宇宙論で世界的に著名な佐藤勝彦教授が退官記念の最終講義をまとめた本の中で述べておられる話です。
宇宙は今から137億年前のビッグバンにより誕生した(佐藤教授が提唱)、というのが宇宙物理学の標準理論であると言われています。ところがそれから80億年経った時、すなわち今から57億年前に第二のインフレーションが始まり、今も膨脹を続けています。この宇宙開闢から80億年という時が特別な意味を持っているそうです。(地球の誕生は46億年前、生命の誕生は38億年前)
宇宙を支配している物理法則は、あたかも人間がちょうど誕生できるように、きわめて精密に調整されているように感じられます。それくらい精妙に、有機物質を作る主役の元素である炭素が宇宙の中で生成されました。すなわち、陽子や中性子を結合させて原子核を作る「強い力」の大きさを決めている結合定数も絶妙な値になっているとのことです。これらを説明しようとして登場したのが、1961年にロバート・ディッケが最初に唱えた「人間原理」です。彼は、「宇宙の年齢が137億年にくらべて10分の1でも10倍でも人間の存在はあり得ず、きわめて選ばれた存在である」と言いました。また、「この宇宙はきわめて平坦に調節されていなければ、ビッグクランチでつぶれてしまい、観測者である人間は存在できない」と主張しました。物理定数が絶妙に微調整されていないと人間が誕生しないことから、この条件を満たすような宇宙は、きわめて稀な存在だと言えます。すなわち、137億年という長い宇宙の歴史において
稀な偶然により人間が誕生したわけですが、しかし、偶然ではなくてビッグバンの時点で既に予定されていたという説もあります。
また一方、「人間原理」という言葉には誤解されやすい側面もあります。すなわち、「宇宙は人間が誕生するように創造されたという原理」と受け取られやすい側面があります。人間に代表される「知的生命体」は銀河系内の太陽系第三惑星に棲む人間に限るということではありません。佐藤教授は本来、科学的な研究を通じて求められるような物理量に対して、「人間原理」を安易に乱用すると、科学的研究を放棄することになりかねないと警告されています。
佐藤勝彦 「宇宙137億年の歴史」 角川学芸出版
宇宙は今から137億年前のビッグバンにより誕生した(佐藤教授が提唱)、というのが宇宙物理学の標準理論であると言われています。ところがそれから80億年経った時、すなわち今から57億年前に第二のインフレーションが始まり、今も膨脹を続けています。この宇宙開闢から80億年という時が特別な意味を持っているそうです。(地球の誕生は46億年前、生命の誕生は38億年前)
宇宙を支配している物理法則は、あたかも人間がちょうど誕生できるように、きわめて精密に調整されているように感じられます。それくらい精妙に、有機物質を作る主役の元素である炭素が宇宙の中で生成されました。すなわち、陽子や中性子を結合させて原子核を作る「強い力」の大きさを決めている結合定数も絶妙な値になっているとのことです。これらを説明しようとして登場したのが、1961年にロバート・ディッケが最初に唱えた「人間原理」です。彼は、「宇宙の年齢が137億年にくらべて10分の1でも10倍でも人間の存在はあり得ず、きわめて選ばれた存在である」と言いました。また、「この宇宙はきわめて平坦に調節されていなければ、ビッグクランチでつぶれてしまい、観測者である人間は存在できない」と主張しました。物理定数が絶妙に微調整されていないと人間が誕生しないことから、この条件を満たすような宇宙は、きわめて稀な存在だと言えます。すなわち、137億年という長い宇宙の歴史において
稀な偶然により人間が誕生したわけですが、しかし、偶然ではなくてビッグバンの時点で既に予定されていたという説もあります。
また一方、「人間原理」という言葉には誤解されやすい側面もあります。すなわち、「宇宙は人間が誕生するように創造されたという原理」と受け取られやすい側面があります。人間に代表される「知的生命体」は銀河系内の太陽系第三惑星に棲む人間に限るということではありません。佐藤教授は本来、科学的な研究を通じて求められるような物理量に対して、「人間原理」を安易に乱用すると、科学的研究を放棄することになりかねないと警告されています。
佐藤勝彦 「宇宙137億年の歴史」 角川学芸出版