山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

温泉博士

2008-12-12 05:28:47 | くるま旅くらしの話

今日本屋さんから連絡があり、温泉博士を迎えに行った。と書いたら、変な顔をする人がたくさんいるのではないか。どうして温泉博士が本屋さんにいるの?ということになる。

実は温泉博士というのは、温泉に関する情報誌なのである。毎月発行されており、関西エリアでは温泉愛好家や旅を楽しもうとする人には以前から人気のある本だったらしい。らしいというのは、関西の知人から何度も話を聞いてはいたのだが、そこに掲載されているのが、関西以西のエリアの温泉の紹介ばかりで、そうそう遠くへは出かけられないので、自分で手にすることはなかったのだった。

ところが、先日四国八十八ヶ所巡りの旅をした帰りに、大阪の知人宅に寄ったときの話で、今は全国の温泉を紹介していると聞き、その日に書店に買いに連れて行って頂き手に入れたのである。そして旅の帰り道に、幾つかの温泉に立ち寄ってお湯を楽しませて頂いたのだった。

この情報誌は月刊誌で、その中に温泉手形というのがあり、そこに掲載されている温泉には無料で入ることができるというのである。どのようなシステムになっているのか解らないけど、名のある温泉に無料で入ることが出来るというのは、年金暮らしの者には大変ありがたいことである。

最初は無料(ただ)で温泉に入るというのは、少し厚かましいのではないかという気がして、少し腰が引ける感じだったのだが、何箇所かの温泉に行っている内に、少し考えが変わって来ている。というのは、もしこのガイド誌がなかったら恐らく終生行かないであろう場所に行くことができて、そこで思わぬ発見をすることがあるのを知ったからである。そして、それは単に自分たちだけが得をするというだけではなく、無料で温泉入浴をプレゼントしてくれている施設や宿にとっても益するものがあるに違いないと思うようになり出したのである。本当にいい温泉には、もう一度行きたくなるし、他人(ひと)にも薦めたくなるものである。温泉博士というのは、なかなか乙なアイデアだなと敬服している次第である。

先日この本に載っていた、茨城県北部の常陸大宮市の山方という所にある、湯の澤鉱泉というのを訪ねた。実は常陸大宮市というのは自分の育った所であり、山方(旧山方町)は亡き母の出身地でもある。そのような身近な場所なのに、鉱泉とは言え温泉宿があるなどとは、迂闊にも今まで全く知らなかったのである。偶々温泉博士に掲載されていたので、袋田の滝などを見がてら、ちょっと立ち寄り湯をしてみようと考えたのだった。

生前母を車に乗せて何度も通ったことのある道を行くと、温泉の案内板があるのに気づいた。母と一緒の時には気づかなかったものである。母からも温泉の話は一度も聞いたことはなかった。細い横道を登り下って少し走ると小さな温泉宿があった。日本秘湯を守る会のメンバーだという。我がふるさと近くに秘湯などというものがあるなどとは、夢にも思わなかったのだが、確かに知る人ぞ知るという温泉なのかも知れない。

   

湯ノ澤鉱泉の宿の玄関。小さな山の宿だが、鉱泉であっても泉質は抜群。ただし、温いので、せっかちの人にはその良さをなかなか実感できないかも知れない。

早速温泉に入らせていただく。5~6人が入れるほどの檜の湯船が一つあるだけの素朴なお湯だった。温泉の窓から見える景色は、松や杉それにクヌギや楢などの雑木林に囲まれていて、静かな山の宿の風情を湛(たた)えていた。お湯の方は温(ぬる)かったが、その分長く入れて、結果的にはよく温まるとてもいいお湯だった。

この温泉の近くにも最近は幾つかの日帰り温泉施設があり、そこには何度か行ったことがあるのだが、皆同じようなパターンの施設で温泉宿の風情など皆無である。しかしこの温泉は、鉱泉というのが嘘ではないかと思うほど、素晴らしい温泉だった。もし温泉博士が無ければ、身近だったのに、その存在すらも知らずに終わってしまったに違いない。母が生きていれば是非とも連れてきたかったのにと、悔やんでも遠の昔に手遅れである。

無料の温泉という餌に釣られて、ノコノコ出かけて行くのは男の面子(めんつ)に係わるなどと思っていたのだったが、実際には面子などという矜持(きょうじ)はとっくの昔に消し飛んでおり、そのようなことを誰も意に介してなどいるはずもない。湯に浸りながら、この湯ノ澤鉱泉には、これからは何度もお邪魔することになるだろうなと思った次第である。

※「温泉博士」は、マガジン倶楽部社発行です。毎月の10日発行。今日は、地元の書店の店頭にも置かれていました。 

コメント
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