shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Presenting The Fabulous Ronettes」US ステレオ盤

2021-01-23 | Wall Of Sound
 フィル・スペクターが亡くなった。今日取り上げるこのロネッツ盤は本来なら年明けすぐにアップしようかなと思っていたレコードだったのだが、エディ・コクランやら南ローデシア盤やらにうつつを抜かして(笑)先延ばしにしている間にフィルが急逝してしまい、図らずも追悼特集になってしまった。まぁ人を射殺するほどの狂気の人だから獄中死もしゃあないのかもしれないが、何と言ってもビートルズの「Let It Be」をプロデュースしたレジェンドである。大いなる敬意をもって追悼するのがビートルズ・ファンとしての務めというものだろう。
 各国盤の蒐集に血道を上げていることで既にお分かりだと思うが、私は大好きな盤は色んな音で聴きたいという欲張りな人間である。特に60年代にプレスされたレコードはモノラルとステレオの2種類のミックスが存在する場合が多いので、各国盤も含めると楽しみが何倍にも膨れ上がるのだ。まぁそれくらい惚れ込んだレコードというのはビートルズ以外では数えるほどしか存在しないが、そんな中でステレオ盤をまだ手に入れていない “最後の大物” 的存在(?)としてずーっと気になっていたのがロネッツの「Presenting The Fabulous Ronettes」だった。
 このレコードはまず1964年にフィル・スペクターのフィレス・レコードから薄青レーベルのモノラル盤がリリースされ、すぐに黄色レーベルの盤に切り替わったのだが、ステレオ盤が出たのはそれから1年くらい後だった。しかもそのオリジナル・ステレオ盤(←レーベル面の文字は赤色)もすぐに廃盤になってしまい、その後は版権を持っているキャピトル・レコードがレコード・クラブの通信販売用にプレスしていたらしい。そんなキャピトル・プレスのステレオ盤にも1stプレスと2ndプレスがあるので(←どちらもレーベル面の文字は黒色で、しかもグループ名を RONNETTESと綴りミスをしている...)、ロネッツのUSステレオ盤は最初に出たフィレスの盤を含めると計3種類のレコードが存在することになる。
 私はこのキャピトル製ロネッツ盤を所有している人から “キャピトルのロネッツはあんまり音良ぉないで...(>_<)” という話を聞いたことがあって、“どーせキャピトルのことやから気持ち悪いエコーをドバーッとかけとるんやろ...” と完全スルーを決め込んでいたのだが、ある時 Discogsでフィレスのレコードを色々と調べていて同じロネッツのステレオ盤でもフィレスとキャピトルではマトが全然違うことを知り、フィル・スペクターが関わったオリジナル・ステレオ盤の方を是非とも聴いてみたいと思うようになったのだ。
 しかしネットで調べてみるとキャピトル製の黒文字ロネッツ盤は比較的入手しやすく値段も安いが(←$100~$150)、フィレス製の赤文字ロネッツ盤の方は滅多に出てこないし、ごくごくたまに出てきたとしても$400~$500という高値で取り引きされていてちょっと手が出ない。私は他の垂涎盤と同じようにこの盤を “お気に入り” に入れて来る日も来る日も忍耐強くチェックしていたのだが、待てば海路の日和ありとはよくぞ言ったもので、先月ついに赤文字ロネッツ盤が真っ当な値段でeBayに出品されたのだ。
 スタート価格は$150で思わず “安っ!” と思ったのだが、よくよく見るとジャケットの右下側に小さなカットアウトがある。なるほど、それで安いんか... と納得したが、プレイ・グレードはVG+ ということだし写真で見る限り盤面の光沢も十分あるしで聴く分には特に問題無さそうだ。私はジャケットに多少の難があろうとも音さえ良ければ気にならない人間なので、由緒正しいコレクターが敬遠しそうなこのレコードを千載一遇のチャンスと考えて絶対に取るつもりで$300付けたところ、結局他に誰も来ずにスタート価格の$150で落札できたのだった。終了時刻がちょうど勤務所間とバッティングしていたのでわざわざこのレコードために有休を取ってスナイプしたのだが、その甲斐は十分あったというものだ(^.^)
 2週間ほどで届いたレコードを丁寧にクリーニングしてからターンテーブルに乗せて針を落とす。盤質VG+ 表記だったがほとんどノイズらしいノイズが聞こえないので聴感上はほぼミントと言っていい。スピーカーから出てきた音は確かにステレオらしく音がフワーッと広がるのだが、キャピトルのステレオ盤にありがちなエコーの気持ち悪さは全く無い。私はこれまでモノラル盤しか聴いたことがなかったので、まともなステレオ・サウンドで聴くロネッツは中々新鮮で面白い。まぁモノラルかステレオかのどちらか一方を選べと言われれば迷わず濃厚一発官能二発という感じのモノラルを選んでしまうが(←古き良きオールディーズ・ポップスはやっぱりモノラルが王道でしょ?)、あのフィル・スペクターが時間をかけて作り上げたミックスだけあって、このオリジナル・ステレオ盤も十分傾聴に値する音だと思う。
 それともう一つ特筆すべきはモノラルとステレオでテイク違いの音源が採用されていることで、これは全く予想していなくてビックリ(゜o゜)  一番わかりやすいのはB④「How Does It Feel」のバック・コーラス部分だが、疑似ライヴ仕立てのA⑥「What I'd Say」なんかもモノラルとステレオではかなり雰囲気が違って聞こえるのが実に面白い。他にも色々と細かい点で違いに気付かされて、まるで宝探しをしているような楽しさを味わうことができた。それにしてもこのレコードはホンマにエエ曲ばっかり入っとるなぁ... (≧▽≦)
 フィル・スペクターってロニーを脅して軟禁したりジョンの「Rock 'N' Roll」のテープを持ってトンズラしたりと人間的にはちょっとアレだったが、“ウォール・オブ・サウンド”を考案し、「Let It Be」を始めジョンやジョージのソロ、フィレス・レーベルのロネッツやクリスタルズ、そしてあのラモーンズに至るまで、数々の名盤を世に生み出してきたプロデューサーとしての彼はまぎれもなく不世出の天才だった。R.I.P. フィル・スペクター、たとえ時代が変わろうとも彼が作り上げた素晴らしい音楽は永久に不滅なのだ。
𝐓𝐡𝐞 𝐑𝐨𝐧𝐞𝐭𝐭𝐞𝐬 - 𝐁𝐞 𝐌𝐲 𝐁𝐚𝐛𝐲 - 𝐥𝐢𝐯𝐞 [𝐇𝐐]
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