古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

藤原先生、吼える

2007-12-03 | 経済と世相
『教養立国ニッポン』と題して、藤原正彦さんが、文芸春秋12月号の巻頭論文を寄稿しています。
これが、実に痛快。全編、まさにこれ、藤原先生、吼える!です。

 まず、構造改革は完璧な失敗だったと、痛烈にこき下ろします。

【・・・90年代中ごろから大改革が矢継ぎ早に始まったのである。

 キーワードはグローバルスタンダード・・・成果主義や社外取締役制度を喧伝し、終身雇用を基本とした日本型経営や、株式持合いなどの日本型資本主義を悪玉に仕立て上げ始めた。・・ムーデイーズやS&Pといったアメリカの格付け会社が、日本の銀行や証券会社を格下げし始めた。世界最優良と言ってよいトヨタ自動車までが、何と終身雇用を採っているという理由で格下げされた。

 日本改造へのアメリカの強い意思と圧力は、その後もあからさまに続いた。ビッグバン、BIS規制から最近の郵政民営化、三角合併解禁に至るまで、いわゆる構造改革のほとんどは、アメリカ政府が「年次改革要望書」や「日米投資イニシアテイブ報告書」として日本政府につきつけられたものの実施にすぎなかった。この流れは今も続いている。WHOが世界でもっともすばらしいと評した、国民皆保健を軸とする日本の医療システムまでが、いま劣悪なものに改革されようとしている。】

 【誤った緊縮財政を継続したため、税収は伸びず、財政赤字はふくらみ、政府債務は160兆円も増加した。近頃、政府により増税が語られるようになったが、これは市場原理による構造改革の大失敗を物語るものでしかない。】

【市場原理とは自由競争のことである。規制をなくして自由な競争にまかせれば強者が勝ち続け弱者が負け続けるのは必定である。弱肉強食の世界となる。けだものの世界は自由競争の世界である。】

【無論、日本は資本主義社会なのだから格差はあってよい。・・・格差問題の本質は、国民の大多数が属すべき、勝者でも敗者でもない中間層が薄くなりつつあることである。・・社会から中流をなくしてしまうような経済学は、どのような美しい論理で飾っていようと誤りである。】と完膚ない。

【戦艦でもタンカーでも、船腹には多くの仕切りが設けられ、魚雷や衝突により一ヶ所に穴があいても被害が全体に及ばないようにしてある。カネとモノが国境をこえて自由に移動するということは、実に効率的ではあるが、仕切りなきタンカーのようなもので、一ヶ国の破綻が世界の破綻を引き起こすという脆弱なものなのである。

これら改革のわが国への影響は経済に止まらない。グローバル化と言いながら内実はアメリカ化であったから、経済とは切っても切れない社会や人心までが変質してしまった。わが国の至宝ともいうべき国柄が片端から壊され、日本は今、ごく凡庸な国へと坂道を転げ下りている。】

【ここ10年の「構造改革」は、もはや改革とは言えないレベルに達し、未だ続いている。熱病と言っても破壊活動と言ってもよい。・・・とりわけ小泉政権以降の7年間を一言で評すると、「よくぞこれほど祖国日本の国柄を壊してくれた」である。】(続く)