shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「London Town」トルコ盤

2021-05-23 | Paul McCartney
 トルコでLPとして出ている元ビートルズのソロ・アルバムは、私の調べた限りではジョージとリンゴがゼロで、ジョンも「Double Fantasy」1枚きりだ。ポール1人が6枚と突出しており、例の “鼻ホジ・ジャケ” でえげつないプレミアが付いている「McCartney」以外は首尾よく手に入れることが出来た。今日はその中から「London Town」を取り上げたい。
 前にも書いたように、「London Town」は私がトルコ盤にハマるきっかけとなった思い出深い1枚で、B-SELSで聴かせていただいたその日のうちにDiscogsで VG+ の盤を €15でゲット。一緒に買った「Let It Be」と「Wild Life」はどちらかというと VG 寄りの VG+ だったが、この「London Town」は NM で十分通用するぐらい盤質が素晴らしく、トルコ盤ならではの高音質を安心して楽しめる。ジャケットは下辺の糊が完全に剥がれて全開状態だったので両面テープで丁寧に補修して見映えが良くなった。これで €15なら超お買い得と言えるだろう。
 音の方はB-SELSで聴かせていただいたのと同じ重心の低いサウンドで(←違うかったらえらいこっちゃですわな...)、手持ちのUK盤ともUS盤とも違うトルコ独自の音作りが楽しめる。デッドワックス部分には手書きで“PAS10012/1”“PAS10012/2” と刻まれているいわゆるひとつの独自マト盤なのだが、特筆すべきは盤の重さで、手に持った感触がズシリと重い。試しに量ってみると168gもあってちょっとビックリ。UK盤が120g、US盤が134gなのを考えればこのトルコ盤が桁外れの重量盤であることがよくわかる。Sさんが仰ったように、おそらくクオリティーの高いビニールを使っているのだろう。
 そんなトルコ盤で聴く「London Town」だが、アルバム・タイトル曲のA①「London Town」が醸し出すロンドンのくすんだ空のイメージと独自カットの質実剛健(?)なサウンドが上手くマッチしており思わず聴き入ってしまう。A②「Cafe On The Left Bank」やA⑦「I've Had Enough」(←何故かセンター・レーベルでも裏ジャケでもこの曲だけ記載漏れしてる...)のようなロック色の濃いナンバーがUK盤とは一味違う腰の据わった分厚い音で聴けるのも面白い。UK盤をキレッキレのナイフとすれば、このトルコ盤はごっついナタという感じだ。
 B①「With A Little Luck」がこのレコードならではの低重心サウンドで聴けるのも◎。ウイングスの魅力の一つでもある心地良いコーラス・ワークが実にシックで落ち着いた雰囲気を醸し出しており、その独特のコクと余韻は他の盤では聴けない類のものだ。
 このアルバムの特徴の一つはブリティッシュ・トラッド全振りのアコースティック色の強い曲が何曲か含まれていることだが、B②「Famous Groupies」といい、B③「Deliver Your Children」といい、B⑤「Don't Let It Bring You Down」といい、トルコ盤独特の重厚なサウンド・プロダクションで聴く分厚いアコギの音が実に気持ち良い。「London Town」というアルバムの性格とトルコの独自カッティングの相性は抜群だ。
 ただ一つ残念なのは、B面ラストに置かれた6分を超える大作「Morse Moose And Grey Goose」が3分少々でフェイド・アウトして終わってしまうこと。スケールの大きなアップテンポの長尺曲をアルバムのラストに持ってきて強烈なインパクトを与える手法は「Ram」の「Back Seat Of My Car」や「Band On The Run」の「Nineteen Hundred And Eighty-Five」でも見られたもので、私としてはこのアルバムの中でも非常に重要視している曲なのだが、よりにもよってその曲をこのようにぞんざいに扱って涼しい顔のトルコ人エンジニアの感性には呆れてしまう。
 そもそもこの曲は前半がハードでラウドな“モーズ・ムース”パート、中盤がアコギ全開の“グレイ・グース”パート、そしてエンディングで再び“モーズ・ムース”パートが登場するという三部構成になっているのだが、あろうことか中盤の“グレイ・グース”パートに入ってすぐにフェイド・アウトするのである。これではこの曲の良さが全く伝わってこないばかりか、それまで良い感じで来たアルバム全体の流れをブチ壊して中途半端な後味の悪さを残して終わってしまう。音が良いだけにこの曲のズサンな処理が返す返すも残念だが、それもひっくるめて清濁併せ呑むというか、広~い心で受け入れるところに各国盤蒐集の面白さがあるのかもしれない。
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