山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

皇帝ダリア

2008-12-15 05:04:08 | 宵宵妄話

秋の花といえば、何といっても菊だと思っていた。それはある意味で今でも変ってはいない。ある意味というのは、日本人としてということなのかも知れない。菊の花の楚々たる、或いはゴージャスな咲き方と気品のある芳香は、日本人としての粋に叶った花だと思っているからである。

しかし、最近では年がら年中、名前もわからなければ、わけもわからないような花が世界中から集められて、花屋やホームセンターの売り場に溢れている。花は皆美しいと思っているけど、これほどいろいろなものが乱れて現れてくると、何を見てもあまり感動しなくなってしまうのではないかと、ひねくれ性分の自分にはやや批判的な見方を我慢できない。

我が家の秋の花といえば、菊とツワ蕗と皇帝ダリアである。菊は平凡な黄花と白花、それにもってのほかという食用菊が植えてある。食用菊は摘んで茹でて、今は冷凍庫の中に納まっている。ツワブキと皇帝ダリアは、4年前の九州への旅で、宮崎の日南エリアから連れてきたものだ。ツワ蕗は日南海岸の林の中に自生していたものを一株だけ連れてきたのだが、冬になる前の今頃、透明感のある黄金色の花を咲かせてくれている。愛着を覚える花である。

   

ツワ蕗の花。目立たないけど、良く見ると健気さの中に気品のある花である。

皇帝ダリアは、飫肥の城下町を訪れた時に、武家屋敷跡の家々の庭に幾つも咲いているのを見つけて、興味を抱き、どうしてもそれが欲しくなって、旅の途中にずっと捜し求めて、ついに大分県の大野町(現在は豊後大野市)という所の植木屋で苗を見つけて、我が家に連れてきたのだった。今日はその皇帝ダリアの話である。

   

4年前の飫肥の武家屋敷の庭に咲く皇帝ダリア。このエリアには、どこの家にもこのように皇帝ダリアが植えられていて、異彩を放っていた。

連れて戻って我が家の庭に定着してから4年を迎えたが、今では我が家の秋の花といえば、その首座はすっかり皇帝ダリアとなってしまっている。家に連れてきた時は、晩秋でその細い苗木は息も絶え絶えとなっており、一応庭に穴を掘り堆肥等を遣って来春の芽吹きを待つことにしたのだが、果たしてちゃんと生きていてくれるのかが心配だった。九州から千キロ以上の旅をして異郷の地に植えられたのだから、命が尽きてしまっても無理のないことなのかも知れないと思ったりしたのだった。

しかし翌年の春になると、元気に2本の芽を出して心配を一掃してくれたのだった。そのときの嬉しさは今も忘れてはいない。そしてその後2本の芽は、やがて直径が10cmにもなるほどに大きく成長して、秋になるとそれはもはや草と呼ぶには無理があるほどの3メートルを超える巨大な背丈となり、たくさんの花を咲かせてくれたのだった。この地にはそれまでこのような花が身近にあまり見かけられなかったので、ご近所の方の関心を引いたものである。

それから3年経って、この間に増やし方も軌道に乗り、今は庭の他にも菜園にも1本植えてあり、多くの方の目を楽しませてくれている。この花を増やすには、花が終わった後に太い竹のような節のある幹を、2節くらい付いた長さに切った株を、そのまま20cmくらいの深さの地中に埋めておくと、来春はその株から新しい芽が出てそれが育つというやり方である。

飫肥で見たときはこの地方固有の花なのかなと思ったのだが、その後調べてみたら、メキシコ原産のやや熱帯性のエリアの花ということだった。最近では、この辺のホームセンターでも苗木が売られており、近所を歩いていても時々咲いている花を見かけることがあるようになった。何しろ草丈が3メートルを越す高さに、びっしりとダリア風の花が咲き続けるのであるから、目立つのである。今年の我が家の花は、4メートル近くにも伸びたため、花の最盛期に見舞われた強風のために、支えていた柱の上部から倒れてしまったのだった。おかげでその後は横にしたままでの、間近かな花の観賞となったのである。

皇帝ダリアは、青空に映える花である。真っ青な空に薄赤紫の花が輝くのが最高に美しい。曇り空ではこの花の美しさは目立たない。ツワ蕗などは、むしろ曇り空や時には雪空などが似合うような気がするが、皇帝ダリアは、やはり南国の青空が命を輝かせる花なのであろう。今は世の中全体がくすんだ色に染まってしまっているけど、時にはこの花の輝きに浮世の憂さを忘れることも必要なのではないかと思っている。我が家の庭の分は終わって、今は畑に植えたのが最後の花を空に輝かせてくれている。これからもずっと、我が家の晩秋の花の首座はこの花となるに違いない。

   

我が家の庭の今年の皇帝ダリアの花。青空に生えて美しい。このような花を半月ほど絶え間なく咲かせ続けてくれる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする