shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ザ・タイマーズ (Pt. 1)

2011-07-23 | J-Rock/Pop
 忌野清志郎のキャリアの中でRCサクセションと共に重要な位置を占めるのが、例の「カバーズ」騒動を受けて彼が結成した覆面バンド、ザ・タイマーズである。彼の40年近いキャリアの中では、RC 後期からこのタイマーズ、そしてそのスピンオフ的存在のアルカイダーズ(笑)あたりまでの、風刺の効いた歌詞を絶妙なユーモアのオブラートで包み、高い音楽性でもって表現しながらゲリラ・ライヴを行っていた頃の作品が一番好きだ。
 このタイマーズ、正式名称は英語で The Timers となっており字面ではキッチンタイマーの “タイマー” のことだが、コレは同時に “大麻” に引っ掛けたもので、いかにも遊び心溢れる清志郎らしいバンド名だ。メンバー名は GS のタイガースに引っ掛けて、ゼリー(vo)、トッピ(g)、ボビー(b)、パー(ds)(←本家のジュリー、トッポ、サリー、ピーをもじっている...)となっており、それぞれ清志郎、三宅伸治、川上剛、杉山章二丸のそっくりさん(笑)である。しかもメンバーはみんな手拭いにサングラスで顔を隠し土木作業員の格好で演奏するというからインパクトは抜群だ。
 彼らのアルバムは1989年のデビュー作「ザ・タイマーズ」、1995年に出たライヴ盤「復活!!ザ・タイマーズ」とそのわずか4日後(!)にインディーズ・レーベルからリリースされた「不死身のタイマーズ」(←廃盤で入手困難とはいえアマゾンでの中古価格が凄いことになってる... 何と驚愕の13,500円~159,800円!!! CD1枚に16万円も出すバカおるんかいな???)の3枚があるが、歌詞が過激すぎてアルバムに収録できなかったものも少なくない。そんな中でも一番笑えるのが、タイマーズ結成のきっかけともなった原発問題を徹底的におちょくった「原発賛成音頭」である。
 「サマータイム・ブルース」で原発を批判したがためにレコードを発売中止にされた清志郎は、敢えて “音頭” という日本古来のノーテンキなリズムに乗せて原発を茶化す歌を唄うことによって見事に切り返したのである。まずは “これなら問題ないだろ~ みんな大好き原子力♪” という「カバーズ」騒動への痛烈な皮肉で東芝を一刀両断、返す刀で “日本の原発世界一 何にも危険はございませーん” “一家に一台原子力 原発推進当たり前” と諧謔精神とユーモアに満ちたフレーズ連発で電力会社をメッタ切り。しかも下に貼り付けた動画はよりにもよって福岡電気ホールでのライヴときたもんだ(笑) オーディエンスを煽りながら “九州電力バンザーイ!” とか “自信を持っていきましょう! 何も怖がることはありません、安全ですよぉ” とか、もう面白すぎて腹筋が痛い。そしてエンディングの “オマエら よくやるよなぁ ホントになぁ” という清志郎の醒めた声がトドメの一撃になっている。それにしても今の日本の状況を鑑みるにつけ、清志郎の洞察力というか、先見の明はホンマに凄かったんやなぁと改めて痛感させられる。
原発音頭 タイマーズ


 体制ベッタリのラジオ局を名指しでこき下ろした「FM東京のうた」も最高だ。事の経緯はウィキペディアに詳しく書かれているのでそれを転載すると、“フジテレビの音楽番組「ヒットスタジオR&N」に出演した際、予定されていた曲目は「タイマーズのテーマ」→「偽善者」→「デイドリーム・ビリーバー」→「イモ」の順であったが、「偽善者」の所で突然FM東京を「おマンコ野郎」などと放送禁止用語を用いて罵倒する曲にすり替えて歌った。ゼリーの友人である山口冨士夫の曲がFM東京とFM仙台で放送禁止にされたことと、「COVERS」収録の「サマータイム・ブルース」が放送禁止にされたことに対する反撃だといわれる。東芝EMIに所属するタイマーズの、この行為への報復としてFM東京は発売直前だった松任谷由実のアルバム『LOVE WARS』の曲を一切放送しないということを東芝EMIに通知した。”とのこと。
 何でユーミンを放送禁止にするのか全くワケが分からないが、その事自体 “何でもカンでも放送禁止♪”を逆説的に証明する愚行だということにすら気がつかないアホバカ放送局であることだけは間違いない。それにしてもこの痛快極まりない言葉の速射砲は何度聴いても胸がスカッとする。これこそまさにロックの精神そのものだ。特にエンディングの “ざまぁみやがれぃ!” が最高にカッコイイ(^o^)丿
FM東京のうた


 ついでにもう一つ、タイマーズではないが強烈なのがある。ギターの三宅伸治とのユニットで文字通りゲリラってたアルカイダーズ(笑)だ。メンバーはゼリーとトッピ改め、長間敏(おさまびん)と神田春(かんだはる)、遠くアフガンからはるばる自転車に乗ってやってきたらしい。この「アルカイダーズのテーマ」は「モンキーズのテーマ」をパロッた大麻ネタの「タイマーズのテーマ」の歌詞を一部変えて9.11ネタにしたもので、 “キメたい 燃やしてくれ 貿易センタービル 2つとも~♪” というブラック・ジョークで始まり、 “破壊が大好き いつでもどんな時も 素敵なテロリズム~♪” という超不謹慎なフレーズが連発されるのだが、コレは先の「原発賛成音頭」と同様、清志郎流のユーモアと解釈すべきだろう。まぁその格好といい、カタコトでブチかますおもろいトークといい、タイマーズよりも遥かにエンターテイメント的色彩が濃いユニットだが、それにしても同時多発テロの翌年にこんな曲をラジオのイベントで歌うあたり(←放送ではカットされたらしいが...)もう怖いモノ無しという “ふっきれた感” すら漂う。 RC ではとても出来ないことをタイマーズやアルカイダーズといった身軽なユニットを使ってやりたい放題やっているといった感じなのだ。因みに清...じゃなかった長間敏の命日である5月2日に本物のビン・ラディンが殺されたというのも何か因縁めいたものを感じてしまう。(つづく)
アルカイダーズ