弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

東電問題がわからない

2012-02-19 18:53:14 | 歴史・社会
政府は今回、東電に1兆円規模の資本を注入し、議決権を最大3分の2超まで取得する方針で東電に迫っているようです。

去年の夏前には、原子力損害賠償支援機構法(東電救済法)を成立させ、東電を生かさず殺さずの状況に保持する方針が決まっていたはずです。ところが、どうも福島第一の廃炉費用その他をこの東電救済法で手当てできず、この法律外で公的資金の注入が必要になり、その結果として国有化の話が降って湧いたように見えます。
東電救済法の立案者がうっかりしていたということなのか、そこがまずよくわかりません。

経産省は、東電を温存し、発送電分離も行わず、原発は再稼働する、という方針だったのではないでしょうか。
去年1年間、そのような態度を示す経産省をずっと見てきているので、ここへきて急に、「国有化して発送電分離を含めた電力改革を行う」と経産省からアナウンスされても、経産省が改革派に変身した、と素直に信じることができません。

この話にはどうも裏があるように思えて仕方がないのですが、実態が見えません。

歳川隆雄氏は「枝野経済産業相は「東電を悪役にして自己保全に走っている」のか?」(2012年02月18日(土))で、古賀茂明氏を非難しています。
古賀氏がテレビ番組で『3月末までに1兆円の公的資金が投入される東京電力の経営権を巡る東電と政府(原子力損害賠償支援機構)との確執について、東電の一時国有化を主張している枝野幸男経済産業相を「東電を悪役にした責任逃れだ」と断罪した』のに対し、歳川氏が『朝のワイドショーの視聴者をミスリードする、余りにも乱暴な言い様である。』と非難したのです。

岸博幸氏はクリエイティブ国富論『なぜ東電・経団連・財務省は反対するのか 東電国有化を巡る非常識な主張 』(2012年2月17日)で、
『まず最初に断言しておくと、1兆円の公的資金を注入した段階で東電を一時国有化するのは、政府として当たり前の対応です。』
として国有化を肯定しています。

古賀茂明氏はどのような根拠に基づいて、東電の国有化に反対しているのでしょうか。
最近、古賀氏は無料で閲覧できるネット評論に発言していません。そのため、古賀氏の意見が見えづらくなっています。
最近、私は古賀氏の有料メルマガに登録しました。週に1回のペースでメルマガが送られてきます。毎回のメルマガのテーマは、
1.日本再生への道のり ~ 政治、霞ヶ関、業界、メディアを考える
2.東電・エネルギー政策ウォッチ
3.今週の大阪
4.最近の活動
といったところです。
この中の「2.東電・エネルギー政策ウォッチ」のメインは、東電国有化問題に対する意見です。
メルマガでの古賀氏の意見を大雑把にくくると、
・経産省には、電力に関する限り改革派と呼べる幹部はおらず、「介入派」と呼ぶべき人たち(自分達が一番優秀なのだから、他の人たちは自分達に頭を下げるべきであると考えている)しか残っていません。
・今回の原発事故については、東電と同じくらいに経産省が責任を有しているはずですが、経産省、原子力安全保安院の幹部はまったく責任を取っていません。
・「東電の国有化」とは、煎じ詰めれば「経産省が東電を経営する」ということになります。『実際には様々な形で経産省が経営に口出しすることは確実。おそらく数年後にはいくつもの天下りと現役出向を送り込むことになるだろう。これで、介入派念願の東電乗っ取りは完成する。』
・現在の東電国有化の論議は、枝野経産大臣が主導しているように見えます。しかし、枝野氏が経産大臣でいるのはいつまでか。あと半年程度かもしれません。もし東電が国有化されたら、枝野氏が大臣ではなくなった経産省が東電を牛耳ることになるのです。

古賀氏の意見はだいたいこんな所でしょうか。

安藤 毅氏は「東電問題の陰に枝野・橋下の暗闘」(2012年2月14日(火))で,
『枝野氏が東電の経営権取得にこだわるのは、資本注入が東電に対する安易な救済と受け止められるのを避けたいことが大きな理由だ。枝野氏に近い関係者は「枝野さんは橋下徹・大阪市長の動向を最も気にしている」と語る。』
と評論しています。

東電に公的資金を注入して国有化するにしろ、生かさず殺さずで注入した資金は電力料金値上げで回収するにしろ、最終的に国民、又は東電管内の住民が費用を負担することになります。何で、東電の株主は何ら責任を分担しないのか。最近の報道では、「法的処理を行ってまず株主に費用負担してもらう」という主張が全く報じられていませんが、どうなっているのでしょうか。
コメント
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