弁理士の日々

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自衛隊施設部隊が南スーダンPKO派遣

2011-10-15 21:21:31 | 歴史・社会
10月15日朝日新聞朝刊の一面トップは「陸自の施設部隊派遣へ 南スーダンPKO」でした。
南スーダンに陸自の施設部隊派遣へ PKO
アサヒコム 2011年10月15日3時0分
『野田政権は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に陸上自衛隊の施設部隊を派遣する方針を固めた。第1次の現地調査団が、首都ジュバは治安上の問題はないと結論づけており、ジュバでの活動を念頭に派遣が可能と判断した。今後、国連と協議したうえで早ければ11月下旬に部隊派遣を閣議決定し、年明けにも活動を始める予定だ。
第1次調査団は内閣府と外務、防衛両省で構成し、ジュバや北部のマラカルで南スーダン政府高官や国連幹部から聴取。関係者の話を総合すると、ジュバは「早期の部隊派遣や活動開始が可能」として、「ジュバを拠点として施設活動を行うことで検討を深めることが適当と判断した」と結論づけた。
政権は現在、南スーダンまでの補給路などを確認するため、ケニアなど周辺国に第2次調査団を派遣。今月下旬の帰国後に部隊派遣を正式決定し、具体的な派遣規模や日程を固める。』
さらに紙面によると、国連南スーダン派遣団(UNMISS)幹部が「当面はジュバでの活動を期待する」と表明し、派遣時期は来年5月ごろの雨期入り前を要請。国連が期待する活動内容は国際協力機構(JICA)が計画しているナイル川沿いのジュバ港や架橋工事関連の道路整備などで、将来的にはジュパの北方約150キロにあるボアなどに活動範囲を拡げる可能性もあるとしました。

今回、陸自施設部隊を南スーダンに派遣するに至る経緯を追ってみました。スーダン南部が分離独立して南スーダンが成立したのが、今年7月9日です。
南スーダンでのPKO 国連が日本に自衛隊派遣を要請
アサヒコム 2011年7月14日5時1分
『南スーダンへの国連平和維持活動(PKO)部隊派遣について、国連PKO局が12日にニューヨークで開いた関係諸国との会議で、日本政府に対して自衛隊の派遣を要請していたことがわかった。外務省には前向きに検討すべきだとの意見がある一方、防衛省には慎重論が根強く、菅政権の方針は未定だ。
 ・・・・・
具体的な活動内容は現地のニーズを踏まえて国連が検討するが、道路などのインフラ整備が主要任務の一つになりそうだ。』
首相、国連総長に南スーダンPKO派遣表明へ
アサヒコム 2011年9月22日3時4分
『国連総会出席のため米ニューヨークを訪問中の野田佳彦首相は21日午後(日本時間22日未明)、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長と会談する。首相は今年7月に独立した南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に少人数の司令部要員を派遣すると伝えるほか、陸上自衛隊の施設部隊の派遣が可能かどうかを見極めるため、現地の治安情勢などを調べる調査団を出すことも表明する。
 ・・・・・
南スーダンPKOについては、潘氏が8月上旬に来日した際、菅直人前首相に対し、道路整備などに当たる300人規模の陸自の施設部隊派遣を要請。菅氏は「しっかりと対応したい」と応えていた。』
などの記事によれば、独立直後の7月12日に国連PKO局が日本政府に対して自衛隊の派遣を要請し、8月上旬に来日した国連の潘基文事務総長が当時の管総理に要請し、それに対して野田総理が9月21日に潘事務総長と会談して陸自施設部隊派遣の可能性を表明し、今回に至っているようです。

先日、J-Wave瀬谷ルミ子さんにおいて、南スーダンPKOに対する瀬谷ルミ子さんの意見を紹介しました。瀬谷さんが事務局長を務める日本紛争予防センター(JCCP)は南スーダンに現地事務所を開設し日本人代表(日野愛子さん)が活動しています。
瀬谷さんが防衛省の人たちと接した印象では、日本も防衛省も、日本がどういう目的・スタンスで陸自施設部隊をPKO派遣するか、まだはっきりしていないといいます。

陸自PKO派遣でまず問題となるのが武器使用基準です。今回も武器使用基準は緩和しないとのことです。そうすると、安全な場所でしか活動できません。南スーダンの首都ジュバは治安が安定しているから、そこで活動するようです。そうとしたら、なぜ自衛隊でなければならないのか、わからなくなります。JCCPが現地事務所を開設し日本人女性が代表を務めていられるような安全な場所なのに、なぜ自衛隊なのでしょうか。
結局、武器使用基準があるから危険な場所には出て行けず、自衛隊でなくても活動可能な場所で活動する。その目的は、自衛隊としてPKOの実績を積んで今後の役に立てたいから、ということになるのでしょうか。

なお、南スーダンでの日本の援助については、瀬谷さんのJCCPのみならず、JICAが大々的に活動を行っているのですね。これも先日、テレビ東京の番組(「地球VOCE」10月7日・14日放送分)で見ることができました。職業訓練所を開設し、日本人指導員が大勢で活動していました。活動内容はJICA 南スーダンで見ることができます。

今回の陸自施設部隊派遣については、「JICAでもできる活動を今回は陸自のOJTも兼ねてPKOで行う」ということになりそうです。
しかしそうとしたら、国連は最初からJICAでの活動を要請してくるはずであり、国連PKO局が陸自施設部隊の派遣を要請するはずがありません。国連が要請した最初の趣旨は、やはり「軍隊でなければ活動できない場所でのインフラ整備」を目的に陸自施設部隊派遣を要請したと考えるべきでしょう。それに対して、日本は武器使用基準の緩和を行わない範囲での活動に限定し、安全が確認された首都ジュバに限っての活動を受諾したのでしょう。
国連としても「それなら来なくて結構」とも言えないのでしょうね。

10月13日の朝日新聞オピニオン「耕論 自衛隊はどこへ」で、伊勢崎賢治氏が発言しています。
まず南スーダンへの派遣問題に対して「日本は判断が遅すぎる。国連から要請を受け、外務省・防衛省などで調査団を送って、帰ってきて、検討して、それから派遣でしょう? 時間をかけすぎです。部隊を出すならもっと早く出さないといけません。」としています。「現地は急を要するからです。準備に時間をかける余裕がないからこそ、単独で行動できる軍事組織を送る意味があるわけですから。」
また、米政府の海外援助部門の幹部の話として「米国は人道援助が必要な地域にまず軍を送り、軍はなるべく早く政府や民間の援助組織にバトンタッチし、本来の任務に戻る。軍は人道援助組織ではないから。だが日本は一番最後に自衛隊を送り、ずるずるといる。これは逆じゃないか。」と紹介しています。

そして伊勢崎氏は、日本にふさわしい業務として停戦監視を挙げています。
南スーダンに行くのなら、緊張関係にあるスーダンとの国境地帯で、これ以上紛争を起こさないように監視する。監視要員は少佐、陸自でいえば3等陸佐以上が条件であり、非武装で駐在して停戦を維持します。危険度は高いですが存在感は高い。
丸腰ですから武器使用基準をごちゃごちゃ言う必要がありません。日本にもっとも適した業務だと伊勢崎氏はいいます。

伊勢崎氏が主導したアフガニスタンDDRでも、軍事監視団の問題がありました。私がアフガン復興で日本がやってきたこと(2)で書いたように、DDR推進に際し、中立の軍事監視団が存在しませんでした。通常の国連活動であれば、非武装の軍事監視団が現場に駐在し、極めて権威ある活動を行います。
このような非武装の軍事監視団に日本の自衛官が参加できれば、これほど日本の自衛隊にふさわしい活動はありません。伊勢崎氏は当時、日本政府に要請しましたが、まったく反応がありませんでした。結局、お金は日本が出し、国連アフガニスタン支援団の軍事顧問チームを監視員として借り受け、伊勢崎氏が団長になって監視団を組織しました。伊勢崎氏の任期は1年でした。軍事監視団はNGO(日本地雷処理を支援する会)の園部宏明氏に引き継がれました。
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