shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

パイのパイのパイ / 森山加代子

2011-11-06 | 昭和歌謡・シングル盤
 今年の7月頃から始めた昭和歌謡シングル盤蒐集も既に目標の95%以上を達成し、残すはプレミアの付く希少盤のみ。私はシングル盤に1,000円以上出すのには抵抗を感じる貧乏コレクターなので、ここから先は辛抱強く入札の谷間を狙うしかない。歌謡曲のシングル盤の大半は数百円で買えるのだが、中には常識を遥かに超えるような高値が付く盤があって困ってしまう。
 この数ヶ月のヤフオク・ウォッチングで一番ビックリしたのが私の大好きな小山ルミのグルーヴ歌謡「グッと..がまんして」で、何と28,800円で落札されたのである。この盤はほとんど売れなかったらしく、世間に出回っている数が極めて少ないとはいえ、アルバムではなく、シングル盤1枚でこの値段というのが凄い。ネット・オークションで入手することはほぼ不可能に近いので、コレに関してはどこかの古道具屋の片隅で二束三文で売られているのを見つけるしかないと半ば諦めている。
 今日取り上げるカヨちゃんの「パイのパイのパイ」もそんな入手困難盤の一枚で、小山ルミ盤のような異次元の高値ではないにせよ、2,500~5,000円ぐらいで取り引きされているレコードだ。私にとってこの曲は「じんじろげ」、「月影のキューバ」と並ぶ60年代カヨちゃん三大名曲のひとつなので何とかならんかなぁ...と思いながら息をひそめて網を張っていたところ、先月ついに念願叶ってめでたくゲット(^o^)丿 新規の出品者で盤質表記がVGスレ有りということでコレクター連中から敬遠されたのか、無風状態で1,000円で買えたのだが、届いた盤には大きなダメージは無く、プチパチ音もほとんど出ないNM盤だった\(^o^)/
 この曲は1961年5月に「じんじろげ」(1月)、「ズビズビズー」(4月)に続く同年3枚目のシングルとしてリリースされたもので、前年の「メロンの気持ち」あたりから始まった “言葉遊び系コミカル歌謡” 路線の集大成といえる楽しいナンバー。ドリフもカヴァーしたことで有名なこの曲、私はてっきり彼女のオリジナル曲だと思っていたのだが、YouTube の関連動画に「東京節」という曲がゾロゾロ出てきたのでもしやと思って調べてみると、この曲はアメリカ南北戦争時代に作られた「Marching Through Georgia」という曲を元にして神長瞭月(←添田さつきという表記もあるらしい...)という人が大正時代に作った「東京節」というコミック・ソングがオリジナルとのこと。いやはや、音楽ブログやってるとホンマに勉強になりますわ(^.^)
 カヨちゃん・ヴァージョンの歌詞は「じんじろげ」を書いた渡舟人が新たに書き下ろしたもので、 “お山で育った山ざるが 東京の空に憧れて 出てきたまではよいけれど~♪” とか “かぼちゃが八百屋の店先で テレビを見ながら言いました~♪” とかいった童謡風のストーリーにオリジナル「東京節」の意味不明リフレイン“ラーメチャンタラ ギッチョンチョンデ パーイのパイのパイ パリコト パナナデ フライ フライ フライ♪” をくっ付けて見事な作品に仕上げている。食べ物を一気に羅列する3番の歌詞 “ラーメン ぎょうざに 肉まんじゅう おしるこ あんみつ ところてん クリームソーダに レモネード コーヒー 紅茶に アップルパイ~♪” のラインも子供達にウケそうだ。
 編曲も「じんじろげ」と同じ中村八大で、イントロにさりげなく「アルプス一万尺」のメロディーを引用し、そこから一気に40年代ビッグバンドのようなジャジーなムード横溢の展開に持っていくという意表を突いたアレンジはもう見事という他ない。童謡風の無邪気な歌詞とジャジーなアレンジが織りなすアンビバレントな味わいこそ、カヨちゃん・ヴァージョンの一番の魅力であり、聴けば聴くほど中村八大という音楽家の懐の深さというか、改めて彼の天才を見る思いがする。もちろんそれを歌いこなすカヨちゃんのシンガーとしての表現力も特筆モノだ。
 コミック・ソングの王道を行くドリフ・ヴァージョンや植木等が映画「日本一のショック男」で歌った “パイのパイの日本” ヴァージョンなど、この曲には他にも捨て難い名演が色々あるが、私は歌詞・アレンジ・ヴォーカルが高い次元で絶妙なバランスを保っているカヨちゃん・ヴァージョンが一番好きだ。

パイのパイのパイ 森山加代子


Marching through Georgia


ドリフのバイのバイのバイ


日本一のショック男挿入歌

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2 コメント

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jazzyパイのパイのパイ (901)
2011-11-08 22:26:41
こんばんは、901です。
この歌もちっちゃいときよく聴きましたが今聴くととてもjazzyなサウンドだったんですね。
歌にからんでくるクラリネットなんか、いいテイストです。北村英治あたりが吹いてるんでしょうかね。
森山加代子のyou tubeは3回見さ(聴か)せてもらいました。オーキニ!
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レベル高っ!!! (shiotch7)
2011-11-09 18:38:19
901さん、こんばんは。
ジャジーなカヨちゃん、お気に召して何よりです。
今から振り返ると当時の歌謡曲ってめっちゃレベル高かったんですね。
ジャズは50年代、ロックと歌謡曲は60~70年代前半のものが自分的には一番しっくりきます。
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