古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

「トヨタ生産方式の逆襲」

2015-03-11 | 読書
「トヨタ生産方式の逆襲」という本が文春新書から出ました。著者は鈴村尚久さん。著者の父・喜久雄氏(故人)は「トヨタ生産方式」の生みの親・大野耐一氏の右[実行部隊町]腕として知られた方です。「高名な鈴村さんのご子息がトヨタ方式をかたっているの?」、早速、本屋で購入してきました。鈴村さんは、トヨタ方式を社内だけでなく、協力企業などに指導する生産調査室主査を最後に定年退職、経営コンサルタントに転じ1999年に鬼籍に入った。
著者は語る。
【大野氏が工場視察をする際、勝手に同行したことが何度もあります。その時、生産ラインを診ては「わからん、わからん」と大きな声でくり返し言うのが口癖で、三河弁丸出しで部長や課長を質問攻めにしていました。
 この「わからん」がトヨタ方式の中では非常に意味のある言葉だと、後になって気づきました。
「どういう製品で、本当に必要なものものを必要なだけ作っているのか?
どのような作業をすればよいのか?
納期はいつか?
生産ラインの状況は正常なのか異常なのか?
これらは、誰が見ても一目瞭然でなければならない。】
[私は1976年にトヨタ自動車に入社し、経理部(工場原価仮担当)に配属されて以来、コンサルタントとして独立した今でもモノづくりの現場にかかわってきました。TPS(トヨタ方式)の歴史や本質については学んでいるつもりです。しかし、トヨタ生産方式という言葉を使うのは好きではありませんし使いたくありません。。何故かと言えば本来の定義が忘れられ、曲解、矮小化されて世間に伝えられているからです。たとえば「在庫を持たない『かんばん方式』という考え方自体が基本的に間違っていると思うからです。
 私は本書で、忘れられようとしているトヨタ生産方式の本質について語っていきたいと思います。】
「『トヨタ生産方式』=在庫を持たない」という先入観が世の中に広まっていることが、嫌いです。顧客のために適正在庫を持つべきです。】
【「かんばん方式」で肝心なことは、「引き取りかんばん」と「仕掛けかんばん」の組み合わせです。「引き取りかんばん」は工程間同士、あるいは企業間同士の情報のやり取りです。その情報に基づいて、各工程は、売れているモノだけを造れるように「仕掛けかんばん」を活用するのです。
一連の工程を川の流れにたとえると、上流部で様々な部材が組み合わされ、加工されることで製品となって、下流へと流れていきます。今、川の河口部分、つまりいちばん最後の工程は「売り場」です。部材なり製品なりという「モノ」が川の上流から河口部まで流れていく一方で、実はこの工程をさかのぼってくるものが生じます。「情報」です。
工場から製品が流れていくための仕組みと、その製品の流れを潤滑にするための情報が遡登っていく仕組み。二つが相互に補完するのが、本来の「かんばん方式」の姿です。】
【「後補充」と「ストア」を導入するもの造りが最も効力を発揮したのは、自動車や家電メーカーではなく、なんと「サラダづくり」の現場だった。
 ストアは4つつくりました。出荷場に材料を盛り付けて完成品にした「物流ストア」(盛り付けたポテトサラダ、卵サラダ、中華サラダなど)、その前工程に混ぜ合わせた半製品ストア(ポテトサラダ、卵サラダ、中華サラダなど)、さらにその前工程に「加工材料ストア」(ゆでたポテト、ゆでた卵、小さく切ったハマなど)、その前に「素材ストア」(ジャガイモ、卵など)を設置した。物流ストアの売れ行きに応じて前工程の各ストアは後工程引取りするのです。この方式でサラダの廃棄量はほぼゼロになりました。】
ホワイトカラーの生産性について、著者はこういう。
【「トヨタ生産方式」の対象は生産現場に限ったことではない。仕事の上流から下流の販売まで一貫した流れの中で仕事への取り組み方を見直したゆまぬ改革をしていくことです。
「お前なぁ、営業と言うのは電離層だぞ」父紀久男の口癖でした。「電離層」とは、ご存じのとおり、地球の大気の上の方でプラズマ状態になっている部分で。遠い海外のラジオ放送が受診できるのは、電波が電離層で何度も跳ね返されて進んでいくからです。父が言わんとしたことは、営業部門が工場と顧客の間に立ちはだかる「情報遮断装置」として悪さをしているというという意味です。
工場と顧客が情報を直接やり取りして話し合えば。解決できるのに、営業がそれを遮断する「電離層」になっているケースがあるというのです。】
【その発注は生産指示か、納入指示か・
モノには汎用品と線用品がある。汎用品とは、メーカーが自分のリスクで在庫を持っている製品のことです(汎用品に生産指示はない)。
私の提案です。納入までに時間がかかる専用品扱いの商品を汎用品同様に即納できる体制を築くことです。
「生産指示」により取引先の下請け協力企業に一定量の生産をさせて在庫を保有してもらい、そこに「納入指示」をかけて必要量を引き取る
以上を読んで、私の所感です。
確かに、トヨタ方式の本質を和あり易く説明しています。トヨタ方式は広義では、設計から製造。販売、使用、廃却に至るすべての工程を合理的に改善するものですが、狭義には「平準化生産を適用することでリードタイム(生産期間)を最小化する仕組みと考えています。このことを理論にこだわらず、豊富な事例でよく説明した本です。
「トヨタ方式」は、「矮小化されている」の言葉に著者の本質へのこだわりを感じました。
「トヨタ生産方式の逆襲」の「逆襲」は矮小化された「トヨタ生産方式」への「逆襲」の意味でしょうか。

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