ブログの記事のネタも少なくなりました。長期間のくるま旅から遠ざかって、もう半年以上の時間が経っていますので、くるま旅について書けるネタも尽きてしまいそうです。今年の旅は、7月に北海道を予定していますが、まだ1ヶ月あまりの時間があります。実に待ち遠しいですなあ。
さて、今のところは近場の短期間の旅に甘んじていますが、負け惜しみを言うなら、人生は毎日が旅のようなものと思えば、出会いと発見そして感動は、何時でもどこにでも存在しているということでありましょう。私の場合は、特に毎日の歩きの中に、それを感じています。勿論負け惜しみなどではありません。
今日はスイカズラの話です。スイカズラをご存知でしょうか?都会のコンクリートばかりの世界には、なかなか見当たらないかも知れません。少し田舎が混ざっていて空き地があれば、そのような所に今頃白か黄色の花を咲かせている、少し頑丈そうな蔓性の植物に気がつくのではないかと思います。それがスイカズラです。
スイカズラの花。これは半月ほど前に撮ったもの。今頃は花びらはもう黄色くなっている。
カズラとは蔓や葛と書きます。蔓を伸ばして樹木や垣根などに絡み付いて蔓延(はびこ)るタイプの植物の総称がカズラです。有名なところでは、鮮やかな大輪の花を咲かせるノウゼンカズラや、葛(くず)、藤などが挙げられると思います。この種の植物は、時々木なのか草なのかどちらなのかと迷うことがあります。竹もそうですが、このカズラ類も、年を経れば、見た目には自ずと風格のようなものが備わって来ますので、こいつらにはもしかしたら年輪のようなものがあるのではないか、などと思ってしまうのです。
しかし、概してカズラ類にはあまり好感を持てません。というのも、他の樹木に絡まり、時には締め上げて、のうのうと感謝もせずに生きているからです。葛などは荒地の土手などの弱い土壌を支えるには役立っているようですが、造林のために植えた幼木の傍などに生えようものなら、数年も掛からずして幼木全体に取り付いて枯らしてしまうことでしょう。また藤なども花を見ている限りは綺麗だなと感動したりしますが、これに絡みつかれた樹木から見れば、甚だ迷惑な存在であるに違いありません。どの世界にも、このような生き方をしているものは存在するようです。
ところで、スイカズラの話ですが、私の住む守谷市では至る所に見掛けることが出来ます。工場団地の垣根や高速道路の柵などに絡み付いて、今頃は白や黄色の花を咲かせています。ちょっと目には目立たないので、気づかずに通り過してしまいますが、良く見るとなかなか変わった花であることが分ります。ルーペで覗き込むと、そこに自然界の造詣の妙を感じることができます。この花は唇状花というのでしょうか、唇の形をした花なのです。普通唇状花という場合、例えばホトケノザや紫蘇の花のように口をつぼめたような形が多いのですが、スイカズラはより大型で口を開けっ広げたような花が多いようです。品があるようなそうでないような、不思議な感覚に囚われます。
スイカズラというのは、もともと吸い蔓と書くようで、その名の由来は花を摘んで口に当て、その細長い先端から蜜を吸ったということにあるとのことです。その昔砂糖などが高価な貴重品であった時代に、人びとはその代用に、鳥や昆虫のようにして素朴な甘味をこの花から恵まれていたのでしょう。私はまだその蜜を吸ったことはありませんが、一度は試しておく必要があるようです。
スイカズラは、咲き始めは白い色ですが、次第に黄色に変わってゆきます。このため金銀花とも呼ばれ、その蕾を生薬として用いる時には、薬にこの名が付いたとのことです。又秋から冬の間の茎葉は忍冬(すいずら)と呼ばれる生薬として使われるということです。
その昔の小学生の頃、スイカズラという呼び名を初めて知ったのですが、それは学校の先生方の小さな回覧誌のタイトルに「忍冬」と付けられているのを見て、これは何と読むのだろうと疑問を持ったからでした。しかし小学生には辞書を引く力も、又身近に辞書も無く、ずっとこの字のイメージだけを覚えていて、それがスイカズラのことだと知ったのは、中学生になってからだったと思います。幼い頃に気になった植物が、誰にも一つや二つはあるのではないかと思いますが、私の場合は、スイカズラが一番だったように思います。
就職のため上京して以降は、都市部ばかりのくらしとなり、その殆どがコンクリートの中でのくらしであり、更には家と会社を往復するばかりの毎日だったこともあって、長いことスイカズラなのことなど忘れ果てていたのでした。それがこのところは毎日の歩きの中で、お目にかかることができ、嬉しい限りです。他の方々には何の感興ももよおされない平凡に見える花なのですが、わたしにとっては、様々なことを思い浮べさせてくれる花なのです。今日もまた、少し黄色が増えた花が待っていてくれることでしょう。
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