●波紋広がる“特区選定” ~独占入手 加計学園“新文書”~
NHK クローズアップ現代+ 2017年6月19日(月)
学校法人「加計学園」が計画している獣医学部の新設。地域を限定して大胆な規制緩和を行う国家戦略特区制度を活用し、52年ぶりに認められた。今回の選定について政府は「すべて適切に行われた」としているが、一方で「行政がゆがめられた」との声も上がっている。選定の過程で公平性や透明性は保たれていたのか?経済成長をめざす特区制度はどうあるべきか?独占入手の資料や証言などをもとに特区制度をめぐる問題の深層に迫る。
出演者 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)
独占入手・加計学園 “新文書”とは
学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関する新たな文書を入手しました。
文部科学省の追加調査で存在が確認された、加計学園の獣医学部新設をめぐる14の文書。NHKは今回それらとは別の新たな文書を入手しました。事業者が選定される前から政権幹部が加計学園の名前を出して指示していたと記されています。
文部科学相 現役職員
「これは安倍総理の関係する総理マターである。十分な議論がないままに結論まで行ってしまった。」
公平性、透明性の確保が求められている「国家戦略特区」の選定。
菅官房長官
「圧力が働いたり、行政がゆがめられたことは一切ない。」
選定は適切に進められていたのか。検証します。
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今回、私たちは、この時期に書かれたとされる新たな文書を入手しました。萩生田官房副長官が文部科学省の担当者に対して指示したとする内容をまとめたものです。「文科省だけが怖じ気づいている」「官邸は絶対やると言っている」などと記されています。NHKの取材に対し、文部科学省の複数の現役職員が、この文書は省内で共有されていたことを証言しています。
国家戦略特区では、特定の自治体や事業者にだけ規制を緩和することになるため、選定にあたっては公平性や透明性が極めて重要になります。加計学園の獣医学部新設をめぐるプロセスは、適切だったのでしょうか。
加計学園“新文書” 特区選定で何が?
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“安倍総理の留学時代のご学友である現理事長と安倍総理と食事をする仲になった。いざ総理が進めたときに『お友だち内閣ですね』と週刊誌などに書かれないように、中身をしっかりしたものにしないと総理に恥をかかせることになるから、ちゃんと学園として構想をしっかりしたものにするよう、私からは(理事長に)言っている。”
このメールの内容を共有していた、文部科学省の現役職員です。加計学園は獣医学部の新設で無視できない存在として省内で認識されるようになっていったといいます。
文部科学相 現役職員
「政治家が関係する案件を“マル政”案件と言ったりしますけれど、政治的に事が進められる可能性が高い案件という意識を持っていた職員は多いと思います。」
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この文書はNHKの取材で、文部科学省の少なくとも3つの部署のおよそ10人の職員が共有していたことが分かっています。この時期は、事業者が加計学園に決まる3か月前。まだ獣医学部の新設さえ決まっていないころでした。しかし、文書にはこのときすでに「加計学園」という名前が挙げられていました。そして、開学の時期まで区切り、文部科学省に早く進めるよう迫る内容が記述されていました。
“内閣府や総理補佐官と話した。総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた。工期は24か月でやる。今年11月には方針を決めたいとのことだった。”
“補佐官からは、農水省は了解しているのに文科省だけがおじけづいている。何が問題なのか、整理してよく話を聞いてほしいと言われた。官邸は絶対やると言っている。”
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加計学園“新文書” 政権への影響は?
この問題、今後の政権運営にはどんな影響がある?
原記者:少なからず影響はあると思います。安倍総理大臣は「安倍一強」ともいわれ、高い内閣支持率に支えられて、さまざまな政策を推進してきてるんですね。今日(19日)、安倍総理大臣がみずからの国会答弁にも言及しながら反省のことばを述べたのは、各種世論調査で、内閣支持率が急落していることに対する危機感の表れだと思います。
今週23日には東京都議会議員選挙も告示されますので、そうしたことへの影響を懸念する声も政府・与党内に出ているんです。内閣支持率が回復しなければ、政策の推進力、政権の勢いというものも影響が出ることが予想されますので、安倍総理大臣としては今後、いかに政権の浮揚を図っていくのか、これが課題になると思います。
一方、野党側は、今回の問題をめぐって、証人喚問や閉会中審査を求めています。このとき与党側は、世論の動向なども見極めながら今後の対応を慎重に検討していくものと見られます。
波紋広がる特区選定 専門家の見解は?
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