毎日、1000件以上のアクセス、4000件以上の閲覧がある情報発信ブログ。花や有機農業・野菜作り、市民運動、行政訴訟など
てらまち・ねっと



 専制君主を目指すような安倍氏。巧妙に加計学園問題と絡めて「共謀罪」を通してしまった。情報操作も平気。ウソも平気。
 そんな印象がますます強くなる、この最近。

 昨日の法案強行採決の報道に続き、今日は、昨日今日の各社説の中から幾つかを記録しておく。
 見出しの強烈・明確さ順かな。

●<社説>「共謀罪」法成立 民主主義の破壊許さず/琉球 2017年6月16日
●社説 「共謀罪」法が成立/「1強」の数の横暴極まる/河北 6月16日
●「共謀罪」法案 監視すべきは1強政治だ/西日本 6/15

●(社説)権力の病弊 「共謀罪」市民が監視を/朝日 6月16日
●社説 「私」への侵入を恐れる 「共謀罪」法が成立/中日 6月16日
 
●社説 強引決着の「共謀罪」法案 参院の役割放棄に等しい/毎日 6月15日
●社説:「共謀罪」法案採決 懸念は残されたままだ/魁 6月15日

人気ブログランキング = 今、1位
人気ブログランキング参加中。気に入っていただけたら ↓1日1回クリックを↓
 ★携帯でも クリック可にしました →→ 携帯でまずここをクリックし、次に出てくる「リンク先に移動」をクリックして頂くだけで「10点」 ←←
 ★パソコンは こちらをクリックしてください →→←←このワン・クリックだけで10点
●<社説>「共謀罪」法成立 民主主義の破壊許さず
  琉球 2017年6月16日 06:01
 数の力を借りた議会制民主主義の破壊は許されない。

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法が参院本会議で成立した。自民、公明両党が参院法務委員会での審議を省略する「中間報告」と呼ばれる手続きで採決を強行し、与党と日本維新の会などの賛成多数で可決した。
 この法律は監視社会を招き、憲法が保障する「内心の自由」を侵害する。捜査機関の権限を大幅に拡大し、表現の自由、集会・結社の自由に重大な影響を及ぼす。

 衆院は十分な論議もなく法案を強行採決した。「良識の府」であるはずの参院も20時間足らずの審議で同様の暴挙を繰り返したことに強く抗議する。法案の成立は認められない。もはや国民に信を問うしかない。
 中間報告は国会法が定める手続きだが、共謀罪法は熟議が必要であり、一方的に質疑を打ち切るのは国会軽視である。学校法人「加計学園」問題の追及を避けるためだとしたら本末転倒だ。

 政府は共謀罪法の必要性をテロ対策強化と説明し、罪名を「テロ等準備罪」に変更した。テロ対策を掲げて世論の賛同を得ようとしたが、同法なくしては批准できないとする国際組織犯罪防止条約(TOC条約)は、テロ対策を目的としていない。
 TOC条約の「立法ガイド」を執筆した米国の大学教授は「条約はテロ対策が目的ではない」と明言している。政府が強調する根拠は崩れている。

 日本政府は共謀罪法を巡り、国連人権理事会のプライバシーの権利に関する特別報告者からも「プライバシーや表現の自由を制約する恐れがある」と指摘されている。だが、理事国である日本政府は国際社会の懸念に対して真剣に向き合っていない。
 共謀罪法は日本の刑法体系を大きく転換し、犯罪を計画した疑いがあれば捜査できるようになる。政府は当初「組織的犯罪集団」のみが対象であり一般人には関係がないと強調してきた。しかし参院で「組織的犯罪集団と関わりがある周辺者が処罰されることもあり得る」と答弁した。周辺者を入れれば一般人を含めて対象は拡大する。

 さらに人権団体、環境団体であっても当局の判断によって捜査の対象になると言い出した。辺野古新基地建設や原発再稼働、憲法改正に反対する市民団体などが日常的に監視される可能性がある。
 かつてナチス・ドイツは国会で全権委任法を成立させ、当時最も民主的と言われたワイマール憲法を葬った。戦前戦中に監視社会を招いた治安維持法も、議会制民主主義の下で成立した。

 共謀罪法は論議すればするほどほころびが出ていた。強行採決によって幕引きしたのは「言論の府」の責任放棄である。過去の過ちを繰り返した先にある独裁政治を許してはならない。

●社説 「共謀罪」法が成立/「1強」の数の横暴極まる
    河北 2017年06月16日
 「安倍1強」の強権政治が、如実に現れた結末と言えよう。数の横暴が頂点に達したという思いを強くする。
 自民、公明の与党はきのう、参院法務委員会の採決を省略するため「中間報告」という「奇策」までをも使って、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の会期内成立に突き進んだ。

 国会は法案の審議などを通じて、政府の暴走をチェックするのが責務である。中間報告は国会法で認められているとはいえ、審議の機会を事実上奪う「禁じ手」にほかならない。

 与党の参院議員は「再考の府」としての責任を放棄したに等しい。参院自らの存在を否定する「自殺行為」だ。「国会の歴史に大きな汚点を残した」(民進党)と非難の声が上がるのも当然だろう。
 なぜそんなに急ぐのか。安倍晋三首相の周辺でくすぶり続ける「疑惑」と無関係であるまい。
 安倍首相の親しい知人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の記録文書問題や、首相夫人との関係が取り沙汰された同「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題がクローズアップされてきた。

 当初は会期(18日まで)の小幅延長を検討していたとされるが、このまま延長すれば野党の追及にさらされるのは明らかだ。東京都議選(7月2日投開票)への影響も考えて、早期に幕を引きたかったのではないか。「疑惑封じ」と指摘されても仕方があるまい。
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案は過去に3度廃案になった経緯があり、野党は「内心に踏み込み、監視社会につながる」と強く批判してきた。

 にもかかわらず、委員会での審議時間は衆院で約30時間、参院では約18時間。到底審議が尽くされたとはいえず、しかも「生煮え」だった。
 一般人が捜査の対象となるのか、組織的犯罪集団の定義とは何か、どうやって準備行為を見極めるのか-。
 国会審議では、こうした根本的な疑問に対する政府の答弁は一貫性を欠き、審議すればするほど、曖昧で不完全な法の実態が浮かび上がった。

 論議が深まらなかった最大の理由は、答弁が定まらない金田勝年法相の迷走ぶりだ。
 同じ答弁を繰り返したり、追及されると立ち往生して事務方に助け舟を求めたりして、「時間の浪費」と非難された。安倍首相の任命責任が問われよう。
 この法律で日本の刑事法の原則が変わる。国民の権利を脅かす疑念が残されたまま、運用が捜査機関に委ねられることに不安は拭えない。
 歴代の自民党政権には野党の異なる声にも耳を傾ける謙虚さがあったが、安倍政権の体質は全く違う。
 首相が執念を見せる憲法改正を展望する時、その強引な手法に懸念は募る一方だ。

●「共謀罪」法案 監視すべきは1強政治だ
     西日本 2017/06/15
 国家権力には縛りが必要です。国民主権をうたった憲法の下で、権力の乱用や行き過ぎがないよう国民が国家の動きを監視していく-。そうした立憲主義の基本理念に照らして、この法案はいわば正反対の性格を帯びています。

 国家が絶えず国民を監視し、不穏な動きがあれば計画段階であっても処罰する。そのために従来以上の権限を国家に付与する-。

 政府と与党が今国会で成立を図ろうとしている組織犯罪処罰法改正案のことです。いわゆる「共謀罪」の趣旨を盛り込むことが、いかに危うさをはらんでいるか。私たちは改めて法案に反対する立場を明確にしたい、と思います。

 ●「詭弁」は通らない
 共謀罪を巡っては、現行の法体系との矛盾や捜査上の懸念など刑事司法上の問題点が数多く指摘されています。それらに加え、目を凝らすべきことがあります。

 そもそも、なぜ新たな立法が必要なのか。政府は、テロを防ぐには「国際組織犯罪防止条約」の締結を急ぎ、3年後の東京五輪に備えなければならない。条約の締結には重大犯罪を計画・準備段階で取り締まる法整備が義務付けられている-と主張します。

 これは「詭弁(きべん)」ではないか。この条約が国連で採択されたのは2000年で米中枢同時テロより前のことです。しかもテロ対策を主眼とした内容ではありません。

 マフィアなどによる組織犯罪、それも金銭的、物質的な利益を得る犯罪への対処が目的とされています。テロ対策では、ハイジャックの防止、原子力施設の防護、爆薬の製造・移動の禁止などに関する条約が別に存在します。法学者らの間では、現行の法体系のままでも国際組織犯罪防止条約の締結は可能と指摘する声もあります。

 日本には現に組織犯罪を取り締まる法律があり、また刑法は殺人などの予備罪や準備罪も規定しているからです。そこに屋上屋を架す必要があるのか。国会では、十分な審議が行われていません。

 詰まるところ、安倍晋三政権はテロ防止や五輪対策に乗じて、国家による監視機能を強化しようとしているのではないか-。そんな疑念が拭えないのです。

 ●謙虚さ失った政権
 政府は、共謀罪を「テロ等準備罪」という名称でくるみ、「対象はあくまで組織的犯罪集団であり一般市民を取り締まるわけではない」「摘発は準備行為があった場合に限る」と説明しています。

 もっともらしく聞こえますが、実相は曖昧です。何をもって犯罪集団とみなすか、犯罪の準備行為とは何か。法案はテロとは無関係と思える犯罪にも網を掛け、摘発の可否は事実上捜査機関の裁量に委ねる内容になっています。

 通常、自ら犯罪集団を名乗る組織は存在しません。故に捜査機関はさまざまな団体や人物に狙いを定め、内偵を行うことになります。そこでは盗聴、盗撮、スパイ行為、密告などが横行しないか。戦前の治安維持法の過ちを想起すべきだ、という指摘もあります。

 現行法の下でも、捜査の行き過ぎや見込み捜査による冤罪(えんざい)事件などが後を絶ちません。そうした中で、警察権力が一段と幅を利かす「監視社会」を許していいのか。

 憲法が保障する「思想信条の自由」や「結社の自由」などが脅かされる、として市民運動などに関わる人々から不安の声が上がるのは当然ともいえます。

 無論、テロ対策そのものは重要です。不審者の入国や銃器類の流入を防ぐ水際対策をはじめ、日本がテロの標的とならないよう国際社会と誠実に向き合う外交も求められます。テロの背景にある貧困や格差の解消に向け、日本が果たせる役割は何か、国際貢献の道を探ることも期待されています。

 今国会では、気になる場面が目立ちました。閣僚らの相次ぐ失言はもちろん、首相の立場に関わる疑惑が生じても、安倍政権は今の国政を正当化し、批判の声を封じ込めようとする。いわば、謙虚さを欠いた「1強政治」です。

 長期政権のおごりなのか。特定秘密保護法や安全保障関連法などを含め、異論や危うさを抱えた施策が次々にまかり通る国政を看過するわけにはいきません。監視すべきは国民ではなく、国家権力です。そして、私たちメディアがその役割を背負っていることも改めて肝に銘じたい、と考えます。

●(社説)権力の病弊 「共謀罪」市民が監視を
      朝日 2017年6月16日 05時00分
 「共謀罪」法が成立した。

 委員会での審議・採決を飛ばして本会議でいきなり決着させるという、国会の歴史に重大な汚点を残しての制定である。

 捜査や刑事裁判にかかわる法案はしばしば深刻な対立を引きおこす。「治安の維持、安全の確保」という要請と、「市民の自由や権利、プライバシーの擁護」という要請とが、真っ向から衝突するからだ。

 二つの価値をどう両立させ、バランスをどこに求めるか。

 その際大切なのは、見解の異なる人の話も聞き、事実に即して意見を交わし、合意形成をめざす姿勢だ。どの法律もそうだが、とりわけ刑事立法の場合、独善と強権からは多くの理解を得られるものは生まれない。

 その観点からふり返った時、共謀罪法案で見せた政府の姿勢はあまりにも問題が多かった。277もの犯罪について、実行されなくても計画段階から処罰できるようにするという、刑事法の原則の転換につながる法案であるにもかかわらずだ。

 マフィアなどによる金銭目的の国際犯罪の防止をめざす条約に加わるための立法なのに、政府はテロ対策に必要だと訴え、首相は「この法案がなければ五輪は開けない」とまで述べた。まやかしを指摘されても態度を変えることはなかった。

 処罰対象になるのは「組織的犯罪集団」に限られると言っていたのに、最終盤になって「周辺の者」も加わった。条約加盟国の法整備状況について調査を求められても、外務省は詳しい説明を拒み、警察庁は市民活動の監視は「正当な業務」と開き直った。これに金田法相のお粗末な答弁が重なった。

 「独善と強権」を後押ししたのが自民、公明の与党だ。

 政治家同士の議論を活発にしようという国会の合意を踏みにじり、官僚を政府参考人として委員会に出席させることを数の力で決めた。審議の中身を論じずに時間だけを数え、最後に仕掛けたのが本会議での直接採決という禁じ手だった。国民は最後まで置き去りにされた。

 権力の乱用が懸念される共謀罪法案が、むき出しの権力の行使によって成立したことは、この国に大きな傷を残した。

 きょうからただちに息苦しい毎日に転換するわけではない。だが、謙抑を欠き、「何でもあり」の政権が産み落としたこの法律は、市民の自由と権利を蚕食する危険をはらむ。

 日本を監視社会にしない。そのためには、市民の側が法の運用をしっかり監視し、異議を唱え続けなければならない。

●社説 「私」への侵入を恐れる 「共謀罪」法が成立
        中日 2017年6月16日
 「共謀罪」が与党の数の力で成立した。日本の刑事法の原則が覆る。まるで人の心の中を取り締まるようだ。「私」の領域への「公」の侵入を恐れる。

 心の中で犯罪を考える-。これは倫理的にはよくない。不道徳である。でも何を考えても自由である。大金を盗んでやりたい。殴ってやりたい-。

 もちろん空想の世界で殺人犯であろうと大泥棒であろうと、罪に問われることはありえない。それは誰がどんな空想をしているか、わからないから。空想を他人に話しても、犯罪行為が存在しないから処罰するのは不可能である。

犯罪の「行為」がないと

 心の中で犯罪を考えただけでは処罰されないのは、根本的な人権である「思想・良心の自由」からもいえる。何といっても行為が必要であり、そこには罪を犯す意思が潜んでいなければならない。刑法三八条にはこう定めている。

 <罪を犯す意思がない行為は、罰しない>

 そして、刑罰法規では犯罪となる内容や、その刑罰も明示しておかねばならない。刑事法のルールである。では、どんな「行為」まで含むのであろうか。

 例えばこんなケースがある。暴力団の組長が「目配せ」をした。組員はそれが「拳銃を持て」というサインだとわかった。同じ目の動きでも「まばたき」はたんなる生理現象にすぎないが、「目配せ」は「拳銃を持て」という意思の伝達行為である。

 目の動きが「行為」にあたるわけだ。実際にあった事件で最高裁でも有罪になっている。「黙示の共謀」とも呼ばれている。ただ、この場合は拳銃所持という「既遂」の犯罪行為である。

 そもそも日本では「既遂」が基本で「未遂」は例外。犯罪の着手前にあたる「予備」はさらに例外になる。もっと前段階の「共謀」は例外中の例外である。

市民活動が萎縮する

 だから「共謀罪」は刑事法の原則を変えるのだ。

 「共謀(計画)」と「準備行為」で逮捕できるということは、何の事件も起きていないという意味である。つまり「既遂」にあたる行為がないのだ。今までの事件のイメージはまるで変わる。

 金田勝年法相は「保安林でキノコを採ったらテロ組織の資金に想定される」との趣旨を述べた。キノコ採りは盗みと同時に共謀罪の準備行為となりうる。こんな共謀罪の対象犯罪は実に二百七十七もある。全国の警察が共謀罪を武器にして誰かを、どの団体かをマークして捜査をし始めると、果たしてブレーキは利くのだろうか。暴走し始めないだろうか。

 身に覚えのないことで警察に呼ばれたり、家宅捜索を受けたり、事情聴取を受けたり…。そのような不審な出来事が起きはしないだろうか。冤罪(えんざい)が起きはしないだろうか。そんな社会になってしまわないか。それを危ぶむ。何しろ犯罪の実行行為がないのだから…。

 準備行為の判断基準については、金田法相はこうも述べた。

 「花見であればビールや弁当を持っているのに対し、(犯行場所の)下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳などを持っているという外形的事情がありうる」

 スマートフォンの機能には地図もカメラのズームもメモ帳もある。つまりは取り調べで「内心の自由」に踏み込むしかないのだ。警察の恣意(しい)的判断がいくらでも入り込むということだ。

 だから、反政府活動も判断次第でテロの準備行為とみなされる余地が出てくる。市民活動の萎縮を招くだろう。こんな法律を強引に成立させたのだ。廃止を求めるが、乱用をチェックするために運用状況を政府・警察は逐一、国民に報告すべきである。

 ロシアに亡命中の米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン氏が共同通信と会見し、米国家安全保障局(NSA)が極秘の情報監視システムを日本側に供与していたと証言した。これは日本政府が個人のメールや通話などの大量監視を可能にする状態にあることを指摘するものだ。「共謀罪」についても「個人情報の大規模収集を公認することになる」と警鐘を鳴らした。「日本にこれまで存在していなかった監視文化が日常のものになる」とも。

 大量監視の始まりなら、憲法の保障する通信の秘密の壁は打ち破られ、「私」の領域に「公」が侵入してくることを意味する。

異変は気づかぬうちに?

 そうなると、変化が起きる。プライバシーを握られた「私」は、「公」の支配を受ける関係になるのである。監視社会とは国家による国民支配の方法なのだ。おそらく国民には日常生活に異変は感じられないかもしれない。だが気付かぬうちに、個人の自由は着実に侵食されていく恐れはある。




●社説 強引決着の「共謀罪」法案 参院の役割放棄に等しい
      毎日 2017年6月15日 朝刊

 後半国会の焦点である「共謀罪」法案が成立する運びとなった。与党が参院法務委員会での採決を省略し、本会議で可決するという強硬手段を選んだためだ。

 多くの欠陥を抱える法案を是正することなく、決着を急ごうとする与党の強引さに驚く。

 「共謀罪」法案は準備・計画段階でも犯罪の処罰を可能とする。刑事法の体系を大きく変える法案だ。

 政府は国際組織犯罪防止条約の締結に必要だと説明してきた。

 だが、一般人が警察の捜査対象となり、監視社会に道を開く懸念を衆院段階では払拭(ふっしょく)できなかった。

 だからこそ、参院では対象犯罪を大幅に絞り込むなど法案を抜本修正することで「再考の府」の責任を果たすよう、私たちは求めてきた。

 にもかかわらず、参院での法案審議で、政府は不安を解消するどころか、逆に広げた。

 政府は衆院の審議で、法案が適用される「組織的犯罪集団」について「一般人は対象にならない」と説明してきた。ところが、金田勝年法相は集団の構成員でなくても関係がある「周辺者」であれば処罰され得ると新たに答弁した。一般人との線引きをあいまいにする見解である。

 安倍晋三首相は参院審議にあたり「できる限り分かりやすい説明をこころがけたい」と国民理解を強調していた。その約束はどうしたのか。

 しかも与党は、法案を修正するどころか委員会で採決すらせず、委員長の「中間報告」で済ますという異例の展開となった。

 参院法務委員会は公明党議員が委員長を務める。与党が委員会で採決を強行しなかったのは、公明党が重視する東京都議選の告示を来週に控えての配慮とみられている。だとすれば、ご都合主義も極まれりだ。

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題も、与党の対応に影響したとみられている。

 文部科学省は内部文書の再調査を進めており、結果が公表されれば野党の攻撃が激化する可能性がある。都議選を控え「加計隠し」のため国会の幕引きを急いだのではないか。

 与党が今国会で成立を目指すのであれば、会期を大幅延長して議論を尽くすべきだった。こんな決着の仕方は、参院の役割放棄に等しい。

●社説:「共謀罪」法案採決 懸念は残されたままだ
    魁 2017年6月15日
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、野党が提出した金田勝年法相の問責決議案が、与党などの反対により否決された。与党は、問責案提出により参院法務委員会の審議は打ち切られたとみなし、法務委での採決を省略する「中間報告」という異例の手法で参院本会議で採決する。

 なぜそれほど、採決を急ぐ必要があるのか。それも数の力で押し切るという乱暴さだ。改正案は、内心の自由を脅かしかねないなどとして3度廃案になった共謀罪法案の構成要件を変えて提出されたものだ。野党は「犯罪を計画しただけで処罰されるという本質は変わっていない」と批判しており、国民の不安が解消されたとは言えない状況だ。禍根を残さぬよう徹底的な審議が求められていたはずだ。

 安倍政権下では一昨年の安全保障関連法案、昨年の環太平洋連携協定(TPP)承認案、統合型リゾート施設整備推進法(カジノ法)案など世論を二分する法案で採決が強行され、次々と成立。慎重審議を求める国民の声は無視され続けたままだ。

 異論に耳を傾けず、成立ありきで突き進む政府、与党の国会運営はあまりに横暴だ。そこには、合意形成といった民主的な手続きや価値観を軽視する姿勢が露骨に表れている。

 共同通信社が5月下旬に行った全国世論調査では、組織犯罪処罰法改正案に賛成の人は39・9%、反対が41・4%と拮抗(きっこう)している。ただし、「今国会中に成立させる必要はない」との回答は56・1%に上り、「成立させるべきだ」の31・0%を大きく上回った。改正案に慎重な国民の意識が浮かび上がる。

 さらに「政府の説明が十分だと思わない」は8割近くに達している。改正案に対する国民の理解は進んでおらず、その原因の多くが法案提出責任者の金田法相にあるのは明らかだ。

 答弁内容がその日のうちに変わったり、官僚の答弁をそっくり引用したりと、金田氏の説明姿勢には首をかしげざるを得ない。犯罪の構成要件となる下見などの「準備行為」について、「花見ならビールや弁当を持っているが、下見なら地図や双眼鏡、メモ帳を持っている」と外見で見分けられると主張。「バードウオッチングはどうなる」と突っ込まれる場面があった。

 また、捜査権乱用の懸念を払拭(ふっしょく)しようとするあまり、「一般人はテロ等準備罪の捜査対象にならない」と明言したが、法務副大臣が一時「一般の人が対象にならないということはない」と説明するなど政府側の答弁が食い違うこともあった。

 答弁の不安定さの背景として、改正案そのものの不備や欠陥も指摘されている。組織的犯罪集団の定義が曖昧で、市民団体などに対する監視が強まりかねないといった懸念は解消されていない。数々の疑問を残したままの採決強行は許されない。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )