初唐の自然詩人、詩仏ともいわれた王維の五言律詩を紹介します。香積寺は長安の南、終南山の山すそにある寺。王維が終南山に遊び、この寺をおとずれたときの作です。
過香積寺
不知香積寺
数里入雲峰
古木無人逕
深山何処鐘
泉声咽危石
日色冷青松
薄暮空潭曲
安禅制毒龍
「読み方」
香積寺ニ過(よぎ)ル
知ラズ 香積寺(こうしゃくじ)
数里 雲峰ニ入ル
古木 人逕(じんけい)無シ
深山 何処(いずこ)ノ鐘ゾ
泉声 危石ニ咽(むせ)ビ
日色 青松ニ冷ヤカナリ
薄暮 空潭(くうたん)ノ曲(くま)
安禅 毒龍ヲ制ス
「訳」
ここが香積寺の霊域とは知らぬまま、私は数里の間、雲にそびえる峰の奥 へと分け入った。あたりには古木が生い茂るばかり、人の通う道もない。その深山の奥で、どこからか、鐘の音が聞こえてくる。泉の水は高い岩にあたって、むせぶような響きをたて、日光は松のみどりにさして、つめたい色をたたえる(いかにも静澄な、ゆかしい世界だ)。夕ぐれ、人気のない淵のほとりで、心静かに坐禅を組みつつ、諸人に害をなすおそろしい竜を、そしておのれの煩悩を封じこめている一人の僧の姿を、私は見た。
前野直彬 注解 「唐詩選 上」岩波文庫
過香積寺
不知香積寺
数里入雲峰
古木無人逕
深山何処鐘
泉声咽危石
日色冷青松
薄暮空潭曲
安禅制毒龍
「読み方」
香積寺ニ過(よぎ)ル
知ラズ 香積寺(こうしゃくじ)
数里 雲峰ニ入ル
古木 人逕(じんけい)無シ
深山 何処(いずこ)ノ鐘ゾ
泉声 危石ニ咽(むせ)ビ
日色 青松ニ冷ヤカナリ
薄暮 空潭(くうたん)ノ曲(くま)
安禅 毒龍ヲ制ス
「訳」
ここが香積寺の霊域とは知らぬまま、私は数里の間、雲にそびえる峰の奥 へと分け入った。あたりには古木が生い茂るばかり、人の通う道もない。その深山の奥で、どこからか、鐘の音が聞こえてくる。泉の水は高い岩にあたって、むせぶような響きをたて、日光は松のみどりにさして、つめたい色をたたえる(いかにも静澄な、ゆかしい世界だ)。夕ぐれ、人気のない淵のほとりで、心静かに坐禅を組みつつ、諸人に害をなすおそろしい竜を、そしておのれの煩悩を封じこめている一人の僧の姿を、私は見た。
前野直彬 注解 「唐詩選 上」岩波文庫
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