古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

百円でGET

2007-12-08 | 経済と世相
 月曜日のことです。午前中雨が降っていました。野暮用があって外出しました。傘を差して道路を歩いていたら、「どうぞ」とビラを渡すお姉さんがいる。
 見ると、バス通りに新しく「自然食品」の店を火曜日開店するというビラで、開店記念に、化学肥料を使わない特別栽培の新米「あきたこまち」1kg入りを9時半から¥100で売るという。100円は安い!と思った。 

 火曜日、9時25分。行ってみた。黒山の人だかり、行列である。(800人余が集まったとのこと)。新しく店ができたと思っていたが、ビルの一階に商品を積み上げているだけで、何の店内装飾も棚もない。

 時間になると、50人づつ入場して、店員が大声を上げて説明を始めた。この説明が面白い。まるで、寅さんの香具師の口上を聞いているみたいだ。

『100円で買って頂くのは、それなりの意味があります。コマーシャル!松坂投手にCMに一回出てもらうと2億円です。SMAPの5人組だと3億円。お集まりいただいた西区の皆さんに1500円の品物を100円で配った方がよっぽどか安い。TVのCMでは、商品の味までは分かりません。私どもの会社の名と商品を覚えて頂ければ、損はしません。』

要するに、東京の通信販売で「自然食品」の会社が、西区で3ヶ月、この場所で会員募集をする。今日からサンプル商品を100円で売るという。

『今日は「あきたこまち1kg袋」が100円!今日の品ものも良いが、明日の品ものもいい。明日は餅1kg入りの袋が白餅とよもぎ餅あわせて2袋で100円。明日もいいが明後日はもっといい。紀州の梅干、平日1575円が100円。・・』といった具合。

結局、30分の行列、15分の講釈で「あきたこまち」を入手。口上につられて、水曜も行列して餅二袋、木曜は南高梅一箱を、行列してGET。いくらか家計のたしになった?

GETした後反省した。安物に並ぶのは1回なら兎も角、3回も並ぶのは、いくら貧乏人とはいえ、少しは世間体を考えるべきだと。

それにしても、商売屋はいろいろのビジネスモデルを考えるものです。

話は別ですが、少し生き抜きの読書を愉しもうと、藤沢周平の「用心棒日月抄」を図書館で借りてきました。今、衛星TVで放映しているドラマの原作らしい。読んでみようと思ったのです。

 導入部から惹き入れられます。故あって郷里の藩を脱藩して、江戸で浪人暮らしの主人公・青江又八郎が、身過ぎの資を得るため、人入れ稼業の吉三の家を訪ねる。

 【「どうぞ、そこへおかけください」

そこというのは、板敷きの上り框のことである。べつに敷物も置いてない。腰をおろすと、たちまち尻の下から冷えが立ちのぼってきた。

 なんとなくみじめな気がしたが、仕事の世話を受けるのだから仕方なかった・・・】

 失業して仕事探しをする人の気分をうまく表現しています。下級武士の生活難が、現代の庶民の暮らしを思わせる。つまり、身につまされる話が随所に出る。

 この辺が、藤沢作品の面白さなんでしょう。平成の貧乏人には、江戸の貧乏人の話も身につまされるのです。