shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

France Gall Long Box

2009-05-26 | European Pops
 901さんのエイプリル・マーチ熱に私もすっかり感染してしまったようで、この2日間イエイエばっかり聴いている(笑) しかしよくよく考えてみると「チック・ハビット」の本家にあたるフランス・ギャルはこのブログを始めた頃に「夢みるシャンソン人形」のシングル盤を取り上げたっきりになっていた。これでは本末転倒も甚だしい。それにフランス・ギャルこそが私を底無し沼のようなイエイエ地獄、じゃなかったイエイエ・ワンダーランドに引きずり込んだ張本人なのだ。ここらでちゃんと取り上げておかねばならない。
 「夢シャン」を聴いてすっかり彼女にハマッた私は早速CDを検索してみた。しかし日本でのCD化状況はシェイラやチンクエッティといった他の歌姫たちと同様にベスト盤数枚でお茶を濁されており未CD化音源もかなりあったので、彼女の代表的な作品のほとんどが集中しているフィリップス時代の音源をコンプリートに収録した輸入盤LONG BOX3枚組CDを買うことにした。アマゾンでは9,000円近くしていたが、たまたま行った難波のタワレコで5,000円というウソみたいな値段が付いてるのを発見!何かの間違いやろと思いながらポーカーフェイスでレジを済ませ、そそくさと店を出たのを覚えている。
 彼女の楽曲は大きく分けて次の3つのタイプに分けられると思う。

①日本人好みのマイナー調メロディーが心の琴線をビンビン刺激するナンバー:
 「夢見るシャンソン人形」を筆頭に、ゲンスブール節炸裂の「娘たちにかまわないで」、似たような曲調の「アイドルばかり聞かないで」、その直訳バリバリの邦題もうちょっと何とかならんかったんかと思わせる「あなたのキャプテンに言いなさい」、イントロの哀愁舞い散るハーモニカに涙ちょちょぎれる「涙のシャンソン日記」なんかが有名だが、他にも「恋の家路」、「羅針盤」、「恋のためいき(ポリシネル)」、「シャンソン戦争」etc の隠れ名曲が目白押し。そのどれもがどこかで聞いたような懐かしいメロディーが郷愁をかきたてるキラー・チューンで、まるで昭和歌謡を彷彿とさせるような泣きのメロディーを舌っ足らずに歌うギャルのセピア色の歌声がたまらない(≧▽≦)

②とても10代のアイドル歌手とは思えないジャジーなナンバー:
 グルーヴィーなオルガンに負けないスキャットを聴かせる「ジャズ・ア・ゴー・ゴー」、そして当時の洗練されたヨーロピアン・ファンキー・ジャズをバックにスイングする「ジャズる心」と、タイトルに“ジャズ”と付いた2曲は言わずもがなだが、他にもブルーベック・カルテットの「テイク・ファイヴ」を想わせるめちゃくちゃカッコイイ5/4拍子ジャズ「パンス・ア・モア」、瀟洒なブラッシュと歌心溢れるサックスをバックにリラックスして歌う「ブーム・ブーム」、またまたブラッシュをバックに得意の高音スキャットを聴かせる「テンポの時代」、サバービア感溢れるフレンチ・ボッサ「太陽をあげよう」、フルートやコンガなどが醸し出すエキゾチックなムードがエエ感じの「青い瞳に恋してる」etc、ただのカワイコチャン歌手と思っていると、ギャルの “裏の顔” とでも言うべき硬派なサウンドに驚倒するだろう。

③いかにもアイドルといった明るい感じのキャンディー・ポップ・ナンバー:
 「シャルマーニュ大王」、「天使のためいき」、「はじめてのヴァカンス」、「恋の忠告」、「恋のお返し」、「恋のサバ・サバ娘」、「バラ色のキッス」、「アニーとボンボン」、「クリスチャンセン」、「すてきな王子様」、「おしゃまな初恋」、「ボンソワール・ジョン・ジョン」etc、やはり本業はあくまでもアイドル歌手ということで、邦題通りの楽しいポップスのオンパレード。何も考えずに頭を空っぽにして聴きたいハッピー・チューンばかりだ。

 楽曲のスタイルやアレンジがどう変わろうとも彼女の一番の魅力はそのユニークな声と歌い方にある。天が二物を与えた少女フランス・ギャル、彼女がポップスからジャズ、ボサノヴァまで様々なスタイルに対応できるだけの懐の深さをもったヴォーカリストだということをこの3枚組BOXは如実に示している。

France Gall - Pense A moi (1963) (son HQ)

Paris In April / April March

2009-05-25 | European Pops
 昨日はG3の定例会があった。久々に顔を合わせた901さんは開口一番「YouTubeでChick Habit, Death Proofって入れてみて!」と仰る。映画に疎い私は何のことか分からず、言われるままに検索すると、いきなりズラ~ッと出るわ出るわ...(゜o゜) “Tarantino's Film” “song from the movie DEATH PROOF” “April March”... 要するにタランティーノの映画「デス・プルーフ」の中で「チック・ハビット」という曲が使われていて、歌っているのはエイプリル・マーチ、ということなのだが、エイプリル・マーチなら確かフランス・ギャルのカヴァー絡みでCDを持っている。この曲に限らずイエイエはフランス語がチンプンカンプンなので、曲名までは覚えてなかったけど...(>_<) 「車から投げ出した女の子の足がリズム取ってるヤツがめっちゃエエねん!」ということなので、とりあえずみんなでYouTube鑑賞。おぉ、やっぱりフランス・ギャルの「娘たちにかまわないで(Laisse Tomber Les Filles)」だ!ドリフのズンドコ節を想わせるゲンスブールなイントロからいかにもチープな雰囲気横溢のハスッパな女性ヴォーカルが炸裂する。カート・ラッセル扮する元スタントマンが愛車を凶器代わりにして狙った女性たちを次々と襲っていくという設定らしいのだが、今回目をつけたターゲットもいかにも軽薄そうなオネエチャンたち。ボンネットに寝そべってスタントライドをしているところ(←何やってんねん!)へいきなり車を横からぶつけて殺そうとするが、どうやら今度ばかりは相手が悪かったようだ。ド迫力のカーチェイスに決着をつけ、車から降りた3人のオネエチャンたちがカート・ラッセルをボコボコにいてまう壮絶なラスト・シーンはインパクト大!メリケンサック(?)による鉄拳制裁十数連発に続いてトドメの回し蹴りが決まり3人同時にガッツポーズでジ・エンドとなる(笑) まるでプライドやバーリ・トゥードを見ているようだ。本当はこの後にエンド・ロールのバックでこの「チック・ハビット」が流れるらしいのだが、面白いことに映画のダイジェストとして編集されたYouTubeの映像とこの曲のテンポが不思議なくらい見事に合っててついつい何度も見てしまう。901さんがハマったのもよくわかる。おかげでこちらもイエイエ熱が再燃しそうだ。それを見ていたplincoさんが「新型イエイエ・ウイルスに伝染したな」と大笑い。みなさんも下のYouTubeの映像を見たら感染するかも...(笑) 
 というわけでエイプリル・マーチである。 “4月・3月” って名前からして既にナメとるのだが、この人のことは何も知らないのでWikipediaで調べてみると、本名エリノア・ブレイク、フランスとは何の関係もないカリフォルニア生まれの生粋のアメリカ人だった。このCD「パリス・イン・エイプリル」(←このタイトルも中々シャレが効いててエエなぁ)を出した当時は30才ということで、 “フレンチかぶれのヤンキー娘” キャラが楽しいし、シンプルなテケテケ・ギター中心の音作りが懐かしさを増幅させる60'sフレンチ・イエイエ・ミュージックの波状攻撃もたまらない(≧▽≦) 
 上記の①「チック・ハビット」は今や彼女の代名詞となった感のある曲で、「デス・プルーフ」以外にも「GO!GO! チアーズ」という映画や英仏でのルノー車のテレビCMにも使われているとのこと。彼女の胡散臭さ全開のヘタウマ・ヴォーカルとバックの活きの良いリズムが脳内ループを起こさせるのだろう。一旦ハマるとクセになるアブナイ曲だ。
 バックで彼女が笑い転げる②「プアー・ローラ」はミカ・バンドの「怪傑シルバー・チャイルド・イン・パリ」って感じ(?)だし、③「ホワイル・ウィーァ・ヤング」なんか哀愁の60'sグループ・サウンズそのものだ。⑤「モト・シャグ」や⑨「トゥ・メンズ」なんかもバブルガム的な味わい溢れる60'sロックンロール。何よりも彼女が上手い下手なんかぶっ飛ばしてロックしているのがいい。⑦「ラ・シャンソン・デ・プレヴァー(?)」はフランソワーズ・アルディにマリー・ラフォレをサッとふりかけ、イエイエ・ソースでフォークソング仕立てにしてみましたというような徹底したフェイク・フレンチ・ワールドに大爆笑。この娘、なかなかやってくれます。尚、⑧⑩⑪⑫⑬⑭はそれぞれ①③②⑤⑥④のフランス語・ヴァージョンだ。
 全曲3分以内で一気呵成に聴かせてしまうこのCDは、イエイエ・ファンはもちろんのこと、ラモーンズあたりにも通じるシンプルなロックンロールが好きな人にもオススメの、B級名盤大賞最右翼だ。

THE GIRLS OF DEATH PROOF


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砂に消えた涙 / ミーナ

2009-03-25 | European Pops
 60年代のミュージック・シーンをリアルタイムで体験できなかった私のような者がオールディーズの音源を手に入れようとすれば、どうしてもオムニバスCDに頼らざるを得ない。当時はシングル盤中心にシーンが動いていたし、アルバムを作る前に消えてしまった一発屋も多いからだ。しかしどれもこれもアメリカン・ポップス中心の似たような選曲で、当時日本独自にヒットしたフランス、イタリアを中心とするヨーロピアン・ポップスがモノの見事に欠落している。オールディーズ・ポップス・ファンとしてはこの不条理を見過ごすわけにはいかない。
 60年代前半、フランスでは過去のシャンソンとは全く違う、アメリカのロックンロールの洗礼を受けた明るくて楽しいダンス音楽、すなわち“イエ・イエ”が大流行し、シルヴィ・バルタン、フランス・ギャル、シェイラ、ダニエル・ビダル、シャンタル・ゴヤといった可愛コチャン・タイプのアイドル系ポップスの波が日本にも押し寄せた。彼女らの愛くるしい歌声は、フランス語ということもあって歌詞の意味はサッパリ分からないが、アメリカン・ポップスにはない何かがあって胸キュン・ポップスの白眉といえた。一方イタリアからもサンレモ音楽祭の話題と共にカンツォーネのヒット曲が日本に紹介され、フレンチ・ポップスとは一味も二味も違うジリオラ・チンクエッティ、ウィルマ・ゴイク、リタ・パヴォーネらのエモーショナルな歌声が人気を博した。これらのヨーロピアン・ポップスは弘田三枝子やザ・ピーナッツらが日本語でカヴァーしたり、あるいは当の本人がつたない日本語で吹き込んだいわゆる「日本語盤」を出したりで、日本人にとってはより身近なヒット曲になったのだが、そういった「日本語盤」の中で圧倒的に強烈なインパクトを放ったのがイタリアの№1人気歌手ミーナの④「砂に消えた涙」である。桑田佳祐師匠が「世界で一番好きな曲!」と断言し、竹内まりや姉さんも名盤「ロングタイム・フェイヴァリッツ」で嬉々としてカヴァーしていたオールディーズ・ポップス屈指の名曲だ。漣健児氏による“青い月の光を浴びながら~♪”という歌詞が甘酸っぱさを醸し出すメロディーと見事に結びついて心の琴線を震わせまくる。このベスト盤に入っているのはイタリア語のオリジナル・ヴァージョンだが、ボーナス・トラックとして日本語ヴァージョンを入れるぐらいのことはしてほしかった。ホンマに日本のレコード会社はファンのニーズが分かっていない(>_<) 「砂消え」以外ではやはり日本語でスタンダード化した⑧「別離」が素晴らしい。哀愁漂う演奏をバックに切々と歌うミーナのヴォーカルは説得力抜群で、単なるポップスというよりも大人の歌という雰囲気の名唱だ。日本ではこれらのスローな④⑧が有名だが、彼女の本質は①「太陽はひとりぼっち」、⑤「月影のナポリ」、⑪「月影のレナート」(←何なんこのワンパターンな邦題...笑)といったアップテンポでパワフルな歌唱にあり、高音部で叫びを交えるなどしながら彼女お得意の煌びやかなヴォーカルが炸裂する。私が一番好きのは西田佐知子がカヴァーした⑨「コーヒー・ルンバ」やザ・ピーナッツの代名詞となった⑩「情熱の花」で聴ける“メロディアスなラテン路線”の彼女で、ハチャメチャ一歩手前で踏みとどまって聴かせるエキゾチックなヴォーカルがたまらない。
 このように日本のオールディーズ史に深く名を刻んだミーナだが、今現在入手可能な日本盤CDはコレ1枚きり(しかも解説等一切なし!)という情けなさ... チンクエッティの時にも書いたがベスト物1枚でお茶を濁さずに、せめて60年代のものだけでもいいからオリジナル盤をCD化してもらいたいものだ。つまらないJ-Popsを出す暇があったら是非この辺のものを出すべきだと勝手にポップス・ファンを代表させてもらってここに提言したい。

ミーナ 砂に消えた涙 Un buco nella sabbia Mina 日本語版

ベスト・オブ・シェイラ

2009-02-11 | European Pops
 イエ・イエとは早い話が60年代に流行ったロックンロール風フレンチ・ポップスのことで、中でも特に人気が高かったのがフランス・ギャル、シルヴィ・バルタン、そしてこのシェイラのイエ・イエ3人娘である。フランス・ギャルがマイナー・メロディー溢れる哀愁の歌謡ポップス路線、シルヴィ・バルタンがアメリカン・オールディーズを基調としたフレンチ・ポップス路線なのに対し、シェイラはアップ・テンポでビートの効いた明るくて親しみやすいポップスを得意としていた。ギャルの「夢みるシャンソン人形」やバルタンの「アイドルを探せ」のような超特大の一発がないせいか、日本での人気・知名度は2人にやや水をあけられた感があるが、私の考えるイエ・イエのイメージに一番近いのがシェイラであり、このベスト盤を聴けば彼女がギャルやバルタンに勝るとも劣らないイエ・イエ・シンガーであることが実感できるはずだ。彼女の芸名にもなったデビュー曲①「シェイラ」はトミー・ロウの「かわいいシェイラ」のカヴァーで、原曲のバディー・ホリーちっくなサウンドを踏襲しながらも更にテンポを上げて高速化、彼女お得意のたたみかけるようなヴォーカル・スタイルが曲に躍動感を与え、オリジナルを遥かに凌ぐ出来映えになっている。②「学校は終わった」でもアップ・テンポの曲で聞かせる高音が威力を発揮、こーゆーのを典型的なイエ・イエ・ソングというのだろう。③「パパ・テ・プル・ダン・ルク」は「パパパ パッパパッ♪」というバック・コーラスが耳に残るユニークな曲で、シェイラの明るい歌声と楽曲がピッタリ合っている。④「はじめてのパーティー」はイントロからチコ・ハミルトンみたいなタイコのリズムが支配する、これまた楽しいイエ・イエ・ソング。シェイラの魅力はこの「底抜けの楽しさ」に尽きると思う。⑤「口笛で恋しよう」は彼女の代表作といってもいい名曲で、タイトル通りのウキウキするような口笛がメロディーをリードするイエ・イエの魅力を凝縮したような2分4秒だ。間奏部のオルガンといい歯切れのいいドラムといい、バックの演奏が一体となって転げ回り、旋回状に突き進んでいく快感は何物にも換えがたい。⑥「ドゥ・ワ・ディディ」はいわずと知れたマンフレッド・マンのカヴァーだが、この曲を歌いこなせるイエ・イエ・シンガーは彼女ぐらいだろう。⑧「夢みるアメリカ」はタイトルを意識したカントリー・フレイバー溢れるサウンドで、みんな揃ってテンガロン・ハットにウエスタン・ブーツ姿で踊りましょ、って感じの楽しい曲だ。⑨「夢みるハワイ」はスティール・ギターをフィーチャーしたトロピカル・ムード溢れるワイキキなサウンドで、フレンチとハワイというミスマッチな取り合わせが面白い。⑬「ラ・ファミーユ」はイエ・イエ・ブームが終焉を迎えつつあった67年にシェイラが放ったヒット曲で、彼女のイエ・イエ・スタイルの爛熟がこの1曲に見て取れる。⑯「オンクル・ジョー」は吉本新喜劇のテーマのようなトラッド・ディキシー風味の楽しいナンバーで、ピー・ウィー・ハントそっくりのフレーズ連射に大笑いだ。その後70年代に入って彼女はディスコ・クイーンとしてもう一花咲かせることになるのだが、「イエ・イエってどんな音楽?」って聞かれたら私なら迷わずにこの盤を差し出すだろう。
 このように一見いい事ずくめのように見える盤なのだが、1つ致命的な欠陥がある。「ベスト盤」を謳っていながら何故か「ハロー・プティト・フィーユ(こんにちわマドモアゼル)」が入っていないのだ(>_<) 一体どぉゆうこと??? フォーモストでヒットしたこのレノン=マッカートニー作品が、原曲の良さを殺すことなく見事に換骨堕胎されて楽しいイエ・イエ・ヴァージョンに仕上がっているというのに... 特に1分40秒からの「ウィー ウィー ウィー♪」の波状攻撃がたまらないこの曲、幸いなことにYouTubeにアップされてたんで未聴の方はぜひどうぞ!

hello petite fille

恋はみずいろ ~ ヴィッキー・ベスト・セレクション

2009-01-31 | European Pops
 音楽ファンなら「恋はみずいろ」のあの有名なメロディーはどこかで耳にしたことがあるかもしれないが、ヴィッキー・レアンドロスという名前にはピンとこないという人が案外多いかもしれない。私も数年前にフランスやイタリアを中心としたヨーロピアン・ポップスにハマるまで彼女のことは全く知らなかった。時を遡って後追いせねばならないというハンデ、しかも比較的情報の少ないヨーロッパ系ということで、とりあえずどんな歌手かを知るために手頃なベスト盤CDを1枚買って気に入ったらオリジナル・アルバムをどんどん聴いていくようにしていたのだが、彼女のこのベスト盤CDは期待を遥かに上回る素晴らしさで、その後彼女のオリジナル・アルバムを eBay で獲って聴き狂ったものだった。
 彼女はギリシア生まれのドイツ育ちで、64年に15才でデビューしたが、彼女の名を世界的に有名にしたのは67年のユーロヴィジョン・コンテストにルクセンブルグ代表として参加し、「恋はみずいろ」で入賞したことである。この曲は他のアーティスト達もこぞって取り上げ、翌68年にはポール・モーリアのインスト・ヴァージョンが5週連続全米№1という大ヒットを記録するほどの人気だったのでそちらの方をご存知の方も多いだろう。そーいえばB’zのライブで松本さんも「もう1度キスしたかった」のエンディングにこの曲の一節を引用されていた。その哀愁漂うマイナー調のメロディーは日本人の心の琴線を震わせずにおかない必殺の旋律に溢れており、1度聴いたら忘れられない。こういうのを絵に描いたような名曲というのだろう。そんな「恋はみずいろ」も素晴らしいが、水も滴るようなヴォーカルで曲の魅力を見事に引き出した弱冠18才のヴィッキーも素晴らしい。彼女はその美貌からアイドルとして語られることが多く、その歌唱力は過小評価されているように思えるのだが、低域から高域まで気持ち良く伸びる歌声でまるで昭和歌謡のように情感を込めて歌い上げる表現力は特筆モノだ。しかも彼女の場合、フランス語、英語、そして日本語(←めちゃくちゃ上手い!)の3ヶ国語で歌えるのも大きな強みだろう。このベスト盤CDには全19曲が収められているが、どれもこれも甘酸っぱくて懐かしく、そして素晴らしい。彼女の代表曲①「恋はみずいろ」以外では、説得力溢れる歌声でビージーズのオリジナル・ヴァージョンを完全に凌駕した③「星空のマサチューセッツ」、彼女の切々としたヴォーカルが胸に食い込んでくる名唱④「思い出のなかで」、とても外国人が歌っているとは思えないような流暢な日本語で歌うコテコテの昭和歌謡⑦「時の流れのように」、哀愁舞い散る歌声でメリー・ホプキンとタイマンを張れそうな⑧「悲しき天使」、小さなスナックでシャンソンを歌っている女性版ひとりパープル・シャドウズのような⑩「悲しみが去ってしあわせが」、「届けてくれた忘れ物 だけどお礼は言わないの あなたが半分食べちゃった 私の好きなチョコレート~♪」って...何ともシュールな歌詞にモナリザも微笑みそうなザ・タイガース風GS⑪「私の好きなチョコレート」etc、名曲名唱の波状攻撃に圧倒され、時の経つのも忘れるほどだ。そこには洋楽も邦楽もなく、ただただ素晴らしい音楽が存在するのみ。最近の音楽はメロディーが希薄で思わず鼻歌で口ずさめるような良い曲が少ないなぁ...(>_<)とお嘆きのポップス・ファンにオススメな1枚だ。

Vicky Leandros - L'amour est bleu

ベスト・オブ・ジリオラ・チンクェッティ

2009-01-06 | European Pops
 ジリオラ・チンクェッティは60年代にカンツォーネを日本で大流行させたイタリアの歌姫である。彼女は清純派の美人シンガーで、ヨーロッパはもちろんのこと、ここ日本やアルゼンチンでも根強い人気を誇っている。彼女の一番の魅力は何と言っても母性で優しく包み込むようなその歌声にある。私の知る限りオーラ以前にオーラのような声はなく、オーラのように歌った歌手はいなかった。更に彼女はヴァラエティーに富んだ楽曲にも恵まれていた。トヨタのCMでもすっかりおなじみの①「雨」は69年のサンレモ音楽祭であのフランス・ギャルとデュエットした彼女の代表曲。マイナー調のイントロから入り、「イョ~ ノカンビョマァ~イ♪」からメジャーに転調、「ラ~ピョ~ジャ~♪」で一気にたたみかける曲想も素晴らしい!この曲は当時日本全国の運動会で行進曲になったとどこかで読んだ記憶があるが、CMに行進曲にと引っ張りだことはきっと日本人の心を惹きつける何かがあるのだろう。弘田三枝子のカヴァーでも知られる②「ナポリは恋人」は覚えやすいメロディーを持った美しい曲。彼女の伸びやかなヴォーカルがすーっと心に染み入ってくる。④「ローザ・ネーラ」は風雲急を告げるようなイントロから彼女の切羽詰ったようなヴォーカルが滑りこんでくる瞬間がたまらない。見事な感情表現をみせる彼女の歌声と、いかにもイタリアらしいノーテンキなサビのコーラスが生み出すコントラストも絶妙だ。竹内まりやがアルバム「ロングタイム・フェイヴァリッツ」でカヴァーした⑥「夢みる想い」はオーラの日本でのデビュー・シングルで、64年のサンレモ音楽祭やユーロヴィジョン・コンテストといったヨーロッパの賞を総ナメにした名曲。高貴な雰囲気を醸し出すピアノのイントロに続いてオーラが「ノノレタァ~♪」と歌いだすとまるで心が洗われるような清々しい気持ちになる。彼女本来の持ち味はこういった「歌い上げる」タイプの曲で最大限に発揮されるということがよくわかる名唱だ。曲調が二転三転する⑦「消え去る想い」では緩急自在という言葉がピッタリのヴォーカルを披露、カンツォーネ・シンガーとしての実力を見せつける。シルヴィー・ヴァルタンやミーナもカヴァーした⑩「ズン・ズン・ズン」はマーチ風の楽しげな曲で、オーラも元気一杯で弾けるようなヴォーカルを聴かせてくれる。⑪「花咲く丘に涙して」はウィルマ・ゴイク65年のヒット曲をカヴァーしたもので、オーラの囁くような歌声がたまらない。緊張感溢れるキーボードのイントロが印象的な⑫「つばめのように」は彼女の持ち歌の中で私が一番好きな曲で、GSを彷彿とさせるマイナーなメロディーのアメアラレ攻撃に涙ちょちょぎれる。イタリア版ブルーシャトウみたいな曲だ。⑬「薔薇のことづけ」はアップテンポに転じた0分48秒の所から徐々に盛り上げていって2分50秒の「オ~ ロ~ゼ ロゼ♪」で一気にクライマックスにもっていく壮大な曲想に圧倒される。こんなに素晴らしいシンガーなのに現在入手可能なCDがベスト物だけとは淋しい限りだ。入手困難なオリジナル・アルバムのCD化を切に望みたい。

ジリオラ・チンクエッティ la pioggia(雨) Gigliola Cinquetti
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そよ風にのって / マージョリー・ノエル

2008-12-10 | European Pops
 5年ほど前のこと、私は60年代のフレンチ/イタリアン・ポップス、通称イエ・イエにハマリまくっていた時期があった。フランス・ギャル、シルヴィ・バルタン、ジリオラ・チンクエッティ、ミーナ、シェイラ、フランソワーズ・アルディ、マリー・ラフォレ、ヴィッキー、ウィルマ・ゴイク、ダニエル・ビダル、アニー・フィリップ、シャンタル・ゴヤ、リタ・パヴォーネといった有名どころはもちろんのこと、ルシール、ジャネット、レナータ、プッシーキャット、ジリアン・ヒルズといったマニアックなシンガーまで、とにかくねてもさめてもイエ・イエで、朝から晩まで意味不明なフランス語やイタリア語の歌を聴きまくっていた(笑) そんな私が血眼で探しまくっていた1枚がマージョリー・ノエルの「そよ風にのって / 春のときめき」の日本語盤シングルで、大阪京都神戸のありとあらゆるレコード屋をしらみ潰しに当たっても見つからなかった。結局ヤフオクで4,000円でゲット... シングル盤1枚がこの値段(>_<)だが、死ぬほど欲しかった盤だし、盤質も最高で言うことなしだ。竹内まりやが「ロングタイム・フェイヴァリッツ」でカヴァーした「そよ風にのって」(原題はフランス語で「同じワゴンの中で」という意味)がめちゃくちゃ可愛い!疾走感溢れるバック・コーラス「フー・フー・フー♪」と躍動感に満ちたギターのリズム・カッティングの相乗効果で、まるで風の中を駆け抜けて行くような爽快感が見事に表現されている。そんな秀逸な伴奏をバックに、一緒に口ずさみたくなるような素直なメロディーが彼女の舌ったらずでキュートな歌声で歌われるのである。これはたまらない(≧▽≦) 特にたどたどしい日本語で「ミエナイ」を「ミネアイ」、「ハシルゥ」を「アシウゥ」と歌われた日にゃあ、もう愛しくて抱きしめたくなってしまう。まさに究極の60'sフレンチ・ポップスだ。裏面の「春のときめき」もチャーミングな曲で、途中日本語からフランス語へとスイッチするところなんかゾクゾクする。そんな彼女がフェイド・アウトしてしまったのは、やはりこれに続く良い楽曲に恵まれなかったからではないか。そこら辺がしっかりしたスタッフがついていたシルヴィ・バルタンやフランス・ギャルとの違いだろう。しかしマージョリー・ノエルはこの1枚で私にとって永遠に忘れられない存在になったのである。

マージョリー・ノエル そよ風にのって

L'anthologie / Sylvie Vartan

2008-12-01 | European Pops
シルヴィ・バルタンはイエ・イエ・シンガーの中でもダントツの人気と知名度を誇っている。それは彼女が美人だからというだけでなく、良い楽曲に恵まれてきたからである。61年のデビュー以降しばらくは、プレスリーの「冷たくしないで」、リトル・エヴァの「ロコモーション」、ニール・セダカの「悲しき慕情」、カスケーズの「悲しき雨音」といったアメリカン・ポップスのフレンチ・カヴァーがレパートリーの中心だった。そんな彼女を一躍有名にしたのが名曲「アイドルを探せ」である。この曲はまさに絵に描いたようなイエ・イエ・ソングで、日本でも大ヒットした。バルタン星人の名前の由来になったという伝説が生まれるほどの凄い人気だったのだ。因みに後日何かのインタビューでシルヴィ本人にバルタン星人の人形を見せたところ、不愉快な反応が返ってきた(笑)とのこと。一体何考えてんねん(>_<) その後もビーチ・ボーイズの名曲を見事にフレンチ・カヴァーした「スループ・ジョン・B」や、ビートルズやフランスギャルの曲名が歌詞の中にポンポン飛び出す究極のイエ・イエ・ソング「恋はイエ・イエ」など、順調にヒットを飛ばしていったが、やがてイエ・イエ・ブームが去り、彼女自身も交通事故にあうなどしてスランプ状態に陥った。そんな彼女が見事に復活を遂げたのが68年の大ヒット「あなたのとりこ」である。軽快なアップ・ビートに乗って歌う彼女の溌剌とした歌声は「脱イエ・イエ~70年代への生き残り宣言」にも聞こえる。再び勢いに乗った彼女は、「枯葉」を想わせる哀愁のメロディーに涙ちょちょぎれる「想い出のマリッツァ」、ジリオラ・チンクエッティのカヴァー「ズン・ズン・ズン」、イタリア語で歌う楽しいカンツォーネ「ブォナセーラ・ブォナセーラ」、ヴォーカリストとしての実力を再認識させられる名唱「愛のフーガ」、心に残るメロディーの繰り返しにかぶさるように挿入されるジョニー・アリディのフランス語のナレーションがカッコ良く響く「悲しみの兵士」、モーツァルトの交響曲をアダプトしてクラシックとフレンチ・ポップスを見事に融合させた「哀しみのシンフォニー」と、70年代前半もヒットを連発していった。そんな彼女のヒット曲が一杯詰まったこのアンソロジーCD、ジャケットの良さも相まって、常に手元に置いて愛聴している1枚だ。

あなたのとりこ(訳詞付) - Sylvie Vartan

夢みるシャンソン人形 / フランス・ギャル

2008-11-02 | European Pops
 私の友人の901さんはとても懐の深い方で、ジャズ・ボサノヴァ・ホットクラブ・エレキインスト・昭和歌謡・そして最新のJ-Popsと、その守備範囲はとてつもなく広い。私はそんな901さんからかなりの影響を受けていて、その内のひとつがいわゆる「イエ・イエ(60年代のフレンチ・ポップス)」であり、そのきっかけとなったのがフランス・ギャルの「夢みるシャンソン人形」だった。
 私と901さん、plincoさんの3人はほぼ同時期に海外オークション eBay を始め、レコードを海外からガンガン取りまくっていたのだが、ある時901さんの ID を検索してその収穫物一覧を見ていると、ジャズのレコードに混じって1枚だけ聞いたこともない歌手のレコードを取っておられた。フランス・ギャル??? 誰それ??? 最初はマジで “フランスのギャル” のことかと思ったが(笑)、れっきとした歌手の名前だった。そしてそのシングル盤のジャケットにはめちゃくちゃ可愛い女の子が写っていたのだ。う~ん、これは気になる...
 早速音聴き会 G3 でそのシングル盤を聞かせてもらったのだが、これがもうめちゃくちゃ素晴らしい!!! フレンチ・ポップスでありながら何となくどこかで聞いたことがあるような懐かしい感じがして、その親しみやすいメロディーにすっかりまいってしまったのだ。これをきっかけにして私はフランス・ギャルの大ファンになったのだがそれと同時にこの曲のファンにもなり、それ以来「夢シャン」探しの日々が始まった。
 この歌は65年のユーロヴィジョン・ソング・コンテストのグランプリ曲だけあって、カヴァーも数多く存在する。何やかんやで現在31ヴァージョン集めたが、まだまだありそうな気がする。全国一千万の「夢シャン」ファンのみなさん、情報お待ちしてます。
France Gall - Poupee de Cire, Poupee de Son - 1965