古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

アメリカ流7歳からの行列

2010-02-15 | 読書
『アメリカ流7歳からの行列』(講談社ブルーバック、01年4月刊)という面白い本を見つけました。著者はドナルド・コーエン、訳者は新井紀子さん(経歴を見ると、一橋大学法学部卒、イリノイ大学数学科博士課程修了、理学博士。現在国立情報学研究所教授、社会共有知センター長。専門は数理論理学とある。法学部を出て数学の専門家という珍しい経歴です)。
数学の「行列」は高校では教えていない?大学の教養部で教えているのではないでしょうか。それを小学生に教えるという本です。読んで感服しました。これなら、小学生にも行列のなんたるかを教えることが出来ます。
内容紹介したいのですが、長くなりますので一つだけ、頭の体操しませんか。
小学生への行列の教え方。
1. 行列は多角形を表現したものと見なす。
たとえば、行列D1={x1、y1/x2、y2/x3、y3}
(行列がかきにくいので、/で次の行と見てください。上は3行2列の行列)
は、x―y平面で、点p1(x1、y1)、p2(x2、y2)、p3(x3、y3)を結ぶ三角形です。
2. D1に{cosθ sinθ/―sinθ cosθ}を右からかけて得られる行列は、D1を角度θで回転したものになります。
3. D1に行列{a、b/c、d}を右からかけて得られる行列の示す図形の面積は、D1の(ad―bc)倍になる。

以上が解ると、こんなこと(以下)が解ります。
 という公式は皆さんご存知です(斜辺長が1の直角三角形にピタゴラスの定理を適用すれば、この式が得られます)。
この公式を、ピタゴラスの定理を使わず、行列を使って証明できます。ということは、ピタゴラスの定理が行列で証明できる!
D={cosθ  sinθ/―sinθ cosθ}とします。
行列Dを右からかけることは、行列が表す図形を角度θで(反時計方向に)回転することを意味します。
一般に、図形をあらわす行列D1に、右から行列D2をかけて回転、拡大・縮小した図形の面積は、元のD1図形の面積を、行列式D2の値倍した値になる。
回転しただけでは図形の面積は変わらないので、この場合のD2(=D)の値は1です。
即ち、Dの行列式の値:となる。
行列を図形で説明する発想が、私には新鮮でした。