弁理士の日々

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前回安倍政権崩壊の轍を踏まないために

2012-12-19 21:33:58 | 歴史・社会
2回目の安倍政権誕生間近です。
前回の安倍政権は、小泉政権の後を受けて2009年9月に鳴り物入りで誕生し、当初は支持率70%を誇ったといいます。しかし人気は急降下し、翌年夏の参議院選挙大敗の後に政権を投げ出す結末となりました。

安倍政権崩壊の顛末については、上杉隆著「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」に詳しいです。このブログでは、上記書籍を読んだ内容について、上杉隆「官邸崩壊」上杉隆「官邸崩壊」(2)で記事にしました。

今回、上記記事を読み返して、今次の安倍政権が前回の轍を踏まずに安定政権となるために何が必要か、考えてみました。

前回安倍政権人気凋落の原因として、大きくは以下の事項が上げられます。
○ 郵政造反議員の復党問題
○ 不祥事による閣僚や主要ポストの辞任・自殺は5人(本間正明税調会長、佐田玄一郎行革担当大臣、松岡利勝農水大臣、久間章生防衛大臣、赤城徳彦農水大臣)
○ 米下院での従軍慰安婦問題に対する安倍首相の不用意発言
○ 消えた年金記録問題
○ 衆議院本会議で14回、両院の委員会まで含めて70回以上に及ぶ強行採決を敢行

上杉氏著書によると、首相官邸に大きな問題があったようです。
安倍官邸の以下の5人は「フールファイブ(5人のバカ)」と呼ばれていました。
内閣官房長官 塩崎恭久(衆院議員)
内閣官房副長官(政務)下村博文(衆院議員)
内閣官房副長官(事務)的場順三
内閣総理大臣補佐官(広報担当)世耕弘成(参院議員)NTT広報から政界入り。
内閣総理大臣秘書官 井上義行

なお、安倍官邸の以下の内閣総理大臣補佐官がフールファイブだ、という話もあるようです。
小池百合子、根本匠、中山恭子、山谷えり子(小川惠里子)、世耕弘成

それでは、上杉著書の指摘に基づいて、前回は何が悪かったか、今回何に気をつけるべきか、リストアップしてみましょう。

《総理秘書官の井上義行氏が秘書官としては非力だった》
経歴からすると総理秘書官としてふさわしくない人でした。実力もありませんでした。組閣に際しての閣僚候補者の身体検査手法も知らず、後の主要閣僚不祥事と辞任多発の原因となりました。
今回は、適当な人材がいるのでしょうか。

《内閣官房副長官(事務)に、霞が関以外の人材を充てた》
的場順三氏は、大蔵省出身ですが当時民間人でした。この人事により、霞が関は一斉にサボタージュに走り、事務次官会議は機能しなくなりました。
今回、安倍新総理はどのようにして霞が関をコントロールしようとしているのでしょうか。

《内閣官房長官の塩崎恭久氏は、調整役に徹しきれなかった》
塩崎氏は政策論争が得意であり、調整能力が待たれる官房長官という役職にあって、政策能力を誇示する人物でした。総理補佐官の世耕氏を含め、これらの人たちは、力を合わせて首相を補佐するどころかその反対で、お互いに反目しあって協力せず、功を競っていたようです。黒子に徹するのではなく、目立ちたがり屋たちでした。
世耕氏と井上氏は、同じ広報担当ということで互いに張り合いました。世耕氏と塩崎氏も、お互いが情報を秘匿しあい、連繋の取れていない世耕、塩崎、井上各氏がそれぞれ独自の情報を安倍首相にあげる状況でした。
今回、官房長官に予定されている菅義偉氏はどうでしょうか。少なくともオレがオレがの人ではなさそうです。

《首相直属政策スタッフを、政権発足後に公募した》
「特命チーム」の公募は、安倍首相が自ら人選することを放棄している、公募という形で自らその権力を放棄している、という印象を与えてしまいました。また、役人は巧妙に「役所を通して応募」との条件を紛れ込ませます。その結果、一人を除いて出身官庁に向いて仕事をする人しか集まりませんでした。その一人とは高橋洋一氏です。
霞が関と闘うのであれば、霞が関の戦法を熟知した、優秀で改革派の官僚出身者を官邸に招き入れるべきです。高橋洋一氏、古賀茂明氏、原英司氏のような人たちです。今回、安倍さんはどのように準備しているのでしょうか。

《従軍慰安婦問題への対応》
前回安倍政権時、米下院で例年の如くホンダ議員が決議案を提出した際、日本の正しい対応は「無視する」ことでした。ところが安倍首相が「強制性を裏付ける証拠はなかったのは事実」と語ってしまい、米国のマスコミと米議会を完全に敵に回すこととなりました。結果として米国議会ではホンダ議員の決議案が賛成多数で成立してしまったのです。
このときは、井上秘書官が「河野談話」の見直しを主張して安倍総理がこれを支持し、世耕氏がアメリカへ飛んで動き回ったので注目を受け、最後に安倍総理の上記発言でアメリカを敵に回してしまいました。
今回、韓国は安倍総理を従軍慰安婦問題で窮地に追い込もうとして虎視眈々と狙っているでしょう。安倍新総理には、ぜひ細心の注意をもって従軍慰安婦問題に対応して欲しいものです。

《経済財政諮問会議の活用》
前回安倍政権では、経済財政諮問会議を強力な武器として活用していたようです。今回はどうでしょうか。
昨日今日の新聞によると、経済財政諮問会議を活用するように書かれていますが、同時に内閣に日本経済再生本部を新設するようです。
小泉時代や前回の安倍政権のときは、経済財政諮問会議が有効に使われました。霞が関が嫌がる政策について、同会議の民間議員ペーパーで政策を提言し、最後は総理の決裁で政策が実現していきました。総理大臣と日銀総裁がともにメンバーなので、両者が定期的に会う機会がある、という点も重要なポイントでした。
それにも拘らず、経済財政諮問会議と並立して経済再生本部を新設しようとしているのは、官僚の側が諮問会議を忌み嫌っているからだ、というのが岸博幸氏の見立てです(自民党のバラマキ政策)。
経済財政諮問会議が強力なのは、法律でその権限が規定されているからです。新設の経済再生本部については、法律で権限を規定しない限り、霞が関がいやがる政策を実現することは不可能でしょう。民主党政権の国家戦力局で実証済みです。

両方の司令塔となる経済再生担当大臣にだれを据えるのか、そして、経済財政諮問会議の民間議員にだれを配置するのか、というあたりで、安倍新総理の本気度がわかるでしょう。
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