山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

横須賀へ行く

2008-05-25 04:45:10 | くるま旅くらしの話

 講演記録の掲載で一息ついている間に、横須賀在住の旅の知人Ⅰさん宅を訪問し、一夜のご厄介になった。予てから、さんに給油口の取り付けをお勧め頂き、ご紹介頂いた部品も取り寄せていたのだったが、何せ工作音痴の自分にはどのようなことをすれば取り付けられるのか見当がつかず、ご親切に甘えることにし、お手を煩わしに参上したという次第だった。

 横須賀というのは、勿論名前も場所もよく知っている所だが、37年前に一度そこを車で通っただけで、その後は一度も足を踏み入れたことがないのである。だから、実質的には全く知らない街と言って良い。Ⅰさんご夫妻は、その横須賀のハイランドという所にお住まいである。ハイランドというからには、高台の一角なのだろうとは思った。しかし、ネットの地図では等高線などは書き込まれていないので、実像を思い描くことが出来ない。

 我が家からは、自動車専用道路ならば、さほど時間が掛からずに行けそうなのだが、久しくそのような道を使ったことがない。東京直行の高速バスの中から、いつも四つ木付近の大渋滞を見ているので、そこを通るのを敬遠して、家内の実家近くの湾岸習志野ICから入ることにした。我が家を8時半頃出発して、湾岸道に入ったのは10時半頃だった。

 湾岸道は東京湾の一番海寄りを行く道で、海底トンネルなどを幾つも潜り、且つベイブリッジなどの海に架かる橋も通る道である。羽田までは行ったことがあるけど、そこから先は未知の道である。キャンピングカーというのは風に弱いので、海辺の道を通る時は風には要注意なのだが、幸いなことに今日(5/21)は昨日の荒天とは打って変わった上天気で、何の心配もない。入り組んだ自動車専用道の進路を間違えないようにと案内表示板に注意しながら、順調に流れに乗って、思ったよりも遙かに早くベイブリッジが近づいた。相棒は懸命にカメラを構えて途中の景観を写していた。確かに東京湾岸近郊のこのような情景を目にすることは不断ないことなので、撮影の対象とはなるなと思った。ベイブリッジの途中に大黒というパーキングがあったので、ちょっと野次馬根性を起こし、覗いて見ようと寄ったのだが、ぐるっとループになっている取り付け道路を降りたそこは、車で埋まった無機質な世界がちょこんとあっただけで、少しも面白くなく、駐車するのをやめて直ぐに元の道に戻った。この辺の道路は、客観視するのが不可能なほど何が何だか様子が判らず、案内標識に従うだけである。とにかく間違えたらたいへん厄介なことになると、無駄話をしないように気をつけての進行だった。ナビはないし、ETCもないのである。

 その後は、湾岸道から横横道路に入り、終点まで行って、そこからしばらく一般道を走るとハイランドの入口に至った。ナビがないので、ここから先が勝負である。迷うことには慣れており、この頃はそれを結構楽しんでいる。ハイランドというのは、想像以上の坂の上の街だった。R134を走っていると、「尻こすり坂」という表示板があるのに驚いた。半端な坂道ではない。車なのでその厳しさが解らないのだろうけど、歩いてみればたいへんな坂だ。ハイランドはその坂の、更に上の山を拓いて造った街のようで、入口の坂の厳しさにも度肝を抜かれた感じがした。

 思ったよりも少ない迷いでIさんのお宅に到着する。13時を少し過ぎた時刻だった。時間的には、思ったよりもかなり近い距離なのだというのを実感した。湾岸習志野IC経由でなければ、2時間足らずで来れるのではないかと思う。

 Iさんご夫妻は、北海道の旅で知り合った大切な友人である。私の旅の知人には知恵者が多いが、Iさんも只の知恵者ではない。思ったことを何でも実現してしまう、創造力と知識と技術・技能をたっぷり備えた人物だ。ものづくりの世界に生きてこられた方には、足を地に据えた逞しい力がある。我が身に一番欠けているものを持っている人を尊敬せずにはいられない。本当は甘えてばかりいないで、爪の垢でも煎じて飲むほどの覚悟で、自分も必要最小限の旅車向けのものづくりに取り組まなければならないのだろうけど、もうこの歳になったら、それは勘弁して頂いて、ひたすら甘えるか、或いは無改善・無改良のままに既存のものを使うしかないと思っている。

 しばらく歓談の後、早速給油口の取り付け作業に掛かって下さった。Iさんも同じビルダーの旅車を使っておられ、給油口の取扱い不備が問題だったが、たちまちご自分で解決してしまった。知り合いの知恵者の皆さんは、同じようにあっという間に改善作業をこなしてしまっている。Iさんが、話を聞くだけで何も出来ない自分に同情して下さって、身を乗り出してそれを取り付けて頂けるというのは、真に有難いことである。1時間もかからずに作業は終わってしまった。その後で、ダイネットのテーブルの使い勝手について、板の位置が高すぎるのを相棒が予てより問題にしていたのだが、Iさんはその問題を解決されていて、我が車にも取り付けて頂けると言う話になった。魔法のようなアイデアと手さばき(=工具さばき)で、これ又大した時間も掛けずに作業を終えられたのだった。途中少し引っかかる問題点があっても、難なくクリアーされるその仕事ぶりは、自分には到底出来ない世界である。大感謝以外何もない。ありがとうございました。

     

左は新しく取り付けて頂いた給油口。これで一々大きなカバーを上げずとも給油が可能となる。今日、ディーラーに行きラベルを買ってきて貼付した。ここまで来るのに6年もかかっている。右は高さを5㎝ほど低くして頂いたテーブル。物置台まで付けて頂いて大感謝。これで相棒の愚痴もなくなるに違いない。ありがとうございました。

  これほど早く仕事が済んでしまうとは思わなかったので、日帰りではなく最初から泊まる予定で来ていたのだが、これはIさんの腕の凄さを知らなかったと反省した。でもせっかくなので、予定通り一夜を過ごさせて頂くことにした。この辺の図々しさは生来のものなのか、それとも単なる田舎者のセンスなのか、自分たちにもよく解らない。解っているのは、お互いをよく知り友情を深めるためには、このような時間がとても大切だということである。

 夕暮れまでにはかなり時間があり、その間Iさんの愛犬と一緒に散歩に出かけることになり、付近の街中をご案内頂いた。この辺りは開発された住宅地で、都市化の中にあるけど、ちょっと脇に入ると田舎が残り、息づいているというお話だったが、1時間を超える散歩の中でそのような場所を幾つか通った。

 それにしてももの凄い坂の街だ。長崎や尾道などの坂の街を幾つか知っているけど、横須賀もそれらに引けを取らない土地だなと思った。守谷は平均海抜が20mほどしかない所だけど、横須賀の海の見えるこの地は海抜70mもあるという。久しぶりに坂というものの厳しい味を堪能させて頂いた。「くりはま花の国」という広大な自然公園を中心の散歩だったが、坂の厳しさを除けば、心肺機能を高め、足腰を鍛え維持するには最高の自然環境だなと思った。

 海を望遠できる場所があるのは、いいなあと思う。Iさんは海大好き人間であり、長い間海との付き合いを大事にされてきておられるようで、ヨットもご自分で作られたことがあるという。ご自宅の居間に飾られた若かりし頃のダイビングの写真が印象的だった。ここに住まわれるようになったのも海との付き合いからの選択だったと言う。真に羨ましい人物である。自分といえば、辛うじて2mくらいは潜れるけど、泳ぐのも出来ず、舟に乗れば酔い、海とは縁の遠い生活ばかりだった。でも海が好きなのは変わらず、それはそこに棲む魚君たちが好きな所為なのかも知れない。

 散歩を終えた後は、夕餉をご馳走になる。奥様とご主人が入れ替わりに調理場を往復する姿は、我が家にかなり似ているなと思った。アウトドアに馴染むと、食べ物つくりに対する関心は、男女を問わなくなるのが普通である。お膳の前で神さんが作った料理が出るのをじっと待っているような男は、アウトドアとは無関係な野暮な奴である。Iさんご夫妻と一緒に居ると、何だか嬉しくなってしまう。23時過ぎまで、楽しい語らいが続いてその日は終わった。

 旅で出会った友は、同じ過去を持たない分だけ魅力的で、その魅力は自分があの世に行くまで消えないように思った。

コメント
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