3月30日。
電子投票選挙の無効の高裁判決は、岐阜県選管が最高裁に上告したところです。ついては、可児市の市民の方から電子投票について意見があり、返信しました。ご本人の了解を得て、以下に紹介します。電子投票の問題は、個人メールのことでなく、全国の課題ですから。
> 今回の裁判の事例において問題は電子投票の是非についてのものではないと認識しています。不幸な事件ではありますが、今
>回の判決をふまえて、機器に関しては今後の改善の可能性がありますし、特例法の不備を補っていくことも考えられます。慎重さ
>が必要ですが、推進できるのではないかと考えています。
私(寺町)の意見を述べます。
事件のしばらく後、何かしたいと相談を受けて、「今回の選挙は無効か否か」を考えるために、まず、過去の選挙無効の判例を調べました。
①, 結局、選挙無効と確定した各判決には、それぞれ、個別の事由がありました。
他方で、それら判決の原点・共通点は、それぞれの個別の「選挙」において、有権者および候補者一人ずつの権利を守る、その裏返しとして、投票管理者らは法令や規則に適式に対応したか、それらにおいて明白な逸脱があると認定されれば、選挙無効になると理解されます。
明確なものとして、最高裁判所第1小法廷昭和51年9月30日判決/昭和51年(行ツ)第49号は、
<公選法二〇五条一項にいわゆる選挙無効の要件としての「選挙の規定に違反することがあるとき」とは、主として選挙管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することがあるとき又は直接かような明文の規定は存在しないが選挙の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく阻害されるときを指すものである(最高裁昭和二七年(オ)第六〇一号同年一二月四日第一小法廷判決・民集六巻一一号一一〇三頁、同昭和三一年(オ)第二六八号同年一〇月五日第二小法廷判決・裁判集民事二三号四一三頁参照)>
としています。 参考:そのとき調べた判例などはここ
②, いうまでもなく、今回の可児市の無効判決は、電子投票そのものを否定したものではありません。
③, しかし、他方で、今回の可児市のトラブルは、従来の「人力投票」におけるトラブルとは違うもの、つまり、システムトラブルは単に一票だけでなく多数の票を一気に無権利状態にする大きな可能性をはらんでいることを実証しました。
④, そこで、ご意見の「機器に関しては今後の改善の可能性があります」について、考えてみます。
確かに、一般論としては、今後の改善がされることは十二分に期待できます。
しかし、その実証試験の実験台に可児市民がなることを、どの程度の有権者が了解しているのでしょうか。
市長判断でいい、ではすまないと思います。こと「一票」に関することだから。
例えば、住民投票でOKが出れば、実験を、つまり、リスクを引き受けてもいいのでしょうね。
ただ、残念ながら、その確認はされていない。
そうであるなら、私は、実験の強行は許されない、と結論します。
⑤, 次に、ご意見の「 特例法の不備を補っていく」について、考えてみます。
システムトラブルは単に一票だけでなく多数の票を一気に無権利状態にする可能性をはらんでいるのですから、もし電子投票をどうしても実施するなら、「不備が補われてから」、とすべきです。
それがなされる前に電子投票を実施することは、前項と同様に、リスクを含めて可児市民が引き受けてもいい、そう確認された場合(になら許されるの)ではないでしょうか。
⑥, 結局、今のシステムや機器のレベル、法令の整備状況、職員のレベルなどを考えたら、私は、今は「人力投票」しかないと思います。
いかがでしょうか?
以上
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