新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

芋煮・・・山形・・・

2018年09月30日 | 食・レシピ

去る6月、蔵王のお釜に行ったときに眼下に山形が見えました。私には長年の夢の、山形の郷土料理「芋煮」が頭をよぎりましたが時間的にアウト。折角のチャンスだったのに今でも残念です。

涼しくなり里芋も美味しくなり、芋煮を作りました。長くこのレシピを使っています。
ポイントは先に牛肉を濃い味でさっと煮て取り出し、最後に戻し入れるところです。
①里芋600gは食べやすい大きさに、牛肉200gはひと口大に、コンニャク1枚はひと口大に切り熱湯でさっと茹でておきます。
②シメジ1パックは根元を切ってほぐし、ネギ1本は3㎝長さに。
③鍋に、砂糖大さじ2・醤油大さじ4と肉を入れて火にかけ、肉の色が変わったら取り出します。
ここに、だし500cc・酒大さじ4・塩ひとつまみと里芋とコンニャクを入れて煮ます。
④里芋が柔らかくなったら、シメジとネギを入れ、牛肉を戻し入れて、さっと煮ます。好みで七味唐辛子をふります。

芋煮の夕食の直後に、ブラタモリで山形編があり、この偶然を喜びました。東北の秋の河原で行われるという、でっかい鍋を囲んだ「芋煮会」、行ってみたいなぁ、食べてみたいなぁ。

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100均の電動ミニクリーマー > ドルチェグスト

2018年09月29日 | くらし

友人からの情報で百均のクリーマーをゲット!何とふわふわのクリームができました。

牛乳100ccをレンジで温め、クリーマーで1分ほど攪拌しコーヒーに注ぐだけです。逆にクリームにコーヒーを静かに注いでもOK。カフェのカプチーノ?カフェラテ?と遜色ありません。

価格が、今持っているドルチェグストの100分の1、とはあり得ない数字の百均のスグレモノです。


こんなに2層にはっきり分かれます。この「層」に夢があります。

ドルチェグストを使ったカプチーノは、水と専用カプセルをセットしてスッチオン、こんな風に出来上がります。でも専用カプセルが1回毎に90円もかかるのです。1年で故障したときは、電話一本ですぐに新しいものと取り替えてくれましたが。

これが百均の電動ミニクリーマーで、単三電池2本が必要です。ブレンダーにはクリーマーの部品がついているのかもしれませんが、持ってないので。

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’18年秋 渋皮煮

2018年09月27日 | 食・レシピ

やっと大粒の栗をゲット。今年は猛暑で生育がよくないということでした。

硬い鬼皮を剥いて40数年、渋皮煮は秋の入り口の行事です。ハサミ状の「くりくり坊主」が強力な助っ人です。


①これをタンサン大さじ1を入れた水に一晩つけておきます。
②翌日新たにタンサン大さじ1を入れた水で茹でること30分。
③今度はタンサン無しの水だけで茹でること30分。
④さらに水だけでもう一度30分茹でます。
⑤栗1㎏に対して400グラムの砂糖を入れてアクを取りながら弱火で50分煮ます。最後に醤油大さじ1を入れて5分煮ます。

あら熱がとれたらで冷蔵庫で保存します。

秋を感じながらお抹茶と一緒にいただきます。

潰れた栗は渋皮を取り除いてマッシュ。ハチミツと煉りあわせて茶巾絞りにしました。色はよくないけど夕食のデザートに。 

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大河ドラマ『西郷どん』の中の慶喜

2018年09月25日 | 本・新聞小説

NHK大河『西郷どん』で、イケメンで切れ者を演じる「松田慶喜」はとにかくカッコよすぎ。時々感情的な言動がでてきて、今までの私のイメージとズレて少々戸惑うところもありますが。

司馬遼太郎「最後の将軍」をドラマと同時進行で読み直しました。尊皇、攘夷、開国、倒幕、列強の要素が複雑に絡みあい、撚りあい、反発しあい・・・の流れが整理されてわかりやすくなりました。しかし何回読んでも複雑さは変わりありません。

有能で、多才で、雄弁で、人一倍時勢を見るに敏であった慶喜。最後は都落ちして大阪へ。そして味方の集結した大阪城の兵を見捨てて夜逃げ同然に江戸へ一目散・・・。

時勢の遙か先までを見通し、「狐狸のような巧緻さ」で、あらがうことなく徳川と自分の傷をできるだけ少なくしようと画策した慶喜。薩摩側にもこれ以上の策謀家が揃っていましたが。

慶喜の味方であった松平春嶽でさえ最後は「百の才知があって、ただひとつの胆力もない・・・しょせんは猿芝居になるにすぎない」と慶喜の行動を評しました。

しかし、結果的には、徳川幕府を終わらせ大政奉還を成し遂げ、領地も返上、江戸を無血で明け渡した大仕事は、歴代の将軍にはとてもなし得なかったことでは・・・と。

鎖国を解いた幕末の激動の中で、最後の将軍として出現すべくして出現した特異な才幹を持った慶喜だったと思います。

鎖国といえども、地方からも新しい考えを持つ人々がでてきており、財政的にも、いずれ徳川の世が終わることは必然だったという見方があります。鳥羽伏見の戦い、全国の「士」のはく奪など大きな犠牲はありましたが、やはり自ら進み出た大政奉還は日本の行く末を決めた一番の節目だったと思います。

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フリードリッヒ・バルテルスのバウムクーヘン

2018年09月21日 | 食・レシピ

妹から貰ったバウムクーヘンがとても美味しくて、お店を聞いたらデパ地下で売っていました。
賞味期限は二日間。一番小さいサイズですが、二人で頑張って食べました。食べたいものが見つかるまで探す「女の執念」を夫は改めて知ったようです。
ドイツでは「モノづくり」の基準が国の機関で定められていて、特にバームクーヘンはベーキングパウダーを禁止した厳格な基準があるとのこと。一切の添加物を使わず焼き上げた本場ドイツの味だそうです。

この濃い黄色、しっとりとした口あたり、奥深いコク、口の中でとろける感触!デパ地下で手に入ることがわかりよかった!

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「第29回福岡アジア文化賞」授賞式

2018年09月20日 | 福岡アジア文化賞

授賞式がアクロスで6時30分に始まりました。秋篠宮殿下妃殿下のご臨席は例年どおりです。
賞の目的は、アジアの文化の保存と創造に活躍した人を顕彰し、それによりアジアの文化を認識し、育て、学び会いながら広く交流する基盤を作ることを目的としています。

◎大賞  ジャ・ジャンクー 中国/映画 (賞金500万円)

◎学術研究賞  末広昭 日本/経済学、研究地域(タイ) (賞金300万円)

◎芸術・文化賞  ティージャン・バーイ インド/音楽 (賞金300万円)


受賞者のスピーチとインタビューの中で、政府の機関でなく、アジアに目を向けた自治体がこの賞を設けていることの大切さに触れられました。

ジャ・ジャンクー氏は「映画監督とは人類の情報を伝える使者」として、日本の映画関係者とも交流しながら活躍されているようでした。

最後にティージャン・バーイさんのパンダワーニーのパフォーマンスがあり、朗々とした歌声とリズミカルで力強い民族楽器にインドの底力を見るようでした。

会場がアクロスだったので、家に帰り着いたのは9時。今日の夜はゆとりがありました。

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ジャ・ジャンクー監督(アジア文化賞大賞受賞者)

2018年09月19日 | 福岡アジア文化賞

キャナルシティでアジア賞の市民フォーラムが開催されました。
キャナルシティは外国人観光のメッカ、建物の色もエキゾチックです。開会前に夕食を済ませると、ちょうどウォーターショーが始まりました。

フォーラムでは、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13で、中国の映画監督ジャ・ジャンクー監督『山河ノスタルジア』が、まず上映されました。
映画の上映後、パネリストにジャ監督本人、行定監督や映画プロデューサー市山尚三氏を迎えての討論です。
現代中国の急激な変化の中で、渦に巻き込まれる人や取り残された人の苦悩と孤独と葛藤が赤裸々に映し出されます。友人、親子の人間関係の破綻、心の奥にかすかに残る故郷への思いなどが、現代の中国社会をしっかりとらえた景色の中でダイナミックに表現されています。いい映画でした。
さすがアジア文化賞大賞受賞者の作品です。賞金は福岡市が贈る500万円です。

終わったのが21時40分。バスを降りて歩きながら、いつものように「私たち不良シニア」と自虐ネタで帰り着いたのは10時40分でした。

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和・わ・ワ

2018年09月18日 | 食・レシピ

手っ取り早い料理、そして外食もどうしても洋に偏りがち。比率的にも6割・・・かな。
そこで今日はカレイの煮魚です。


和食は塩分が高くなりがちで気をつけないと。煮魚の醤油と味醂と水の割合がちょうどいいのを、クックパッドで見つけました。
二人分で水100cc、砂糖・酒・ミリン・醤油が各大さじ2、しょうが1片。

「じゃが芋とちくわの煮物」は花水木さんのブログの料理から。ありふれた材料なのに京料理みたいに美しく美味しそうだったのでさっそく作りましたが、私が作ると普通の煮物になってしまいました。でも味はバッチリ。

ジャガイモは必ず残す夫が「これならいい、美味しい」と食べました。びっくり!今までは私の作り方がだめだった・・・の?

ジャガイモを先に炒める、先にダシだけで煮る、というのがポイントのようです。

私の作る和食はどうしても全体に黒っぽくなってしまって点数が低い・・・。スマホの写真のせいもあるのかも。

このところスマホのアプリでのブログアップが多く、パソコンで見たら写真のぼやけ方が半端なくてちょっと恥ずかしい。でもこれが実に便利なので。

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前倒しの彼岸参り・・・その顛末

2018年09月17日 | くらし

お彼岸の日に行けなくなり前倒しの墓参りです。福岡市内を見下ろす絶景の公園墓地です.

道路の両脇に4000ほどの墓がびっしり。

墓の掃除とお参りを済ませたら休憩所ヘ。

コーヒーとお茶のサービスもあり、日本庭園を眺めながら送迎バスが出るまでゆっくりくつろぎます。

昼食を済ませて帰り着いたら、さぁ大変、リビングのエアコンのリモコンが作動しないのです。まずリモコンを調べて貰いこれはOK。となれば本体の故障です。修理するか新規購入か。使用が11年経過していること、一年前に修理した履歴があることを考慮して結局買い替えることにしました。20畳用はちと痛い・・・。

取り付けは最短2日後。猛暑日でなかったことが幸いでした。今年は冷蔵庫に続いてエアコンも。両方とも耐用年数を持ち出されると弱い・・・。機器類は私と同じ速度で歳をとっていました。

エアコンの購入手続きの間に、携帯会社はそのままでスマホの新機種と料金見直しについてのアドバイスがありました。

現在の5ギガを従量制、電話も従量制の30秒20円にすると、新機種で月額1500円の減額になることに心が揺れました。

家に帰って落ちついて検討してみると、今と同じ使い方なら安くなるのは500円。電話代は含まれておらず2年間はプラン変更はできないプランです。結構窮屈になり返って高くなる可能性も。メリットが感じられずキャンセルすることにしました。店頭ですぐ契約しないでよかったと思っています。「ひと呼吸置く」ことを学びました。

夕食は小麦粉の入らない「さらさらスープカレー」。鶏肉、カレー粉、コリアンダー、カルダモン、ターメリック、クミン、シナモン、しょうゆ、ウスターソース、ケチャップ、味噌、チキンスープの素、ハチミツ、ニンニク、しょうが、とあらゆる調味料を入れて味のバランスをとり深み出します。

後片付けがべとべとしなくてさらっと落ちるしヘルシーなのですが、これは夫の要望。カレーが大好きな私は小麦粉をしっかり焦がしたレストランのからーいカレーが大好きなんです。

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「納豆+味噌+砂糖」でスィーツ???

2018年09月15日 | 食・レシピ

お昼ご飯は、少し涼しくなったので「にゅうめん」にしました。親爺氏ブログでは納豆が入っていて「あり得な~い」と思いながらもずっと気になっていました。が、いざとなるとやっぱり「手」がすくんで、勇気もなくて。
ということで、別の器に納豆+味噌+砂糖のスイーツ仕立てに。これが美味しいのです。

九州では、関東ほど納豆を常食しません。買いはするけどなかなか手が出なくて、期限切れで結局は処分に。

この納豆の食べ方は母直伝で、混ぜているうちにお箸が回らないほど強い粘りが出ます。

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根気の「オニオングラタンスープ」

2018年09月14日 | 食・レシピ

フライパンでタマネギを薄切りにしてバターで炒めること弱火で40分。火の加減と時間がポイントです。これを更にスープの素を溶かしたお湯の中で煮詰めること10分。これが下の写真。

根気のいる作業ですが、涼しくなってくると、何が何でも食べたくなる一品です。40分炒めた玉葱の奥深さは極限の旨さかも。

またまた話題のサバ缶。「夫が喜んだ」という見出しのサバ缶レシピをスマホで発見!さっそく作りました。

今までトマト、キャベツ、玉葱、キノコ、ピーマンとあらゆる野菜を入れていましたが、シンプルにナスとトマトのみ。野菜から出る水分が少ないからか引き締まった味で、サバ缶の煮込みでは一番良かったかな・・・と。


こんな風に出来上がりました。ナスは、なす紺色を留めておくためにオイルで皮面を焼いたのち、サバとトマトを入れて煮込みます。火が通るまで蓋を取らないことがポイントだとか。

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家計簿アプリ

2018年09月13日 | くらし

今、「家計簿アプリ」で支出を簡単に保存しています。レシートをスマホでパシャ!費目を指定して保存。日付・店舗名まで読み取ります。レシートがない分は手動で入力。足りない費目は自分で追加作成します。


家計簿はひと月ごとに分けられ、費目ごとの内訳が円グラフで表示され一目瞭然。視覚的アピールは凄い!その内訳の詳細も見られて「エンゲル係数が高すぎ!」と反省のいい「道具」になり役にたっています。

もう一つ「買い物リスト」のアプリも使っています。店舗別にリストを作り、買い物しながら購入済みの商品を消していけばいいのです。

購入保存版としてプリンターインクやボタン電池などのナンバーも入れて重宝しています。「老い支度」の家電リストなども。

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最近肉料理が連続してドキッ。肉料理が簡単だからというわけにはいかないので、イワシすり身を買って、味噌ミルクスープにしました。東北フェアで食べてからのお気に入りです。

豚しゃぶはロース肉を控えめにして、大豆を足しました。生協の国産大豆のドライパックはひと味違います。そのままでも食べられるもっちり美味しいお豆さんです。

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新聞小説『ワカタケル』

2018年09月12日 | 歴史

このところスポーツ界の不祥事が続出していますが、テニス、サッカーと選手たちの活躍ぶりが明るいニュースです。

3日から日経で新しい連載小説が始まりました。池澤夏樹『ワカタケル』。雄略天皇の生涯が綴られるようです。

暴君であると同時に偉大な国家建設者という雄略天皇。5世紀の『宋書』の中の「武」は雄略天皇と見られており、日本の外側からみたワカタケルの展開も期待しています。


スパッとさわやかで、野太く、猛々しくもある文体は魅力的で、この時代にはこの文体しかない・・・とは私の独りよがりかな。挿絵も内容と文体にピッタリで毎朝が楽しみです。

この時代は資料が少ないために、更にロマンの広がりがありそうでわくわくします。
池澤夏樹の本は読んだことがありませんが、福永武彦の長男ということで気になっています。

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紅茶豚

2018年09月11日 | 食・レシピ

脂肪分が少なくさっぱりした紅茶豚。モモブロック肉400gはとても柔らかく仕上がりました。簡単に作れる割にはリッチな感じに見えます。
紅茶のティーバッグ2袋で弱火でコトコト煮ます。アク取りも。

つけ汁は、醤油大さじ4、みりん大さじ2、酢大さじ2、酒大さじ2を煮立てておきます。ゴマ油や豆板醤を少量加えることもあります。
ここに火が通った肉を漬け込み冷蔵庫へ。食べるときはつけ汁をかけてもいいし、今日はさっぱりマスタードだけで。

夕方ギリギリまで庭仕事をした後だったので、キュウリにかけた梅味噌の酸味がとても美味しかったです。1㎏の梅で作ったので,まだまだたっぷりあります。

翌日のスケジュールを考えて、昨日の夕食の後片付けをしながら作っておいたものです。

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帚木蓬生 『水神』上巻・下巻

2018年09月10日 | 本・新聞小説

久留米有馬藩のことを書いた本が素晴らしかったという友人から、帚木蓬生『水神』(上・下巻)を借りました。かなり読み進んだとき、昨秋の浮羽散策中に筑後川の堰から引かれた水路の美しさにひどく感銘を受けたことを思い出し、まさにその水路の話と結びついたのです。
(ちなみに帚木蓬生の名前は、源氏物語の「帚木」「蓬生」からとったものだそうで、この作品は新田次郎文学賞を受賞しています)

これはその「大石堰」を作る5人の庄屋と農民たちの必死の努力と苦悩を描いた小説です。単なる時代小説ではなく、普請奉行、郡奉行、庄屋は実在の人物で、何よりも「大石堰」が筑後川周辺の田畑を潤し豊かで美しい農村地帯になっている厳然たる事実があります。



舞台は生葉郡(朝倉)。滔々と流れる筑後川の傍にありながら台地ゆえにその恵みを受けることが出来ずに、10m下の川面に桶を投げ入れ、水を汲んで引き上げ、それを田畑に流し込む。それを一日中、一年中繰り返す苛酷な仕事を続けるしかありませんでした。

稲は半分も育たず、さらに天災が追い打ちをかけ、疫病が流行・・・。少ない低地にやっとできた米は年貢米に。百姓はわずかに残った畑の雑穀で糊口をしのぎ、ある時は松皮粉、刻んだ藁を臼で挽いた藁餅で飢えをしのぐ過酷な暮らし・・・。それでも年貢が減らされることはありません。

1663年、忍耐の限界に来た5人の庄屋は、幅70間もある筑後川に大堰を作り、水門から水路に水を引き込み田畑を潤し、民の心も潤すという壮大な計画を立ち上げ、藩に堰渠造成の嘆願書を出します。庄屋・助左衛門が数年がかりで調査した精緻な絵図面を添えて。

それが普請奉行・丹羽頼母の心を動かし、藩主の英断を促しました。ただし、費用はすべて5人の庄屋の負担、過失が生じた場合には命に代えるという血判を添えた重たい決意でした。この頃は藩の経済状態も決してよくはなかったのです。

下巻は、この計画に40人の庄屋の合意を得る苦労と苦悩、資金繰りの大変さ、大堰と水門工事、水路づくりの進捗状況が細かく描かれていて、当時の土木技術の素晴らしさに感心しました。

工事の始まりは1664年1月。川幅70間。そこに上流下流から集めたり山から運んだ石を竹の籠に詰めて沈める方法、また船に石を積んで船ごと沈める方法で堰を作っていきます。取り込んだ水を流す水路は幅2間、深さ1間。既存の溝を広げたり、新しく掘り進む作業は長さ7000間。これを冬場の1月から3月までの農閑期にやり遂げるというのが藩からの厳しい条件でした。
この気の遠くなるような大工事をわずか2か月間で完了したというそのエネルギーのすごさ、驚き以外の何物でもありません。

土木機械も緻密な計算法もない時代に、経験と勘、そして1万人を越える農民の労力。ひたすら水を求めてひとつになった心で成し遂げた大工事に心を打たれました。たっぷりと流れる水、水の音は農民にとって明るい未来への原動力となったのです。

庄屋や町人や百姓のくらし、食生活、風俗などの丁寧な記述も興味をひき、当時の日常生活のイメージがふくらみます。武家屋敷の畳の上の生活でなく、農民の衣食住には日本人の原風景として身につまされます。

為政者、町人の成功者を主人公にした本が多い中、これは地方の農村の土に生きる人間の目線で書かれた小説です。角張った漢字の多い歴史小説ではなく、作者の心が見える平易な文体と方言の会話が心を掴むのかも知れません。

気になるのは、先頃読んだ上杉鷹山の本に出てきた18世紀半ばの久留米に関する記事です。過酷な年貢の取り立てに反抗して大規模な百姓一揆があったことが記されていました。処刑者も出たようです。
この大堰の夢のような話から1世紀も後のことですが、土地が潤い収穫が増えても、検見の度に厳しくなる年貢の取り立てがあったのでしょうか......

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帚木蓬生について
1947年生まれ。東大仏文科卒業。TBS勤務。2年後に退職し、九州大学医学部を経て精神科医に。その傍らで執筆活動を続ける。2008年急性骨髄性白血病で半年入院後復帰。

吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、柴田錬三郎賞、小学館児童出版文化賞、日本医療小説大賞、歴史時代作家クラブ作品賞、吉川英治文学賞。

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