第21日 <12月03日(日)>
道の駅:貞光ゆうゆう館→(県道)→藍の館(徳島県藍住町)→(県道)→阿波十郎兵衛屋敷跡(徳島市)→(R11・R55)→道の駅:なかがわ(徳島県阿南市)(泊)<81km>
昨夜は思ったよりも雨降りの量が少なくて、雨音を気にしないで眠ることが出来た。6時半ごろ起きて見ると、雲は分解されつつあるようで、青空も垣間見られる天気となっていた。この道の駅「貞光ゆうゆう館」は、四国を旅するときのお気に入りの場所の一つとなりそうである。
道の駅:貞光ゆうゆう館の朝。泊まったのはこの裏にある駐車場だが、ここは早朝から立ち寄る車が多い。
今日はYさんご夫妻とは、夜の再会となってしまうので、SUN号の中でおでんでも囲みながら歓談したらどうかと、朝食の後、昨日買った食材を使っておでんの仕込みを行なう。大鍋を持ってきているので、大丈夫である。おでんは旅くらしの中でも時々作っている。邦子どのは、いつも大鍋に溢れるほど作るので、一度おでんとなると、その後しばらくはおでんの強制から逃れられなくなるのが常である。しかし、これは思い上がりかも知れないけど、我が家のおでんの味は、コンビニで売っているそれよりは上のレベルではないかと思う。というわけでとりあえず2時間ほどかけて仕込みを終える。後は時間を見つけて煮込み続けることが肝要。夕刻までには大根にも充分味が滲み込むようになるだろう。
準備を終えて、先ずは阿波の藍の中心産地である、その名も藍住(あいずみ)町にある「藍の館」という所を訪ねることにして出発。吉野川に架かる橋を渡り、巡礼の道ともなっている県道を走ってゆくと、八十八箇所のお寺の案内板が幾つか目に入った。第一番札所の霊山(りょうせん)寺は藍住町の隣の鳴門市にあるから、この辺りを歩く巡礼の人たちはまだまだ元気な筈だ。拓は52歳の時、八十八箇所を自転車で13日かけて巡礼したことがある。あの時は、本番の前に約半年間毎日家から職場まで往復約40kmを自転車で通って足を鍛えたのだったが、いざ本番となって、初めに足ではなく尻が痛くなって往生したことなどを思い出す。自転車よりも歩いた方が体力的には楽だろうとその時思った。今は、さてどうなのだろうか。この頃は2万歩近くを歩くと踵が痛くなり出すので、歩くのも無理かも知れない。このような泣き言をいっているようでは、所詮巡礼はムリであろう。
1時間ほど走って目的の建物に到着。拓は藍染もその製品にも然したる興味・関心はないので、入館は邦子どのに任せて、車の中でお昼の用意でもして待つことにした。今日はかなりいい天気なのだが、風が強くて車の外に出ると少し寒く感ずる。
藍住町にある、藍の館の入口の景観。中の様子は邦子どのに訊かなければ解らない。
おでんの煮込みは後でやることにして、お昼は一昨日高松のYさんから頂戴したお土産のさぬきうどんを茹でることにした。半生の製品なので早めに食べた方が良かろうと考えた。邦子どのが帰る頃を見計らって茹でてみた。釜揚げにして食べたが、いや~あ、実に美味かった。Yさんお気に入りのうどんだとお聞きしたが、これは相当なものだなと思った。見学を終え戻ってきた邦子どのの食後の感想も同じだった。先日の長田うどんの釜揚げも美味かったが、このうどんも、さぬきうどんの本物の味をたっぷりと味わわせてくれた。あと何回か楽しめるのが嬉しい。Yさん、ありがとうございました。
うどんを味わい、少し休憩した後、人形浄瑠璃で有名な阿波の十郎兵衛屋敷というのへ行ってみることにした。浄瑠璃などというものは拓にはさっぱりわからない世界だけど、どういうわけか「傾城阿波の鳴門」などという題名は記憶したりしている。しかしストーリーも表現方法もさっぱりわからないし、木偶(でく)人形のこともさっぱり解らない。少しは解っておいた方が良いかなと思い、今日は時間をかけてそのモデルとなった十郎兵衛という人の屋敷跡に作られた資料館などを見学してみようと思っている。吉野川の堤防の上につくられた道を河口近くまで走って行くと、十郎兵衛屋敷の案内板があった。
駐車場に車を停めて中に入ろうとしたのだが、何と只今リニューアル工事中だとかで、休止中だという。これではどうにもならない。残念だけど諦めるしかない。これで阿波の人形浄瑠璃の知識を得る機会はかなり遠ざかることになりそうである。
14時半近くになっているので、一先ず今日の待ち合わせ場所になっている道の駅「公方の郷なかがわ」に向うことにする。平成の大合併で、この道の駅は那賀川町から阿南市の所属となった。Yさんには、所用の合間を縫ってムリをお願いしてお会いして頂けることになり、申し訳なく思っている。道の駅には15時半頃着いたが、風が強くて駐車場所を決めるのに少し手間取った。キャンピングカーは風に弱いものが多いので、停める場所には気をつける必要がある。この頃はとんでもない突風が吹いたりすることがあるので、予めの安全確保には慎重過ぎることは決して無いと思う。Yさんとの約束の時間は17時頃なので、それまでの間、おでんをじっくりと煮込むことにする。
Yさんご夫妻は、予定通りの時間にお出でになった。SUN号の中でと思って準備をしていたのだが、何とYさんは近くに魚の美味しい店があるので、どうしてもそこへご案内してくださると言うのである。予想もしていなかったことなので、随分と逡巡したのだが、結局ご好意に甘えることにして、Yさんの奥さんの運転する車に乗り込む。もう辺りはすっかり暗くなっていた。
連れて行って頂いた立派なお店で、その後はすっかりご馳走になってしまった。久しく魚(さかな)の類(たぐい)を食べていなかったので、正直なところ、魚大好きの拓にとっては、このご馳走は嬉しかった。糖尿のブレーキを外してアルコール類もかなり身体に滲みこませた。前回四国に来た時も、Yさんにはご馳走になっており、なりっ放しである。
Yさんは車の装備に詳しい方で、特に電気に関しては大変な知識と技術をお持ちで、拓と同じメーカーの同型のYさんのキャンピングカーの内部は、とても同じ車とは思えないほど何もかもが充実した装備となっている。そのようなことが自在に出来る才能をお持ちであることは、羨ましい限りである。拓には全くダメな世界なので、只ただ、驚き尊敬するばかりである。
Yさんの奥さんは、邦子どのと同じ千葉県の出身で、世代も変わらないので、考えが一致するところが多いらしい。奥さんは明るい気さくな方だけど、七宝の工芸では、わが国の最高峰の展覧会の一つである日展に、2年連続入賞を果たしている名工なのである。これ又素晴らしい才能の持ち主なのだ。歓談の中で、作品作りのご苦労などを伺ったが、製作のプロセスの中では、ご主人が相当協力されていることを知り、素晴らしいご夫婦なのだなあと、改めて実感した次第であった。このような方と知り合いになることが出来て、改めて旅くらしにおける出会いの素晴らしさ、ありがたさを思った。
美味しい魚とお酒を十二分に堪能させて頂きながら、楽しい歓談の時を過ごさせて頂き、しみじみと出会いの素晴らしさ、ありがたさを思った。Yさんご夫妻、本当にありがとうございました。
再び奥さんの運転される車で道の駅まで送って頂いた。帰り際、どうしてもと我が家のおでんも少しお持ち頂いたのだが、今夜の魚には及ぶべくも無い。又、Yさんからはお土産の他にも欲しかった衛星放送用の室内アンテナまで頂戴して、恐縮の限りである。本当にありがとうございました。