山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

悪夢の一日

2008-05-14 04:16:37 | くるま旅くらしの話

思い出しても胸糞が悪い。そのことをもう一度書くことにした。先日の2週間の旅の中で、この世のものとは思えないほどの出来事があった。初めは間抜けというか、慌て者のエラーなのだろうと笑ったのだったが、しばらく経って、同じ現象を見て笑いは凍りついたのだった。

東北は山形県置賜(おきたま)地方の桜の名木を見た後、日本海に抜け能登をさ迷ったあと、金沢市に隣接する野々市町在住の、くるま旅くらしの大先達のMさん宅にご挨拶に参上したあと、翌日福井県立恐竜博物館を見学し、若狭方面に向かって出発したのだったが、その途中に悪夢を強制されたのだった。

恐竜博物館見学の興奮冷めやらぬまま、市内を少し走ると、家内が「あら、このスタンド、ガソリンよりも軽油の価格の方が高くなっているわよ」という。嘘だろうと思ってみて見ると、確かにそのように掲示されている。「スタンドの従業員が、価格標示のインプットを間違えたんじゃないの?」と一笑に付したのだった。

その日は5月2日。4月一杯値下げになっていた価格が、5月1日から税率が元に戻るということで、旅の途中でもあり、実際どうなることかと些かの不安を抱えながら、昨日その日を迎えたのだったが、道脇の給油スタンドは1ヶ月前よりも若干値上げ幅の大きい価格を表示していて、不満はあるけどしょうがないなと諦めつつ給油をしたのだった。

ところが、1日経った今日になって、間抜けと笑ったガソリンスタンドの標示価格は、福井市郊外を走るに至って、決して間抜けなエラーでないことを思い知らされたのである。国道8号線に並ぶどのスタンドも、皆同じように軽油が一番高く、次がハイオク、そして一番低いのがレギュラーガソリンとなっているのである。このような珍現象を今まで見たことがない。珍現象というよりも何だか薄気味悪い感じがした。世の中が一挙に本物のハルマゲドン(=この世の破滅の日)に突入したかの感じがしたのだった。

  

 5月2日。鯖江市内を走る国道8号線沿いのガソリンスタンドの価格表示は、上からレギュラー127円、ハイオク139円、軽油141円。ここの軽油価格は、安い方。144円以上のところもあった。翌日に軽油以外の値上げを予告する看板があった。(走りながら撮ったので、見にくくて申し訳ありません)

ガソリンと軽油の課税の方法が異なることは知ってはいたけど、このような形でそれが現れるとは思わなかった。そもそも法律が通っても、直ぐに元に戻るのではなく、何日間か告知期間があって、値上げ実施までには余裕があるのだろうと思っていた。5月12日までに帰宅予定だったので、値上げ迄には間に合って戻れるのではないかと思っていたのだったが、これは完全に当てが外れたのだった。各種法律施行についての知識がない者の浅薄な思い込みだった。

しかし、それにしても道路特定財源に関する政治の混乱は、お粗末といわざるを得ない。政治集団の力と力が拮抗すると、大儀名分のもとに国の運営の実態など無視して、まるでゲームのように議論がなされ、法律が宙を飛んで、その結果いわゆる国民(政治家はいつも、国民の皆さん、と我々を呼んでいるが、それが誰なのかは不明だ。少なくとも私のことではないと思っている)が生活を振り回される。今までは彼らのゲームがこれほどの如実な現象を引き起こさなかったので諦めてきていたのだが、今回は諦めだけでは済まないように思った。怒りが昇華し、恨みの如きものが心に定着した感がする。この恨みをどうやって晴らすか。復讐の機会を逃してはならない、と思った。いやはや、ハードボイルドだど、という笑えない感覚である。

政治の世界だけの問題ではない。石油業界のあり方にも大いなる疑念を感じた。産油国の思惑に、為すこともなく振り回されるというのは、もしかしたら、この業界の営業の口実なのではないかと疑念を抱いた。石油を取り巻く世界のあり様を知らない者が、安易に口にする質(たち)の悪い妄想のような考えなのかも知れないが、石油の元売も末端の給油スタンド経営者も、全て最終消費者に負担を強いている。世の中の販売の仕組みがそうなっている以上、やむを得ないことは承知しているが、今回のように競争といいながら、一斉に価格を揃えて値下げや値上げをするというのは如何なものなのか。値下げのタイミングと値上げのタイミングには微妙なズレがあり、政治に振り回されて大変だと言いながらも、損をしたスタンドなど殆どなかったのではないか。どうも、そのように思えてならない。

我が旅車のSUN号はディーゼルなので軽油仕様となる。昨日野々市郊外で給油した時は、3種類の石油の中では一番安かった。それが当然のこととして、今までこの車を使ってきたのである。それが1日経った今日は逆転したのである。まさに天と地がひっくり返った感じである。昨日入れておいて良かったと思う反面、もし今日どうしても給油しなければならなかったとしたら、どうだったかとも思った。恐らくどんなに厳しい状況であっても動くのをやめ、軽油が一番下のランクになるまで待つということにするに違いない。どう考えたって、ハイオクよりも高価な軽油を入れるなんて許されないことだと思っているからである。

これは歴史に残る珍奇な事件ではないか。普段気づかなかった政治や業界のからくりを露呈した、悪魔の魔術の種明かしを、ありありと見せつけられたような感じだった。日本全国このようなことが起こっていたのかは判らなかったが、この胸糞の悪さは、その夜の安眠を侵し、体調の不具合を来させたほどのものであった。くるま旅の中では、時々見たこともないような光景に出くわすことがあるけど、こんなに酷い光景を見たのは初めてだった。悪夢だったと葬り去ることにしたい。

コメント (2)
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