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新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

ミュンヘン&チューリッヒの旅6日目ー ①

2012年11月19日 | '12 ミュンヘン・チューリッヒの旅

チューリッヒ中央駅から北東の小さな街・ヴィンタートゥールまでIC特急で25分。今回の旅の決心をさせてくれた街です。
ヴィンタートゥールの歴史は古く13世紀から200年間はハプスブルグ家の拠点となり、19世紀初頭にはスイスの産業革命をけん引してきました。この時の資本家たちが中心となって数々の美術・芸術品を集めました。それらを収蔵する美術館が20もあり、それが現在街の財産となっています。
その中でもオスカー・ラインハルト氏のコレクションは実に見事です。彼は裕福な資産家の五男として生まれ、質の高い家庭環境の中で育ち若いころから美術品の収集を始めました。
その彼が生涯かけて集めたコレクションのなかから選りすぐったものだけを、「絵画と土地と建物」ごと、国に「改変」しないという条件付きで1958年に寄贈したのです。
「売らない、貸さない、足さない」という頑固なまでの運営方針を持っている美術館です。20世紀最高のコレクターと言われるラインハルト氏の見事なまでの人となりが示されています。彼の他のコレクションは、市街地に「ラインハルト美術館」として名を馳せているもう一つの美術館にもあります。

美術館は街の郊外の小高い丘にあります。森の小道を通っていくと、「オスカー・ラインハルト・コレクション “アム・レーマーホルツ” 」の落ち着いた館が見えてきます。まさに邸宅美術館です。
「邸宅美術館」はこじんまりしていて、絵の向こうには画家ばかりでなくいろいろなエピソードが潜んでいて、邸宅に住んだ人の息遣いが聞こえてくるような人の温度が感じられる美術館です。
ニューヨークのフリック・コレクション、ワシントンのフリップ・コレクション、パリのマルモッタン美術館など。絵画点数も限られていて、雰囲気まで丸ごとを楽しめる私の大好きな美術館です。

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ゴッホの「アルルの療養院の庭」です。画集でもほとんど見る機会がなかったこの絵は亡くなる1年前に描かれています。こんな明るく穏やかな時があったのだと思うとなぜかホッとします。
ラインハルト氏は、同じ時期に描かれたもう一枚の絵「アルルの療養院の病棟」の存在を知り、8年もかけて探し出し入手しました。もともとこの絵は1対だったそうで、この2枚の絵が実に31年ぶりに並んで展示されることになったそうです。

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ルノワールの孫ジャン・ルノワール氏も絶賛の「眠る浴女」。ルノワールは、絵は楽しく美しく愛らしくなければならないといっており、これは1890年代の傑作とされているそうです。
「モーディス・ティン」は1875年の絵で初期の頃の初々しい色遣いが好きです。

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コローの「読書する少女」。人物画は珍しいのですが、この全体の色遣いがとても心を惹きます。ゴヤ「三枚の鮭の切り身のある静物」。つい手が出そうなほどリアルで、高橋由一よりも70年も前の鮭です。由一は海外に出たことがないというから直接この絵を見たということはないでしょう。

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11部屋に200点の作品がゆったりと展示されています。クールベの「ハンモック」、モネ「セーヌ河の解氷」、ルノワール「グルニュイエール」、ブリューゲル等々、美術史に名を連ねる巨匠たちの傑作ぞろいです。
あまり知られていないのはこの美術館の運営方針のためでしょうか。これらの絵が観たかったら、この森の静かな雰囲気の中で、かつての住まいだった建物の中で観てほしいという、ラインハルト氏の切なる願いが込められているように思いました。

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私たちは、駅にあるインフォメイションセンターでミュージアムパス( 25スイスフラン )を買いました。20の美術館に入館可で美術館巡回バスに自由に乗れるので、この後3つの個性的な美術館をめぐりました。

入館者は少なく、もったいないと思いましたが、そんなことは全く気にかけない美術館のようです。それだけコレクションに誇りを持っているのでしょう。
手荷物はロッカーに、コートはフロアのハンガーにぶら下げて・・・。無くなるのでは・・・なんて心配は全くないようです。

館内のカフェでティータイム。ずしりと重たいケーキに、ランチの必要がなくなりました。ふつう「水」が出てくることはありませんが、ここのカフェで初めてお水のサービスがありました。そういえばウィーンのカフェでザッハトルテにお水が付いてきて、甘いのでお水で流し込んで・・・というような説明がありました。所変われば・・・面白い習慣です。
敷地内の紅葉が見事でした。ミュンヘンもチューリッヒも、日本みたいな裾模様の繊細な紅葉でなく、背の高い木々の「黄色の秋」というのが印象に残りました。

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