「コブラの悩み」が気に入って清志郎熱が再燃したた私が次に買ったのは当然「カバーズ」だった。1986年にソ連のチェルノブイリで起きた原発事故に触発された清志郎は原子力問題を始めとして戦争やテロを題材にした歌詞を洋楽のメロディーに乗せて歌うという替え歌プロテスト・ソング集のアルバムを作ったが、その中に反原発ソングが含まれていたせいで所属レコード会社である東芝EMIが発売を拒否、紆余曲折を経て(←この辺の経緯はウィキペディアに詳しく載ってます...)結局古巣のキティ・レコードから発売されることになったという曰く付きのアルバムである。
まずは何と言っても今回の清志郎祭りのきっかけとなった⑦「サマータイム・ブルース」である。誰もが知っているロックンロール・クラシックスを反原発ソングに仕立て上げた清志郎の日本語センスには脱帽だ。これは他の曲にも言えることだが、まるでオリジナル曲であるかのように自分の伝えたいことを言い切っているところが凄い。このメロディーに乗せてこれこれこんなメッセージ・ソングの歌詞を書いてくれ、と言われて “あいよ!” と11曲分もそう簡単に書けるものではないだろう。
歌詞は “東海地震もそこまで来てる~♪” とまさに23年前に今回の原発事故をズバリ予言するかのようなフレーズに始まり、“原子力発電所が建っていく さっぱりわかんねぇ 誰のため?”“それでもテレビは言っている 「日本の原発は安全です」 さっぱりわかんねぇ 根拠がねぇ!” と、日本の原子力行政のダーク・サイドを鋭くえぐるものだ。この歌を繰り返し聴けば聴くほど清志郎の洞察力の凄さを改めて痛感させられる。
前回貼り付けた映像は DVD「ライヴ帝国」からのもので、この曲のライヴ映像を見れる唯一の市販 DVD だと思うが、今回は88年の年越しライヴ(ロックンロール・バンドスタンド)の貴重な映像を見つけたのでそっちを貼ってみた。 “新宿区からいらっしゃいました仲井戸麗市さん”(笑)が間奏でギターを客席に向け、ガイガー・カウンターを模したと思しきサウンドを響かせる。私的には高井麻巳子がバック・ヴォーカルを付けるスタジオ録音ヴァージョンよりも金子マリのグルーヴィーな歌声が聞けるライヴ・ヴァージョンの方が好きだ。
とにかくコレはもう単なる替え歌のレベルを軽く超越して完全無欠な清志郎ナンバーに昇華されており、オリジナルのエディー・コクラン、ロック・バンドによるカヴァーの雛形となったザ・フーと並ぶ “サマータイム・ブルース3大名演” の一つと言っていいと思う。
⑤「ラヴ・ミー・テンダー」は言わずと知れたプレスリー・ナンバーを “反核ソング” にしたもので、いきなり “何言ってんだ~♪” とダジャレで入るあたりは清志郎の照れ隠しか。しかしそのすぐ後に“ふざけんじゃねぇ 核などいらねぇ~” と一刀両断。“放射能はいらねぇ 牛乳を飲みてぇ” “何やってんだ~ エラそうに 世界の真ん中で♪” なんてまさにトホホな今の日本の状況そのものだし、“巧みな言葉で一般庶民を騙そうとしても ほんの少しばれてる その黒い腹~♪” なんて政治家や電力会社、マスコミの実態を簡潔明瞭に暴いていて痛快そのものだ。
反核・反原発以外ではプロテスト・ソングの王道とでも言うべき政治・テロ・戦争ネタのナンバーが秀逸だ。特に私が気に入っているのが大韓航空機爆破事件の事を歌った④「シークレット・エージェント・マン」で、イントロは何と金賢姫の肉声入りという凝りようである。日本語詞の内容も実に生々しいもので、政治的には原発よりもこっちの方がヤバイんちゃうの?と思ってしまう。途中でコブシの効いた歌声を聞かせてくれるのは演歌の坂本冬美で、賛否両論あるだろうが私的には曲の展開にメリハリが付いて大正解だと思う。
ライヴ名盤「コブラの悩み」の1曲目を飾った①「イヴ・オブ・デストラクション」にしても、これまで幾多のアーティスト達にカヴァーされてきたディランの②「ブロウイン・イン・ザ・ウインド」にしても、世界に一つしかない清志郎の “声” によって新たな生命を吹き込まれ、生き生きと躍動している。そして圧巻なのがジョン・レノンの⑪「イマジン」... 日本人でこれほどソウルフルで説得力のあるヴォーカリストが他にいるだろうか? 私としては彼の歌声にただただ聴き入るのみだ。
③「バラ・バラ」はレインボウズの1967年のヒット曲を清志郎が巧くもじったもので、ゲスト参加の桑田師匠(←何故か Isuke Kuwatake とクレジットされているが...笑)もノリノリでコーラスしている。ストーンズの⑥「ペイント・イット・ブラック」やアダモの⑨「サン・トワ・マミー」も見事に清志郎の色に染め上げられており、そのどれもが実に新鮮に耳に響いて心地良い。
当時の清志郎はこの “カバーズ騒動” が相当アタマにきていたようで、その後の「コブラの悩み」やタイマーズでのゲリラ活動へとつながっていくのだが、それは原発の是非云々の問題というよりもむしろ言論の自由を侵されたことに対するやり場のない怒りのように思えてくる。脱原発を訴える清志郎のような人達のストレートな心の叫びを真摯に受け止めずに無視してきた結果が今の福島の、いや、日本の惨状なのだ。人類史上最悪の原発事故を引き起こしてから既に4ヶ月以上が経ったが、今の fuckin' 能なし政府の下では一向に収束する気配がなく、その一方で官民あげての電力不足キャンペーンで “節電” の大合唱、ついにヤフーにまで電力消費量が張り出される始末である。これこそまさに “狭い日本のサマータイム・ブルース” ではないだろうか...
RCサクセション / サマータイム・ブルース ('88.12.31-'89.1.1)
LOVE ME TENDER
SECRET AGENT MAN (金賢姫) .wmv
忌野清志郎/サン・トワ・マミー
忌野清志郎 IMAGINE
まずは何と言っても今回の清志郎祭りのきっかけとなった⑦「サマータイム・ブルース」である。誰もが知っているロックンロール・クラシックスを反原発ソングに仕立て上げた清志郎の日本語センスには脱帽だ。これは他の曲にも言えることだが、まるでオリジナル曲であるかのように自分の伝えたいことを言い切っているところが凄い。このメロディーに乗せてこれこれこんなメッセージ・ソングの歌詞を書いてくれ、と言われて “あいよ!” と11曲分もそう簡単に書けるものではないだろう。
歌詞は “東海地震もそこまで来てる~♪” とまさに23年前に今回の原発事故をズバリ予言するかのようなフレーズに始まり、“原子力発電所が建っていく さっぱりわかんねぇ 誰のため?”“それでもテレビは言っている 「日本の原発は安全です」 さっぱりわかんねぇ 根拠がねぇ!” と、日本の原子力行政のダーク・サイドを鋭くえぐるものだ。この歌を繰り返し聴けば聴くほど清志郎の洞察力の凄さを改めて痛感させられる。
前回貼り付けた映像は DVD「ライヴ帝国」からのもので、この曲のライヴ映像を見れる唯一の市販 DVD だと思うが、今回は88年の年越しライヴ(ロックンロール・バンドスタンド)の貴重な映像を見つけたのでそっちを貼ってみた。 “新宿区からいらっしゃいました仲井戸麗市さん”(笑)が間奏でギターを客席に向け、ガイガー・カウンターを模したと思しきサウンドを響かせる。私的には高井麻巳子がバック・ヴォーカルを付けるスタジオ録音ヴァージョンよりも金子マリのグルーヴィーな歌声が聞けるライヴ・ヴァージョンの方が好きだ。
とにかくコレはもう単なる替え歌のレベルを軽く超越して完全無欠な清志郎ナンバーに昇華されており、オリジナルのエディー・コクラン、ロック・バンドによるカヴァーの雛形となったザ・フーと並ぶ “サマータイム・ブルース3大名演” の一つと言っていいと思う。
⑤「ラヴ・ミー・テンダー」は言わずと知れたプレスリー・ナンバーを “反核ソング” にしたもので、いきなり “何言ってんだ~♪” とダジャレで入るあたりは清志郎の照れ隠しか。しかしそのすぐ後に“ふざけんじゃねぇ 核などいらねぇ~” と一刀両断。“放射能はいらねぇ 牛乳を飲みてぇ” “何やってんだ~ エラそうに 世界の真ん中で♪” なんてまさにトホホな今の日本の状況そのものだし、“巧みな言葉で一般庶民を騙そうとしても ほんの少しばれてる その黒い腹~♪” なんて政治家や電力会社、マスコミの実態を簡潔明瞭に暴いていて痛快そのものだ。
反核・反原発以外ではプロテスト・ソングの王道とでも言うべき政治・テロ・戦争ネタのナンバーが秀逸だ。特に私が気に入っているのが大韓航空機爆破事件の事を歌った④「シークレット・エージェント・マン」で、イントロは何と金賢姫の肉声入りという凝りようである。日本語詞の内容も実に生々しいもので、政治的には原発よりもこっちの方がヤバイんちゃうの?と思ってしまう。途中でコブシの効いた歌声を聞かせてくれるのは演歌の坂本冬美で、賛否両論あるだろうが私的には曲の展開にメリハリが付いて大正解だと思う。
ライヴ名盤「コブラの悩み」の1曲目を飾った①「イヴ・オブ・デストラクション」にしても、これまで幾多のアーティスト達にカヴァーされてきたディランの②「ブロウイン・イン・ザ・ウインド」にしても、世界に一つしかない清志郎の “声” によって新たな生命を吹き込まれ、生き生きと躍動している。そして圧巻なのがジョン・レノンの⑪「イマジン」... 日本人でこれほどソウルフルで説得力のあるヴォーカリストが他にいるだろうか? 私としては彼の歌声にただただ聴き入るのみだ。
③「バラ・バラ」はレインボウズの1967年のヒット曲を清志郎が巧くもじったもので、ゲスト参加の桑田師匠(←何故か Isuke Kuwatake とクレジットされているが...笑)もノリノリでコーラスしている。ストーンズの⑥「ペイント・イット・ブラック」やアダモの⑨「サン・トワ・マミー」も見事に清志郎の色に染め上げられており、そのどれもが実に新鮮に耳に響いて心地良い。
当時の清志郎はこの “カバーズ騒動” が相当アタマにきていたようで、その後の「コブラの悩み」やタイマーズでのゲリラ活動へとつながっていくのだが、それは原発の是非云々の問題というよりもむしろ言論の自由を侵されたことに対するやり場のない怒りのように思えてくる。脱原発を訴える清志郎のような人達のストレートな心の叫びを真摯に受け止めずに無視してきた結果が今の福島の、いや、日本の惨状なのだ。人類史上最悪の原発事故を引き起こしてから既に4ヶ月以上が経ったが、今の fuckin' 能なし政府の下では一向に収束する気配がなく、その一方で官民あげての電力不足キャンペーンで “節電” の大合唱、ついにヤフーにまで電力消費量が張り出される始末である。これこそまさに “狭い日本のサマータイム・ブルース” ではないだろうか...
RCサクセション / サマータイム・ブルース ('88.12.31-'89.1.1)
LOVE ME TENDER
SECRET AGENT MAN (金賢姫) .wmv
忌野清志郎/サン・トワ・マミー
忌野清志郎 IMAGINE