新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

スイス映画 『マルタのやさしい刺繍』

2014年10月06日 | 映画

秋の福岡大学市民カレッジがまた始まりました。今回はドイツ語学科主催で、映像にみるヨーロッパ文化『マルタのやさしい刺繍』。映画が始まる前に解説があり、ドイツ語が分からなくても字幕があるし、映画館で見るよりもちょっとアカデミックな雰囲気に浸れ、無料です。大学院生によるスイスの言語分布図の解説もありました。

2006年スイスの観客動員数NO.1、2007年アカデミー賞外国語映画賞。主人公のシュテファニー・グラーザーは88歳、2007年スイス映画賞主演女優賞にノミネートされるなど高い評価を得ている映画です。

箱庭のように美しいスイスの小さな村での話。夫に先立たれた80歳のマルタは何もする気がないままに沈み込んだ日々を送っていました。彼女には3人の親友がいます。

ある日彼女に、昔の仕立ての腕を見込んで合唱団旗の制作話が持ち込まれます。
親友と一緒に街の生地屋さんで布地を選ぶうちに、かつての夢であった「パリで自分で仕立てたランジェリーのショップを開く」という夢が忽然と甦ります。スイスの美しいレースを使ったり、丁寧に一針ずつ刺繍をした手作りのランジェリー。そこに再び夢と希望を見出したのです。

しかし、保守的な村ではそんな夢も破廉恥行為と圧力がかり妨害がなされ、開店は困難を極めます。親友たちのサポートにも足並みが乱れますが、それぞれが年齢とは関係なく自分の夢に向かって動き出したことで、再び4人一致したマルタの大応援団ができ、お店は力強く回り始めました。

小さな村は親子の確執、高齢化社会、伝統とハイテク、不倫、男女の愛憎、
友情などいろいろ問題を内包しています。各個人が勇気を持ってそれと向き合うことで
とるべき姿勢を見出し、最後にはすべてが融和した形で、あたかもスイスの美しい緑と空気のように澄みきった結果で終わりました。

映画のスタートは、やる気のないマルタを囲んだ4人のトランプの場面ですが、ラストシーンでは丘の上でのトランプは3人です。
一番の理解者であったリージが心臓麻痺で亡くなったのです。この超ど派手な中年女性は心に深い傷を持つ身でしたが、周りの中傷にもめげず全面的にマルタの夢をバックアップしました。
仲間が3人になってもリージの心が確かに息づいている美しいラストシーンでした。

大学主催の映画会というだけあって、アンケートに感想を書き込み、参加者の意見交換が1時間ほどありました。終わったのは9時でしたが、爽快感満足感のある映画会でした。
次回は何と解説付きの『第九』第4楽章の鑑賞会です。

コメント (12)