新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

博多座『魔界転生』

2018年10月19日 | 舞台

妹からの誘いで久しぶりに博多座の公演に行ってきました。日本テレビ開局65年記念舞台『魔界転生』、30分の休憩を挟んで11時30分~15時30分までの長丁場です。

天草にちなんで九州が初舞台、ところどころ博多弁が入って観客へのサービスです。

休憩時間では時間が足りないので、開幕前の早めの昼食。老舗「老松」のお弁当も博多座の楽しみのひとつです。

さすが11時では早すぎて完食はできませんでしたが、和食が体と雰囲気によく馴染んでいます。

あらすじはパンフレットから。

『島原の乱で滅ぼされたキリシタン一揆の指導者・天草四郎が死者再生の術「魔界転生」によって蘇ります。

歴史に名を残す猛者たちも次々と転生し、現世での怨念を晴らさんと、時空を乗り超え、悪鬼となり、幕府滅亡を謀ります。

幕府の命を受けた柳生十兵衛は、凶悪な魔界衆に毅然と立ち向かいます。

配下の柳生衆と力を合わせ、知略戦術、あらゆる策を講じ、魔人と化した剣豪と死闘を繰り広げます。

魔界衆の真の目的は何なのか?不死身の化け物を斃すことは出来るのか?禍々しい魔界衆と猛々しい柳生衆の激突です。』

柳生十兵衛と父・宗矩の親子の葛藤、大阪城から逃げ延びた秀頼と愛妾の子供が天草四郎の設定も面白く、死してなお徳川に怨念を燃やす淀殿、仕官を嫌う十兵衛、蘇ってもなお仕官に執着する武蔵。

幕府転覆を謀った由井正雪も蘇り天草四郎と絡み合わせながらサスペンス風なところもあり、徳川・反徳川の個性的な登場人物の織りなす人間ドラマです。ラストシーンの天草四郎と十兵衛の迫真の言葉のやり取りには素直に心を打たれました。

 山田風太郎原作、マキノノゾミ脚本、堤幸彦演出。出演者は、上川隆也、溝端淳平、松平健、藤本隆宏、浅野ゆう子、高岡早紀など40名。皆さん体力が勝負です。

何よりも今までと違っていたのは、プロジェションマッピング、照明、フライングを駆使した奇抜な舞台。奥行きと広がりを持たせ豪華絢爛な舞台に圧倒されました。展開もセリフも早い、とにかくエネルギッシュで舞台が生きてるという感じです。過去4回ほど博多座に来ていますが、私には今回の舞台がいちばん心に残りました。

斬り合いの場面が多かったけど、フェンシングみたいに華麗な刀さばきはまるでスポーツみたい。相当に練習をこなしたのでしょう。

とにかく今までの舞台のイメージを一掃する壮絶壮大なエンターテイメント時代劇でした。数々の話題をまき散らしながら、台風のごとく大阪へ東京へと北上します。

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六月博多座大歌舞伎

2015年06月20日 | 舞台

「博多座」、九州で初めてのあらゆる演劇ジャンルに対応した福岡市立の演劇場として鳴り物入りでオープンしたのが1999年です。
毎年6月は大歌舞伎の季節。初日に先駆けて、出演者が10隻の船で博多川を下る「船乗り込み」も風物詩になっています。

そんな折に娘のところから2枚のチケットが届きました。座席は花道のすぐ傍です。



今回は「中村翫雀改め四代目中村鴈次郎襲名披露」の大歌舞伎で昼の部と夜の部が上演されています。届いたチケットは夜の部で、4時半開演8時半終了の長丁場です。



一、森鴎外原作「ぢいさんばあさん」3幕
二、襲名披露口上 1幕
三、川口松太郎原作「芸道一代男」2幕

勧善懲悪ものでストーリーは単純ですが、歌舞伎はその仕草の美しさとセリフに特徴があります。女形の流れるような動きは、女性では表現できない匂い立つ美しさがあります。

歌舞伎界で中村中車を襲名した香川照之氏の演技もセリフも、数十年の経歴を持つ役者さんにも引けをとらない演技でした。口上の滑舌もよく、人生の大転換を覚悟した強さがにじみ出ていました。そう言えば、口上の時の後ろの幕の絵が上村敦之さんの筆になるものでした。

大向こうからの「おもだかやー」「なりこまやー」「さかさごやー」という掛け声にちょっと元気不足の感も。あの博多山笠の元気があるはずなのに。

合間に二度の休憩が入りこの時に夕食をとります。レストランや弁当販売もあり、なんと歌舞伎座は座席での食事がOKなのです!こんなことが出来るのは歌舞伎と大相撲だけではないかしら?昔からの桟敷席での慣習の名残でしょうか、外人さんはびっくりするだろうな・・・。

大歌舞伎は料金も高めの A席18000円。これを二人で観劇するために自らチケットを買う事があるかしら、ちょっと高過ぎないかなとは私の感想です。伝統をつないでいくためにも重要無形文化財をもっと身近に感じ、もっと楽しめるような環境になるといいと思いました。

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炎の人---仲代達矢主演

2011年02月15日 | 舞台

Photo_5少し前 日曜 美術館で「炎の人」が取り上げられ、それまでも一度は観たいと思っていた仲代達矢のゴッホ。偶然にも友人の情報から福岡公演を観ることができました。

とても78歳とは思えない仲代達矢の動きとセリフには、まるでゴッホが現代によみがえったかの様に思われました。

地に足がついてないような動きに、悩みぬき死に急いだ短く不安定な生涯が見えてきました。

無名塾の若き塾生たちの真摯な演技もこれからが期待できます。ゴーガン役はダルビッシュと見まがうほどの美青年でした。

作者の三好十郎も、やはり孤独で貧しかった少年期に絵を描く喜びを見出したそうです。

強く印象に残ったのは、終幕で出演者全員が登場し数人ずつで語りかけるセリフです。

『あなたが生きている間に 一枚の絵も買おうとしなかったフランス人やオランダ人やベルギー人を 私はほとんど憎む』

『貧しい心のヴィンセントよ 貧しい貧しい心のヴィンセントよ 今ここに あなたが来たい来たいといっていた日本で 同じ貧しい心の日本人が あなたにささやかな花束をささげる 飛んできて 取れ』

『日本にもあなたに似た絵描きがいた 長谷川利行佐伯祐三村山槐多や そういう絵かきたちを ひどい目にあわせたり それらの人々にふさわしいように遇さなかった 日本の男や女を私は憎む ヴィンセントよ あなたを通して私は憎む』

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18代目中村勘三郎 襲名披露

2006年06月11日 | 舞台

060610_1 「博多座」は、10年前に経済界、興行界、行政が一体となって、福岡市に設立された会社です。今ここで、18代目中村勘三郎の襲名披露公演が行われています。

各地での襲名公演が話題を集めただけに、チケットは入手困難なのですが、友人を通じて、公演前に1時間ほどの勉強会がセットになったチケットが手に入りました。なるほど、歌舞伎を正面からだけでなく裏側から見てみると、歌舞伎の奥深さがわかり、楽しさも倍増します。

060610_2045001_1 写真撮影は厳禁で、これは宣伝用のパネルです。                          襲名披露口上では、こんな裃姿の幹部俳優がずらりと並び、個性を生かしたお祝いの挨拶がなされます。伝統の重みと格式の厳粛さ、華やかさ、そしてちょっぴりの笑いを交えたサービス精神に、ゆらぎのない大歌舞伎のゆとりを感じます。

勘三郎の後継者として、勘太郎・七之助兄弟が立派に育っています。特に『雨乞狐』で野狐の五変化舞踊をこなした勘太郎にはため息が漏れていました。狐らしい切れのよい動き、早変わりの踊り分けと表現力、体の柔らかさには、若さばかりでなく相当の努力のあとが感じられます。勘三郎さんも期待していると思います。

グランドオペラがゴージャスな織物の衣装なら、歌舞伎は美しい染の衣装だと思いました。着物は、デザイン・布の材質と織り・染め・家紋・・・と日本の風土の中で生まれた素晴らしい芸術品だと再確認しました。

歌舞伎は難しい・・・が頭に浮かびます。でも、これを手助けしてくれるのが「イヤホンガイド」。舞台進行に合わせて、筋立てや所作の意味が解説されるいわば実況中継で、歌舞伎が気楽に楽しく観れるようになります。無料で利用できるのも観客動員の保持につながっているのかもしれません。

060610_2047001_2歌舞伎は、まず見る事が大切で、感性で美を感じとる演劇だとか・・・。だからでしょうか、海外公演でも行く先々で、総合芸術として絶賛と喝采を浴びているとのことです。

歌舞伎は、歌舞伎俳優と観客がともにに守り育てていくべき日本の芸術なのですね。有名人からのご祝儀がこれまたずら~りでした。

 

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これぞ蜷川ワールド!

2005年01月26日 | 舞台

2tikamatutikamatu 友達からチケットをいただき「新・近松心中物語」でどっぷり蜷川ワールドの舞台に浸ってきました。
 近松の「冥土の飛脚」の梅川・忠兵衛の心中物語を縦糸に、もう一つの近松作品「ひじりめん卯月の紅葉」のお亀・与兵衛の物語をからませて作られた秋元松代脚本、蜷川幸男演出の舞台です。
 寺島しのぶの梅川は、美しく、狂おしく、情熱的で、緋色の着物がよく似合う遊女のはまり役でした。以前テレビドラマの出演を見たことはあったけど、いつの間にこんなに演技力をつけたのかと驚きました。よく通る質のいい声もあわせて、さすがDNAは争えないものだと実感しました。阿部寛も熱演!でもモデルを経たというだけあって、ちょっとその長身をもてあまし気味?でした。
 気弱で臆病な与兵衛役の田辺誠一は、婿養子の若旦那役を軽くコミカルに好演し、今までの殻を破ったような気がしました。舞台前に水を張った川がしつらえてあり、そこに与兵衛が飛び込む迫力と面白みが観客を引き込んでしまいました。1月で寒かったでしょうが、実にうまく演じていました。水しぶきが飛ぶために、客席5列目までは前もってビニールのシートが配られており、与兵衛がふんどし姿になったら、すぐにシートを頭からかぶるよう指示が出ていました。
 クライマックスは吹雪の中の幻想的な心中シーン。舞台と客席前方の天井から紙吹雪が数十分降り続き、照明と風力で静かに降る雪、木枯らしに舞う吹雪とまるで本物!!終わったときには舞台にはうずたかく雪が積もり、観客も白い雪をかぶっていました。観客までいつしか心中場面に立ち会ったかのような錯覚に陥り臨場感たっぷり!緋色の腰紐で首を絞められた梅川の体を後ろに弓なりにした死の瞬間、忠兵衛が自分で首を切り、真っ赤な血しぶきが飛ぶシーンは芸術的でさえあり、さすがこれが蜷川ワールドなんだと実感しました。緋色の着物、腰紐、彼岸花は命の色、雪の白は死を表しているのかと思いました。死してもなお、彼岸花だけが吹雪の中で咲き続けているのが象徴的で、とても印象に残りました。
 冒頭から流れた森山良子の主題歌「それは恋」がまたすばらしくて、時代物の舞台にもぜんぜん違和感がなく、むしろ梅川の辛い恋が切に迫ってきました。作曲は宇崎竜童です。

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