shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ザ・タイマーズ (Pt. 2)

2011-07-27 | J-Rock/Pop
 タイマーズのこのデビュー・アルバムはゼリーさんのオリジナル曲を中心に、モンキーズの2大名曲「モンキーズのテーマ」と「デイドリーム・ビリーバー」のカヴァー曲を要所要所に配置することによって絶妙な流れを作り出しており、デルタ・ブルースの薫りが色濃く立ち込めるアコースティックでシンプルなロックンロールに乗せて、原発を始め「カバーズ」で顕在化した様々な社会問題を真っ正面から取り上げている。基本的に4ピースのガレージ・パンク・バンドのノリなので、「カバーズ」や「コブラの悩み」に比べてサウンド・プロダクションがシンプルになった分、歌詞のメッセージがよりストレートに伝わってくる。
 まずは何と言っても1曲目の①「タイマーズのテーマ」の歌詞が最高だ。 “キメたい 燃やしてくれ さえない時はぶっ飛んでいたい~♪” “火をつけて お前の匂いを嗅ぎたいぜ~♪” “いつでも君と笑っていたいな~♪” “素敵な君と トリップしたいな~♪” “まわしてくれ ここでとびたい~♪” というように麻薬吸引を示唆するフレーズを連発し、一気に “Timer を持ってる~♪” “Timer が大好き~♪” へと繋げるのだが、どこをどう聴いても “大麻を持ってる” “大麻が大好き”としか聞こえない(笑) ゼリーさんのユーモアのセンスにニヤリとさせられる、実に完成度の高い空耳ソングだ。又、アレンジも絶妙で、原曲の良さを見事に引き出しながら自分たちのオリジナルであるかのように聴かせるあたり、このバンドの音楽性の高さを如実に示している。
 尚、この曲はラス前で「サージェント・ペパーズ」を模してか1分にも満たない⑯「タイマーズのテーマ(エンディング)」として反復されるのだが、その歌詞が “Timer が切れてきたぁ~♪”(← “切れてくる” ってモロやん!)、“Timer が欲しい 急いで帰って ヘラヘラ笑うぜ~♪” と実に見事にオチがキマッている。清...じゃなかったゼリーさん、これ作ってる時はめちゃくちゃ楽しかったやろなぁと思うが、それにしても “原発” はダメで “大麻” がOKって、東芝EMI って一体どういう発想の会社なのだろう? それって “原発” は “大麻” よりもタブーということなのか???
 偽善者・被害者・犠牲者・司会者・親会社・子会社・2トン車・配偶者と、ゼリーさんのライミングが冴え渡る②「偽善者」、さりげなく東芝への皮肉を交えながら一般大衆目線で反骨精神を歌い上げた③「偉人のうた」、ド演歌調で “替え歌のひとつにもいちいち目くじらを立てる 嫌な世の中になっちまったもんでござんすねぇ えぇ 社長、どうなんだい!” とこれまた「カバーズ」騒動を痛烈に皮肉った④「ロックン仁義」、そしてコレに続くのがタイマーズ屈指の名カヴァー⑤「デイ・ドリーム・ビリーバー」だ。
 以前にも取り上げたことがあるこの曲は私の中では名曲の殿堂入りしているキラー・チューン。当然数々の名カヴァーが存在するのだが、そんな中でもゼリーさんの優しい人柄が滲み出た歌声にホロリとさせられるタイマーズ・ヴァージョンが一番好き。特に “Cheer up, sleepy Jean~♪” のラインを “ずっと夢を見て~♪” とやったゼリーさんのメロディーに日本語を乗せていくセンスには脱帽だ。曲中の “彼女” は彼の亡くなったお母さんのことを歌ったものだと言われており、そういう耳で聴くと余計に胸にグッとくるモノがある。当時エースコック・スーパーカップのCMソングとして大ヒットしたこの曲はタイマーズの、いや、清志郎の代表曲の一つと言っていい名曲名演だ。
 伸ちゃん...じゃなかったトッピさんが作った⑥「土木作業員ブルース」は泥臭いブルースで何度も聴いているうちに病み付きになるスルメ・チューン。⑦「争いの河」も泥臭さ全開のデルタ・ブルースで、特にトッピさんのスライド・ギターの切れ味は絶品! ドラムスのパーさんが生み出す弾むようなリズムに乗って変幻自在なプレイを聴かせてくれる。演奏だけ聴いたら日本人ミュージシャンのものとは思えないぐらいグルーヴィーで、私がこのアルバム中で最も愛聴しているナンバーだ。
 昭和天皇が亡くなった時の大喪の礼による交通規制を皮肉った⑧「カプリオーレ」、スペシャルズもビックリのスカの裏打ちリズムを隠し味に原爆から原発へと繋げたシニカルな歌詞を歌いまくる⑨「ロング・タイム・アゴー」、自らの体験を基に世の中の不条理な現実をクールな視点から歌にした7分を超える大作⑩「3部作:人類の深刻な問題~ブーム・ブーム~ビンジョー」、ウザい政治家連中をおちょくった⑪「ギーンギーン」と⑫「総理大臣」、カントリー・タッチの軽いサウンドで日本人を皮肉った自虐的⑬「ロンリー・ジャパニーズ・マン」と、ロックンロールをベースにしながらも様々な音楽のエッセンスを取り入れながらヴァラエティーに富んだアルバムに仕上げている。
 ⑭「税」は⑦と並んでトッピさんのスライド・ギターが縦横無尽に暴れまくる疾走感溢れるロックンロール。「学園天国」を想わせる掛け合いのパートも楽しいが、何と言っても“間接税、消費税、増税、そりゃないゼェ~♪” “物品税、分離課税、市民税、酒がしみんゼェ~♪” と速射砲のように繰り出されるシニカルな歌詞が最高だ。“風邪ひくゼェ~♪” にも大笑い(^o^)丿 歌詞良し、曲良し、演奏良しと、三拍子揃ったキラー・チューンだ。
 ⑮「イモ」はFM東京事件で有名な「夜ヒット」でも演奏していたが、私の耳にはどうしても “陰毛” に聞こえてしまう。曲の出来としては可もなし不可もなしという感じなので、とにかく気のすむまで “インモォー” を連呼したかっただけなのかもしれない(笑)  そしてアルバムは⑯「タイマーズのテーマ」のリプリーズに続いてわずか30秒ほどの⑰「ウォーク・ドント・ラン」でシメ。ライヴではよくベンチャーズを演っていたが、それにしてもアコギでベンチャーズ・ナンバーをバリバリ弾きまくるゼリーさんがめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 とにかくこの「ザ・タイマーズ」、CD1枚約50分を一気呵成に聴かせて全く飽きさせない超一流のロックンロール・アルバムだ。
 尚、2006年のリマスター版にはボートラとしてシングル「ロックン仁義」のB面(とゆーか、2nd & 3rd beat)だった⑱「企業で作業」と⑲「ダイナ(嫌煙のダンナ)」が追加収録された19曲入りになっているのでそちらの方がお買い得だ。

タイマーズのテーマ 


デイドリーム・ビリーバー


THE TIMERS - PIPE LINE  1990 #01


タイマーズ 税


the timers / long time ago
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