マドリッドからトレドに向かう途中の丘の上に、突如巨大な黒い牛が・・・! その視覚は遠い記憶を手繰り寄せて、思わず「あっ!」。
そう、14、5年前に見た映画『ハモン ハモン』の中の黒い牛です。 調べもせずに飛込んだ映画館、『ハモン ハモン』は、情熱の国らしい五角関係?がユーモアも交えて製作された超大人の映画でした。出口で、思わず「・・・」と左右を確かめてしまうほど。救い(?)だったのは、ベネチア映画祭銀獅子賞を受賞しており、スペインの風景の美しさが見事に出ていたことでした。
映画では、なだらかに続く広大な畑の美しさとカメラアングルのうまさに感動し、ストーリーにはもうビックリビックリ! 道路を走るハモン(ハム)の運搬車の向こうに見た、小高い丘の上の巨大な牛のシルエット。それはまるで大地を背景にしたデザイン画を見るようで、とても感動的でした。そのときは、看板だということも分からず、映画のための創作かなと思っていました。その記憶の黒い牛と、目の前の黒い牛とが完全に一致したのです。
今回のガイドさんの説明で、10数年ぶりにその黒い牛の謎が解けました。それはシェリー酒の製造元の看板で、最初はお腹の部分にロゴが入っていたそうです。しかし、交通法で道路脇の看板は、すべて撤去されることになったとか。しかし、この看板のユニークさからか、ロゴを消せば問題ない・・・ということで、「黒い牛」はそのまま残ったということです。さすがは寛容で、粋なスペインのことだと感心しました。
闘牛の国でもあるし、シンプルなシルエットのデザインは、芸術の国スペインにぴったりで、スペインの象徴みたいなものです。高速道路沿いに、何回か黒い牛を見つけて、一人悦に入っていました。
写真はaozoraさんのブログより許可を得てお借りしました。電柱と比較して、その巨大さが分かると思います。私が撮ったのは、牛が小さすぎましたから。