●村井氏リード保つ 宮城県知事選・本社終盤情勢調査
2009年10月20日火曜日
任期満了に伴う宮城県知事選(25日投票)で、河北新報社は17~19日の3日間、電話による世論調査を実施し、本社取材網の分析を加えて情勢を探った。無所属現職で再選を目指す村井嘉浩氏(49)がリードを保ち、ともに無所属新人で、元国連食糧農業機関(FAO)戦略企画部長の遠藤保雄氏(62)=民主・社民・国民新推薦=、宮城県民医連事務局長の天下みゆき氏(53)=共産推薦=は伸び悩んでいる。調査時点で投票する候補を決めていないのは2割強だった。
村井氏は自民、公明両党の支持層のそれぞれ9割超を固めた。遠藤氏を推薦した民主党の支持層の6割弱に浸透。社民党支持層の5割、共産党支持層の2割強にも食い込み、強固な基盤を形成している。無党派層も7割弱を引き付ける。
各年代に満遍なく支持を広げ、市部、郡部ともに強みを見せている。職業別では農林漁業、事務・技術職、主婦の支持が他候補を圧倒している。
遠藤氏は、全面支援を受ける民主党の支持層は3割強しかまとめ切れていない。社民党支持層への浸透も2割強にとどまっている。無党派層にも浸透していない。
年代別で支持が比較的高いのは、70歳以上男性の3割超、60代男性の3割弱。自由業、農林漁業の支持が弱い。仙台市太白区、気仙沼・本吉地方で2割前後の支持があるが広がりに欠ける。
天下氏は、推薦を受ける共産党支持層への浸透が5割にとどまる。50代の男女に1割超の支持があるが、ほかの年代には食い込めていない。自由業と学生の支持は遠藤氏と並んでいる。太白区、塩釜市など県央沿岸部では一定の支持がある。
「大いに関心がある」「ある程度関心がある」と答えたのは計82.0%で前回知事選(2005年)の同時期の調査を14.6%上回った。
政党支持率は民主党が32.5%でトップ。次いで自民党23.5%、共産党3.2%、公明党2.4%、社民党1.6%、みんなの党1.4%、国民新党0.4%、その他の政党・政治団体1.6%の順。支持政党なしは31.3%、無回答などが2.1%だった。
◇宮城県知事選立候補者
遠藤 保雄 62 元FAO部長 無新(民・社・国推)
村井 嘉浩 49 知事 無現
天下みゆき 53 県民医連役員 無新(共推)
●地域課題、足りぬ論戦 宮城県知事選
2009年10月21日水 河北新報
任期満了に伴う宮城県知事選(25日投票)は、最終盤の戦いに入った。いずれも無所属で、新人の元国連食糧農業機関(FAO)戦略企画部長の遠藤保雄氏(62)=民主・社民・国民新推薦=、再選を目指す現職の村井嘉浩氏(49)、新人の県民医連事務局長の天下みゆき氏(53)=共産推薦=の3陣営は県内を一巡。北へ南へ、沿岸部へ山間部へと奔走して舌戦を展開するが、論戦テーマに挙がらない地域課題も多い。3候補の各地域での戦いぶりを見た。
<産業の活性化>
トヨタ自動車の生産子会社、セントラル自動車(神奈川県相模原市)の工場進出に沸く大衡村。村井氏は13日午前、役場前で演説し、村民や工業団地の従業員を前に1期4年の実績を強調した。
「トップセールスは素晴らしい。無限の経済効果をもたらしている」と持ち上げた跡部昌洋村長。村井氏は「大衡の発展なくして宮城の発展はない。若い人の働く場として1万人の雇用が生まれる」と力を込めた。
企業誘致主導で、雇用や地域活力の創出を目指す村井氏に対し、遠藤、天下両氏は地場産業の育成を重視した政策を掲げて対抗する。
遠藤候補は同じ日の夜、田んぼが広がる栗原市若柳の研修センターで個人演説会を開き、「外部から企業を引っ張るだけでは駄目だ。内需主導型の政策が求められる」と路線転換を掲げた。
農業や食糧問題に携わった経歴をアピール。全面支援する民主党県連の岡崎トミ子代表(参院議員)も「企業誘致は一時的に雇用が生まれるだけ。農業や中小企業などの宝を大事に地域を元気づける」と強調した。
<暮らしの充実>
「自動車産業には湯水のように税金を投入するが医療、福祉、教育は全国最低水準だ」。天下氏は16日夜、地元・塩釜市の集会所であった個人演説会で、県政の厳しい現実を訴えた。
特別養護老人ホームの増床や乳幼児医療費の助成拡大、救急医療態勢の充実など「暮らし中心の県政へ」と刷新を叫ぶ。
生活重視の姿勢を前面に出すのは遠藤氏も同じ。14日夜、気仙沼中央公民館の個人演説会で事業化が進まない大島架橋の実現を約束し、「島民は裏切られ続けた。冷たい県政でなく、生活者に温かい県政を実行する」と声をからした。
現職批判を展開する遠藤、天下氏に対し、村井氏は「富県戦略は手段であって目的ではない」と応戦する。
「税収を増やし、福祉や環境、教育の各種施策を実現する。決してないがしろにはしない」(13日夕、柴田町での街頭演説)などと幅広い政策展開を約束する。
<置き去り懸念>
3陣営は、各地の街頭演説や個人演説会でマニフェスト(公約集)などを刷り込んだチラシを配布。個別政策の浸透に躍起だが、地域が直面する難題の打開策について候補者が説明に時間を割く場面はわずかだ。
登米市のホテルで、ある候補の演説を聞いた市議は「具体性に欠けたスローガンと感じた。米価下落、後継者難、郡部衰退という負の連鎖を断ち切る道筋を聞きたかった」と不満をのぞかせた。
15日に2候補が駆け付けた気仙沼市魚市場。演説に耳を傾けたという仲買人の男性(42)は「マグロ減船で地域経済はどん底だ。仙台から離れたこの港をどう立て直すか、公約は何もなかった」と手厳しい。
前回の知事選(2005年)では、選挙戦終盤に合同個人演説会が開かれたが、今回は見送られた。
東北電力女川原発3号機(女川町、石巻市)でのプルサーマル計画、地方分権の針路など、国策とのはざまで揺れる県政課題が語られる機会はほとんどなく、物足りない論戦となっている。
◇宮城県知事選立候補者
遠藤 保雄 62 元FAO部長 無新(民・社・国推)
村井 嘉浩 49 知事 無現
天下みゆき 53 県民医連役員 無新(共推) |