古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

続・世にも不思議な話

2008-07-25 | 経済と世相
 年金に関しては、もっと「世にも不思議な話」があります。
日本の年金制度が、賦課方式か積立方式か議論されることがあります。
以下、野口悠紀雄さんの『「超」リタイア術』(04年10月刊)によります。
『日本の公的年金は「実態的には賦課方式だが、積み立て方式のような外観を呈しているので、誤解を生じやすい」ことになった。』
 『「実態的には賦課方式」という側面をみよう。・・積立方式で運営されているなら「人口が高齢化したから、給付を切り下げる」ということは起こりえない。これは賦課方式の年金だからこそ生じる問題なのである。』
『では、日本の公的年金は、賦課方式なのか?実はそうとも言い切れない。なぜなら、賦課方式の場合にはありえない特徴がいくつも見られるからである。
 第一に、年金会計は巨額の積立金を保有している・・・
 積立金が存在するのは、積立方式の年金の特徴である。賦課方式で運営されているなら、巨額の積立金が存在する筈はない(支払い流動性を確保するために必要なのは、せいぜい支払額の1年分分程度(29兆円)であろう。
日本の公的年金が賦課方式といえないもう一つの理由は、一定の年数加入しないと受給資格が発生せず、また、年金額が加入年数や報酬月額に依存することだ。これは、積立方式の年金なら当然要求されることだが、賦課方式の年金では必ずしも必要ではない。』
どうしてこういうことになったか、野口さんの説明が、まさに「世にも不思議な話」です。かいつまんで要約すると、こうです。
『制度の発足時、厚生省は「積立方式」で設計した。積立方式の保険料を計算するには、二つの変数を決める必要がある。所得の伸び率と積立金の利子率です。
 厚生省の計算では、所得の伸び率をゼロと見なし、割引率(利子率)を5.5%と仮定したという。 所得の伸びがゼロとは、GDPの伸びのゼロの社会で、そういう社会では、金利もゼロに近づく筈です(GDPの伸び=付加価値の伸びで、利子も所得増加も付加価値の伸びの配分です)。つまり、計算違いをした。(信じられないことですが、厚生省の当時のお役人は、全員、経済学オンチでした。)』
この結果、積み立て方式で運営するには大幅な資金不足を生じ、足らない分は国が補助することにした。その補助額がだんだん大きくなって、その分が賦課方式になった。
 早く言うと、国家の運営する公的年金が、計算違いによって、積立方式から賦課方式に変わってしまったと言う。「世にも不思議な話」、と思いませんか?

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