新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

『鳥獣戯画展』と関連企画『明恵礼讃』 於福岡市美術館

2022年10月06日 | 福岡市美術館
久しぶりに妹と美術館で待ち合わせ、いつものミュージアムランチのあとゆっくり観賞しました。『鳥獣戯画展』は数年前、九州国立博物館でも開催されました。

誰でも一度は見たことがある鳥獣戯画、心和むカエルやウサギたちの愉快な動き、その展覧会が今福岡市美術館で開催されています。
4巻からなる巻物は12~13世紀に描かれたもので、その軽妙洒脱な筆が現代にも通じるところにクスッと笑いがもれます。
国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術|公式サイト

国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術|公式サイト

国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術の公式サイト。「鳥獣戯画」の魅力を支える、動物モチーフと表現の簡潔さとユーモア、というテーマに沿って、日本美術を紹介します。

国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術|公式サイト

戯画の単純化された線と表情の「愛らしさ」と、今の若者がよく使う「かわいい」の感覚に共通するものを感じました。愛らしさやかわいさは、人間に必要なものそして幸せなものなのだと妙に納得しました。
風刺とユーモアが心を開放させてふっと笑いを誘うのでしょう。今も昔もその感覚を共有している安心感と素晴らしさを再確認しました。

若冲、盧雪、蕭白、応挙、雪村の中の「かわいらしさ」も展示されていました。以前読んだ西條奈加『ごんたくれ』の登場人物と絵が一挙公開?・・・と思うほど嬉しくなる展示でした。

今回の展覧会には福岡市美術館所蔵の作品がたくさん出品されており、収蔵の幅の広さと奥の深さに市民として福岡市美術館を誇らしく思ったものです。

関連企画として、古美術企画展示室で『明恵礼讃』が開催され、高山寺の茶室「遺香庵」の茶道具が公開されています。
遺香庵と茶道具を寄進した近代数寄者の明恵上人へ寄せた礼讃が見える形で並べられています。
茶道をしている妹は垂涎の茶器にことさら感激の様相を示していました。手のひらに収まる茶入れや棗、蓋置きなど、茶器には日本の精神文化が凝縮されているのを感じます。とてもいい企画展示でした。

高山寺は、明恵上人が後鳥羽上皇よりその寺域を賜り、名を高山寺として再興したそうです。現在「鎌倉殿の13人」で存在感のある後鳥羽上皇。ドラマの見えない部分で明恵上人は活躍中・・・ですね。






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「電力王 松永安左衛門の茶」福岡市美術館 (11月21日まで)

2021年10月19日 | 福岡市美術館
真夜中の反田恭平さんの名演奏の余韻に包まれながら、今日は妹と美術館へ。
お茶をしている妹が茶人「耳庵」の名前に飛び付いてきました。
「耳庵」とは戦前から戦後に活躍した実業家·松永安左衛門のことで、没後50年を記念した展覧会です。松永コレクションの中から120点が展示されました。

戦後、電気事業民営化の実現に努力し「電力の鬼」の異名を取るほどの激務のなかにも、茶人として茶道具を初め東洋美術のコレクションを築き上げました。
その松永コレクションは東京国立博物館と福岡市美術館に寄贈されています。

益田鈍翁、原三渓など、当時の実業家であり一流の茶人として活躍した人たちとの交流も興味をひくものでした。
当時のいくつかの茶会ごとのしつらえを再現するために、博物館や個人から、掛け軸、花入れ、茶碗、茶入れ、棗、水差し、茶杓など、茶道に携わる人には垂涎の名品が集められていいました。
茶道を嗜む妹は目がキラキラと輝いていたし、私は反田恭平さんの名演奏の余韻に包まれてテンションが上がり、とてもいい展覧会でした。

お昼は美術館内のレストランで。透明の仕切り板を通してマスクで話すのはとても疲れました。

ホテルニューオオタニ博多が経営するレストランの人気の松花堂弁当です。注文個数が少ないのでなかなかありつけなかったのが、コロナの影響でやっと。2750円ですが、松花堂弁当にしては品数が多くてやっと完食しました。注文してから30分かかったけど、丁寧な料理でやはりいいお味でした。

窓ガラスのテーブルから見た大濠公園。水辺を見ながらの食事はやはり落ち着きます。
総ガラス、高い天井、クリーンなレストランにはコロナを忘れてしまいそう。しかし、緊急事態宣言が解かれてはいるものの、皆さん宣言中と同じ心がけでした。



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「高畑勲展」福岡市美術館

2021年07月19日 | 福岡市美術館
18日が最終日の「高畑勲展」に何とか間に合いました。私たち年代には馴染みが少ないアニメーションの世界ですが、「アルプスの少女ハイジ」「母を訪ねて三千里」と言えば子供と一緒に見た懐かしいハイジの顔が浮かびます。
そう、それが宮崎駿、高畑勲、富野由悠季らの手になったことをごく最近知りました。
数年前に、やはり同美術館で「富野由悠季展」が開催されました。
ちょうど朝ドラ「なつぞら」が放映中で、東京では「高畑勲展」が、福岡では「富野由悠季展」が開催されており、全国的にアニメの制作現場に注目が集まった頃です。

その「高畑勲展」がやっと福岡にやって来たと言うわけです。原画、絵コンテ、アニメーターの絵などの資料を元に細かく説明されていました。

ハイジのヘアースタイルは何度かの変更を経てあのピンと跳ねたショートカットになったようで、やはりあのスタイルこそがハイジです。
このアニメは宮崎駿、小田部羊一、近藤善文らが絵コンテ・レイアウト・背景画を担い、高畑勲が演出しました。
絵コンテを描き起こし、それを元に優秀なアニメーターが清書するという共同作業。アニメーションの世界を現実のものとして感じるようになる演出とショットの構成を求めたそうです。

高畑勲は後に、デジタル技術を利用して手書きの線を生かした水彩画風の表現に挑みます。それが「かぐや姫の物語」だそうで鳥獣戯画風でした。
なかなか見られない内容の展覧会で、久しぶりの美術館を楽しみました。

つい最近、インカ・ショニバレCBEによる大型屋外彫刻作品«ウィンド・スカルプチャー(SG)Ⅱ»が設置されました。

草間彌生さんのカボチャはかなり以前から存在感を示しています。


正面玄関を出ると、日が傾いた大濠公園の池に出ました

福岡市のシンボル、美しい水辺です。

通りを歩くと、前日発表されたばかりの直木賞受賞、佐藤究「テスカトリポカ」の看板が母校の大濠高校の門前に立てかけられていました。おめでとうございます。



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「藤田嗣治と彼が愛した布たち」展 福岡市美術館

2020年11月18日 | 福岡市美術館
12月13日まで「藤田嗣治と彼が愛した布たち」展が福岡市美術館で開催されています。



藤田嗣治と言えば、独自に編み出した半光沢の滑らかな乳白色の絵肌が特徴です。
2009年に3月には、その乳白色を集めた「レオナール・フジタ」展が開催されています。しかし今度の展覧会はちょっと違いました。展覧会の切り口が実に新鮮でした。

藤田は普段から布や工芸品をこよなく愛し、パリで見つけた布の端切れやドレスのデザイン画を日本にいる妻に送ったり、果ては織物、裁縫までするという力の入れようでした。事実、裁縫をしている自画像や裁縫道具が細かく描かれた絵も展示されています。

このように布一般に深く関心を持っていた藤田は、背景に「ジュイ布」を描くのに特に力を入れていました。上の写真で、自画像の両サイドの薄いピンクグレーが「ジュイ布」です。
「ジュイ布」とは、田園風景の人物や植物など単色濃淡でプリントされたフランスの伝統生地のことで、フランス人の憧れの布でした。


《タピスリーの裸婦》の背景の布もジュイ布。細かい部分まできっちりと描かれたポピーと麦、布の折りじわ。日本画の繊細なタッチが見てとれます。
もともとジュイ布自体が人気の的でしたが、絵画の背景をここまで精密に繊細に実物どおりに描いていることが話題になり、藤田の人気向上のきっかけにもなりました。

当時、足元の4種類の布や背景のジュイ布を細かく描き込んだ絵画は、美しい裸体画の人気を更に盛り上げたようです。

妻と二人の生活の場だったパリのメゾン=アトリエ・フジタから届いた展示品の中には、自分で織った布で作った帽子や服、自分と妻用のマスク、半纏、浴衣など穏やかな生活を偲ぶ物もあります。
最後まで日本の工芸品を愛していたことに、捨ててきたはずの日本が心の奥には静かに横たわっていたのだと、ちょっと安心しました。

50年以上も前、藤田の亡くなった昭和43年に「藤田嗣治追悼展」が開催され、その時の図録を引っ張り出して見ました。やはり乳白色の肌の絵の称賛と解説が殆どでした。今回のような「布」を切り口にした画業の検証は初めてと言うことで、とても新鮮でした。

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妹からどうしても藤田嗣治展がみたいと言うことでLINEが入りました。「布」というテーマに心が引かれたようです。コロナ自粛で妹に会ったのは何と9か月ぶり。
入場者は密にならない程よい間隔で、ことさら神経を尖らす必要はありませんでした。
館内のニューオオタニのレストランは、空間が広いから安全な印象が強いのか、安心した表情の客でテーブルは埋まっていました。
全面ガラス張りの向こうは、大濠の水と緑の平和な小春日和が。コロナから解放されたひとときでした。
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「《 唐物肩衝茶入 銘「松永」》を五重の箱に収める 」・・・・Youtubeで配信されました

2020年05月09日 | 福岡市美術館
新型コロナ禍で休館している福岡市美術館の今を伝える記事です。
2月から展示されていた《 唐物肩衝茶入 銘 「松永」》は明時代のもの。「麒麟がくる」にも登場する松永久秀が所蔵していたことに由来する名物茶入です。
後藤学芸員の「茶道具を入れた箱を入れた箱を入れた箱を入れた箱を入れた箱」という楽しいタイトルの見事な展示でした。
普通は茶入と仕覆の展示が多いのですが、このときはマトリョーシカみたいにだんだん大きくなっていく箱も展示されました。その並べ方に新鮮な感動が湧きました。

茶道具を包む袋、歴代の所有者、鑑定家の書き付けなどを総称して「次第」というそうで、読み方は「しだい」。その「次第」丸ごとの展示でした。茶入れが動く度に箱が大きくなっていく・・・。小さな器を真ん中に大の大人が重々しく取り囲む姿が目に見えるようです。
古美術品が歴史人の間を動き回る・・・そんな歴史を背負っているところにロマンを感じます。

その展示品も休館のうちに展示変えとなり、その収め方がYoutubeで配信されました。美術館の裏側はなかなか見られないので興味深く見ました。この困難な時期に、学芸員さんたちがどうにかして美術館の思いを伝えたいという意欲が伝わってきます。

下記が、YouTubeの「 «唐物肩衝茶入 銘「松永」»を五重の箱に収める 」です。


一緒に福岡市美術館コレクションのハイライトもみてください。


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日経に載った!「九州派ってなんだ」

2020年05月06日 | 福岡市美術館
日曜版『The STYLE/Art』は見開き2ページ分が、まるごと「九州派ってなんだ(上)」でした。掲載の絵はすべて福岡市美術館収蔵品です。
日経本文より『前衛美術運動が華やかだった1960年代前後、福岡に「九州派」という異色の集団があった。反芸術を掲げ、公募展を拒否。アスファルトで描き、廃品を素材にし、過激なハプニングを繰り広げた。戦後の転換期の騒然とした地方都市で、一介の生活者でもあった若き画家たちを、何が突き動かしたのか』


数年前の福岡市美術館の展覧会でこれだけの絵が一堂に揃えば、黒々とした作品群に一瞬退いてしまいました。しかし何か力強いも、生命力みたいなものがぐいと体に入ってくるのです。
作家が活躍した時代は、炭鉱、労働争議、水俣病、60年安保・・・と戦後の転換期でした。作品には不安と何かを求めるエネルギーが見えます。新しい動きを作り出すべく「暴れ出す生活者」が九州派の主役です。
山口洋三学芸員が力を入れている「九州派」研究は美術界でも話題になりました。今回日経の全国版に取り上げられて市民としてとても嬉しく思います。
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「麒麟がくる」→松永久秀→茶道具→茶入「松永」→福岡市美術館コレクション室

2020年02月23日 | 福岡市美術館
「麒麟がくる」の吉田鋼太郎の松永久秀役がかっこいいですね!久秀は極悪人との評価もありますが、茶道具収集には素晴らし才能があったようです。茶入「九十九茄子」や「平蜘蛛の釜」の話は余りにも有名ですが、彼が収蔵していたその一つが福岡市美術館(1F松永記念館室)に展示されています。

《唐物肩付茶入 銘「松永」》(中国・明時代)です。
ただ茶入のみを展示するのでなく、長い年月の間、所蔵者が変わるごとに一回りずつ大きな立派な箱に入れられ、箱書きもなされ、茶道具が如何に大切に扱われ保存されてきたか、その変遷が一目瞭然です。粋な展示方法がとても新鮮に感じます。茶入がグーンと存在感を増し、押し出されて別物みたいに感じました。

福岡市美術館のコレクションは洋画・日本画・古美術と美術界でも評価が高く、古美術は1階のコレクション展示室に展示されます。
隣の展示室では「近世絵画名品展」で岩佐又兵衛の36歌仙絵も展示されています。入館料はこんなに盛りだくさんで200円です。
下記の四角い枠の中をクリックすると詳しく見られます。
🎵わかりやすいブログを見つけました。下記のブログには、その美しい茶入れの写真が載っています。
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「ギュスターヴ・モロー展」福岡市美術館

2019年11月06日 | 福岡市美術館

モローと聞けば、宙に浮く切られた首と装飾的な衣を身に纏い、鋭い視線で指差す女の絵を思い浮かべます。その有名な《出現》が今福岡に来ています。

パリのモロー美術館には数年前に訪れ、この《出現》も観ました。4階まで壁一面にびっしり展示された絵、部屋の真ん中にある美しい螺旋階段が印象的でした。
19世紀末は印象派が台頭してきた時期で物質主義的、科学主義的な傾向がありましたが、モローは「目に見えるものは信じない」と神話や聖書の世界を描き、東洋西洋の装飾を取り入れ幻想的神秘的な作品を産み出しました。
今回の展示の特徴は、習作を並べて本作に至るまでの過程が説明されて納得できました。
さすが日本での展覧会はキャプションが丁寧で見応えがあります。パリで見た似たような絵の数々がやっと脈絡を持って繋がりました。

パリのモロー美術館は、展示されている絵の影響もあるのでしょうか、マルモッタン美術館やジベルニーのモネの家に比べると息詰まる様な緊張感がありました。自画像の眼差しを見ても何か苦しさを感じてしまい落ち着きません。

2時間たっぷり見て、館内のホテルニューオータニのレストラン「プルヌス」で遅いランチをとりました。
大濠公園の水辺が見渡せて安らぐのか、2時でも空きがなく30分待ち。




近いところですが、秋の穏やかな日でお出かけ気分になりました。


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九州では「富野由悠季の世界」

2019年08月24日 | 福岡市美術館
東京では「高畑勲展」が開催され、九州では「富野由悠季の世界」が福岡市美術館で9月1日まで開催されており、このあと兵庫、島根、青森、富山、静岡に巡回します。
富野氏は当初、演出は観念的なもので「概念の展示」は不可能だと断られていたそうです。しかし上記の巡回予定の公立美術館の学芸員さんが富野氏の膨大な資料を調べて、これなら展覧会ができると確信し、説得し続けて、その熱意で実現にこぎつけたそうです。



私の年代にはピッタリこない展覧会ですが、息子が超合金のライディーンを持っていたのは記憶しています。
放送中の朝ドラ「なつぞら」の手間暇かけたアニメ製作の現場を思い起こしながら、まず企画・設定メモ、素晴らしい原画・膨大な量の絵コンテ・背景画・模型・映像などを見ていき、完成までの気の遠くなるような大変さを知ることができました。
演出家としての想像力、表現力、創造力がアニメを作り上げる、今やサブカルチャーとして、日本のアニメが世界を席巻しているのが納得できました。


観客は30代40代50代の男性が多く、ぐるっと見回しても、どうも私が突出して最高年齢・・・。
よくある洋画・日本画の展覧会の客層は平均年齢が上がり、女性同士の大きな私語に出会いますが、今日の客は全く私語無し。男性陣のマナーの良さにかえって驚きました。
アニメを理解しようと足を踏み入れたのですが、行ってよかったと思います。
ちなみに、この美術館では1991年に「手塚治虫展」が開催されました。この前年には東京国立近代美術館で開催され、国公立美術館のマンガ展として話題を集めました。

このようなアニメの世界で、製作に全力を尽くされていた京アニの亡くなられた方々を偲び、ご冥福をお祈りします。






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リニューアルオープン 福岡市美術館

2019年03月30日 | 福岡市美術館

福岡市美術館は2年半の改修期間を終え、春の華やかさの中で待望のリニューアルオープンです。目の前の大濠公園の美しい水辺に繋がっています。

ガラス張りを広くしてオープンな感じになった美術館は敷居が低くなり気軽に入れます。まさに市民の憩いの場、より親しみを持てるようになりました。



美術館と池がまさに一体化しています。


休館の間に貸し出されて各地の美術館を回った作品群は美術界でも高く評価されました。

ダリ「ポルト・リガトの聖母」、ウォーホル「エルビス」、シャガール「空飛ぶアトラージュ」、今話題沸騰のバスキア、ミロ。それに草間彌生さんのカボチャもでーんと!

コレクション展示室が明るく広くなり、近現代、古美術と自然な足の運びの中で見られるようになりました。作品と作品のゆとりのある間隔は重要です。学芸員さんの個性的なキャプションも親しみやすく、興味を引き出すように書かれています。

美術館の奥深く、こんなに素晴らしい作品が収蔵されていたのかと今更ながら驚きました。


吉田博は6枚の版画の色の違いで時の経過を表しています。何と「摺り」も自分で行い多才を発揮しています。所々に「カメラOK」の文字が貼られて嬉しいです。

秀吉が欲しがったという「博多文琳」。所有者の神屋宗湛が「日本の半分となら交換しましょう」といったとか。背景にある歴史のこういう逸話が楽しいのです。その向こうには江戸時代に日本人が描いた西欧画の屏風も見えます。
16000点のコレクションは福岡市の誇り。とにかく市民もビックリの充実したコレクション展です。

衝撃的だったのは特別企画展。英国を代表するアーティスト「インカ・ショニバレCBE:Flower Power」で、日本初個展です。
極彩色のアフリカンプリントをふんだんに使った立体的作品、花をモチーフにした作品、映像作品など強烈、新鮮、インパクトのある作品でした。
極彩色のアフリカンプリント。日本人に馴染みのない色は強烈ですが、心の奥ではこの色を求めているのです。

フラゴナール「ブランコ」の絵をアフリカンプリントで立体的に製作しているのにはビックリ。こちらが先だったのでは・・・と思ってしまうくらいです。ショニバレさんはきっと楽しい人なんだ・・・。

館内に新しくニューオオタニのレストランが入りました。


超人気で40分待ち。その間にコレクション展をひとつ回りました。ミュージアムランチです。


イチゴのムースはさすがホテルの味。美術館のレストランとして人気が出そう。

ランチをはさんで4時間半かかりましたが、二人とも時間の流れに気がつかないほど。それほど展示の中身が濃く、部屋から部屋へと足が自然に流れるように設計されていたということです。

美術館から出ると、残ったエネルギーで公園の五分咲きの桜を見て回り10000歩の記録になりました。
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福岡市美術館「モネ展」 あと9日間

2016年02月12日 | 福岡市美術館

福岡市美術館で開催中の「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」がいよいよ残り9日間になりました。まさか九州まであの《印象、日の出》が来るとは!

17年前初めて訪れたマルモッタン・モネ美術館。 娘との個人旅行で念願の《印象、日の出》を見て、あまりにその印象が強くほかの絵はさほど頭に残っていません。
今度の日本での展覧会は詳しい解説つきだから、現地で鑑賞する以上の楽しみもあります。私の好きな1870年代の絵は7点ほどでしたが、2010年台に白内障で10年間も苦しみながら、その時に描いたジベルニーの庭や池の絵が多数でした。
 

美術館は閉館日をも返上してのサービスぶりで、入場者は10万人を突破しました。
九州以外からの来館者も多く、中国語も飛び交います。モネの絵は馴染みやすいタイトルが多いからでしょうか、人気があります。


例によって「立ち止まらないでください」の放送が流れています。
印象派の絵はすぐそばで見るよりも、5mほど離れて見た方がくっきりと光輝いてみえます。
カメラのファインダーを覗いたときにピントがピタリと合ったときの感覚と同じです。左の《睡蓮》など特にそうです。


新しい発見だったのは《印象、日の出》の描かれた日時の調査がなされていたことです。米国の天文学者ドナルド・オルセン氏が、19世紀の写真や地図をもとにモネが描いた場所をホテルと特定し、太陽の位置や、潮の満ち干や、たなびく煙によって風の向きを推測して、気象データと照らし合わせて…、と気の遠くなるような調査の結果、「
1872年11月13日7時35分ごろ」とほぼ確定されたということでした。
私はこの絵はずっと「日の出」だと思って疑いもしませんでした。「日の出」か「日没」かの論争があっていたとはつゆ知りませんでした。しかし科学的な調査の結果をふまえて、この展示は《印象、日の出》と落ち着いたようです。


たまたま引き出しを整理していたら「ジベルニーの家の組み立て絵葉書」が出てきました。17年前にはジベルニーにまで足を延ばせなかったので、せめてもの記念にと買ったものです。さっそく組み立てると、4年前に訪れたジベルニーの家の記憶が鮮やかによみがえりました。

白いドレスのアリス、《ラ・ジャポネーズ》の着物を着た婦人、階段の上にはモネがキャンバスを広げています。ジャンもミシェルもいます。ルノワールやバジールもいるようです。

私が訪れた時はもっとツタに覆われていましたが、温かい壁の色、緑のよろい戸は同じ。
家の中に入ってみると、キッチンのフライパンの並べ方を見ただけでも妻アリスの几帳面さがしのばれました。ジベルニーの家は温かい家庭の象徴です。白内障を患いながらもモネは幸せだったと思います。

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「冬のおとなミュージアム」…3館共同企画展

2016年02月02日 | 福岡市美術館

今、<福岡市のミュージアム3館連携共同企画展×関連プログラム>として「秘密 ― かくす・のぞく・あばく」という面白い企画展が開催されています。

3館とは、福岡市美術館、福岡アジア美術館、福岡市博物館です。
  

それぞれの美術館で展示されている絵の中に謎が隠されており、それを解きながら写真右のアンサーシートのマスを埋めていきます。
最後に下段のマスに数列の文字を当てはめて文章を完成させ、「消えた少女」の居場所を突き止めるというミステリーな企画です。
若手の学芸員さんがたくさんの収蔵品の中から選りすぐりの作品や古美術品を選び出し、来館者に楽しく鑑賞してもらおうとフレッシュな頭脳で企画されたものです。
クイズにこだわらなくても、3館とも一押しの収蔵品が展示してあり、それだけでも素晴らしい展覧会です。収蔵品だけでこの企画ができるという事がまたすごいと思いました。

先日、福岡市美術館でアンサーシートを手にした瞬間に「これはチャレンジだ!」の気持ちがむくむくと湧いてきました!「のぞく」とか「あばく」とか「家政婦は見た」の心境ですo(^-^)o 

それで、今日、残る2館を回ってきました。結構難しくて会場を何度も行きつ戻りつ。こんな作業はもうずいぶんやっていません。ちょっと若返った感じで興奮しました。

帰宅して暗号を整理して少女の居場所を突き止めました!そのアンサーシートを受付に持っていけば、なんと正解者に記念品が出るとか! Getできるか???

そうそう、今福岡市美術館では「マルモッタン・マネ美術館展」が開催されてすでに6万人を突破しています。これと合わせてクイズに挑戦するのも楽しいですよ。

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茶碗の中の宇宙……曜変天目

2015年10月17日 | 福岡市美術館

世界にたった3点しか現存しないという曜変天目茶碗。焼かれたのは中国・南宋時代。900年前です。
なんとその3点すべてが国宝として日本にあるのです。そしてその中の1個が今、福岡市美術館で「藤田美術館の至宝」として展示されています。

          (福岡市美術館のチラシより)

この茶碗を所蔵しているのは藤田美術館です。東京・静嘉堂が所蔵してるさらに素晴らしい曜変天目茶碗をテレビで見たことがありますが、曜変を目のあたりにするのは初めてで、この日を待ちに待っていました。
以前、静嘉堂が曜変天目茶碗を短期間展示するという情報を得て、わざわざその為に上京した友人がいるほどに、この曜変天目は人の心を虜にするものです。

比較的小ぶりな茶碗ですが、覗き込むと漆黒の茶碗の中の宇宙に吸い込まれ、無数にきらめく星と、オーロラみたいな神秘的な青と、青に縁どられた斑紋の中に浮遊してしまいそうです。じっと見ていると涙が出そうになります。
その存在感ゆえに戦国、江戸の権力者の間を動き廻りながらも大切に保存されてきました。曜変は今の科学技術をもってしても再現できないものだそうです。

こればかりではありません。赤楽、黒楽、文琳茶入れ、水差し、巻物など国宝6点、重文25点、全124点が九州初公開です。
明治の初めに国外への散逸を恐れた藤田傳三郎が私財を投じて集めたという逸品の数々。その意志を引き継いだ二人のご子息がまた選りすぐりの目を持った目利き・・・という事で、藤田家親子2代3人の思想と生き方が偲ばれる素晴らしいコレクションです。

福岡市美術館広報誌「エスプラナード181号」に、学芸課長岩永悦子氏の興味深い解説が載っています。

『…曜変天目茶碗の青色は釉薬の固有の色でなく、オパールや玉虫の羽のように、光の干渉によって現れる構造色とよばれる色です。曜変の青がなんとも神秘的なのは、光源によって発色を変えるからでしょう。今、曜変天目茶碗は、新たな技術に遭遇しています。すなわち、LED(発色ダイオード)ライトとの出会いです。通常の照明の下では黙しがちに見える曜変の青が、LEDライトを当てると、わっと沸き立ち、さながら青い炎のように輝きます。……ぜひ21世紀の曜変天目茶碗を目撃しにきてください。
科学の進歩に瞠目しつつも、薄い灯かりのもとでほのかに輝く曜変の青を愛でていた、いにしえびとの眼力に、改めて尊敬の念をいだきます。1ミリにも満たない釉薬の厚みに封じ込められた宇宙に感動する心は、今も昔も変わりません。』


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今年の綿の実です。ずしりと重たい実としぼみかけた花。この緑の実の色が褐色化していくと、殻がはじけて中から真っ白い綿が出てくる夢を誘う植物です。

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「肉筆浮世絵の世界」・・・福岡市美術館

2015年09月16日 | 福岡市美術館

間もなく終わりますが、今肉筆の浮世絵展が開催されています。浮世絵というと多色刷り木版画の「錦絵」を目にすることが多いのですが、今回は筆で描いた肉筆の浮世絵、一点ものです。細部までひと筆ひと筆丹念に描き込んでいった絵師の力量に圧倒されます。

絶対に見たかったのが北斎の「酔余美人図」と「夏の朝」。これが前期と後期に分かれて展示されたので、2度も足を運ぶことになりましたが、170点にも及ぶ作品だったので2回でやっと満足のいく観方ができました。

前期に展示された「酔余美人図」―― 絵葉書からの写真(氏家コレクション蔵)


幅30センチ余りの小さな作品です。何ともなまめかしい姿態です。三味線箱の上の赤い包みは恋文か?とも言われています。飲み干して空になった盃。
この状況から、酔いに身を任せて三味線箱にもたれかかり物思いにふけるというところのようです。赤の使い方がこの場面を引き締めている気がします。


最も見たかった後期展示の「夏の朝」――― 絵葉書より(岡田美術館蔵)

長さが90センチ弱の細長の絵です。華やかな花魁の衣裳とは違って落ち着いた色の格子縞の着物、しっかり織り込まれた帯、四角く抜いた衣紋と着物の流れるような線の対比。後姿で見えない顔は鏡に映してその表情を見せるという心憎さ。構図も意匠も素晴らしいです。

キャプションには、吊り衣桁に掛けられた粋な縦縞の男の着物から、夫が起きる前に床を出て朝の化粧に余念がない姿と女心を描いたものだとか。

小道具への心配りも細やかです。
足元の鏡の蓋には金蒔絵がしてあり、その上に乗せた鉢には水が張られて朝顔が浮いています。その花も幾重にか重ねられているのです。歯磨き用の棒も見えます。

向うには足付きの水盤があり、水草の間に金魚が浮いています。まさに夏の朝です。

花魁でもなく武家の妻でもなく庶民の妻。心豊かな空気感と幸せな時間が伝わってきます。

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「黒田家の美術」展 福岡市美術館

2014年09月23日 | 福岡市美術館

「大河ドラマ軍師黒田官兵衛ドラマ きらめきの大名道具」と副題のあるきらびやかな展覧会が開催されています。9月28日で終了。
黒田家からの大量の寄贈品を収蔵している福岡市美術館ならではの展覧会です。こんな名品が今度いつ見られるかはわからないので、購入した図録『黒田家の美術」を読んでもう一度足を運ぶ予定です。

チラシにはセミナリオで学んだ日本人画家の「泰西風俗図屏風」、「竹取物語」、長政着用の「金襴軍袍」(長政・松坂桃李が来ているところをイメージして下さいo(^-^)o )、明の「百鳥図」などが載っています。




(写真は図録「黒田家の美術」よりお借りしました)

唐物茶入:銘「博多文琳」は興味深いエピソードを持っています。
博多豪商・茶人の紙屋宗湛が秀吉を茶会に招いた折に、秀吉はその茶入れが欲しくて欲しくて所望しますが、宗湛は「日本の半分となら交換しましょう」と返しました。何と粋な返答でしょう!博多商人の機知と心意気が感じられます。
この茶入れは、後に2代藩主黒田忠之により黄金2000両と知行500石で召上げとなり、以来黒田家の家宝となります 。



(写真は図録「黒田家の美術」よりお借りしました)

上は、その後日譚としての「文琳記」。小堀遠州が藩主忠之に当てた書状です。江戸城内で「博多文琳」を上覧した家光が大変気に入った様子だったことを伝えた手紙です。将軍のお目に留まればもう押しも押されぬ名物茶入れの烙印が押されたことです。
以後「博多文琳」は藩主が交代する時だけ取り出されるという黒田家の秘蔵の宝になったそうです。


(写真は図録「黒田家の美術」よりお借りしました)

「塩竃松島図屏風」8曲1双、185㎝×488㎝
名所絵屏風の大作としても、庶民の生活を知る風俗画としてもすぐれた作品です。とにかく群青と金と緑の美しさに感嘆のため息が・・・。

右隻には瑞巌寺、左隻に塩竃神社。描かれた船は198隻、人物は1900人とか。子供の遊びやいろいろなお店など庶民の日常生活が垣間見られ、はては船や橋の作りの細かいところまでが描き出されています。

展示されたのは黒田資料の中から100点のみでしたが、すべて胸をわくわくさせるような名品ばかりでした。
数代にわたる黒田藩主への徳川家からのお輿入れは、石高の高い黒田藩の力をかなり意識したものです。正妻を強制的に離縁させて徳川家の姫君を妻に送り込んで幕府の安泰を守る・・・。女性は「道具か!」と憤慨しますが、見方を変えれば女性は国を抑えるほどの力を持っているともとれます。

嫁入り道具の教養を示す巻物、超一流の職人の手になる道具類などを見ると、「婚姻」が政治的に如何に重たい意味を持つかが感じとれました。
100点すべて保存状態の良さに驚かされました。江戸時代は、もう戦のない「平和」な時代になったということでしょうか。

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