shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Band On The Run」ボリビア盤

2021-11-19 | Paul McCartney
 去年 B-SELSでウルグアイ盤の音の良さを教えていただいて以来、ウルグアイからたくさんレコードを買って楽しんでいるが、何度も取り引きをするうちにあるセラーと親しくなり、色々と便宜を図ってもらえるようになった。送料をかなり安く抑えてくれるのももちろんありがたいが、何よりも嬉しいのは普通なら目視だけで済ます盤質チェックを、実際にレコードに針を落として聴いてもらい、盤の状態を詳細に教えてもらえること。ウルグアイ盤で一番困るのは針飛びなので、彼のおかげで安心してウルグアイからレコードを買えるようになった。
 そして先日、eBayで彼の出品リストをチェックしていて前々から探していた「Led Zeppelin I」と「The Works」(Queen)のウルグアイ盤を発見。ニンマリしながら更にリストを見ていくとウルグアイ盤以外のレコードも色々出品しているようで、その中にポールの「Band On The Run」のボリビア盤があったのだ。ボリビアって... アフリカちゃうんけ??? などと思いながら(←リベリアと間違えてた... 各国盤蒐集って地理の勉強になりますな... )ネットで調べてみると何と南米ではないか!
 最近 B-SELSでペルーやアルゼンチンのレコードを買っていることもあって南米のレコードに興味津々の私は “他のレコードと一緒に送ってもらったら実質送料タダみたいなモンやし、この機会を逃したらクソ高い送料を払って買うハメになるかもしれん...” と考え、このレコードも購入候補としてセラーに盤質チェックをお願いすることにした。
 彼の返事は “私が数ヶ月前に買ったUSリマスター盤より良い音。盤の状態はVG++。” だったが、興味を引かれたのはその続きで、“このレコードに関して興味深いのはレーベルのアップル・デザインが通常の表裏逆になっていること、そしてBラス曲「1985」のエンディングで例の “バ~ン ドォン ザラァ~ン♪” リプリーズが入ってなくて曲がその前に終わってしまうことで、こんなの初めて聴いた...” とのこと。レーベルのアップル表裏逆パターンはウルグアイ盤「Shaved Fish」で経験済みなので別に驚くほどのことではないが、「1985」のリプリーズ無しはさすがにアカンやろ... などと思いながらも “まぁそれならそれで一度聴いてみたいな...” という好奇心にかられ、結局ゼップやクイーンと一緒に購入した。$50だった。
 3枚届いた中で真っ先にターンテーブルに乗せたのはもちろん「Band On The Run」のボリビア盤だ。リプリーズの無い「1985」って一体どんな感じなんやろなぁ? という好奇心で頭が一杯の私は表裏逆なのを忘れて緑リンゴ面を上にして置いてしまい、いきなりB①「Mamunia」がかかってビックリ(笑) やっぱり「1985」は最後に聴かないと「Band On The Run」を聴いた気がしないので(←でしょ?)白リンゴ面を上にしてもう一度針を落とす。
 おぉ、ボリビアの独自カッティング、シャープな音で中々エエ感じやん...(^.^)  A①「Band On The Run」もA②「Jet」もドライヴ感抜群で実に気持ちが良い。圧巻はA④「Mrs. Vandebilt」のアコギの音と例の “ホッ ヘイ ホー!” コーラスで、ボリビア盤の切れ味抜群な音作りが生み出す凄まじいグルーヴは快感そのものだ。B面も絶好調で、“おっ、B④「Helen Wheels」も入っとるやん... (^.^)” とラス前までは上機嫌で聴いていた。
 さて、いよいよ問題のB⑤「1985」である。私はてっきりリプリーズ・パートだけが欠落しているものと思い込んでいたのだが、実際に聴いてみるとメイン・パート後半の一番盛り上がっていくところ(4分20秒あたり)でさっさとフェイドアウトしてしまうという許し難い暴挙... 何じゃこりゃぁ!!!
 何もそこまで怒らんでも... と思われるかもしれないが、野球に例えるなら9回裏2アウト満塁一打サヨナラの場面でテレビ中継が終わってしまう(←ネット配信中継なら例のクルクルが表示されて画面が止まってしまう...)ようなもの。これは「Band On The Run」という天下の大名盤に対する冒涜以外の何物でもない。もしも「天国への階段」や「ボヘミアン・ラプソディ」がエンディングの1分前にフェイドアウトしてしまったらゼップやクイーンのファンは絶対に許さないだろう。
 ということで思わず怒りの展開になってしまったが、よくよく考えてみれば一番怒っていいのはこのようなまがい物の「Band On The Run」を本物と信じ、ずーっと騙され続けてきたボリビアのポール・ファンたちかもしれない。80年代に入って音楽媒体がレコードからCDに移行して、初めてちゃんとした「Band On The Run」を聴いた彼らはさぞかし驚いたことだろう。
 各国盤蒐集は、ピッチがおかしいレコードに出くわしたりとか、フランス盤の「Come Together」、イタリア盤の「I Want You」、トルコ盤の「Morse Moose And Grey Goose」、そしてこの「1985」のように我が耳を疑いたくなるような “やらかし盤” に遭遇したりとか、確かにリスクが無いとは言い切れない。しかし意表を突くラウドカットやオリジナル盤では聴けない真空管カッティングの音に感動するなど、それ以上に得るものが多いのもこれまた事実。そういう意味でもビートルズ関連の各国盤蒐集ではこのような珍盤を広~い心で受け入れる度量が必要なのかもしれない。
Nineteen Hundred And Eighty Five (Remastered 2010)
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