古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

「産業革命以前」の未来へ

2018-05-10 | 読書

先日、野口悠紀雄さんの「入門ビットコインとブロッくチェイン」(2018年1月刊)をこのブログに取り上げました。7日、大学図書館の棚を診ていたら野口さんの『「産業革命以前」の未来へ』という本を見つけた。こちらは2918年4月の刊行です。

 野口さんは、何を言いたいのか、手に取ってみた。最終章でこう述べる。

「資本主義経済が衰退する」という指摘が、リーマンショック以降しばしば聞かれた。長期停滞の原因として、フロンテイアの消失をあげる意見である。すなわち、資本主義とは富を周辺から中心に集中させる仕組みだが、現在の世界には周辺が残されていないため、資本の収益率が低下し、資本主義が終焉せざるをえないのだという。確かに、地球上での、地理的なフロンテアは、ほとんど消滅したと言えるだろう。

 しかし情報・通信技術は、空間的な限界を超えてフロンテイアを広げている。フロンテイアは、新しい情報技術であるAIや「ブロックチェイン」によって、さらに拡大しつつある。

 長期停滞という面で本当に大きな問題を抱えているのは、じつは日本である。

 日本において、高度成長期と現代との違いは、フロンテイアの有無だといわれることが多い。日本からはフロンテイアが消滅してしまったという考えが一般的だ。しかし、フロンテイアは与えられるものでなく、積極的に作り出すものだ。人口が増加しなくなったからと言って、日本経済にフロンテイアがなくなったわけではない。新しい技術によって広がったフロンテイアが重要である。

 日本とドイツは第二次大戦後目覚ましく発展し、経済活力の点で、アメリカ、イギリスを抜いた。これは、日本の経済組織がその当時の技術に適合したものであったからだ。日本の製造業は、産業革命型のものだった。

 日本の高度成長期は、巨大企業の成熟期だった。ビジネスモデルは、すでにアメリカ企業によって確立されていたから、ひたすら成長し、大きくなることを目指せばよかった。その状況は1980年代から大きく変わった。にも拘らず日本の企業や産業構造は何も変わらなかった。日本の失敗の真の原因は、ビジネスモデルの基本的な方向が間違っていることだ。状況が変化したのなら、ビジネスモデルの方向も大きく変わらないといけない。

本書の「はじめに」ではこう述べている。

『本書では、大航海時代から産業革命を経て、現在に至る長い歴史の流れを見る。

いまどく「大航海時代を振り返る」などと言うと「時代錯誤」と思われよう。確かにこれは、500年も前のことだ。世界はその時と同じような大変化を迎えようとしている。それは一言で言えば、産業革命以前の独立自営業の世界への「先祖がえり」だ。

産業革命以降のビジネスモデルの基本は、さまざまな工程を一つの企業の中に統合し、組織を大規模化することで、効率化を図ろうとするものだった。しかし、1990年代以降、新興国の工業化や情報・通信技術の進歩でこの基本が変わりつつある。

 新しい経済において重要なのは、大組織の中で決まりきったことを効率的に実行することではなく、まったく新しいビジネスのフロンテアを見出すことだ。

 本書の基本的メッセージは、「産業革命によって垂直統合化、集権化、組織化が進展したが、あたらしいい経済の最先端は、それ以前の時代の分権的モデルへと先祖がえりしつつある」

 具体的事例として、ITの登場による産業構造の変化を、そして新しい情報技術である「AI」と「ブロックチェイン」が未来に向かって新しい可能性を切り開きつつあることを述べえる。

 最後にうした諸変化が現在の中国では同時に進行しつつあることに注目すべきだと述べる。


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