022-07-16 10:29:10 | 歴史・社会
ウクライナ戦争の影響により、「日本の防衛予算を対GDP比で1%から2%に上げるべき」という議論が活発になっています。対中国抑止力を確保するため、日本の防衛力を増大すべきことは明らかです。それでは、増額した防衛予算で何を充実すべきなのでしょうか。
その答を、今回中国が直接教えてくれました。

中国、AWACS形の空自機模型を破壊 ミサイル訓練か
2022年7月15日 日経新聞
『中国が新疆ウイグル自治区の砂漠地帯に設置していた航空自衛隊の早期警戒管制機(AWACS)に似た構造物を破壊したことが分かった。日本経済新聞が衛星写真を複数の専門家と分析して確認した。日本を仮想標的とするミサイル攻撃の訓練に使った可能性がある。
米衛星運用会社プラネット・ラブズが撮影した衛星写真を調べた。5月中旬の同地点の写真には自衛隊のAWACS「E767」を模した形の物体や滑走路、駐機場のような建築物が写っていた。7月13日の写真では構造物が破壊され、破片や黒い焼け跡のようなものがみえる。
防衛省によるとAWACS「E767」を運用しているのは世界で自衛隊だけで、浜松基地に配備する4機しかない。』

「数時間で空自全滅」に向き合え~ウクライナの空が投げかける教訓
【トップガン対談・特別編】高橋杉雄×小野田治(後編)
2022.07.09 現代ビジネス
防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏と、元航空自衛隊西部航空方面隊司令官・空将の小野田治氏が、専門家としての視点からロシアのウクライナ侵攻を語りつくす注目の対談。
『高橋 私が日本の防空体制で最も必要だと考えるのは、レジリエンス、すなわち「航空基地の打たれ強さ」です。航空自衛隊の戦闘機の格納庫は何の防護もない。ピンポイント攻撃できないミサイルでの攻撃でさえもやられてしまいます。個人的な見解ですが、鉄筋コンクリート製のバンカーの設置は急務です。
米軍基地にあるような、直撃以外では破壊できないくらいのバンカーを作り、かつ滑走路の修復能力も強化をしていく。仮に撃たれても作戦能力を維持できるようにしないと、最初の数時間でほとんどの機体がやられてしまう。
もはやF-35を持とうが、最新型の戦闘機を持とうが、地上でやられたらどうにもならない。地上においてできるだけ生き残れるようなインフラを作る必要がある。ただ、ものすごくお金がかかりますが。

小野田 耐弾性の高いバンカーはひとつで100億円かかります。戦闘機と同じぐらいの値段がかかる。だから航空自衛隊は過去のある時期に途中であきらめてしまいました。

高橋 しかし戦闘機2機が裸でいるのと、ちゃんとしたバンカーに戦闘機1機がいるのと、どちらがいいのかということです。もちろん戦闘機の頭数がないと困る部分もある。予算が増えなかったらそれはできないんですけれども、お金をかけられるなら、まず整備すべきです。いまあるものをちゃんと戦えるようにしましょうよ、ということです。』

日本の防衛予算を対GDP比で1%から2%に上げたとき、対中国抑止力を確保するために何を充実すべきなのか、その答を、今回中国が直接教えてくれました。
『まずは、航空機、特にAWACS早期空中警戒管制機を守るための掩体壕(バンカー)を建設すべし。もちろんF-35、F-2戦闘機の掩体壕も。
耐弾性の高い有効な掩体壕が1基100億円もする、というのは驚きですが、対GDP比で予算が1%も増えるのですから、その中で対応可能でしょう。
もちろん、1基100億円のバンカーも、バンカーバスターの直撃を受けたらもたないでしょう。しかし、今のままでは精密誘導爆弾でなくても、近くで1発炸裂しただけで周囲の多くの航空機がやられてしまうのですから、そのような事態だけは回避しなければなりません。

しかし中国は、眠りについている日本の世論を呼び覚ますような行動を、なぜこの時点でとったのでしょうか。そこは疑問です。しかし、日本を目覚めさせてくれたことに謝意を表さなければなりません。

航空機のバンカー以外では、どのような部分に追加防衛予算をつぎ込むべきなのでしょうか。
飯柴智亮著「2020年日本から米軍はいなくなる」 2014-08-31でも書いたように、中国が日本侵攻を可能にする軍事態勢を整えた際、日本は米軍に頼ることができず、日本独自で抑止力を保有すべきとしています。
『今(2014年当時)、中国の戦闘機ははJ-11B(中国版Su-27)で、能力はF-15を超えているかもしれない。さらにSu-35になると完璧にF-15を凌駕する。これに自衛隊が対抗するには迎撃能力を高めるしかない。衛星、グローバルホーク、AEW早期警戒機、レーダー、次に優秀なAWACS早期空中警戒管制機の運用。必要なのが長距離・高速で敵機を撃破できるミサイル。中国機2000機に対して、我が方は700機必要。
イージス艦をミサイル迎撃に使うのではなく、本来の戦闘機撃墜用に使う。基地防衛にパトリオットを投入する。
海自は、いずも型(26000トン)、ひゅうが型(19000トン)のヘリコプター搭載護衛艦に、F-35Bを搭載して4個軽空母機動部隊を造る。搭載機数は合計で40機。対潜哨戒機も増強する。
中国空母が日本近海に現れたら、F-2戦闘機に対艦ミサイルを搭載して出撃する。
海自の軽空母は何隻かやられるが、中国空母を最低1隻撃沈し、艦載機のほとんどを撃墜すればよい。そのあとに米軍が出てくる。
対中国は統合空海戦闘だから、陸上兵力の出番はない。もし陸上兵力が必要な状況に陥ればその時点でもう、100%勝負はついている。』
『これにより、日本は中国にとって攻めがたい国になる。中国は勝てると判断するまでこない。絶えず日本が準備して、中国が勝てない国になっていれば、来ない。』

上記のうち、『いずも型、ひゅうが型のヘリコプター搭載護衛艦に、F-35Bを搭載して4個軽空母機動部隊を造る。搭載機数は合計で40機。』はすでに対処済みですね。あとは、航空機機数の大幅増大、基地防空能力(パトリオットなど)の増強、ドローンの有効活用、対艦ミサイルの拡充(地対艦、空対艦いずれも)といったところでしょうか。

p.s. 7/27
自衛隊「2カ月で弾切れ」 有事想定足りぬ装備・施設
防衛費の研究② 2022年7月26日 日経新聞
『日本の防衛費は人件費・糧食費と維持費が6割を占める。現状を保つだけで巨額の費用がかかり、さらに戦闘機や艦艇などの取得や更新の予算もかさむ。その裏に有事に不可欠な弾薬や施設が手薄になる問題が潜む。』
『防衛省は対処能力を伏せるため弾薬の具体的な保有量を公表していないが、政府内には南西諸島の有事に関する試算がある。3カ月の防衛に必要な弾薬のうち現時点で確保するのは6割ほど。2カ月間程度で「弾切れ」になるという。』
『目に付きにくい問題には「装備の守り」もある。例えば地上に駐機している航空機だ。浜松基地(静岡県)は航空自衛隊の早期警戒管制機(AWACS)「E767」が4機ある。同基地には爆撃から防護する「掩体(えんたい)」がない。
E767は広範囲を監視する「空の司令塔」といえる重要な装備だ。中国も象徴的な装備品だと認識している。日本経済新聞の分析では中国が砂漠地帯にE767を模したとみられる構造物を設け、破壊していた。
小野寺五典元防衛相は「戦闘機を隠すなど『抗たん性』を持たせる取り組みがいる」と強調する。装備品が稼働する前にたたくのは軍事の常道だ。それから守れなければ戦力は大幅にそがれる。
掩体は米欧や韓国、台湾など海外では一般的だ。元空自幹部によると空自の基地では千歳(北海道)や三沢(青森県)など一部にとどまる。千歳基地の掩体も築40年近くになり外壁がさびて変形しているという。』

やっと、新聞も追いついてきましたね。
コメント
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