新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

六月博多座大歌舞伎

2015年06月20日 | 舞台

「博多座」、九州で初めてのあらゆる演劇ジャンルに対応した福岡市立の演劇場として鳴り物入りでオープンしたのが1999年です。
毎年6月は大歌舞伎の季節。初日に先駆けて、出演者が10隻の船で博多川を下る「船乗り込み」も風物詩になっています。

そんな折に娘のところから2枚のチケットが届きました。座席は花道のすぐ傍です。



今回は「中村翫雀改め四代目中村鴈次郎襲名披露」の大歌舞伎で昼の部と夜の部が上演されています。届いたチケットは夜の部で、4時半開演8時半終了の長丁場です。



一、森鴎外原作「ぢいさんばあさん」3幕
二、襲名披露口上 1幕
三、川口松太郎原作「芸道一代男」2幕

勧善懲悪ものでストーリーは単純ですが、歌舞伎はその仕草の美しさとセリフに特徴があります。女形の流れるような動きは、女性では表現できない匂い立つ美しさがあります。

歌舞伎界で中村中車を襲名した香川照之氏の演技もセリフも、数十年の経歴を持つ役者さんにも引けをとらない演技でした。口上の滑舌もよく、人生の大転換を覚悟した強さがにじみ出ていました。そう言えば、口上の時の後ろの幕の絵が上村敦之さんの筆になるものでした。

大向こうからの「おもだかやー」「なりこまやー」「さかさごやー」という掛け声にちょっと元気不足の感も。あの博多山笠の元気があるはずなのに。

合間に二度の休憩が入りこの時に夕食をとります。レストランや弁当販売もあり、なんと歌舞伎座は座席での食事がOKなのです!こんなことが出来るのは歌舞伎と大相撲だけではないかしら?昔からの桟敷席での慣習の名残でしょうか、外人さんはびっくりするだろうな・・・。

大歌舞伎は料金も高めの A席18000円。これを二人で観劇するために自らチケットを買う事があるかしら、ちょっと高過ぎないかなとは私の感想です。伝統をつないでいくためにも重要無形文化財をもっと身近に感じ、もっと楽しめるような環境になるといいと思いました。

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司馬遼太郎「世に棲む日日」 と 「花燃ゆ」

2015年06月15日 | 本・新聞小説

NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の放映が始まり半年が経ちますが、聞こえてくるのは視聴率の低さ・・・故の雑音です。
当初キャスティングを見て、これなら若い人たちも取り込んで高視聴率だと確信していたので、この不評をちょっと残念な思いで見ています。

文春文庫の全4巻の「世に棲む日日」は前半が吉田松陰を中心に、後半が高杉晋作を中心に書かれています。

司馬さん自身は松陰をあまり好きでなかったようですが、晋作を書くのに避けては通れないというところもあり、前半びっしりと松陰になっています。

私の松陰のイメージは、教科書に載った肖像画と「松下村塾」の数行の知識しかなくピンとくる人物ではありませんでした。

この本を読んでいくうちにその考え方が少しずつわかり、ドラマの楽観的で明るい「伊勢谷松陰」でイメージが一変し、「狂いなさい」のセリフが心に残りました。

主人公の「文」は、本では「杉家」の家族構成の一員としてわずかに出てくるくらいですが、この女性を主人公にしてストーリーを広げていったところが脚本家のすごいところだと思います。

2巻めで、司馬さんが松陰の革命についての考え方を3つに分けているのが、このドラマをざっと理解するのに役立ちます。

①革命の初動期は世の中から追い詰められて非業の死を遂げる、例えば松陰。

②中期には卓抜な行動家が現れ奇策縦横の行動で彼らもまた多くは死ぬ、高杉晋作や坂本竜馬。

③次にそれらの果実を採って先駆者の理想を容赦なく捨て、処理可能な形で革命の世をつくり大いに栄達する「処理家」、伊藤博文など。

『松陰の松下村塾は世界史的な例から見てもきわめてまれなことに、その三種類の人間を備えることが出来た』と書かれていますが、長州藩の特異さもあったと思います。

藩主毛利敬親は何にでも「そうせい」という台詞をはき、ともすれば「そうせい侯」と揶揄的に言われますが、この時代にトップの坐にある人が、他人の意見を聞くという姿勢に敬親の力量を見る思いです。
松陰が長州の人たちを作り上げたのでなく、松陰の考え方が育成される土壌がすでに長州藩そのものに存在していて、新しい考え方をしようとする若者を吸引していったように思います。

ドラマも後半に向かっています。②から③へ。文が鹿鳴館の衣裳を身につけているチラシの写真を見ましたが、それが③の部分でしょうか。
視聴率を上げるべく「大奥」のきらびやかな場面が設定されているとのこと・・・。視聴率を気にしない番組もあっていいと思うのですが。

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星野玉露 「しずく茶」

2015年06月05日 | 食・レシピ

過日、同窓会の翌朝のこと。星野においしいお茶を飲みに行かないかと誘われ、熊本の美術館に足を伸ばす予定だった私は大きく心を揺さぶられて、緑深い星野を選びました。

星野」、
この美しい名前の村が福岡県南部の奥深い所にあります。棚田や茶畑、夜空の美しさを誇るこの村は日本で最も美しい村」の仲間入りもしています。
八女茶生産地の中でも、特に寒暖差の大きい星野は上質な茶を誇り、「茶の文化館」、九州最大級の反射望遠鏡を備える「星の文化館」、宿泊と食、陶芸など見どころが多く観光客の関心も高くなっているようです。
       上の写真はじゃらんに出ていたものを借りています。

 

「茶の文化館」で念願の「しずく茶」の体験です。しずく茶」とは小さな蓋付きの茶碗を使った独特の淹れ方で、星野玉露の伝統的な飲み方だそうです。

  
①一煎目 茶葉の入った茶碗に45℃に冷ましたお湯20mlを静かに注ぎ蓋をして90秒。茶碗の蓋を少しずらして隙間からこぼれるしずく、ほんの2滴ほどしか出てきませんがそれを口に受けます。2滴のしずくが舌の上に転がると、たちどころに口いっぱいに旨みが広がりまさに「口の中が宇宙だ」と感じてしまいました。あの旨みをどう表現したらいいか・・・、絶対に忘れない味です。
②二煎目、三煎目は60℃で30mlのお湯を注ぎ20秒待ち、同じように飲みます。家で飲む玉露の味に近づいてきました。
③4煎目は80℃のお湯をたっぷり注ぎしばらく待って飲みます。最後まで爽やかな玉露の新茶です。
④茶碗に残った茶葉は、ポン酢しょうゆをかけていただきます。しこしこした歯ごたえと濃厚な旨みのある不思議な「食べ物」になりました。


昼食にいただいたのが「だご汁定食」。「だご」とは小麦粉の団子のこと。地元の味噌、野菜、漬物、棚田米のふるさとの味に心も体も和みました。

家でもたまに玉露を飲みますが、無意識的にどうもお湯の量が多すぎているようです。旨みはしずくの中に凝縮されているのです。お湯の温度と量が決め手。とても勉強になりました。

ちなみにお店で使われた玉露の茶葉は100g3600円とのこと。ここまで高い玉露には手が出なくて、ワンランク下の玉露を買いました。暫くは数種類の新茶が楽しめそうです。

再度訪れる価値のある美しい村でした。出直して望遠鏡も覗きたいな~・・・。

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五嶋龍ヴァイオリン・リサイタル2015 

2015年06月01日 | 音楽

スケジュールを調節してやっとチケットを入手したのが3月末。それは残り5枚の中の3階席の正面でしたが観劇ではないからOKということで。
公演当日のチケット売り場の窓口は固く閉ざされて「完売」の文字が・・・。いつも完売と聞いていたので入手できただけでもラッキーでした。

プログラムがまさに大判ふるまいと言ったところでした。
ベートーベン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」
サーリアホ:トカール
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
ヴィエニャフスキ:創作主題による華麗なる変奏曲 Op.15

階から俯瞰するとヴァイオリンはもちろんピアニストの手指の動きもばっちり見えて本当に「穴場」の席に感激です。怪我の功名!

聴きたかったのはフランクの方でしたが、「クロイツエル」はヴァイオリンとピアノのどちらが主役?と思う程に、ピアノのドゥセクの演奏も素晴らしいものでした。
第2楽章にきたときに前席のご婦人のハンカチを持つ手がしきりに動きます。「泣いてるのかしら?」と思う程に美しい2楽章、「さもありなん・・・」です。

サーリアホは初めて耳にする作曲家でしたが、10分程の小品ながら現代音楽は軽妙で新鮮でした。

アンコールは3曲も!3階席までびっしりの聴衆に演奏家の心も高揚したのだと思います。ドゥセク氏の笑顔の表情がとても印象的だったし、龍氏のひょうきんな音を挟み込むタイミングに聴衆の気持ちも和みました。

ヴイオリンはストラディヴァリウスの「ジュピター」。姉の五嶋みどり氏同様にボランティア活動にも力を入れており、まだ27歳の若さにこれからがますます期待されます。
ハーバード大学物理学科出身というのも、母親族にとっては心を躍らせるところです。

20分の休憩時間にもCD売り場は大混雑。サインサービスは無しでしたが、購入した2枚組のCDは今回のツアープログラムと同じ曲目で、家でももう一度ゆっくり楽しめます。
先人が残した偉業を音にして伝えるべく半歩前進のために、過去を探りながら、少しでも太い幹に形のある緑の葉をなす五嶋龍に成長していきたいと思っています』とはパンフレットの龍氏の言葉。ベテランの諏訪内さんのCDと聴き比べてみたいと思います。

コンサート終了後、楽屋の出口にはずらりと行列が!「追っかけ」ならぬ「待ち伏せ」のようです。そういえば私もゲルギエフの時に並びました・・・。

 

 

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