山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

へのへのの旅(07東北春旅)第26回

2008-07-13 04:51:58 | くるま旅くらしの話

第26日 <5月24日()    

道の駅:東和 → (県道) → さき織伝承館 → (県道・R283R456) → 宮沢賢治記念館他(花巻市)→ 花巻市新渡辺記念館 → (R4・県道) → イギリス海岸 → (R4・県道) → 花巻温泉駐車場 → (県道・R4)→ 道の駅:石鳥谷(花巻市)(泊)  <56km

昨夜は、近くに不心得の車がいて、夜中にエンジンをかけエアコンを回したまま寝ている奴がいた。よほどタタキ起して注意してやろうかと思ったが、トラブルになるのも面倒と我慢して、車を移動させた。迷惑をかけている奴がそのまま平然と迷惑行為をし続け、迷惑を被ったものがすごすごとその場から退却するというのは、真に情けなく、男のすることではないと思いつつも、人道の乱れ果てている現世では、徒に事件を引き起こすのも思い憚(はばか)れて我慢した。(心の中では、何度もぶん殴っている)

今日は花巻郊外にある宮沢賢治記念館を訪ねてゆっくり時間を過ごし、明日から南下のスピードを速める考えである。朝食を済ませ、いつもの準備をした後、東和町(今は合併して花巻市)の案内図を見ていたら、邦子どのの関心大の裂き織り伝承館というのが町の施設としてあるというので、そこへ行ってみることにした。裂き織りというのは、古い布地などを利用して、作る織物のことで、邦子どのは小さな織り機を購入してこの頃は結構打ち込んで織物を作っている。何か参考になるのではないかと思った次第。

しかし行って見ると、そこは町の子供たちなどが不定期に学習の一環として裂き織りの実習をするような場所らしく、あまり使われた形跡のなさそうな、大型の織り機が10台ほど置かれただけの無人の施設だった。何もわざわざ観光案内板に掲載するような施設ではない様に思った。何とかの補助金を獲得して作った、行政の手柄を誇示するための愚かな宣伝のようにも思えた。この種の偽善がらみの発想にはむかつく。

がっかりしながら、R283に戻り花巻方面へ。30分ほどで宮沢賢治記念館の駐車場に到着。ここには記念館のほか、イーハトーブ館、童話館がある。自然を取り込んだ広大な敷地は、そこいらのゴルフ場などよりも広いのではないか。花巻は宮沢賢治なしでは存在しないほどに、この先人を大切にしているのがわかる。今日はその総本山とも言えるこの一大和風テーマパークを満喫するつもりでいる。

先ずは園内にある胡四王神社という所へゆくことにした。この記念館を訪れるのは二度目だが、前回はこの神社などの存在にも気づかなかったほどである。しばらく歩いてそこへ行って見ると、小さいけれど荘厳さを感ずる社殿があった。

  

  胡四王神社本殿。風格のある建物である。

由緒についての説明板によればかなり古い創建らしい。蘇民祭などのことが書かれていたが、何のことか良くわからない。とにかく参拝して案内標識に従ってイーハトーブ館のある、下の方へ行ってみることにした。

イーハトーブというのは、宮沢賢治がイメージした理想郷の名称らしい。とにかくこの人は天才だと思う。文学を超えた世界の中から、人間の感知できるイメージの世界を広げ得て伝えた人ではないか。大正や昭和などという時代を超越した絶対的な、ものに対する認知感というか、人間としての限界に近いイメージ能力を持っていた人だと思う。同郷の啄木(啄木の方が先輩)も魅力ある人物だけど、宮沢賢治という人が保持していた世界は、スケールが違うような気がする。

  

  イーハトーブ館入口。右手に賢治のシルエットがある。

そのようなことを考えながら散策を楽しんでいると、道脇にササバギンラン、ササバキンランや南蛮ギセルなどの野草を見つけて感動した。野草には大いに関心があり、今頃は探さなくても野草の方から声をかけてくれるので嬉しい。邦子どのもそれに馴れてきているらしく、南蛮ギセル(もしかしたらギンリョウ草かもしれない)は彼女の発見だった。忘れられかけている植物の存在に目を向けるようになったのは、糖尿病になって、歩くことを余儀なくされたお陰である。糖尿君のお陰でギンランやキンランに出会うことができているのである。雑草は全て草と一括して認識するだけの人間は、寂しく、気の毒なお人だと思う。

イーハトーブ館に行ったら、宮沢賢治の童話作品の挿絵を書かれている田原田鶴子という方の展覧会が開かれており、美しい絵がたくさん展示されていた。読み込んだ作品から絵をイメージして描くというのは素晴らしいことだと思う。田原さんという方の想像力は、原作者の抱いたイメージを超えるほどの力があるのではないかと思った。皆いい絵だった。

イーハトーブ館から少し歩いて、童話村へ。勿論前回も訪ねた所である。林の中を散策すると、ベンチがありそこに坐ると賢治の作品の語りを聴くことが出来るような装置が設けられていた。新緑の林の中で、目をつぶってその語りを聴いていると、自ずと賢治の童話の世界に入って行く。1時間近く何篇かの童話の語りを聴いた。俗世間を忘れる夢幻の世界であった。

童話館には、農学校の先生でもあった賢治の植物に詳しい記述から、童話などに取り上げられている植物を植えた野草園らしきものが作られており、そこへ行って見ると、九輪草の花が目立っていた。そして、その野草園とは無関係の脇道には、筆リンドウの愛らしい花やキランソウの小さな紫の花を見つけることができて大感激だった。賢治という人も園芸用に作り変えられた九輪草などよりは、筆リンドウやキランソウの方を童話の題材に選んだに違いないと思った。とにもかくにも心の和む最高の時間だった。

もうそろそろいいかなと思って、車に戻った時は15時近くになっていた。今日はこれから賢治の名づけたイギリス海岸という所へ行き、その後花巻温泉に行って湯に浸り、何度か泊まったことのある石鳥谷の道の駅にお世話になろうと思っている。

イギリス海岸は、バイパスが出来たせいで行きにくくなっていた。少し迷って近くの駐車場に到着。そこから歩いて行って見たのだが、北上川は、雪解け水が満々と溢れた急流となっており、海岸などの風情は全くなかった。渇水期でないとその昔の情緒は味わえないのだと思った。北上川も、長い時間の経過と共にその姿を変えているのかも知れない。少しがっかりしながら、花巻温泉のある山側の方へ車を走らす。

花巻温泉を訪ねるのは初めてのこと。花巻温泉ホテルに立ち寄り湯があるというので、共同駐車場に車を停め、B1Fにあるそこへ入りに行く。350円也。露天もなく、展望などは全くダメだけど、温泉としては悪くないお湯だった。それにしてもここの温泉街は、大きなホテルなどが幾つもあって、これほどの規模だったとは知らなかった。共同駐車場というのはいいなと思った。

風呂から上がった後は、宿を予定している石鳥谷の道の駅へ。石鳥谷は南部藩お声掛りの杜氏の里である。ここには何度もお世話になっている。売店は未だ開いていたので、今日は特別に活性生酒をいう奴を邦子どのに奢らせた。濁り酒風だったが、やっぱり本物のどぶろくには及ばない。どぶろくと甘酒を混同している人が結構多いが、どぶろくは生酒そのものであり、麹が混ざっているからといって決して甘くはない。むしろピリッとした辛さこそが生命だと思う。ゲットした生酒は少し甘かったのが残念。酒にはうるさい。あっという間に飲み干し、爆睡へ。

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