弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

四川大地震と中国の学校校舎

2008-05-18 10:37:39 | 歴史・社会
5月17日の新聞報道によると、
「中国四川省で12日に起きた大地震で、倒壊した校舎が四川省内だけで6898棟に登ることを教育省当局者が16日、明らかにした。・・教育省当局者によると、震源地付近のぶん川県の学校は当対数に含まれていないため、実態はさらに多いという。」

この記事を読むと、以前にも紹介した杉本信行著「大地の咆哮」を思い出します。
大地の咆哮(ほうこう) (PHP文庫 す 19-1)
杉本 信行
PHP研究所

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この本の中で杉本氏は、中国が抱える負の部分について詳細に語ります。著書の中で、この部分の記述が最も詳細です。都市住民と農民との間に生じている圧倒的な格差、農民の生活の困窮の実態が語られます。国家、省、県、市、郷鎮など各段階ごとに存在する無駄な行政機関と役人の存在により、国が政策を立案しても末端では全く実施されません。
農民は、国から耕作地を割り当てられている一方、生活最低保障、失業保険、医療保険など、都市住民が受ける社会保障の対象外となっています。逆に、地方政府からさまざまな制度外費用を徴収されます。
中国社会は、都市住民と農民との差、豊かになった沿岸部と内陸部の格差、都市の中における貧富の格差、この「三重の格差」が構造問題となっています。

中国の田舎における学校については以下のように述べています。
「中国の郊外の農村を視察してすぐに気づくのは、ほとんどの小学校で校舎の老朽化が甚だしいことだ。1950年代、60年代に建てられた、いまにも朽ちそうなオンボロ校舎の中に汚い椅子と机が置いてあり、他に何もなく、電気すら来ていない。」
「『危ないので、私たちの小学校を建て直してください。』
地方の村からそういった要請があるたびに、私はランドクルーザーに乗って、現場に出向いた。電灯もないようなところがほとんどである。なかには、校舎に天井がなく、空が見えていて、いつ崩落してもおかしくないような学校すらあった。」
「中国は・・・教育費に対する予算付けがあまりにも貧弱であることを指摘しておきたい。」

このような小学校の校舎が、今回の地震では軒並み崩壊したのでしょう。多くの小学生が下敷きになって犠牲になりました。

杉本氏は、「草の根無償資金協力」を通じて中国の田舎に300以上の校舎を建ててきました。
91年からスタートした「草の根無償資金協力」とは、1千万円程度の規模までの対中資金協力であり、中国地方政府からの要請を受け付け、日本大使館の判断で実行できるようです。中央政府を通さないので、地方で本当に必要とされる施設を建設することができます。また、それぞれが地元の人たちからは大歓迎され、本当に喜ばれました。

「こうした田舎では、1千万円もかければ、コンクリート製のかなり立派な三階建ての校舎を建てることができ、1千万円の価値に驚かされることがたびたびあった。」

日本だと、1千万円では戸建て住宅すら建つかどうか怪しいです。

ただし、今回ちょっと心配になりました。1千万円でコンクリート三階建て校舎ができたのは事実でしょうが、耐震強度はどうだっただろうか。もし1千万円からしかるべき金額がワイロで消えていたら、建設に使われた金額はもっと少ないはずで、耐震強度が不十分だったおそれがあるのではないかと心配になってしまいます。

ぜひ、四川省において草の根無償資金協力で作られた校舎が、今回の地震で健在であったのか、調査して欲しいと思います。もしこれらが地震に耐えて健在であったのであれば、日本の無償資金協力の価値がさらに上がることになるでしょう。

ネットで「四川 地震 草の根無償資金協力」で検索してみたのですが、私が知りたい記事は見つかりませんでした。一方、以下のようなサイトが見つかりました。

草の根・人間の安全保障無償資金協力(概要)2008年3月

草の根無償資金協力署名式 (貴州省石阡県唐家営中心小学校建設プロジェクト)(貴州省錦屏県瑶光小学校建設プロジェクト)
立て替え前の校舎がどんなに老朽化されていたか、写真で確認できます。

草の根無償資金協力竣工式(雲南省怒江州蘭坪県河西郷衛生院中日友好入院棟建設プロジェクト)
コメント (2)
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