shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Masterful Mystery Tour / Beatallica

2010-06-13 | Beatles Tribute
 ビータリカの 1st アルバム「サージェント・ヘットフィールズ・モーターブレス・パブ・バンド」は巷に氾濫する有象無象のビートルズ・カヴァー盤を一瞬にして葬り去るほどのインパクトがあった。ビートルズ・ナンバーをあろうことかメタリカそっくりのサウンドでことごとくヘビメタ・カヴァーしていくという発想も凄かったが、メロディアスなロックの最高峰と言えるビートルズと騒音の塊のようなスラッシュ・メタルの雄メタリカという水と油のような音楽性を非常に高い次元でバランスさせ、そこにユーモア感覚溢れる歌詞を乗せて高度なパロディーとして成立させていたのが何よりも衝撃的だった。
 ビータリカは元々2001年に冗談のつもりで始まった(笑)プロジェクトで、ローカルなモノマネ・コンテストへの出演記念に「ア・ガレージ・デイズ・ナイト」という7曲入りミニCDを制作、更に2004年には8曲入りセカンド・アルバム「ビータリカ」(←通称「グレイ・アルバム」)をウェブ上で公開したが、フリー・ダウンロード出来たことからビートルズの版権の多くを所有するソニーATV(←マイケルから買った分かな...?)と版権問題でモメたらしい。結局彼らの正式なアルバムをソニーATVから出すことで合意に達し、2008年にリリースされたのが先の「サージェント・ヘットフィールズ・モーターブレス・パブ・バンド」というワケだ。
 その後「オール・ユーニード・イズ・ブラッド」(血こそすべて)というマキシ・シングル(←同じ曲を14ヶ国語で歌ってます... よぉやるわ)を経て、2009年に出された彼らの最新フル・アルバムがこの「マスターフル・ミステリー・ツアー」なのだ。前作は全13曲中9曲までが先の2枚の EP に入っていた曲を再レコーディングしたものだったが、今回は12曲中既発表曲は4曲のみで残りの8曲は完全な新曲(?)である。
 アルバムを聴いてみてまず感じたことは、よりメタル色が強まっていて元ネタのビートルズ曲がすぐに思い浮かばないような過激なアレンジになっているということ。前作がビートルズ:メタリカ=5:5とすれば、今作は2:8ぐらいに聞こえてしまう。結果としてパロディーとしての “笑える” 要素が後退、ヘビメタを聴かない普通のビートルズ・ファンには正直キツイと思う。特に①「ザ・バラッド・オブ・ジェイムズ・アンド・ヨーコ」、③「フューエル・オン・ザ・ヒル」(←歌詞はオモロイけど...)、⑥「ランニング・フォー・ユア・ライフ」、⑫「トゥモロウ・ネヴァー・カムズ」(←チャレンジ精神は買うけど、どっちつかずでワケがわからん...)あたりはビートルズ色が希薄で面白くない。
 又、②「マスターフル・ミステリー・ツアー」⑧「ヒーロー・オブ・ザ・デイ・トリッパー」、⑨「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・トラップト・アンダー・アイス」、⑩「アイル・ジャスト・ブリード・ユア・フェイス」は一応原曲のメロディーはわかるけれど、アレンジに無理があるのか何か窮屈な感じがして初期の彼らの魅力だったノビノビした疾走感が失われてしまっている。演奏が爆発していないのだ。
 そんな中でキラリと光るのはやはり初期 EP に入っていた④「アンド・アイム・イーヴル」、⑤「エヴリバディーズ・ガット・ア・ティケット・トゥ・ライド・エクセプト・フォー・ミー・アンド・マイ・ライトニング」、⑦「ザ・シング・ザット・シュッド・ノット・レット・イット・ビー」、そして私が彼らの最高傑作と信ずる⑪「アイ・ウォント・トゥ・チョーク・ユア・バンド」(邦題:首しめたい)の4曲だ。⑪に関しては以前このブログで取り上げた時に詳しく書いたので詳細は省くが、下に貼り付けたビデオ・クリップも十分楽しめるもので、聴いて良し見て良しの秀作だ。他の3曲も巧くビートルズ曲をメタリ化していてエエのだが、私個人としてはこれらのリメイク・ヴァージョンよりもウェブからダウンロードした(←残念ながら今ではもう閉鎖されてしまっているようだが...)オリジナル・ヴァージョンの方に魅かれてしまう。
 何だかネガティヴな感想になってしまったが、こんなユニークなバンドはそうそういないので、面白いビートルズ・カヴァーに目がない私としては彼らにもっと頑張ってほしいというのが正直なところ。次作ではぜひとも初期のようなストレートアヘッドなアレンジでビートルズをメタリ化して唸らせてほしいものだ。

Beatallicanimation


Beatallica - And I'm Evil from Masterful Mystery Tour
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