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スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

ヴィクトリアマイル&第三部定理九備考

2024-05-12 19:24:56 | 中央競馬
 第19回ヴィクトリアマイル
 ナミュールとルージュリナージュは発馬が悪く1馬身の不利。コンクシェルが逃げて2番手にフィールシンパシーで3番手にスタニングローズ。2馬身差でフィアスプライド。5番手にサウンドビバーチェ。6番手はウンブライルとマスクトディーヴァ。8番手にライラックとドゥアイズ。2馬身差でキタウイングとハーパーとテンハッピーローズ。3馬身差でモリアーナ。14番手がナミュールで2馬身差の最後尾にルージュリナージュ。前半の800mは45秒4のハイペース。
 直線の入口ではフィアスプライドがスタニングローズの内まで追い上げて3番手が併走。4番手以下は3馬身くらいの差がつきました。直線に入るとフィアスプライドが前の3頭の外に持ち出して先頭に。その外からテンハッピーローズが追い込んできて,フィアスプライドを差して優勝。フィアスプライドが1馬身4分の1差で2着。直線で前が詰まったものの内へもっていって伸びたマスクトディーヴァがクビ差の3着。勝ち馬のさらに外から追い込んだドゥアイズがクビ差の4着。
 優勝したテンハッピーローズは重賞初制覇での大レース優勝。オープンは勝っていますが重賞では入着もなかった馬で,伏兵でした。このレースは直線の攻防で力を出し切れなかった馬もいたところ,それとは関係ない外に進路を取ったことがよかったということになるのですが,これまでの成績からはそれでも勝つまでは難しいと思える馬ですので,よく分からないというのが正直なところです。着順は悪くてもそれほど差のないところまできていたのは確かですので,実際にここで示したような力があるということを,これからも示してく可能性はあるでしょう。父はエピファネイア。母の父はタニノギムレット。母の従妹に2020年のマーメイドステークスを勝ったサマーセント
 騎乗した津村明秀騎手はデビューから20年2ヶ月で大レース初制覇。管理している高柳大輔調教師は一昨年のJBCクラシック以来の大レース4勝目。ヴィクトリアマイルは初勝利。

 第四部定理八では,喜びlaetitiaと悲しみtristitiaが意識conscientiaと関連付けられ,それが善bonumでありまた悪malumであるといわれていました。喜びと悲しみは,スピノザの哲学における基本感情affectus primariiです。それでは残る基本感情である欲望cupiditasは,『エチカ』ではどのように意識と関連付けられているのでしょうか。
                                   
 第三部定理九備考では次のようにいわれています。
 「衝動と欲望との相違はといえば,欲望は自らの衝動を意識している限りにおいてもっぱら人間について言われるというだけのことである。このゆえに欲望とは意識を伴った衝動であると定義することができる(Cupiditas est appentitus cum ejusdem conscientia)」。
 僕は意識は観念の観念idea ideaeであり,観念ideaは無意識であると規定しています。したがってここでは,衝動appentitusというのが無意識であるとすれば,欲望はその無意識が意識化されたものであるといわれていることになります。欲望は感情であって観念とは異なるかもしれませんが,それが思惟の様態cogitandi modiとしてみられる限りでは,第二部公理三にあるように,観念自体が思惟の様態としては第一のものなのですから,衝動を観念,欲望を観念の観念とみることに問題は発生しません。ただ,第三部定義三にあるように,感情というのは現実的に存在する人間の精神mens humanaの状態だけを表すだけでなく,人間の身体humanum corpusの状態も同時に意味することができることになっていて,欲望は感情のひとつなのですから当然ながらこのことが欲望にも適用されます。ですから,欲望をあるいは衝動を,人間の身体の状態として考える場合には,このことは妥当しません。人間の身体に関連づけられる限り,欲望と衝動は同一のものであると解しておくのがよいかと思います。
 またこの備考Scholiumは,このようにいわれた後で,善とは何かということに続いています。そして善というのは,意識される限りでの喜びのことをいうのですから,この備考は全体としていえば,すべての感情を意識と関連付けているということもできるでしょう。悪についての言及はないので,悲しみについては言及されていないということもできるでしょうが,ここで善の判断についていわれていることは,悪の判断についても妥当する筈だからです。僕たちは悲しみを忌避しますが,忌避も欲望といえます。
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NHKマイルカップ&意識

2024-05-06 19:05:13 | 中央競馬
 昨日の第29回NHKマイルカップ
 アルセナールは伸び上がるような発馬で1馬身の不利。4頭ほど前にいこうとしましたが,ボンドガール,キャプテンシー,マスクオールウィン,イフェイオンの順になり,さらにキャプテンシーが前に出ての逃げになりました。アスコリピチェーノとジャンタルマンタルは並んでその後ろを追走。ロジリオンとエンヤラヴフェイスも併走で続き,ノーブルロジャーがその後ろ。チャンネルトンネルとゴンバデカーブースは併走。ダノンマッキンリーを挟んでディスペランツァとウォーターリヒト。アレンジャーとユキノロイヤルも併走で続き発馬で不利があったアルセナール。シュトラウスは3馬身ほど離れた最後尾を追走。前半の800mは46秒3のミドルペース。
 直線の入口ではキャプテンシーとマスクオールウィンは併走となり,ボンドガールはこの2頭の内へ。しかし前の4頭の後ろにいたジャンタルマンタルがこれらの外から楽に先頭に立つと,てそのまま抜け出して快勝。ジャンタルマンタルをマークするようなレースになったロジリオンが2番手に上がりましたが,ジャンタルマンタルの内にいたため進路がなかったアスコリピチェーノが,やや強引に最内に進路を取り,フィニッシュ前にロジリオンを差して2馬身半差の2着。ロジリオンがクビ差の3着で外から追い上げてきたゴンバデカーブースがクビ差で4着。
 優勝したジャンタルマンタル朝日杯フューチュリティステークス以来の勝利で大レース2勝目。このレースは昨年の牡牝の2歳チャンピオンで,皐月賞3着のジャンタルマンタルと桜花賞2着のアスコリピチェーノの争い。アスコリピチェーノは今年の2戦目で,レース間隔はアスコリピチェーノの方が長く,アスコリピチェーノの桜花賞よりジャンタルマンタルの皐月賞の方が厳しい内容であったため,総合的にはアスコリピチェーノの方が有利かと思っていたのですが,アスコリピチェーノが直線で前が詰まってしまったこともあり,思ったより差がついてジャンタルマンタルの勝利となりました。2000mでも対応できることは皐月賞でも示しましたが,この距離の方がよいということなのでしょう。この路線ではかなりの活躍が見込める馬なのではないかと思います。Jantar Mantarはインドの天体観測施設。
                                        
 騎乗した川田将雅騎手羽田盃以来の大レース44勝目。第27回以来となる2年ぶりのNHKマイルカップ2勝目。管理している高野友和調教師は朝日杯フューチュリティステークス以来の大レース7勝目。NHKマイルカップは初勝利。

 『エチカ』の草稿の発見に関する事柄はここまでとします。次に以下のことを探求します。
 『スピノザー読む人の肖像』の第4章2節の終わりから3節にかけて,スピノザの哲学における意識conscientiaと欲望cupiditasの関係が詳しく説明されています。僕は意識と欲望を関連させて考えたことはありませんでしたので,ここでの國分の議論に沿って,なぜそのふたつが関連づけられるのかということを考察していきます。
 スピノザの哲学でいわれる意識というのは,観念の観念idea ideaeを意味します。これは僕もこのブログの中で何度かいったことがあるかと思います。國分はこのような見解opinioは,ドゥルーズGille Deleuzeが示した見解の影響が強いといっています。ドゥルーズは確かに意識というのは観念の観念であるという意味のことをいっています。ただしドゥルーズは,観念の観念のすべてが意識といわれるわけではないとしています。ドゥルーズがいっているのは,身体の変状の観念ideae affectionum corporis,すなわち現実的に存在する人間の身体humanum corpusが外部の物体corpusによって刺激されるafficiことの観念の観念を意識とみなすということであって,それとは別種の観念の観念もありますから,そうしたものについては必ずしも意識とは規定しないのです。ただしこのことの妥当性についてはここでは検討しません。僕もドゥルーズの影響を受けているということについては否定しきれませんが,僕は観念の観念を意識とみなすことについては,別の観点から理解しているからです。
 観念の観念を意識とみなすのであれば,観念はどのようにみられるべきなのかということが問題として残ります。そしてこの問題については,僕はそれを無意識とみなします。スピノザの哲学では,現実的に存在する人間の精神mens humanaのうちにXの観念があれば,その人間の精神のうちにXの観念の観念もあることができる,というか必然的にnecessarioあるということになっています。これを無意識と意識に分けていえば,現実的に存在する人間の無意識は,すべて意識化することが可能であるという意味になります。ただしこれは理論上はそれが可能であるということであって,現実的に存在する人間が,自身の無意識をすべて意識化するということを意味するわけではありません。
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天皇賞(春)&紹介状

2024-04-28 19:21:14 | 中央競馬
 第169回天皇賞(春)。ヒンドゥタイムズが左前脚の歩行のバランスを欠いたために出走取消となって17頭。
 マテンロウオリオンが先頭に。2番手にドゥレッツァで3番手にディープボンド。その後ろにサヴォーナとテーオーロイヤル。2馬身差でサリエラ。7番手にゴールドプリンセスとチャックネイト。9番手にプリュムドール。2馬身差でタスティエーラとシルヴァーソニック。2馬身差でワープスピードとブローザホーン。2馬身差でスマートファントムとスカーフェイス。3馬身差でハピ。最後尾にメイショウブレゲという隊列。1周目の正面にかけて逃げたマテンロウレオがリードを広げていって6馬身くらいに。ディープボンドが単独の2番手となりドゥレッツァは3番手。その後ろがサヴォーナとテーオーロイヤルで併走という隊列に変化。ハピは大きく外に逸走して競走中止。最初の1000mは59秒7のミドルペース。
 3コーナーではマテンロウレオのリードは4馬身くらい。ここからディープボンドが差を詰めていき,その後ろはサヴォーナとドゥレッツァ。さらにテーオーロイヤルがいて,プリュムドールとサリエラ。直線の入口にかけてマテンロウレオ,ディープボンド,テーオーロイヤルで雁行。逃げたマテンロウレオは一杯になり,一旦はディープボンドが先頭に立ちましたが,すぐに外からテーオーロイヤルが前に。そのまま抜け出したテーオーロイヤルが後続を寄せ付けずに快勝。大外から追い込んできたブローザホーンが2馬身差の2着でディープボンドが半馬身差の3着。ディープボンドの内からよく伸びたスマートファントムが半馬身差で4着。
 優勝したテーオーロイヤルは大レース初制覇。一昨年のダイヤモンドステークスが重賞初制覇で天皇賞(春)は3着。秋も走ったのですが昨年は故障があり1年ほど休養。今年のダイヤモンドステークスで重賞2勝目をあげると阪神大賞典も制してここに向かっていました。このレースは菊花賞馬が強いレースなので,ドゥレッツァの方が有力と見ていましたが,ドゥレッツァの菊花賞は異常なレースぶりであったため,自滅というケースも大いに考えられました。その場合は長距離で大きな実績を残しているテーオーロイヤルということになり,安定性から考えても大きく崩れることはないと思われました。つけている着差が,ドゥレッツァ以外の各馬との現状の能力の差そのものであると考えてよいのではないでしょうか。父はリオンディーズ。母の父は第125回を制したマンハッタンカフェ。4代母がバラダの母にあたる同一牝系。ひとつ上の半兄は2021年のみやこステークス,2022年のマーチステークスと帝王賞,2023年のかしわ記念帝王賞を勝っている現役のメイショウハリオ
 騎乗した菱田裕二騎手はデビューから12年1ヶ月で大レース初制覇。管理している岡田稲男調教師は帝王賞以来の大レース4勝目。天皇賞は初勝利。

 ライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizがスピノザに論文を2冊送り,フッデJohann Huddeの講評を求めたのは,光学に関してフッデが有識者であることを知っていたからです。ところがライプニッツとシュラーGeorg Hermann Schullerの間にはそういった関係はありません。光学に限らずどのような学識に関してもライプニッツはシュラーを有識者と認めていたわけではありません。ライプニッツにとってシュラーと親交を結ぶことが有益であったのは,自身の何らかの学識にとって有益だったからというわけではありません。シュラーがライプニッツにとって有益な情報,とくにスピノザに関する情報を教えてくれる人物であったからです。
                                        
 『宮廷人と異端者The Courtier and the Heretuc : Leibniz,Spinoza,and the Fate of God in the Modern World』ではかなり戯画化されているといえますが,基本的にシュラーの役回りというのはライプニッツの情報屋という位置づけになっています。この位置づけというのは正しいといえると思います。ライプニッツにとってスピノザやフッデは学識に関して対等な話し相手,こういってよければ自身にとって教師ともなれる存在であったのに対し,シュラーはそうではなく,秘書とか小間使いといったような存在に近かったのだと僕は思います。
 ですから,少なくともシュラーと頻繁に書簡でやり取りをして,かつスピノザとも親しい間柄であったチルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausがパリにいたときは,ライプニッツは積極的にシュラーとやり取りしなければならない理由はなかったのだと僕は思いますし,事実としてそうであったろうと推測します。ライプニッツはアムステルダムAmsterdamでシュラーおよびフッデと面会したとナドラーSteven Nadlerは断定していて,ライプニッツとフッデもライプニッツとシュラーもこのときが初対面であったと思われますが,ライプニッツとフッデは互いに相手の人となりをそれなりに理解していたのに対し,ライプニッツとシュラーはそうしたことも知らずに対面したと考えておいた方がいいでしょう。『ある哲学者の人生Spinoza, A Life』ではチルンハウスが事前にシュラーに対してライプニッツの紹介状を渡していたと思われるという記述がありますが,そうした紹介状がなければ,この時点でシュラーとライプニッツが面会するというのは不自然であったということは,確かな事実であったと思われます。
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皐月賞&心の隙

2024-04-14 18:56:49 | 中央競馬
 第84回皐月賞。ダノンデサイルが馬場入場後に右前脚の歩行のバランスを欠いたために競走除外となって17頭。
 ビザンチンドリームは立ち上がってしまい3馬身の不利。メイショウタバル,シリウスコルト,ジャンタルマンタルの3頭が前に。アレグロブリランテ,ジャスティンミラノと続いてサンライズジパングとミスタージーティーとシンエンペラーが併走。ルカランフィーストとホウオウプロザンゲ,アーバンシックとコスモキュランダとサンライズアース,エコロヴァルツとウォーターリヒト。レガレイラが馬群の最後尾。ビザンチンドリームは離されてしまいました。1コーナーではメイショウタバルが単独の先頭に立ち,2番手にシリウスコルト。3番手がアレグロブリランテとジャンタルマンタルの併走に。メイショウタバルはここから後ろを引き離していき,向正面では8馬身くらいのリードをつける大逃げに。前半の1000mは57秒5の超ハイペース。
 メイショウタバルのリードは3コーナーでは6馬身。シリウスコルトが差を詰めていくとその外からジャンタルマンタルも追い上げてきて,直線の入口ではメイショウタバルに並び掛けて直線に入るとすぐに抜け出しました。追ってきたのはジャスティンミラノとコスモキュランダ。この2頭が競り合いながら内のジャンタルマンタルを差して優勝争い。先んじていたジャスティンミラノが凌ぎ,レコードタイムで優勝。コスモキュランダがクビ差で2着。内容はかなり強かったジャンタルマンタルは半馬身差で3着。
 優勝したジャスティンミラノはデビューから3連勝。共同通信杯に続く重賞2勝目での大レース制覇。前走と同じくらいの差をジャンタルマンタルにつけていますので,2頭とも力を発揮しての結果ということになるでしょう。ですからコスモキュランダはジャスティンミラノに遜色がない力量をもっていることになり,コスモキュランダとシンエンペラーの差も弥生賞と同じくらい。ホープフルステークスでシンエンペラーに勝ったレガレイラもそれと差がないところまできていますから,概ね各馬が力量を出した好レースだったといえそうです。レコードタイムはペースの関係もありますから何ともいえないかもしれませんが,この世代のレベルの高さの証という可能性もありそうです。キャリアを考えると将来性は上位馬の中で最も高いのではないでしょうか。父はキズナ
 騎乗した戸崎圭太騎手は昨年の安田記念以来の大レース21勝目。第78回以来となる6年ぶりの皐月賞2勝目。管理している友道康夫調教師は有馬記念以来の大レース21勝目。第69回以来となる15年ぶりの皐月賞2勝目。

 遺稿集Opera Posthumaが出版されれば手稿は捨てるものだから,それを廃棄したらステノNicola Stenoの手に渡ってしまったとか,捨てるのではなくチルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausが自らステノに渡してしまったというのは,推測としては短絡的だといえそうです。ただ,遺稿集が出版されれば,そこに『エチカ』は掲載されるのですから,チルンハウスにとって手稿が不要になるのは間違いありません。出版されればそれはシュラーGeorg Hermann Schullerからチルンハウスに贈られるでしょうから,もしも自身が『エチカ』を研究しようと思えば遺稿集に掲載されたものを利用すればよいのですし,もしかしたらチルンハウスは,スピノザの死によって,スピノザの哲学に対する関心を失ったり薄めたりしたかもしれず,その場合も手稿は不要になることになります。だから少なくともチルンハウスは,それまでは手稿を他人に見つからないような仕方で慎重に扱っていたと思われますが,こうした事情によって,失ってしまっても構わないというような気持ちが心の片隅に芽生えてしまったとしてもおかしくはありません。僕はステノが何らかの画策をして,『エチカ』の手稿をチルンハウスから略奪するなり騙し取るなりした可能性が最も高いと思いますが,チルンハウスの側にもそうなってしまう心の隙あるいは油断のようなものが,その時点ではあったのではないかと思います。
                                        
 ステノは『エチカ』の手稿を入手したのですが,そこにはひとつの欠点がありました。実はチルンハウスが所持していた手稿は,ピーター・ファン・ヘントが書いたものですが,それは後の筆跡鑑定で明らかになったということから理解できるように,ヘントが書いたということが手稿そのものに記載されていたというわけではありません。それと同様に,手稿の原稿がだれの手によるものなのかということ,つまりそれがスピノザの著作物であるということは,手稿には書かれていませんでした。つまりチルンハウスが所有していた手稿というのは,文字通りに『エチカ』の本文なのであって,スピノザの手によるものだということは書かれていませんでした。これはもちろん,その手稿が他人の手に渡ったときの危険性を低下させるのが最大の目的だったでしょう。
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農林水産省賞典中山グランドジャンプ&チルンハウスの事情

2024-04-13 20:16:41 | 中央競馬
 第26回中山グランドジャンプ
 ワンダークローバーは2馬身,マイネルグロンは1馬身の不利が発馬でありました。まず先頭に立ったのはビレッジイーグル。2番手にジューンベロシティとギガバッケン。4番手にニシノデイジー。5番手にエコロデュエルとタマモワカムシャ。2馬身差でイロゴトシとフロールシュタット。マイネルグロンが9番手まで巻き返し10番手にダイシンクローバー。2馬身差でポルタフォリオ。2馬身差の最後尾にワンダークローバー。1周目の正面でタマモワカムシャは落馬。その後のコーナーでポルタフォリオとワンダークローバーの2頭はほかの9頭から大きく離されていきました。最初の大竹柵でニシノデイジーが先頭に立ち,4馬身ほどでビレッジイーグル,さらに4馬身ほどでフロールシュタットと,前がばらけました。ニシノデイジーはさらに差を広げていき,2度目の大障害コースでリードは7馬身くらいに。
 向正面に戻ってニシノデイジーのリードは詰まり4馬身くらい。2番手にビレッジイーグルで3番手にイロゴトシ。3馬身差でジューンベロシティが続き5番手にエコロデュエル。マイネルグロンはその後ろ。向正面の半ばでニシノデイジーとビレッジイーグルとイロゴトシが併走に。その後ろは8馬身ほどの差があってジューンベロシティとエコロデュエル。3コーナーではビレッジイーグルとイロゴトシが前に出てニシノデイジーは3番手に後退。外のイロゴトシがビレッジイーグルを振り切り,単独の先頭に立って直線に。一杯でしたがそのままリードを保って優勝。また盛り返してきたニシノデイジーがビレッジイーグルと競り合うところ,外へ外へと切れ込みながらジューンベロシティが追い込んで3馬身差で2着。ビレッジイーグルを競り落としたニシノデイジーが2馬身半差で3着。
 優勝したイロゴトシは昨年の中山グランドジャンプ以来の勝利で大レース2勝目。連覇を達成しました。その後は昨年の10月に東京ハイジャンプを走って6着。今年は平場の特別戦を使ってここに臨みました。断然の人気に推されていたマイネルグロンには東京ハイジャンプで敗れていましたが,中山の長距離戦では初対戦。負かせる可能性が最も高そうなのはこの馬だと思っていました。ただマイネルグロンは道中の進みが悪く,今日は本調子になかったのではないかと思われますので,真の決着がつくのはこれからということになりそうです。父は2015年に東京新聞杯を勝ったヴァンセンヌでその父がディープインパクトで母がフラワーパーク。母の父はクロフネ
 騎乗した黒岩悠騎手は昨年の中山グランドジャンプ以来の大レース2勝目。管理している牧田和弥調教師は昨年の中山グランドジャンプ以来の大レース2勝目。

 ここではチルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausの事情というのも推測してみます。
 チルンハウスはシュラーGeorg Hermann Schullerを介してスピノザのことを知りました。だからスピノザとチルンハウスの間で交わされた書簡のいくつかはシュラーを介して交わされています。したがって,チルンハウスはスピノザが死んだということを,シュラーから伝えられたと思われます。スピノザが死んだからチルンハウスとシュラーの関係が途絶えたとは考えにくいので,おそらくその後の状況についてもチルンハウスはシュラーから伝えられていたのではないかと思われます。
                                        
 このことは,『スピノザ往復書簡集Epistolae』の成立事情からそうだったのではないかと僕は推測します。遺稿集Opera Posthumaの編集者たちは,スピノザとの間での書簡を遺稿集に掲載するにあたって,可能であれば当事者にその可否を確認したと思われます。だからライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizとスピノザとの間に交わされた書簡の多くは掲載を見送られたのだし,フッデJohann Huddeからスピノザに宛てられた書簡の全ても掲載を見送られ,スピノザからフッデに宛てられた書簡には宛先が掲載されなかったのです。書簡集の編集が進められていたアムステルダムAmsterdamにはチルンハウスはそのときにはいなかったのですが,事情は同じであったライプニッツの意向がある程度は尊重されたということは,チルンハウスにも何らかの確認があったと思われます。書簡を通して容易に連絡が取れたという点では,ライプニッツもチルンハウスも同じであったと思われるからです。逆にいえば,チルンハウスの書簡はそのすべて,あるいはほとんどが遺稿集に掲載されたのは,チルンハウスが掲載されても構わないと考えていたからだろうと僕は推測しています。
 おそらくチルンハウスに連絡を取ったのはシュラーですが,そのシュラーは遺稿集の編集者のひとりでした。ですから,遺稿集の出版の準備が進んでいるということもシュラーからチルンハウスに伝えられていたのだろうと僕は推測します。國分の指摘では,遺稿集が出版されれば元の原稿が破棄されるのはこの当時の原則になっていました。ただし,チルンハウスが所有していたのは手稿で,國分が指摘していることがそのまま妥当するとは限りません。
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桜花賞&手稿

2024-04-07 19:45:39 | 中央競馬
 第84回桜花賞。藤岡康太騎手が6日の3レースで落馬して頭部と胸部を負傷したためエトヴプレは鮫島克駿騎手に変更。
 外の方からショウナンマヌエラがハナへ。2番手にキャットファイトとコラソンビート。その後ろにクイーンズウォークとアスコリピチェーノとエトヴプレ。その直後のシカゴスティングまでは一団。イフェイオンとセキトバイースト。ステレンボッシュとセシリエプラージュ。チェルヴィニア。ワイドラトゥールとテウメッサ。マスクオールウィン,ハワイアンティアレ。2馬身差でライトバック。最後尾にスウィープフィート。概ね馬群の外を回っていた馬が徐々に位置を上げていく形になったので,3コーナーに掛けてもそこから4コーナーに掛けても位置取りにはかなり変化が生じました。前半の800mは46秒3のスローペース。
 直線の入口で逃げたショウナンマヌエラのリードはまだ2馬身ほどありましたが,2番手追走になっていたエトヴプレがすぐに先頭に。ただ外の各馬の脚がよく,ステレンボッシュが差し切って優勝。その外から追ってきたアスコリピチェーノが4分の3馬身差で2着。さらに外から追い込んだライトバックがクビ差で3着。
 優勝したステレンボッシュは重賞初制覇での大レース制覇。阪神ジュベナイルフィリーズはアスコリピチェーノが勝ってクビ差の2着でしたが,そのときはアスコリピチェーノの後ろから内を通って追い上げたもの。今日は直線入口での位置取りが逆になって逆転したという内容。2頭とも阪神ジュベナイルフィリーズ以来のレースで,その2頭が上位人気に推された上で,離れた後方から追い込んできた2頭を凌いでワンツーフィニッシュを決めましたので,この2頭はほかに対して力量上位であるとみてよいと思います。父はエピファネイア。母の父はルーラーシップ。祖母の父はダンスインザダーク。3代母がウインドインハーヘアで従妹に昨年のホープフルステークスを勝っている現役のレガレイラ。Stellenboschは南アフリカの都市の名称。
                                        
 騎乗したブラジルのジョアン・モレイラ騎手はJBCクラシック以来の日本馬に騎乗しての大レース9勝目。桜花賞は初勝利。管理している国枝栄調教師は2021年の阪神ジュベナイルフィリーズ以来の大レース23勝目。第70回,78回に続き6年ぶりの桜花賞3勝目。

 僕たちにとっては認識するcognoscereことが不可能な属性attributumについても,第二部自然学②補助定理七備考でいわれていることは成立します。なのでこの備考Scholiumを論拠として神Deusをひとつの個体と仮定する國分の方法は成立すると僕は結論します。つまり,神が内在的原因causa immanensであることの意味は,神をひとつの個体と規定するなら,神という個体の中で生じる各々の様態modiの生成も推移も消滅も神自身の行為にほかならないのであって,各々の様態のその行為は神の力potentiaの表現であるのですが,そうしたことは神の本性essentiaを構成する無限に多くのinfinita属性のどの属性を抽出したとしても成立すると僕は結論付けるということです。
 この部分の考察は以上です。次の論題に移りますが,これは何かを考察するというよりは,史実の確認といった方が正確です。
 『スピノザーナ11号』に関連する事項として,工藤喜作について考察したときに,工藤が知り得なかった事実について触れました。工藤は2010年1月に死んでしまったのですが,同年になって,『エチカ』の手稿が発見されたということです。このことについて,『スピノザー読む人の肖像』の第4章で詳しく説明されています。これはこのブログの今後の考察についても有益だと思いますので,ここでその事情というのを,國分の説明を追いながら詳しく説明しておきましょう。
 『エチカ』の遺稿集Opera Posthumaは1677年に出版されました。この当時,手稿すなわち生の原稿のことですが,それは出版後に廃棄するというのが当時の出版業界の常識でした。ですからスピノザの手による『エチカ』の原稿というのは,そのときに破棄されてしまったと考えるのが妥当です。ただ,『エチカ』の出版はスピノザの死後のことであって,スピノザは生前にその原稿の写しを何人かには渡していました。2010年になって発見された手稿というのは,スピノザが存命中に書写された手稿のひとつです。
 これを書写したのは,ピーター・ファン・ヘントという人物であると特定されています。僕にとっては初見の人物でしたが,この人はスピノザの友人のひとりで,ラテン語に堪能な人物であったと國分は説明しています。きちんとした証拠で特定されています。
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大阪杯&検証

2024-04-01 19:14:35 | 中央競馬
 昨日の第68回大阪杯
 エピファニーは発馬直後に挟まれる不利。逃げたのはスタニングローズで2番手にベラジオオペラ。3番手がタスティエーラとリカンカブールの併走になり,その後ろにジオグリフ。プラダリアとハーパーが併走で続き,ステラヴェローチェとキラーアビリティも並んで追走。ミッキーゴージャスとルージュエヴァイユがその後ろで,エピファニー,カテドラル,ハヤヤッコの順。向正面で外から追い上げていったのがローシャムパークでソールオリエンスもそれを追うように上がっていきました。前半の1000mは60秒2の超スローペース。
 3コーナーからスタニングローズとベラジオオペラの間隔が半馬身ほどになり,向正面で動いたローシャムパークも差のない3番手に。その後ろはタスティエーラ,ジオグリフ,ソールオリエンスで併走。直線に入るとベラジオオペラが先頭に立ち,外からローシャムパーク,内を捌いてきたルージュエヴァイユの追い上げで3頭の優勝争い。先んじて前に出ていた真中のベラジオオペラがそのまま先頭を譲らずに優勝。外のローシャムパークがクビ差で2着。内のルージュエヴァイユがハナ差で3着。
 優勝したベラジオオペラは大レース初制覇。昨年は3連勝でスプリングステークスを制し,ダービーは4着。休養が長引き復帰戦となったチャレンジカップで重賞2勝目をあげて今年は京都記念で2着。4歳馬の中ではタスティエーラやソールオリエンスほどの実績に欠け,かつ4歳馬は年長の馬に対してこのレベルのレースでは苦戦していましたので,厳しいのではないかとみていました。超スローペースの先行策がうまくいったということもあるのでしょうが,ドバイに遠征した馬も多く,この程度のメンバー構成であれば,4歳馬も互角に戦えるということなのかもしれません。父はロードカナロア。母のひとつ上の半兄に2018年に函館記念を勝ったエアアンセム。3代母が1998年にクイーンステークスを勝ったエアデジャヴー
 騎乗した横山和生騎手は昨年の川崎記念以来の大レース5勝目。大阪杯は初勝利。管理している上村洋行調教師は開業から5年で大レース初制覇。

 スピノザが内在的原因causa immanensを『エチカ』の中で定義していないのは,たぶんそれがスピノザにとって特別な意味を有するような概念notioではなくて,ヘーレボールドAdrianus Heereboordの分節に倣っただけだからだと思います。そこで國分は,内在的原因というのがどのような原因であるのかということを,『エチカ』のほかの部分から検証することを試みています。このような試みは,スピノザの哲学が内在の哲学であるということを強調する際には,大いに有益であるといえるでしょう。いい換えれば,ここで國分がなしている試みは,近藤のような学者の説を補完するものになるでしょう。
                                   
 國分が最初に注目しているのは,第一部定理三六です。といってもこの定理Propositioそのものであるというよりは,この定理をスピノザがどのように証明しているのかということと関係します。スピノザはこの定理を論証するために,第一部定理二五系を援用して,存在するすべてのものは神の属性Dei attributaを一定の仕方で表現するexprimunturといっています。なので実際に國分が着目しているのは,第一部定理二五系だといってもいいかもしれません。この,表現するというところが重要です。というのは,内在的原因において解される因果性とは,原因は結果effectusを引き起こすというよりは,原因は原因自身の力potentiaを結果によって表現するからです。このことを國分は次のように説明しています。
 第二部自然学②補助定理七備考から,神をひとつの個体とみなせると國分はいいます。実際にこの備考Scholiumによって神をひとつの個体とみなせるかどうかは僕には微妙なところだと思えます。そこでは神の延長の属性Extensionis attributumしかも延長の属性の間接無限様態についてひとつの個体とみなすことができるということは僕は認めますが,そのことと神をひとつの個体とみなすということは別のことだと思うからです。ただし國分はそういうことをここで主張しようとしているわけではありませんから,この点について突き詰めて考えることはしません。単に神をひとつの個体として考えるという仮定であると解します。このような仮定をすること自体は何も不条理ではありませんから,問題視しなければならないようなことは何も含まれてはいないといっていいでしょう。
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高松宮記念&しるしの無限遡行

2024-03-24 19:18:02 | 中央競馬
 香港から1頭が遠征してきた第54回高松宮記念
 少し押したビクターザウィナーが前に出て,その後で内からマッドクールが出てきたのでやや牽制し合いましたが,そのままビクターザウィナーの逃げとなってマッドクールが2番手。3番手にはルガルが上がり,その後ろはウインカーネリアンとママコチャ。さらにビッグシーザーとトウシンマカオが並んで続き,8番手にテイエムスパーダ。以下はメイケイエール,ソーダズリング,ナムラクレア,シュバルツカイザーの順で続き,ロータスランドとウインマーベルが併走。2馬身ほど開いてシャンパンカラーとディヴィーナ。マテンロウオリオンが続いて最後尾にモズメイメイ。前半の600mは34秒9の超スローペース。
 ビクターザウィナーが先頭のまま直線に入りましたが,少し外に持ち出しました。その外に並んできたのはウインカーネリアン。マッドクールはそのまま内を進出。内を回ったマッドクールの方が外の2頭よりも前に。マッドクールを追うように内を回ってきたのがナムラクレア。1頭分だけ外に出し,マッドクールを追い詰めてフィニッシュ。しかし届かず,優勝はマッドクール。ナムラクレアがアタマ差で2着。逃げたビクターザウィナーが3馬身差で3着。
 優勝したマッドクールは重賞初制覇での大レース勝利。ただこの馬は一昨年の5月から12月にかけて4連勝してオープン入りし,CBC賞の3着を挟んでオープンを勝利。昨秋のスプリンターズステークスも2着でしたから,十分に通用する能力をもっているということは明らかでした。直線で逃げた馬が外を回ったのに対し,そのまま内を突いたという騎手の判断がよかったということになるでしょう。着差を考慮すると,ペースには恵まれたといえそうです。
 騎乗した坂井瑠星騎手は全日本2歳優駿以来の大レース8勝目。高松宮記念は初制覇。管理している池添学調教師は一昨年のホープフルステークス以来の大レース2勝目。

 スピノザはDeusが存在するということを証明するよりも,現実的に存在する人間の知性intellectusが,神を十全に認識するcognoscereということの方を重視していました。この姿勢は『知性改善論Tractatus de Intellectus Emendatione』の時代にも同様です。ですから人間がいかにして神の十全な観念idea adaequataを有するのかということの方法論は『知性改善論』の主要なテーマになっています。スピノザはこのことについてかなり試行錯誤していて,『知性改善論』は未完のまま中断されています。ですからそこの部分でのトートロジーが『知性改善論』では目立っています。とはいえ,知性の道具instrumentumとしての真理veritasに関する無限遡行も,『知性改善論』の中では解決されているわけではないので,僕たちがそれを読む限り,スピノザは道具の無限遡行を解消するために,新たな課題としての真理の標識signumに移行したというように解せるようになっています。
                                        
 しかし一方で,國分自身が指摘している通り,道具の無限遡行についてはスピノザは軽視していたようにみえますので,もしかしたらスピノザはそれは解決済みであるとか,まだ済ませてはいないけれども簡単にけりがつけられることであると思っていた可能性がないわけではありません。もしその場合には,スピノザが真理のしるしsignumという課題を探求し始めたのは,道具に関する無限遡行を解消するためだったというわけでは必ずしもなく,単に道具とは別の課題であるしるしについて考察し始めただけであったかもしれません。そこのところにはっきりとした関係があったのかなかったのかということについては,スピノザの意図としては不明であると僕はしておきます。
 國分が指摘しているのは,実は真理のしるしを追い求めたとしても,道具と同様の無限遡行に至る筈だということです。これは次のように考えるとよいでしょう。もしもある何らかの事柄が真理のしるしになると仮定します。しかしその場合,それが確かに真理のしるしであるということを確証するためには,それが確かに真理のしるしであるというしるしが必要であり,それもまた真理のしるしのしるしであるということを確証するような別のしるしを必要とするといった具合に,この関係が無限に連鎖してくことになるのです。
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フェブラリーステークス&観念の力

2024-02-19 19:07:33 | 中央競馬
 浦和から1頭,大井から1頭,兵庫から1頭が遠征してきた昨日の第41回フェブラリーステークス
 シャンパンカラーは立ち上がってしまい1馬身の不利。発馬後の加速が群を抜いていたドンフランキーが単独の逃げ。2番手はイグナイター,ドゥラエレーデ,ペプチドナイル,ウィルソンテソーロの4頭の集団。2馬身差で巻き返してきたシャンパンカラーとオメガギネス。2馬身差でガイアフォース。2馬身差でミックファイアとスピーディキック。1馬身差でカラテ。1馬身差でタガノビューティーとキングズソード。6馬身差でセキフウ。2馬身差でアルファマム。2馬身差の最後尾にレッドルゼル。前半の800mは45秒6の超ハイペース。
 直線に入るところでもドンフランキーが先頭でしたが,内を少し開けたのでずっと内を回っていたイグナイターが先頭に。その後からドンフランキーの外を回ったペプチドナイルが追い上げてきて先頭に。これをめがけて追い掛けてきたのはタガノビューティー。さらにタガノビューティーの外からガイアフォースとセキフウが並んで追い込み,タガノビューティーの内からはキングズソード。しかし先に先頭に立っていたペプチドナイルがフィニッシュまで粘って優勝。ガイアフォースが1馬身4分の1差で2着。セキフウがクビ差の3着でタガノビューティーがハナ差で4着。キングズソードが半馬身差で5着。
 優勝したペプチドナイルはこれまでオープンを3勝していましたが,重賞は初制覇での大レース優勝。このレースはチャンピオンズカップから直行してきた実績馬か,前哨戦の根岸ステークスおよび東海ステークスの勝ち馬が勝つという傾向。ところが今年は該当馬がいませんでした。つまり例年ほどのレベルにはなかったといえるメンバー構成なので,勝ったからといって過去の優勝馬ほどの評価はできないかもしれません。ただ超ハイペースで後ろの方にいた馬が有利になったレースを,先行策から抜け出して粘ったという内容は強かったと思います。父はキングカメハメハ。母の父はマンハッタンカフェ
                                     
 騎乗した藤岡佑介騎手は2018年のNHKマイルカップ以来となる大レース4勝目。フェブラリーステークスは初勝利。管理している武英智調教師は開業から6年弱で大レース初勝利。

 十全な観念idea adaequataと混乱した観念idea inadaequataの関係は,第一義的には前者が真理veritasで後者が虚偽falsitasであるということです。したがって,十全な観念は十全な観念と混乱した観念の相違を知性intellectusに教えるけれど,混乱した観念はその相違を知性に教えることがないということは,真理と虚偽の相違を僕たちに教えるのは十全な観念であって,混乱した観念はそのためには何も役に立たないことを意味します。スピノザは第二部定理四二で,真なるものと偽なるものとの相違を教えるのは第二種の認識cognitio secundi generisと第三種の認識cognitio tertii generisであって,第一種の認識cognitio primi generisではないといっていますが,第二種の認識と第三種の認識が十全な観念であるのに対し,第一種の認識は混乱した観念ですから,この定理Propositioはまさにこのことをいっていることになります。
 このことは,十全な観念と混乱した観念の関係が,第一義的には真理と虚偽の相違を示すとしても,スピノザの哲学では前者が有esseであって後者が無であるという関係を同時に意味するということから容易に理解できるのではないかと思います。スピノザの哲学では,事物が存在し得るということはその事物に実在性realitasがあるということを意味し,実在性というのは力potentiaという観点からみたときの本性essentiaを意味することになり,逆に存在し得ないということは,その事物には実在性が伴っていないということを意味することになりますから,力と反対の意味において無力impotentiaであることになります。つまり,十全な観念には知性に真理と虚偽の相違を教えるだけの力があるにしても,混乱した観念はそれ自体が無力なので,そのような力をもつことができないのです。
 ここまでの考察から,スピノザがどういう観点から方法論的懐疑doute méthodiqueを批判しようとしているかということも明らかになったといえます。デカルトRené Descartesは,スピノザが中心的な課題として据えた確実性certitudoを,デカルト自身が疑い得ないことと等置しています。しかしスピノザからすれば,ある事柄についてそれを疑い得ないということは,むしろその事柄について確実であるということから帰結するような特質proprietasにすぎないのです。他面からいえば,デカルトにとっての確実性が消極的なものだとすれば,スピノザにとっては積極的なものなのです。
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JRA賞&依頼

2024-01-11 19:18:51 | 中央競馬
 昨年のJRA賞の競走馬部門が9日に発表されました。
 年度代表馬は年度代表馬はイクイノックスドバイシーマクラシック,宝塚記念,天皇賞(秋),ジャパンカップとGⅠばかりを4戦して全勝。当然の選出でしょう。昨年の年度代表馬で2年連続の受賞。部門別では最優秀4歳以上牡馬。すでに競走馬登録は抹消されています。
 最優秀2歳牡馬はジャンタルマンタル。デイリー杯2歳ステークスと朝日杯フューチュリティステークスを優勝。3戦3勝,重賞を2勝してのGⅠ勝利なのでこれも順当な選出だと思います。
 最優秀2歳牝馬はアスコリピチェーノ。新潟2歳ステークスと阪神ジュベナイルフィリーズを優勝。こちらも3戦3勝,重賞2勝でGⅠ制覇ですから当然でしょう。
 最優秀3歳牡馬はタスティエーラ。弥生賞とダービーを制覇。三冠は3頭で分け合いましたが,この馬は皐月賞も菊花賞も2着でしたので,順当とは思います。ただ意外に票数が割れなかった感はあります。
 最優秀3歳牝馬はリバティアイランド桜花賞,オークス,秋華賞を制覇。牝馬三冠を制したのですから当然。満票でなければおかしいと思います。昨年の最優秀2歳牝馬で2年連続の受賞。
 最優秀4歳以上牝馬はソングラインヴィクトリアマイル安田記念を制覇。この部門はこの馬以外に候補馬がなかったと思います。最優秀マイラーを同時に受賞。これも1600mのGⅠを2勝していますから順当でしょう。現役登録は抹消されています。
 最優秀スプリンターはママコチャスプリンターズステークスを優勝。この馬は戦歴はスプリンターという感じでもないのですが,1200m戦は重賞2戦して1着と2着。選出するならこの馬しかないというところ。
 最優秀ダートホースはレモンポップ。根岸ステークス,フェブラリーステークス,南部杯,チャンピオンズカップに優勝。JRA賞はJRAでの戦歴が最重要視されるべきで,順当な受賞だと思います。
 最優秀障害馬はマイネルグロン。東京ハイジャンプと中山大障害を優勝。昨年は4戦4勝。中山大障害の勝ち方から当然でしょう。ここも満票でよかったと思います。
                                  
 川崎記念,ドバイワールドカップ,日本テレビ盃,東京大賞典を勝ったウシュバテソーロが特別賞に選出されました。僕は特別賞は頻発されるべきではないと考えますが,ドバイワールドカップの優勝は快挙であり,この選出には文句ありません。

 薬局に寄って帰りました。この日は注射針の在庫が足りませんでした。配達を依頼して帰りました。帰宅したのは午後4時20分でした。
 5月2日,火曜日。妹を通所施設に迎えに行きました。この日は眼科を受診する予定で,そのために迎えに行ったのですが,妹が保険証とおくすり手帳をグループホームから持ち帰っていませんでした。これでは受診はできませんので,中止にし,そのまま家に帰りました。
 5月4日,木曜日。この日の午前中に,足りていなかった注射針が配達されました。
 5月7日,日曜日、妹をグループホームに送りました。日曜の午後に妹をグループホームに送るようにした事情はすでに説明した通りです。
 5月8日,月曜日。総講がありましたのでお寺に行きました。
 5月10日,水曜日。午後12時5分に,地域担当支援主任のSさんから電話がありました。これは前期の三者面談の日時の決定の報知でした。午後7時35分には,グループホームの妹の担当者であるSさんからの電話もありました。これは5月20日に予定されている土曜レクリエーションに,妹が参加できるようにするために僕の事前の依頼に対する解答で,受諾できるとのことでした。土曜レクリエーションというのは,年度の初めにすべての日程が決められます。だから大抵の場合はその日を僕は事前に把握しているのですが,たとえば2月や3月に脳神経外科や歯科の通院が妹にある場合,概ね3ヶ月後に次の通院ということになり,その通院のための予約はその日のうちに入れます。この場合は次年度の土曜レクリエーションの日程がいつになるかまだ決まっていませんので,当然ながら僕も知りません。ですからそれを考慮せずに予約を入れることになります。今回はその予約の週に土曜レクリエーションが組まれましたので,僕の方から土曜の朝に妹を通所施設に送り,妹が土曜レクリエーションに参加できるように予定を変更する依頼を出していたのです。この依頼が受諾された,つまり妹が5月20日の土曜レクリエーションに参加することができるようになったということです。食事の用意が変わりますので,この種の予定変更は依頼が必要なのです。
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ホープフルステークス&ステノとライプニッツ

2023-12-28 19:07:51 | 中央競馬
 第40回ホープフルステークス。サンライズアースが左前脚の蹄の底の内出血で出走取消,ゴンバデカーブースは感冒で出走取消となって16頭。
 ミスタージーティーは外側によれて1馬身の不利。ヴェロキラプトルとアンモシエラが並んで先行。3番手にサンライズジパング。4番手にシンエンペラー。5番手にショウナンラプンタ。6番手はタリフラインとウインマクシマムとセンチュリボンド。9番手にインザモーメントとシリウスコルト。2馬身差でディスペランツァ。12番手はアドミラルシップとミスタージーティー。14番手にレガレイラ。テンエースワンとホルトバージが並んで最後尾を追走して1コーナーを通過。向正面に入るとショウナンラプンタが単独の3番手に上がり,前の2頭との差は2馬身ほど。向正面の半ばでは内のヴェロキラプトルが単独の先頭に立ちました。前半の1000mは60秒0のミドルペース。
 3コーナーから前の2頭はまた併走になり,外からショウナンラプンタが上がってくるとアンモシエラが後退し始め,単独の2番手までショウナンラプンタが上がったのですが,4コーナーをうまく回れずにかなり外に膨れました。この間に内を回っていたシンエンペラーがヴェロキラプトルの外から接近。それをショウナンラプンタのすぐ内からサンライズジパングが追い,ショウナンラプンタのさらに外からレガレイラ。一旦は抜け出したシンエンペラーを大外から差し切ったレガレイラが優勝。シンエンペラーが4分の3馬身差で2着。サンライズジパングが2馬身差の3着。
 優勝したレガレイラは重賞初挑戦での大レース制覇。7月に函館で新馬を勝った後,10月に東京のオープンに出走して3着。このレースは前走で1800mの重賞かオープンで好走している馬が強いレースで,そのパターンには該当していました。牝馬ですがこのレースに出走してきたのは,適性を重視してのものだったのでしょう。今年の中山競馬場の芝コースはわりと早いタイムが出るのですが,そういう馬場状態はこの馬に向いたのではないかと思います。父は2017年に共同通信杯とアルゼンチン共和国杯,2018年に金鯱賞と大阪杯,2019年にジャパンカップを勝ったスワーヴリチャード。3代母がウインドインハーヘアで祖母の4つ上の半兄がディープインパクト。Regaleiraはポルトガルの宮殿。
                                        
 騎乗したクリストフ・ルメール騎手はジャパンカップ以来の大レース制覇。第28回,30回,33回に続き7年ぶりのホープフルステークス4勝目。管理している木村哲也調教師はジャパンカップ以来の大レース9勝目。ホープフルステークスは初勝利。

 スピノザがカトリックの立場にあるステノNicola Stenoに対して何かをいっても無効だと考えていたのと同じように,ステノもスピノザのような新哲学の改革者,これはステノ自身が選んだいい方ですが,スピノザのような哲学者にカトリックの立場から何かをいっても無効であると考えていたのだろうと思います。だから上層部からの指示がなければ,ステノがスピノザに書簡を送るということもなかったと思います。
 ステノはカトリックに改宗した後,ドイツで布教活動に取り組みました。このときにライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizと知り合ったとされています。スピノザが死んだ後,遺稿集Opera Posthumaの出版を防ごうとするカトリックの動きがアムステルダムAmsterdamであったということが『宮廷人と異端者The Courtier and the Heretuc : Leibniz,Spinoza,and the Fate of God in the Modern World』で示されています。しかしアムステルダムのどこでだれが遺稿集の編集や印刷を企てているのかまで突き止めることができなかったとされています。ライプニッツは遺稿集の編集者であるシュラーGeorg Hermann Schullerと連絡を取っていましたから,具体的にどこで遺稿集の編集がされているのかということは知らなかったとしても,だれが編集をしているのかということは知っていた筈です。その前にライプニッツがスピノザに会いに行ったとき,事前にライプニッツはシュラー以外の遺稿集の編集者たちと会っていたということが『ある哲学者の人生Spinoza, A Life』では指摘されていて,僕も確かにそうしたことがあったと思いますので,ライプニッツはシュラー以外の編集者たちのこともある程度は知っていたと思われます。なのでライプニッツはそうした情報をステノに伝えることができて,ライプニッツがそのようにうしていたら,遺稿集の出版は実現しなかったかもしれません。これが史実なら,ライプニッツはそれを恐れて知っていた情報をステノには伝えなかったのでしょう。
 こうしたこととはほかの事情が残っています。ライプニッツの知り合いにはパリにやってきたチルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausがいて,チルンハウスは『エチカ』の草稿を所持していました。書簡七十で示されているように,チルンハウスはそれをライプニッツに見せようと思い,シュラーを介してその許可をスピノザに求めています。ただスピノザは許可しませんでした。
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有馬記念&決断

2023-12-24 20:13:10 | 中央競馬
 グランプリの第68回有馬記念
                                       
 好発はスターズオンアース。内から追い抜いていったタイトルホルダーが先手を奪い,スターズオンアースは2番手に。3番手にプラダリア。4番手にシャフリヤールとハーパー。2馬身差でウインマリリン。2馬身差でアイアンバローズ。2馬身差でタスティエーラ。9番手にソールオリエンスとスルーセブンシーズ。11番手にディープボンド。12番手にヒートオンビート。13番手にライラック。14番手にホウオウエミーズとドウデュース。2馬身差の最後尾にジャスティンパレスという隊列。タイトルホルダーのリードは2周目の向正面に入るあたりで4馬身くらい。3コーナーにかけて6馬身差くらいまで広がりました。ミドルペース。
 スターズオンアースとプラダリアが並んで差を詰めていくと,外から絶好の手応えでドウデュースが捲り上げてきました。直線に入るとプラダリアは一杯。スターズオンアースとドウデュースが並んでタイトルホルダーに迫っていき,外のドウデュースが差し切って優勝。スターズオンアースが半馬身差の2着で逃げ粘ったタイトルホルダーが1馬身差で3着。追い込んできたものの届かなかったジャスティンパレスがアタマ差の4着でシャフリヤールがクビ差で5着。
 優勝したドウデュースは京都記念以来の勝利。大レースは昨年のダービー以来の3勝目。このレースはソールオリエンスとタスティエーラが有力と思っていたのですが,僕が思っていたほど走れませんでした。3歳馬のレベルがそれほど高くないのかもしれませんし,タイトルホルダーが離して逃げるような形のレースへの対応力が欠けていたからかもしれません。このあたりは来年以降に判明するでしょう。ドウデュースは京都記念を勝った後にドバイに遠征したのですが,出走するに至りませんでした。休養に入って秋に復帰してからは勝ち負けに参加できないレースが続いていたのですが,この馬はレースを使っていくことで復調するタイプなのかもしれません。なので久々で強敵が相手というケースでは割り引いた方がいいのかもしれません。父は第50回を勝ったハーツクライで父仔制覇。英語表記はDo Deuce。
 騎乗した武豊騎手大阪杯以来の大レース制覇。第35回,51回,62回に続き6年ぶりの有馬記念4勝目。管理している友道康夫調教師は昨年のチャンピオンズカップ以来の大レース20勝目。有馬記念は初勝利。

 工藤がスピノザの哲学の中にカトリックの教義と類似したものを見出したからといって,それだけでカトリックの洗礼を受けるということは,スピノザの研究者として大きな決断であったと思われます。それは,スピノザ自身とカトリック,これはローマカトリックですが,その関係が悪いものであったからです。
 スピノザはオランダで産まれました。最初はアムステルダムAmsterdamのユダヤ人共同体に住んでいたわけですから,キリスト教徒との関係はそれほど持っていなかったといえるでしょう。それほどというのは,スピノザの父は商人で,ユダヤ人商人はユダヤ人とだけ取引していたわけではなく,オランダ人とも取引していましたし,貿易などではオランダ人以外との取引もありました。またそうした商売のうちには,オランダ人と協力したものもあったと思われます。というのは,父が死んだ後はスピノザもそれを引き継いでいて,その頃の商人仲間にはオランダ人がいましたから,いくらユダヤ人共同体の中で暮らしていたからといって,キリスト教徒との関係が皆無であったとは考えられません。
 スピノザが家業を引き継いだ後の商人仲間の中にはキリスト教徒がいて,その中にはスピノザと生涯にわたって親しい交際を続けた人びともいます。とくにキリスト教のコレギアント派collegiantenといわれるグループの人びとはスピノザとの関係が良好であったとされています。ただコレギアント派というのはキリスト教の主流グループではありませんから,かれらとの関係からスピノザとキリスト教徒との関係を論じることはできません。オランダで主流だったのはプロテスタントのカルヴァン派といわれるグループで,カルヴァン派の牧師たちとスピノザとの関係はよいものではありませんでした。これは単に宗教上の理由だけで説明することはできず,政治的文脈も関わるのであって,基本的にカルヴァン派の牧師たちは王党派といわれる反動的な政治集団と結託していて,スピノザの立場は王党派と対立する議会派の立場にどちらかといえば近かったのです。カルヴァン派の牧師のすべてが反スピノザの立場だったとはいいませんが,スピノザとの関係は総じて悪かったといえます。
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農林水産省賞典中山大障害&肉付き

2023-12-23 20:04:21 | 中央競馬
 第146回中山大障害
 発馬後はジューンベロシティが先頭でその後ろにエコロデュエルとビレッジイーグルとギガバッケン。さらにマイネルグロンとニシノデイジーが続きました。1周目の正面に入ってビレッジイーグルが先頭に。ニシノデイジーが2番手に上がり,その後ろは6馬身くらいの差がついてジューンベロシティ。ギガバッケン,マイネルグロン,エコロデュエルの順。大竹柵を飛越するとマイネルグロンが単独の3番手になり,その後ろは8馬身くらい差が開いてジューンベロシティ。大生垣を飛越するとニシノデイジーが先頭に。4馬身差でビレッジイーグル,4馬身差でマイネルグロン。この後ろは大きく開いてジューンベロシティ。3馬身差でエコロデュエル。
 最終周回の向正面でマイネルグロンが2番手に上がると,そのまま先頭に立って最終コーナーへ。直線に入るとマイネルグロンがニシノデイジーとの差をまた開いて快勝。ニシノデイジーが10馬身差で2着。外から追い上げてきたエコロデュエルが6馬身差の3着。ビレッジイーグルは5馬身差の4着。
 優勝したマイネルグロンは東京ハイジャンプに続き重賞連勝での大レース制覇。本格化したのは今年に入ってからで,今年は4戦4勝となりました。このレースは縦長の展開になり,レースの途中から前にいた馬たちが1着,2着,4着。これは出走馬のレベルにそれだけ差があったからというべきで,その中でこれだけの快勝ですから,現状は障害馬の中でトップとみていいでしょう。まだ5歳馬ですから,この馬の天下が続くこともありそうです。父はゴールドシップ。母は2003年にフラワーカップを勝ったマイネヌーヴェルで祖母がマイネプリテンダー。Grandはフランス語で気高い。
 騎乗した石神深一騎手は昨年の中山グランドジャンプ以来の大レース11勝目。第139回,140回,141回,144回に続き2年ぶりの中山大障害5勝目。管理している青木孝文調教師は開業から6年9ヶ月で大レース初制覇。

 僕がスピノザ主義者となるための条件としてこのようなことをいうのは,僕自身の経験が反映されているからです。しかし今は僕のその経験について語っても仕方ありません。
 僕が骨格と肉付きで喩えたことでいうなら,工藤は骨格より肉付きを重視しているのです。このとき,骨格に相違があっても,肉付きに似通ったところがあるということは生じ得るでしょう。たぶんスピノザの哲学の骨格と,カトリックの骨格となる部分には大きな相違がある筈です。そもそもスピノザが『神学・政治論Tractatus Theologico-Politicus』でいっていることは,哲学の骨格が真理veritasであるとすれば,聖書の骨格は服従obedientiaであるといっているように読解することができるのであって,スピノザ自身が自身の哲学と聖書の間には骨格上の差異があるということを主張しているといえますから,この点は深く考察するまでもなく明らかだといっていいでしょう。一方,敬虔pietasであるということを肉付きであるとすれば,その肉は真理の骨格からも服従の骨格からもつくことになるというようにスピノザはいっていると解せますから,骨格の相違があっても同じ肉が付き得るということについても,深い考察は必要とせずに明らかだといえるだろうと思います。
                                   
 したがって,それがどのような肉であったのかということまではいえませんが,スピノザの哲学についている肉と,カトリックの教義についている肉との間に,工藤は類似する部分を見出していたとみるのが妥当だと僕は思います。少なくともこの比喩でいえば,スピノザの哲学の骨格については工藤はそれほど重視していないのですから,スピノザの哲学の骨格とカトリックの教義の骨格との間に類似する部分があるとみていたわけではないということは明白だといえます。
 どこであるのかということまでは特定することはできませんが,工藤が,スピノザの哲学の肉付きが,カトリックの肉付きと似ているとみていたのであろうということまでは推測できました。そしてその類似性があったがゆえに,工藤はカトリックの洗礼を受けるに至ったとみるのが妥当でしょう。ただこの受洗は,単にこの事情だけで気楽にできるようなことではなかったように僕には思えるのです。
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朝日杯フューチュリティステークス&イエスのミステリー

2023-12-17 18:55:54 | 中央競馬
 第75回朝日杯フューチュリティステークス
 1馬身ほど遅れたシュトラウスが外から上がっていって発走後の向正面の中途で先頭に立ちました。それまで逃げていたのがセットアップで差がなく続いていたのがクリーンエア。この後ろはタガノエルピーダとダノンマッキンリーとバンドシェル。2馬身ほどあってジャンタルマンタルとオーサムストロークとナムラフラッカー。10番手にタイキヴァンクールでその後ろにミルテンベルクとエンヤラヴフェイス。サトミノキラリとタガノデュードがいて,2馬身ほど離れた最後尾がエコロヴァルツとジューンテイクとアスクワンタイムの集団。前半の800mは46秒1のハイペース。
 シュトラウスは先頭で4コーナーを回ってきましたが,その内に進路を取ったジャンタルマンタルがすぐに前に出ました。外の方から追ってきたのがタガノエルピーダとジューンテイク。さらに大外からエコロヴァルツの追い込み。エコロヴァルツが最も迫りましたが届かず,早め先頭のジャンタルマンタルが優勝。エコロヴァルツが1馬身4分の1差で2着。タガノエルピーダがクビ差の3着でジュンーテイクがアタマ差で4着。ジューンテイクとエコロヴァルツの間を伸びたタガノデュードが半馬身差で5着。
 優勝したジャンタルマンタルはデイリー杯2歳ステークスから重賞連勝。デビューから3連勝での大レース制覇。このレースは前走で1番人気か2番人気に推されて勝った馬がそのまま勝つという傾向。今年はその傾向に合致する馬が8頭いたのですが,この馬は1600mの重賞ということで,このレースと同じ条件でしたから,ほかの7頭よりは優位ではないかとみていました。ペースが速かったのはシュトラウスが暴走気味に走ったためで,早めに先頭に立って粘りきったことは,そのペースほどに評価できるものではありません。ただ2着馬との着差は大きかったので,来年以降の活躍も期待できるのではないかと思います。Jantar Mantarはインドの天体観測施設。
                                       
 騎乗した川田将雅騎手秋華賞以来の大レース41勝目。第69回,72回に続いて3年ぶりの朝日杯フューチュリティステークス3勝目。管理している高野友和調教師はマイルチャンピオンシップ以来の大レース6勝目。朝日杯フューチュリティステークスは初勝利。

 バーバラ・スィーリングBarbara Thieringという,その当時はシドニー大学で死海文書についての講義をしていた学者が書いた『イエスのミステリーJesus The Man -A New Interpretation From The Dead Sea Scrolls-』という本があります。学者が書いた本ですから学術書の扱いになっていますが,新約聖書の解釈に関する学術書としては問題を抱えている,極端にいえば問題しか抱えていないようなものなので,その点ではまったく推奨できるものではありません。ただ,新約聖書の福音書を,究極まで自然現象として生じたことと解することができるのかという実験としてとらえれば,なかなか面白い著作であるとはいえます。ここで僕が奇蹟miraculumと自然現象との間につけている区別distinguereがどのようなものであるかということがいまひとつ分からないということであれば,この本でスィーリングがなしている解釈は,その分節の理解の上で役立つでしょう。何しろこの本のような解釈をすれば,マリアが処女のまま懐妊してイエスを産んだというプロットについても,自然現象として解釈できるようになっています。ただ念のためにもう一度だけいっておきますが,これは解釈の上でのことなのであって,ここでスィーリングがいっていることを歴史上の事実と解釈しないでください。
 スピノザはその処女懐胎や,イエスの復活などは自然現象として生じ得ないので,比喩的にしか解することができないといいます。後者については書簡七十八で現にいっていますし,前者についてもそういうのは疑い得ません。そこでもしもこの種の奇蹟を認めることができなければキリスト教徒とはいえないというのであれば,スピノザはキリスト教徒ではあり得ないことになります。実際にこの書簡を受け取ったオルデンブルクHeinrich Ordenburgは書簡七十九でスピノザに宛てて,キリスト教の真理veritasはイエスの復活の信条によって支えられているといっていて,少なくともスピノザが生きていた時代において,スピノザをキリスト教徒であったというのは無理があるといえるでしょう。
 ただし工藤は現代人ですから,オルデンブルクと異なった考えをもつことはあり得ます。
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農林水産省賞典阪神ジュベナイルフィリーズ&工藤喜作

2023-12-10 19:19:26 | 中央競馬
 第75回阪神ジュベナイルフィリーズ
 スウィープフィートはタイミングが合わず1馬身の不利。シカゴスティングが逃げてテリオスルルとカルチャーデイとナナオの3頭が追う形。5番手にミライテーラー。6番手にコラソンビート。7番手にアスコリピチェーノ。8番手にクイックバイオとキャットファイト。10番手にコスモディナーとステレンボッシュとプシプシーナ。13番手にルシフェルとサフィラ。2馬身差でニュージェネラル。16番手にドナベティ。2馬身差でスプリングノヴァとスウィープフィートが最後尾を併走。最初の800mは46秒4のミドルペース。
 3コーナーではナナオが単独の2番手に上がり,3番手にミライテーラー。その後ろがテリオスルルとカルチャーデイとコラソンビートという隊列に。直線の手前では内を回ったテリオスルルが単独の3番手に。直線に入るとシカゴスティングが再びリードを広げ,外から追い上げてきたのがアスコリピチェーノとコラソンビート。この競り合いからアスコリピチェーノがコラソンビートを振り切ると,2頭の後ろからアスコリピチェーノの内に進路を切り替えたステレンボッシュの追い上げ。迫ったもののそこからは抜かせなかったアスコリピチェーノが優勝。ステレンボッシュがクビ差で2着。コラソンビートは1馬身4分の1差で3着。
 優勝したアスコリピチェーノは新潟2歳ステークス以来のレース。これで3戦3勝。重賞連勝での大レース制覇。2戦2勝で前走も1番人気に支持されての優勝でしたから,このレースの優勝馬の傾向に合致していたのですが,新潟2歳ステークスはあまりレベルが高かったようには思えませんでしたし,勝ち方が圧倒的というわけでもなかったので,僕には不安の方が大きい馬でした。3着までの3頭がその他の馬を離しましたので,ここはこの3頭の能力が上だったことになり,不安を感じる必要はなかったということでしょう。ただ上位3頭の能力差はそれほどなく,2歳の牝馬の中で抜けた存在というわけではないと思います。父はダイワメジャー。母のひとつ下の半妹に2015年のローズステークスを勝ったタッチングスピーチ。Ascoli Picenoはイタリアの都市。
 騎乗した北村宏司騎手は2015年の菊花賞以来の大レース4勝目。阪神ジュベナイルフィリーズは初勝利。管理している黒岩陽一調教師は開業から10年9ヶ月で大レース初勝利。

 レヴィナスEmmanuel Lévinasに関する注意はこれだけで十分でしょう。先に進みます。
 『スピノザーナ11号』は合田のこの論文の後,斎藤博と河井徳治による工藤喜作への追悼文が掲載されています。約束しておいた通り,ここで工藤について僕の方からひとついっておきます。
                                        
 『スピノザ哲学研究』の末尾には,書評でもいったように,娘である工藤寿子による文章が掲載されています。それによれば工藤は2005年の春に鎌倉の雪ノ下教会において,カトリックの洗礼を受けています。著者紹介では2007年にカトリック教会にて受洗となっていて,齟齬があるように思えるのですが,僕はカトリックの秘跡について詳しいわけではありませんから,もしかしたらこのふたつは違うことを意味するのかもしれません。しかしそこに齟齬があるとかあるいは意味に相違があるといったことは重要ではありません。工藤が晩年にカトリックの洗礼を受けてキリスト教徒になったというのは事実であって,僕はそのことについて指摘しておきたいのです。
 工藤はスピノザ哲学の研究者ではありましたが,単なる研究者というのとは違い,スピノザ主義者でもあります。つまり工藤にとってのスピノザは,単に研究の対象であったというだけではないのであって,スピノザが哲学的に解明した事柄は真理veritasであって,その真理に基づいて行動するように心がける人でもあったのです。このことは工藤が著書で表明していることや,インタビューで語っていることから明らかだといえますので,僕の方から詳しい説明を加えることはしません。
 工藤のこの立場は,もちろん産まれたときからだったということはできませんが,あるときから始まって,工藤が死ぬまで続いたということができます。『スピノザーナ11号』における工藤へのインタビューは,そこで紹介したように死の直前に行われたものですから,この点については間違いないといえます。したがって工藤は,スピノザの哲学を捨ててカトリックの信者になったのではありません。いい換えればカトリックの洗礼を受けるにあたって,思想的に何らかの意味での転向を果たしたというわけではありません。それらが両立したのです。
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