新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

丸の内へ 勝川春章 《美人鑑賞図》

2016年03月23日 | 美術館&博物館

生誕290年記念の「勝川春章」展が出光美術館と太田記念美術館で同時に開催されており、どちらにしようかな・・・。そして下段の《美人鑑賞図》が展示されている出光に決めました。



展示メインの春章最晩年の《美人鑑賞図》。この絵は鳥文斎栄之《福神の軸を見る美人》の構図を元に描かれています。横にシカゴ美術館所蔵の絵が写真で出ていました。なぜ30歳も年下の栄之の絵を参考にしたのか・・・、その理由を解く美しい展覧会でした。

ついでに画中画の右軸は狩野探幽の《寿老図》、中央下の軸は《竹鶴図》だそうで、ほぼ正確に描き込まれているとか。美人図もですが、その掛け軸にも気を取られてしまいます。こんな趣向が春章が行きついた芸術かもしれません。

春章の墨と絵の具で一筆ひと筆丁寧に引き重ねていった美人画は、宮川長春からの系譜につながります。すでに歌舞伎の役者絵で人気を得ていた春章ですが、肉筆美人画を手がけるようになったのは50歳前後から。

「美人画家・春章の出発」の章は、上方の絵師の美人画にその表現の源流を求めたという絵が並んでいます。《雪中傘持美人図》等21点。

「春章の季節」の章は、彼が当代随一の美人画作家として名を馳せると、多くの浮世絵師が春章の美人画へと表現を近づけようとします。その中に酒井抱一の絵もありました。

「俗の中のみやび」の章は、円熟期に入った春宵は、中国や日本の古典的な文化になぞらえようとして芸術の深みを増していきます。《花魁図》等12点が勢ぞろい。

最後に、春章が残したものとして「浮世絵の黄金期へ」の章があります。春章が世を去った後、北多川歌麿、鳥文斎栄之の華々しい登場です。鳥文斎栄之の絵は品のある清廉な美人画でとても美しいものでした。ここにきて春章《美人鑑賞図》が栄之の美の世界と一致したところが納得できました。
この章に北斎の肉筆画も一枚ありました。彼は若き日に春章のもとで学んだ弟子だったのです。そういえば北斎も一時「勝川春朗」と名乗った時期がありました。

面白い資料の解説が展示されていました。江戸の著名人を職業別に記号をつけて表したものです。当時は浮世絵師と画家は区別されているのがわかり、画家の方が上に見られていたそうです。春章の扱いは画家。浮世絵画家から肉筆画家をめざし、そこで活躍し名声を得たのがうかがわれます。
( 国会図書館デジタルコレクション「江戸方角分」で1000人分の職業を見ることが出来ます )

今回はフェルメール、レンブラント、ボッテェチェリ、ダ・ヴィンチと、世界的にも超メジャーな画家の名前が東京まで飛んでいくきっかけを作ってくれました。それはテレビでもよく目にする絵であり画家であったりしましたが、今回特に心に残ったものは、そのほかのカラヴァッジョと勝川春章でした。両者とも超メジャーではないからこそ新鮮で、新しい知識を得られて心弾む思いでした。理解するというのは好きになるための一歩です。

江戸時代、たくさんの浮世絵や陶磁器が西欧に流れました。それは西欧人にショックを与えるほどの異世界の新鮮さでした。ジャポニズムという言葉が生まれたほどです。
だから2日間洋画ばかりを見た後、日本画のこの出光美術館に来た時の新鮮な感覚が、江戸の頃日本の絵を初めて目にした西欧人の衝撃の心とダブって、さもありなんと一人納得したものです。絵画芸術は洋の東西を問わず人間の心に問いかけ、奥深く入り込む魔法のようなものかもしれません。

随分前に娘と大英博物館を訪れた時に「日本館」にも足を延ばしました。百済観音の3体のレプリカのひとつが展示されていると聞いたからです。
しかし日本館に入った途端に目の前のガラスケースに凛と収まった美しい日本刀が目に飛び込みました。これが日本文化だったのか・・・、と衝撃的でした。一刀に込められた日本の精神。余分なものをそぎ落としそこに込められた心というか崇高なもの、それへの畏敬の念がわいてきて日本文化がいとおしく、とても誇りに思いました。今回の出光の日本画でさらにそれを確認しました。

絵を見終わってロビーのソファーでくつろぐと、全面ガラスの向うに桜田門が見えます。頭に浮かぶのは井伊直弼ですが、春の陽はそんな暗い歴史を飲みこんで、どっしりとした門は静謐に包まれてとても穏やかでした。

見終ってからの遅いランチは、丸の内ブリックスクエアのA16で。ガーデンを眺めながら窯焼きピッツァを。お店の人が「かなり大きいから二人で1個の方がいいと思います」とアドバイス。
ケーキは岩塩とオリーブオイルをトッピングしたチョコレートプディーノ。人気のケーキらしいけどチョコレートが濃厚過ぎて甘すぎて。日本初上陸のサンフランシスコのお店らしいけど、アメリカのケーキは超甘いから。
そういえばニューヨークの空港で、朝からサラリーマンらしきイケメンが砂糖がけの菓子パンを頬張っていました・・・。「ひぇ~っ」とびっくりポンの光景でした。

 

かくして3日間の旅は終了。 やはりカラバッジョと勝川春章が深く心にしみました。鼻歌が出そうなくらい満足した美術鑑賞でした。
                         (東京3日目 3月17日)

コメント (5)

両国へ、六本木へ

2016年03月19日 | 美術館&博物館

訪れるのは初めての江戸東京博物館へ。両国の懐かしーいにおいのするこの場所で「レオナルド・ダ・ヴィンチ」展が開催されています。
目玉は傑作《糸巻きの聖母》。現存15点にも満たないというダ・ヴィンチ絵画の中の1点が来日とあっては、その絵の前は60分待ちの行列。それでもみんな辛抱強く待ちます。

この絵の来歴がテレビで放映されていました。18世紀後半に英国貴族バクルー公爵が所有することになったいきさつ、盗難にあい4年も行方不明になり2007年に発見されたことなどです。数奇な運命が余計に興味を惹きつけます。

直筆ノートや素描も展示されていましたが、かなり前に森アーツセンターギャラリーでダ・ヴィンチの遺稿展を見たことがあったので、ここはさらりとスル―。なんせ2重3重の人垣です。

レオナルデスキ、つまりダ・ヴィンチを慕い多くの影響を受けた弟子たちのことをこう呼ぶそうですが、彼らの模写がたくさん出ていました。「単品」で見ればいいのかもしれませんが、模写となるとその差はあまりにも歴然としていて、ここもさらりとスルー。「糸巻きの聖母」が目的だったのでそれは果たせました

びっくりポンなのは、この日が月一のシルバーデーという事で観覧料が無料だったこと!東京都は太っ腹!そのせいかシルバー層の波、波、波。情報がよく行きわたっています。シニア層も意欲的で顔が輝いていました。

博物館と銘打ってるだけあって、上層階のフロアが面白い ! 徳川家康が江戸に来てからの歴史や、明治以降の歴史・風俗・文化が実に丁寧な模型や復元建築で楽しませてくれます。ここなら一日費やしても惜しくはない感じです。
 
 

7階の和食処桜茶寮は、ここも時間待ち。また辛抱強く待ちます。本当は国技館の近くで名物のちゃんこ鍋を食べたかったのですが実現しませんでした。

両国国技館の前で。ちょうど大阪場所の真っ最中で閉館していましたが、建物の一角に相撲博物館がありそこだけのぞいてきました。
相撲は特に興味があるわけではなかったけど、地元の琴奨菊が優勝して以来面白くなってきました。売店には各力士のグッズも並んでいました。今相撲人気が高まり、毎日盛り上がっているようですね。

♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:

六本木・森アーツセンターギャラリー 「フェルメールとレンブラント」展 
大江戸線六本木で降りると、行きかう人はもう若い人ばっかり。美術館のある六本木ヒルズ森タワー52Fは、両国の美術館とは大違いで私たちが「浮いて」見えるほど平均年齢が低い美術館でした。(´゜Д゜`;) 夜8時まで開館というのも若いひとの街らしいです。


チラシのタイトルは2代巨匠展のようになっていますが、展示作品ははそれぞれ1点ずつ。フェルメールの《水差しを持つ女》も、レンブラントの《ベローナ》もメトロポリタン美術館で見ていましたが、今回は解説付きで面白く見ました。。
解説があると何倍も絵が楽しめます。絵は見るもので解説を読む必要はないという意見もありますが、イメージを膨らませて自分の世界に浸る醍醐味は何とも言えません。

17世紀のオランダは世界史的にも黄金時代。そのまっただ中で活躍した画家たちの風景画、建築画、海洋画、生物画、肖像画、風俗画から人々の生活や文化を偲ぶことが出来ます。

(写真は@vermeer20152016さんのツイートからお借りしました)

上記の絵の前からなかなか去ることが出来なかった肖像画2点です。今まで知らなかったイサーク・リュティックハイスという画家の作品で、清楚な表情や優雅なたたずまいはもとより、大きな白いカラーの織地模様の描き方に見入ってしまいました。透かしたレース模様はよく見ますが、地模様の繊細な表現に、人の手でここまで描けるのかと信じられない思いでした。新しい発見は嬉しいものです。



都会のまっただ中らしく夜8時までオープンしている高層階の美術館はゆっくり回ることができ、ちょっと優雅な気分に浸れました。
オリンピックに向けて地上も地下も工事が進んでいますが、そんな無粋な工事現場も夜の闇がすっぽり包み込んでいました。52階という高さからの夜景は美しいものでした。
                                 (3月16日 東京2日目)

コメント (3)

ボッティチェリ 『美しきシモネッタの肖像』

2016年03月19日 | 美術館&博物館



『美しきシモネッタの肖像』。この美しい肖像に目が釘づけになったのは20年ほど前、画集の中。それはボッティチェリの解説にでてくるおとぎ話のように晴れやかな舞台の中でした。メディチ家の若武者ジュリアーノが馬上槍試合に勝利し、その頭上に勝利の冠を授けたのがフィレンツェ随一の美の女王シモネッタでした。二人は恋人同士でもあったのです。
メディチ家のフィレンツェは、まさに我が世の春の時代でした。その後ジュリアーノは暗殺され、シモネッタも病死・・・。
その絵を所蔵しているのが丸紅株式会社だと知ったのはずっとのちになってからのことです。
今、東京都美術館で「ボッティチェリ展」が開催中で、この絵も展示されていることはテレビで知っていました。

そんなある日、確定申告を終えた夫がその帰りに立ち寄った福岡市博物館で各地の展覧会のポスターを見て心を弾ませて帰ってきました。「ボッティチェリ展」と江戸東京博物館「レオナルド・ダ・ヴィンチ」展、森アーツセンター「フェルメールとレンブラント」展が時期を同じくして開催されているという情報でした。

ちょうど夫の誕生日に合わせて南阿蘇の温泉にでもと計画を立てていたので、東京に変更しようとあっさりと決まりました。そしてめでたくずーっと待ち望んでいたシモネッタの肖像に会いに行くことが出来たのです。

東京都美術館「ボッティチェリ展」 4月3日まで 



『ラ・プリマベーラ』も『ヴィーナスの誕生』も現地で2度見てはいましたが、今回は彼の絵につながる前の画家たち、芸術家としてのボッティチェリ、彼の弟子の時代、メディチ家の興亡、サヴォナローラの出現、と実に分かりやすい流れで展示されていてゆっくり回ることが出来ました。
時折り、辻邦生『春の戴冠』を思い起こしながら、こういう形でボッティチェリに接することが出来たのは夢のようでした。

国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」  6月12日まで



カラヴァッジョと言えば、頭に花を飾った中性的な「バッカス」がまず頭に浮かびますが、彼の劇的な人生と合わせて五感、風俗、光、斬首とテーマごとの絵の展示となっており、実に内容の濃い展示がなされていました。
死の直前まで明と暗のドラマティックな人生を送り、それが深く影響を与えたのか色彩も人物の表情も深まっていくのがわかります。晩年の数年前の《エマオの晩餐》は胸に迫るものがありました。

彼が後世にいかに多くの影響を与えたか、継承者という意味の「カラヴァジェスキ」という言葉もあるほどです。カラバッジョに魅せられた画家たちはその画法を発展、波及させていきました。ろうそくの光に照らし出された神秘的な絵を描くあのジョルジュ・ド・ラ・トゥールもその一人です。

現存の真筆が少ないカラヴァッジョの絵が一堂にこれだけ集まることはなかなかありません。今迄知らなかったカラヴァッジョの多面性に触れられた印象的な展覧会でした。

宿は5つの美術館にアクセスの良い ホテルメトロポリタンエドモントに2泊。ポーチのシンプルな鉢植えとロビーの片隅のインテリアが私好みで、部屋に入る前から気に入りました。
 

ホテルのディナーブッフェのメニューは豊富でワインもおいしかったし、シニア割引がありラッキーでした。                       (3月15日 東京1日目)

コメント (7)

やっと春!

2016年03月18日 | くらし

前回のブログの更新日を見るとひと月以上も前。あわただしい毎日でスケジュール表は文字でぎっしり埋まっています。
年をとるごとに必要なのは「きょういく」と「きょうよう」。つまり「今日行くところがある」「今日事がある」ように心掛けることらしいです。心も体も反応が鈍くなる年代に実に楽しい言葉を与えてくれる人がいるものだと思わず口元がほころびます。まあ、忙しいこともいいことなのだ・・・。

伊勢を訪れているという息子から電話があり、何と松坂牛を送ってくれるとのこと。そして届いたのは松坂まるよしの証明書付の松坂牛。
美しい肉に、恐るおそる開いたホームページをみてびっくり!私なら先ずは買うことのない高級牛・・・。頑張って送ってくれて息子に感謝し、長年生きてきてこんな贅沢な夕食もあっていいかも・・・と、二日にわたってすき焼きをいただきました。
すき焼きの作り方も写真入りで説明がついています。九州と同じく、割りしたを使うのでなく肉にきび糖をまぶし、次にお醤油、その後昆布だしを入れる方法です。舌
の上でとろける肉のおいしさを表現する文章が思いつきません。



♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

球根から育てたアネモネの花色の種類がたくさんで次から次と蕾を開かせて楽しませてくれます。赤やピンクはさながらに春の喜びの色ですが、上は少し寂しいけど私の「好きバージョン」。
庭では例年よりも早い開花ですが、茎が細くて強い春風にはすぐ参ってしまいます。そんな花でも切り花にすると、途端にまっすぐに姿勢を正すのが不思議。水揚げがよくてすぐに水が減ってしまうので要注意です。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏に植えていたゴーヤの後に撒いたのが博多菜ばなの種です。食卓に春を運んでくる菜ばながないと寂しくなります。毎日次々と伸びてくる蕾を折る軽やかな音・・・・、これも春です。茹でて酢味噌和え、山葵マヨ和えと、春を告げるほろ苦さを楽しんでいます。

ずっと店頭で買っていましたが、ふとしたことで友人から種をもらい今年が初めての収穫になりました。育て方の簡単さとおいしさに来年も種を撒く予定です。

(´゜Д゜`;)上の写真は、どうも「博多菜ばな」ではないような・・・。kazuyoo60さんのコメントから、もう一度調べてみるとタダの「菜ばな」のようです・・・。博多菜ばなは、葉がもう少しツルンとした感じです。

コメント (5)