弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

裁判官OBインタビュー(1)

2006-02-24 00:08:12 | 知的財産権
ブログを始めてから、ブログネタ探しでパテント誌もよく読むようになりました。これはブログを始めた効能の一つですね。
パテント誌の1月号に、裁判官OBへのインタビュー記事が載っています。東京地裁、最高裁調査官、東京高裁でいずれも知財を担当され、今は弁護士をされている長沢弁護士です。
印象に残った内容をここに列記することにします。備忘録、メモ代わりに使えるというのもブログの良いところです。

1.審決取消訴訟を単独代理している弁理士に対する苦言がありました。代理人弁理士が事案の内容をほとんど把握していなかったり、準備書面が全く理解不能な内容で、日本語として意味不明だった、といった事例があったそうです。「例は少ないんですけれど」ということで、あくまでレアケースを言っていると思うのですが、こういうことがあると「だから弁理士単独代理は」といわれる理由になっちゃいます、ということでした。
「だから○○はだめなんだ」「やっぱり○○はだめだ」とやられる対象になると、よっぽど優秀な成績を残さないと評価されなくなります。○○には日本人が入ったり黒人が入ったりすることが多いですが、この○○に弁理士が該当してしまったということですね。

2.「特許訴訟の判断で政策的な判断をするのですか」という質問に対し、政策判断の余地というものはほとんどない、産業の奨励だとか、独占の弊害防止だとか、そういう考慮というのは裁判官が個々の判決をするときにはまず考えない、ということです。
「非常に純粋に、その事件で判断しなければならない事実と法解釈の問題、それに日本の裁判官は集中していますよ。ただ目の前にある事件をとにかく一生懸命考えて判断すると。」ということです。

3.「訴訟において、当事者である会社、弁護士、弁理士がチームとして機能する点をどう評価していますか」という質問に対し、「裁判官は弁護士しか見ていないです」という答えでした。

4.裁判で差止の仮処分命令が出ると、工場一つ止まっちゃうというという話になります。一方、裁判官の能力として特筆できるのは決断力であり、判決するときには自信を持って判決する傾向があり、仮処分命令でも判決でも、裁判官は自分がした判決の影響がいかに大きいか、気にしてませんから。
弁護士として「とにかく最初、一審の段階で仮処分が出ないことに何よりも労力を注がなきゃ行けない」

裁判官の方の実態を知ることができて有意義なインタビューでした。

p.s.
世の中で「経営者」と呼ばれる人種について観察すると、男性経営者はそれこそピンからキリまで棲息しているのに対し、女性経営者は例外なく極めて優秀な人が多い、と聞きます。
これは女性が世の中で「だから○○はだめなんだ」「やっぱり○○はだめだ」の壁に阻まれ、この壁を乗り越えた人だけが経営者になり得ているからだろう、と推定することができます。

コメント
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