山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

バッケ味噌のこと

2007-06-24 04:21:35 | くるま旅くらしの話

東北の春の山野を代表する野草の一つにフキノトウ(蕗の薹)があります。北国の東北では、フキノトウのことをバッケと呼ぶようです。特に秋田は蕗が有名ですが、実際に行って見ると、北国の山野には何処にでも野生の蕗が溢れるほどに生育しています。蕗が花を咲かせようとするのは、雪解けが終わる早春の頃かと思いますが、とにかく春が来たことを実感させてくれる植物に違いありません。

今回の旅では、鳥海山の雪解けの道を走ったその道端に、そして奥入瀬から十和田湖畔を走り、黒石に向う途中にある滝ノ沢峠で雪解けの跡にたくさんのバッケを見つけました。雪解けを待っていましたと花芽を出すフキノトウは、そのような長ったらしい呼び名よりも、バッケと呼ぶ方がはるかに実感があります。

鳥海山も滝ノ沢峠も未だ残雪が道の両側にたっぷりと残っており、山は冬が最後の名残りを惜しんでいるという感じでした。鳥海山から1週間遅く通った滝ノ沢峠は、解けた雪の跡地に無数に点在するフキノトウに混じって、咲き始めたキクザキイチゲが随所に薄紫や純白の可憐な花をつけていました。雪の中でその時を待っていたのか、キクザキイチゲの身体は、一様に赤紫になっていて、花には似合わぬ逞しさを覗かせていました。

さて、今回のテーマは相棒の話です。バッケ味噌を作ったという話ですが、バッケ味噌というのは勿論蕗味噌のことです。山地の土産物店などには定番のように瓶詰めにされて売られている、あの得体の知れぬ苦味の詰まった食べ物のことです。

知らぬ間に相棒は秋田の地元の方が作られた郷土料理の本を買っており、その中にバッケ味噌の作り方が書かれていたのでした。とにかく無尽蔵といっても良いほどたくさんのバッケが雪解けの跡から顔を覗かせているのです。これをそのまま見過ごすことができないのは、いつも私の方なのですが、今回はなんと相棒の方が積極的に摘もうと言うのです。平地の方ではもうフキノトウは消えて葉が大きくなり出し、諦めていたのですが、鳥海山麓の1000mを超える場所では今が盛りなのでした。興奮しながらビニール袋に一杯つめて山を降りたのでした。旅のコースの都合もあって、相棒は、2日後に最初のバッケ味噌つくりにチャレンジしました。テキストを参照しながらやったようですが、この間私といえばベッドにもぐりこんで白河夜船の有様。目覚めてみれば出来上がっていたという訳です。早速口に入れてみましたが、これが予想外の出来で、充分満足できるレベルでした。バッケ味噌は、甘辛く、苦味があって、香りもよくて酒の肴にフィットしているだけではなく、熱いご飯に載せても、或いはパンに塗っても大満足の食の万能選手です。

私の思うバッケ味噌の最大の魅力は、苦味と香りにあります。苦味というのは大人の味です。概して子供は甘いものを好み、大人になるに連れてそれ以外の味を覚えるようになり、そして最後に到達するのが苦味です。苦味を美味しいと死ぬまで感じられない大人もいるようですが、それは五感を使い切れていない気の毒な人だなと私は思っています。とにかく相棒のバッケ味噌作りは大成功でした。

その第1回目の作品の在庫がなくなりかける頃に滝の沢峠を通ったわけですが、ここのバッケは、鳥海の時よりも遙かに採り易く、興奮は一層高まったのでした。見境も無く大量のバッケを収穫して山を降りたのでした。別にバッケを探していたわけでもなく、偶々通った所にこんなにたくさんあったというのは、これは天がバッケを我々に配ってくれたのではないかと思うほどです。相棒の第2回目の作品は、前回を凌ぐほどであり、これまた大成功でした。大量の製作でしたので、旅が終わって家に戻った後もバッケとともに東北の春を味わったのでした。バッケ味噌作りの名人を目指すと公言した相棒の目標は今のところ達成されたようです。来年になってもテキストを見ないで作れたなら、名人の評価をしても良いと思いますが、再びテキストに依存するようでは、これは迷人と言わざるをえません。来年が楽しみです。

なお、レシピの書かれている本などを紹介します。秋田県農山漁村生活研究グループ協議会編・発行(40周年記念)「秋田郷味風土記(ふるさとあきたの食百選)」¥2,000

<バッケ味噌作りのレシピ>

 ①バッケを一晩米のとぎ汁に漬けておく

 ②水洗いの後、熱湯で色よくサッと茹で、冷水です

    ばやく熱をとり、笊に上げる

  ③キッチンペーパーでよく水分を取り、細かく刻む

  ④フライパンに油を熱し、味噌、砂糖を入れて良く

    練る

  ⑤刻んだバッケをいれザッと混ぜる

 材料:バッケ200g、砂糖200g、味噌600g、サラ

   少々

 注:味噌や砂糖の量を調整することで好みの味を出せ

  るとあります

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