shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Who's Last / The Who

2011-07-02 | Rolling Stones / The Who
 ザ・フーはそのサウンドの屋台骨を支えていたキース・ムーンが1978年に急死した後、元スモール・フェイセズのケニー・ジョーンズを後任ドラマーに迎えて再出発を図った。このあたりはボンゾの死をもって活動を停止したレッド・ゼッペリンとは好対照だが、とにかく彼らは “続ける” ことを選んだのだ。しかし残念なことにシュアーなプレイを信条とするケニーのスタイルはザ・フーとは合わなかった。それはケニー時代のスタジオ録音アルバム「フェイス・ダンシズ」と「イッツ・ハード」を聴けば明らかで、キース時代の諸作に比べれば気の抜けたビールというか、決定的な何かが欠けていた。
 キースの死後、バンドへの熱意を失いつつあったピートはそんな状態でバンドを続けていくことに限界を感じたのか、ついに1983年にザ・フーの解散を発表、当時の北米ツアーがそのまま “サヨナラ・ライヴ” となったのだが、その時の模様を収録したライヴ・アルバムが1984年の末に出たこの2枚組「フーズ・ラスト」である。
 このアルバムの収録曲はすべてキース時代の作品(英Track、米MCA)で占められており、ワーナー・ブラザーズから発売されたケニー在籍時代の2枚のアルバムからの曲が1曲も入っていないのだが、それは多分このライヴ盤が MCA レコードからリリースされたからだろう。いずれにせよ、いきなり①「マイ・ジェネレイション」から始まって②「アイ・キャント・エクスプレイン」、③「サブスティテュート」と続く流れはまさに “ライヴ音源によるベスト盤” 的な色合いの濃い選曲であり、私としては大歓迎。しかし好事魔多しと言うべきか、私が買った1枚物の輸入盤CDは情けないぐらいに薄っぺらいサウンドで、私の中では “「フーズ・ラスト」はイマイチ元気がない” という刷り込みがなされてしまった。
 しかし今年に入って “ザ・フー・アナログ盤フィーバー” に突入した私は、あのユニオン・ジャックが燃えているジャケットを LP サイズで欲しくなったのと、CD はスカスカでもアナログ盤ならエエ音するかもという好奇心から、UK オリジナルの MCA レーベル盤を£4.99でゲット。このあたりの盤になるとほぼ無競争で買えるのが嬉しい。支払いを済ませてからちょうど1週間でイギリスからブツが到着、スモール・パケットから取り出した2枚組 LP の “燃えさかるユニオン・ジャック” のジャケットはインパクト抜群だ。
 肝心の音の方だが、コレがもう手持ちの旧規格ヘタレ CD とは異次元のリッチなアナログ・サウンドで、イマイチ面白味に欠けると思っていたケニーのドラミングはキースやザックには及ばないまでも、ライヴということもあってか彼にしてはかなり頑張って叩いているように思う。さすがに⑬「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」なんかはキースやザックの爆裂ドラムが恋しくなるが、それ以外のトラックに関しては大きな不満はない。一旦音楽が始まってしまえばドラマー比較などという悠長なことを考えていられないくらいの圧倒的な説得力を持って迫ってくるところがライヴで最高の魅力を発揮するザ・フーのザ・フーたる所以だろう。
 とにかく息をもつかせぬ名曲のつるべ打ちといった感のあるこのアルバム、①②③の60年代大ヒット3連発に続くのは④「ビハインド・ブルー・アイズ」、⑤「ババ・オライリー」、⑥「ボリス・ザ・スパイダー」、⑦「フー・アー・ユー」、⑧「ピンボール・ウィザード」、⑨「シー・ミー・フィール・ミー」と、彼らのライヴには欠かせない大定番曲がズラリと並んでいる。この期に及んで “ドラムスが云々...” というのは素直に音楽を楽しめない野暮な人達のタワゴトに聞こえてしまうぐらいの充実した内容だ。
 ⑩「ラヴ・レイン・オーヴァー・ミー」で一旦クール・ダウンした後、⑪「ロング・リヴ・ロック」とその⑫「リプリーズ」の連続攻撃でオーディエンスは一気にヒートアップ。「ジョニー・ビー・グッド」を裏返しにしたようなメロディー展開が楽しいこの曲は、映画「キッズ・アー・オールライト」のエンディングでも実に印象的に使われていたが、ライヴ・ヴァージョンでは更にテンポが上げられ、ノリノリのロックンロールに仕上がっている。私がこのアルバム中で一番好きなトラックだ。
 LP の D面にあたるラスト4曲も凄まじい。⑭「ドクター・ジミー」、⑮「マジック・バス」、そして彼らの十八番である⑯「サマータイム・ブルース」と、フィナーレへ向けて一気に加速していき、トドメが何とあの⑰「ツイスト・アンド・シャウト」である。「ツイスト・アンド・シャウト」といえばもちろんビートルズのヴァージョンがスタンダード化しているが、ザ・フーも例のコーラスで始まるビートルズ・アレンジで演っている。
 このサヨナラ・ツアーの模様は「ライヴ・フロム・トロント」という DVD でも見れるのだが、ベースを弾きながらヴォーカルを取るジョン・エントウィッスルの歌い方はもろにジョン・レノンを想わせるし、身を寄せ合って1本のマイクでバック・コーラスを付けるピートとロジャーの姿はポールとジョージそのものだ。オーディエンスはもう大盛り上がりである。やっぱりロックのライヴはこうでなくっちゃ(^.^)  尚、その DVD では「5:15」でロジャーが振り回すマイクのコードがピートのギター・シールドに絡まってしまい、ロジャーが焦って必死にほどこうとするシーンが微笑ましくて好きなのだが、画質が VHS 3倍モード並みに悪いのが玉にキズか...(>_<)
 キース・ムーンが叩いていないということでファンの間では何となく黙殺されているように感じられるこのアルバムは、ドラムスが大暴れしない分、むしろ “聴きやすいザ・フー・ヒット・パレード・ライヴ” として気軽に楽しめる1枚と言えるのではないだろうか。ザ・フーの歴史はここで幕を閉じる... はずだった。

The Who-Long Live Rock


The Who - Twist & Shout - (Live)

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2 コメント

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16 Track Live Double ! (moondreams)
2011-07-03 07:17:52
’80年代当時 僕は遅れてきた Whoのファンだったので、ケニー時代のスタジオ録音アルバムも真面目に聴いてました。でっ このLPも解散記念で買ったんだよ・・・たぶん。でもP・タウンゼントのScoopシリーズのほうをよく聴いてました。(笑)
1984年発売時Who's Last米国盤(輸入盤)は、確か?キンキラ金のジャケットでも売ってましたましたね。品の良い僕は”16 Track Live Double - WHO1”のシールが貼っている英国盤(輸入盤)をモチロン選びました。(爆)
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US盤ジャケット (shiotch7)
2011-07-03 20:14:29
こんばんは♪
moondreamsさんより更に十数年遅れてファンになった(笑)私としては
リアルタイムの体験談はとても興味深いです。
それにしても手抜きとしか言いようのないキンキラ金のUS盤ジャケット、
アレでは購入意欲が失せますね。
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