shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ロンリー・スターダスト・ダンス / エンジェルス

2012-09-30 | Wall Of Sound
 前回は音壁盤ハンティングの中でも最大の収穫の一つと言えるさいとうみわこの「ロンリー・スターダスト・ダンス」にめぐり逢えて大喜びしたところまで書いたが、この話にはまだ続きがあって、YouTube でこの曲を試聴していた時に偶然目にした解説に “エンジェルスのカヴァーでも知られている名曲中の名曲” とあった。エンジェルス??? 私の知る限り、エンジェルスと言えば1963年に「My Boyfriend's Back」で全米№1になったあのガールズ・グループしか思い浮かばないのだが、いくら何でもそれはちょっとあり得ない。
 興味を引かれてネットで調べてみると、 “1988年から1990年頃にかけて 60'sのオールディーズ・ポップスを日本語で歌っていた9人組女性ヴォーカル・グループ” だと判明。シングル7枚とアルバム1枚を出しただけで消滅してしまった典型的なB級、いやC級アイドル・ユニットだったようで、その7枚目にあたるラスト・シングルがさいとうみわこのカヴァー「ロンリー・スターダスト・ダンス」というワケだ。
 この曲はアルバム未収録というのが厄介で、マイナーなアーティストのあまり売れなかったであろうCD、それも20年以上も前の廃盤シングルを見つけるのは非常に難しいが、音壁コネクション(?)の一環としてそのエンジェルスとやらのカヴァー・ヴァージョンも聴いてみたくなった私はとりあえずアマゾンでチェック。しかし案の定と言うべきか、 “可”状態でレンタル落ちの分際でも “コレクター商品” 扱いで2,800円というボッタクリ価格が付いており、アホらしくてハナシにもならない。しゃあないのでヤフオクで網を張って待っていたところ、ラッキーなことにその数週間後に出品され(←やっぱりヤフオクって凄いよな...)、サンプル盤ということで敬遠されたのか(←私は全然気にならへんけど...)、無競争500円でゲットできた(^.^)
 届いたCDシングルのジャケットに写っていたのは4人だけだが、正直言ってみんな華が無いというか、アイドル・ユニットとしてのオーラのようなものは微塵も感じられない。しかし中身の音楽の方は文句ナシで、ちょうど一連のメグミン作品を想わせるようなオールディーズ風味の音壁ガールズ・ポップスになっている。
 アレンジを担当したのはさいとうみわこのリメイク・ヴァージョンの時と同じ大木雄司なのだが、まるでフィル・スペクターが憑依したかのようなジューシィ・フルーツ沖山優司によるオリジナル・ヴァージョンのエッセンスを上手く取り入れたサウンド・プロダクションが施されており、私のような音壁マニアでも十分満足のいくカヴァーに仕上がっている。歌の方は基本的にオリジナルのさいとうみわこ・ヴァージョンを忠実に模倣しているが、随所でメイン・ヴォーカルに寄り添う素朴そのもののバック・コーラスがめっちゃエエ味を出しており、ガール・グループとしての特性が巧く活かされている。
 数々の洋楽オールディーズ・ナンバーを日本語でカヴァーしてきたこのグループにとっての最後のシングルが和製ウォール・オブ・サウンドの隠れ名曲であるこの「ロンリー・スターダスト・ダンス」というのもよくよく考えてみれば実に興味深い選曲だ。やっぱりガールズ・ポップスと音壁アレンジの組み合わせは最高やなぁ...(^.^)
エンジェルス / ロンリー・スターダスト・ダンス

ロンリー・スターダスト・ダンス / さいとうみわこ

2012-09-25 | Wall Of Sound
 今日は久々に音壁ネタでいこう。「音壁JAPAN」を聴いて原メグミンが気に入った私が彼女のリーダー作「EVERLASTING LOVE」を試聴できるサイトを探していた時に偶然目にしたレビューに “さいとうみわこの名曲「ロンリー・スターダスト・ダンス」以来の衝撃” というのがあった。「ロンリー・スターダスト・ダンス」??? 知らんなぁ...(>_<)  そもそも “さいとうみわこ” って誰なん? しかし “○○以来の衝撃” という煽り文句(?)が音壁ファンの私としては気になって仕方がない。ということで、早速 YouTube で試聴してみるとこれがもう絵に描いたようなスペクター・サウンドで、そのキャッチーなメロディーといい、絶妙な音壁アレンジといい、看板に偽りナシの名曲名演である。こんなん全然知らんかったわ...(・o・)
 思わぬ拾い物に狂喜してアマゾンでこの曲が入っているアルバムを検索すると、「タイムミシン」と「Girl Meets Boy」という2枚がヒットした。貧乏コレクターの私は今回のようにアーティストに関する知識・情報が皆無に等しい時は安くてお買い得な方を買うことにしており、前者は1989年リリースの10曲入りで既に廃盤らしく中古盤が2400円から、後者は2006年リリースの18曲入りで中古盤が1300円から(←新品を2500円で買う気はサラサラない...)ということでコスパは圧倒的に後者が高いし、大好きな「ビキニスタイルのお嬢さん」のカヴァーまで入っている。しかもヤフオクでアマゾンの半値以下の500円という激安盤を発見... 私は迷わず「Girl Meets Boy」の方を購入した。
 数日後、届いた盤をCDプレイヤーにセットして、さぁこれから大音響で和製ウォール・オブ・サウンドに浸ってやるぞとワクワクしながらプレイボタンを押すと、出てきた音は予想に反してスッカスカの薄っぺらいサウンドで、YouTube で聴いたバリバリのスペクター・アレンジとは似ても似つかぬ地味なイントロにもビックリ(゜o゜)  私としては期待が大きかった分 “はぁ? 何これ???” 状態で、てっきり曲を間違えたのかと思いトラック・ナンバーを確認したが5曲目で間違いない。
 色々調べてみて分かったことだが、「ロンリー・スターダスト・ダンス」には2つのヴァージョンがあり、私が気に入ったスペクター・アレンジはオリジナルの方で、そっちは彼女が80年代前半にインディーズ・レーベルに吹き込んだ様々な音源を1枚にまとめたアルバム「タイムミシン」に収録されていたのだ。尚、インディーズ・ガール・ポップのコンピ盤「Amusement Park」に入っているのもこっちのオリジナル・ヴァージョンだ。
 私が買った「Girl Meets Boy」に入ってたのはあろうことか80年代後半にメジャー・デビュー用に再レコーディングされたリメイク・ヴァージョンで、プロデューサーが変わったからか一般受けを意識したからかは知らないがスペクター色が大きく減退しており、ありきたりなガールズポップに堕してしまっている。こればっかりは個人の好みの問題で、こっちの方が好きという人もいるかもしれないしオリジナルを知らなければこれはこれでエエと思えたかもしれないが、60年代スペクターの “あの音” が聴きたくてこの盤を買った私の耳には気の抜けた炭酸飲料みたいな平板なサウンドにしか聞こえない。再録やったら再録とちゃんと明記しといてもらわんと、何か詐欺にあったような後味の悪さが残ってしまう。まぁ自分の勉強不足を棚に上げて愚痴ってみてもしゃあないのだが、とにかく “同一アーティストによる再録リメイクにロクなモノなし” の法則は今回もやはり正しかったということだ。
 釈然としない気持ちを何とかしようとアルバム1曲目の「ビキニスタイルのお嬢さん」も聴いてみたのだが、こっちも不自然なぐらいぶりっ子してる声色と取って付けた様な歌い方でせっかくの名曲が台無しというトホホなカヴァーになっており、凹んだ気分がますます萎えていく... (>_<) 安物買いの銭失いとはよく言ったものだ。
 その後、滅多に見ない楽天オークションで偶然「タイムミシン」が出品されているのを発見、しかも700円というからアマゾンの 1/3 以下だ。当然ライバルもおらず無競争で首尾よくゲットできてめっちゃ嬉しかったのだが、紆余曲折を経て手に入れたこの盤を聞いた感想は “これこれ、やっぱりこれでっせ(^o^)丿” という感じ。スペクター信者の座右の銘である “Back To Mono” に徹底的にこだわったモノラル録音、お約束のカスタネット攻撃と轟きわたるハル・ブレイン・ライクなドラム、そして細部に至るまでフィル・スペクターの音世界を忠実に再現した器楽アレンジが一瞬にして “あの時代” へとタイムスリップさせてくれるのだ。
 作・編曲はジューシィ・フルーツのベーシスト沖山優司で、彼のマニアックなまでの拘りと優れた音楽的センスには唸ってしまう。和製ウォール・オブ・サウンドの金字塔と言えるこの「ロンリー・スターダスト・ダンス」は例の「音壁JAPAN」が気に入ったスペクターマニアにとっては必聴の1曲ではないだろうか?
さいとうみわこ / ロンリー・スターダスト・ダンス(オリジナル・ヴァージョン)

さいとうみわこ / ロンリー・スターダスト・ダンス(再録ヴァージョン)
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夢で逢えたら / シリア・ポール

2012-08-02 | Wall Of Sound
 ロンドンオリンピック TV 観戦による睡眠不足に連日の猛暑も相まって仕事中に何度も意識が飛びそうになる今日この頃、みなさん如何お過ごしですか? 五輪といえば開会式で「ヘイ・ジュード」を熱唱するポール・マッカートニーの雄姿とそれに合わせて会場全体が合唱するシーンに大感激!!! “ヘイ! 柔道” で笑わせて下さった shoppgirl 姐さん(←♪Better better~♪ と歌詞に引っ掛けたハイレベルなダジャレで返すところなんか、さすがは安曇野のダジャレ・クイーン!)もご自身のブログに書かれていたが、オリンピック開会式で聴く「ヘイ・ジュード」は格別だった(≧▽≦)
Paul McCartney at Olympics , Hey Jude


 ということで今日はポールつながりでシリア・ポール(←何という強引な展開...)にしよう。前にも書いたように、私と「夢逢え」との出会いはキリンのワインCMソングとしてTVから流れてきた森丘祥子ヴァージョンで、90年代の間はそれしか聴いたことがなく、まさかこんなに多くの歌手にカヴァーされている J-POP のスタンダード曲だなどとは夢にも思わなかった。もちろん大ヒットした(らしい?)ラッツ&スター・ヴァージョンなど全く記憶にない。
 21世紀に入ってネットで CD やレコードを買い始め、かつて毎週行っていた中古盤屋廻りも週一から月一、そして数ヶ月に一度と激減していったのだが、このシリア・ポール盤を手に入れたのはそんな頃だった。日本橋のディスクJJの CD 棚から微笑みかけているジャケットに魅かれて偶然手に取り、 “シリア・ポールって確か「ポップス・ベスト10」の DJ やってたお姉さんやん...めっちゃ美人やなぁ(^.^)” と鼻の下を伸ばしながら曲目を見ると、大好きな「夢逢え」の色んなミックスのヴァージョンが並んでいる。しかもシフォンズの④「ワン・ファイン・デイ」やジャズ・スタンダードの⑦「ザ・ヴェリー・ソート・オブ・ユー」、そして大好きなナンシー・シナトラの⑨「トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー」までカヴァーしているのだ。これで買わねばポップス・ファンではない。
 今ではこの CD は廃盤になっており、その内容の素晴らしさや希少性も相まってアマゾンやヤフオクでは結構なプレミア付き価格で取り引きされているようだが、当時はまだそんなことはなく、私は1,000円台で買うことができた。話は逸れるが、私はこの “すぐに廃盤→プレミア付きボッタクリ価格で中古が流通” という構図に釈然としないものを感じてしまう人間で、時代を超えて愛され続けるこんな名盤は常に音楽ファンが聴けるようにカタログに残しておくのがレコード会社の責務ではないかと思っている。
 このアルバムは1977年に作られたキュートな王道ガール・ポップの傑作で、大瀧詠一によるウォール・オブ・サウンド全開のプロデュースが冴えわたる「夢で逢えたら」を始めとして胸キュン・ポップスが満載だ。1987年の初 CD 化盤(← CDケースを右側へ開く古いタイプのソニー盤ね)は曲順がオリジナルとは全然違うし、ストリングスによるインスト・ヴァージョンもカットされていたが、私が買ったのは1997年に CD 選書としてリリースされた再発盤。'87年盤をオリジナル通りの曲順に戻して全曲最リミックスを施し、更に「夢逢え」の3ヴァージョンを含むボートラが6曲も入り、大瀧氏の詳細なライナーノーツまで付いているという超お徳用盤である。
 ということでこの再発盤には「夢で逢えたら」がインストも含めれば5ヴァージョンも収められていることになる。①の “アルバム・ヴァージョン” がエコー強めなのに対し⑬の “シングル・ヴァージョン” はエコーが少なく感じられるのだが、これは大瀧氏の解説によるとラジオのオンエアーを想定して歌を際立たせるためにエコーを控え目にしたからとのこと。因みに⑭の “モノ・ヴァージョン” と⑮の “モノ・トラックス・オンリー” はこの ⑬“シングル・ヴァージョン” をモノ・ミックスにしたものだ。⑫の「夢で逢えたら、もう一度」は山下達郎のストリングス・アレンジをフィーチャーしたインスト・ヴァージョンで LPではB面ラストに置かれていたが、この “もう一度” というのは「ペパーズ」や「ラム」における “リプリーズ” みたいな位置付けなのだろう。
 まぁステレオであれモノであれ、ミックスは違えどシリア・ポールが歌う「夢逢え」こそがこの曲の最高峰であることは言うまでもない。時系列に従って考えればオリジナルは吉田美奈子ということになるが、世間的な認知は “シリア・ポールの曲” ということになるのではないか? とにかく恋する女性の気持ちをこれ以上ないぐらいストレートに表現した彼女のキュートな歌声がこの曲にピッタリ合っているし、何と言っても2分8秒から挿入される語りの部分 “もしも もしも 逢えたなら その時は力いっぱい 私を抱きしめてね... お願い...” における “お願い” の色っぽさがたまらない(≧▽≦) フニュフニャと腰砕け状態になっているところへ畳み掛けるように爆裂するハル・ブレイン直系ドラム(2分25秒)にもシビレてしまう。まさに日本人が作ったウォール・オブ・サウンドによるガール・ポップの魅力ここに極まれりという瞬間だ。
 「夢逢え」以外の曲では、クリスタルズの「オー・イェー・メイビ・ベイビー」を裏返しにした様な②「恋はメレンゲ」やドリーミーなガール・ポップ⑥「こんな時」といった大瀧氏のオリジナル曲も良いが、何と言ってもナンシー・シナトラの⑨「トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー」(←「イチゴの片想い」という邦題で有名)やフィル・スペクターが在籍していたテディー・ベアーズの⑩「オー・ホワイ」といったカヴァーが最高だ。⑨⑩共に絶妙な音壁処理(?)によってロマンティックなムード満点の胸キュン・ポップスに仕上がっており、アルバムの隅々にまでスペクターな薫りが立ち込めているのが嬉しい。
 フィル・スペクターを意識したサウンド・プロダクションの面だけでなく、メロディー・タイプの曲だけを集めたアルバム作りという面でも4年後に発表されることになる名盤「ロング・バケーション」への伏線となったシリア・ポールのこのアルバム、リリースから35年の時を経た今でもその輝きを失わないエヴァーグリーンな1枚だ。
夢で逢えたら / シリア・ポール (アルバムバージョン)

夢で逢えたら、もう一度.wmv

Tonight You Belong To Me シリア・ポール

Oh Why-シリア・ポール(Celia Paul)
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Everlasting Love / 原めぐみ

2012-06-19 | Wall Of Sound
 全国一千万の音壁ファンのみなさん、こんばんは♪ 最近すっかりスペクタリアンと化してきた shiotch7 です。みながわ最高顧問のお墨付きコンピ名盤「音壁Japan」の紹介は終わっちゃいましたが、当ブログの “音壁まつり” はまだまだ続きまっせ。ということで、今日は「音壁Japan」を聴いて大ファンになった“音壁アイドル”、原めぐみたんの「Everlasting Love」でいってみよー(^o^)丿
 彼女は1980年にアイドル歌手としてデビュー、トリオ・レコードから「ボーイハント」と「見つめあう恋」の2枚のシングルを出した後ワーナーにアニメ・ソングを吹き込みソニーへ移籍、原江梨子名義で妖しげなエスニック演歌(?)を3枚出して引退したが、2008年に例の「音壁Japan」に「見つめあう恋」のB面曲「涙のメモリー」が収録されたのをきっかけに “音壁アイドル” として完全復活、翌2009年に18年ぶり(!)の新曲(及びそのモノラル・ミックス&カラオケ)に28年前の音壁ソング3曲(←当然ながら “音壁リマスタリング” されてます...)を加えた6曲入りミニ・アルバムがこの「EVERLASTING LOVE」というワケだ。
 まずはジャケットのメグミンにご注目! とても私よりも2つ年上とは思えない美しさ(←今時の言葉で “美魔女” と言うらしい...)で、いま一つ垢抜けなかったアイドル時代よりも遥かに輝いて見えるし、高く盛ったビーハイブ・ヘア(←“ミツバチの巣” の意味で、ロネッツのトレードマークとなったヘア・スタイル)を見ただけで音が聞こえてきそうな気がする。ジャケット左上の “...presenting the fabulous” なんてもろにロネッツの名盤「プレゼンティング・ザ・ファビュラス・ロネッツ」のパロディーだし、タイトル右下にはフィル・スペクターのPR (PHILLES RECORDS) ロゴの代わりに彼女が経営する輸入雑貨ショップ Grace Note のロゴを描くという凝りようだ。イエロー/レッドのフィレスなレーベル・デザインもマニア心をくすぐらずにはおかない。
 中身の方はフィル・スペクターの “あの音” が好きな人なら間違いなく気に入りそうな筋金入りのウォール・オブ・サウンドで、私は新曲の①「トビラ ~Everlasting Love~」を聴いて一発でKOされてしまったのだが、有象無象の使い捨て音楽が蔓延するこの21世紀のミュージック・シーンにおいて、よくぞまぁこれだけ魅力的なポップスを作れたものだと感心してしまう。2009年に1960年代の古き良きオールディーズを完全無欠な形で再現してやろうという発想が痛快だ。
 曲想としては「ヴァラエティー」~「クワイエット・ライフ」時代の竹内まりやに近く、そのダイナミックな音壁は名曲「もう一度」のサウンド・プロダクションをも凌駕せんばかりの勢いで眼前にそびえ立つ。メグミンの可憐な歌声も18年ぶりの復帰作とはとても思えないような好調ぶりで、まさに曲良し、ヴォーカル良し、演奏良しと三拍子揃ったキラー・チューンだ。この曲はモノラル・ミックス⑤や “ハイパー・ウォール・オブ・サウンド・オーケストラ” によるカラオケ・ヴァージョン⑥も収録されており、音壁好きにはたまらない構成になっている。サウンドの大海原に身を投げ出すようにして大音量で聴くべし(^ε^)♪
原めぐみ 「Everlasting Love」 最新PV


 ②「涙のメモリー」はアイドル時代2枚目のシングルのB面曲で、前回の「音壁Japan」で紹介済み。この曲があのコンピ盤に入っていなければ新曲①をも含めたその後の “復活した伝説の音壁アイドル” としての怒涛の展開はなかっただろうし、当然私が彼女の存在を知ることも無かったかと思うと、よくぞ収録してくれました!!! という感じ。オールディーズ・ファン、特にガールズ・ポップス・ファン御用達のこの曲は、作詞がメグミン本人で、作曲はジューシィ・フルーツの沖山優司だ。
 ③「離さないで(ドント・エヴァー・リーヴ・ミー)」は「ビー・マイ・ベイビー」や「ダ・ドゥー・ロン・ロン」、「リーダー・オブ・ザ・パック」といったガール・グループ・クラシックスを書いた名コンビ、ジェフ・バリー&エリー・グリニッチの作品で、オリジナルはコニー・フランシス64年のヒット曲。この曲は漣健児の訳詞でコニーが歌った日本語ヴァージョンも制作されており、メグミンによるカヴァーはこの漣ヴァージョンを基にして音壁アレンジを施したものだ。
 尚、これはシングルには入っておらず、落語家・三遊亭円丈(←一体どういう繋がりなんやろ???)のアルバム「リハビリテーション」のカセット版(!)のみに収録されていたという超レア音源で、「フェイヴァリッツ! 魅惑の60'sポップス・カヴァー」や「漣健児ソングブック」といったコンピ盤でしか聴けなかったものがこのCDで聴けるのだからメグミン・マニア(←いつからマニアになったんや...)としてはありがたい。長生きはするもんですなo(^-^)o
原めぐみ はなさないで

Connie Francis - Don't Ever Leave Me (English)


 ④「見つめあう恋(ゼアズ・ア・カインド・オブ・ハッシュ)」は言わずと知れたハーマンズ・ハーミッツのヒット曲で、カーペンターズの絶品カヴァーでもよく知られた名曲だが、これはその日本語カヴァーで、アイドル時代2枚目のシングルだ。訳詞の “水無月孔” とはジューシィ・フルーツのイリヤのことで、B面の「涙のメモリー」と共にジューシィ・フルーツ絡みのナンバーということになる。みながわ最高顧問ご指摘のように、「涙のメモリー」が「アイ・ワンダー」ならこの「見つめあう恋」のイントロはコテコテの「ビー・マイ・ベイビー」クローンという感じで、ウキウキするような音壁ガールズ・ポップスに仕上がっている。尚、この曲は「ミート・ザ・ブリティッシュ・ビート!」というコンピ盤でしか聴けなかったので、今回このアルバムに彼女のアイドル時代の音壁作品3曲がすべて収録された意義は大きい。今度は是非ともこの “一人ロネッツ” 路線でフル・アルバムを作ってほしいものだ。
Megumi Hara - Mitsumeau Koi with Picture Sleeve(sound only).flv
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音壁Japan (Pt. 3)

2012-06-16 | Wall Of Sound
 「音壁Japan」特集もいよいよ最終回だ。シーナ&ザ・ロケッツは私が高校生の時に音楽誌のレコード・レビューで彼らの 2nd アルバム「真空パック」が大絶賛されているのを見て興味を持ち、試しに何曲かエアチェックして聴いてみたらコレがもうめちゃくちゃカッコ良いガールズ・ロックで大コーフン(^o^)丿 当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったYMOのメンバーも参加しており、実にキャッチーなロックンロール・アルバムになっているのだが、中でも最もインパクトが強かったのがシングル・カットされた⑫「ユー・メイ・ドリーム」だ。
 この曲には細野晴臣が作曲とプロデュースで参加しており、素朴だったシナロケにポップな魔法をかけ、邦楽ガールズロック史上に残る名曲名演に仕上げている。エコー感はそれほど強くはないが、“スペクター印” の刻印を押しまくるかのように随所で鳴り響くカスタネットがとても印象的だし、「ユー・メイ」と「夢(ドリーム)」を引っ掛けた言葉遊び的な歌詞もユニークで面白い。何やかや言うても、シンセのバックでしっかりと自己主張する鮎川しゃんのロック・スピリット溢れるギターが最高ですたい(笑) ミカ直系のヘタウマ・ヴォーカリスト、シーナのハスキーでキッチュな歌声もガールズ・ロックにぴったりハマっとるとよ... (≧▽≦)
ユー・メイ・ドリーム シーナ&ザ・ロケット


 元スケバン刑事の浅香唯が4年間のブランクの後、YUI 名義でリリースしたカムバック作が⑬「Ring Ring Ring」だ。1980年代の邦楽は殆ど聞いてないに等しいので恥ずかしながら全盛期の彼女のヒット曲は1曲も知らないのだが、この曲はクセになる。ウキウキワクワクするような彼女の歌声が分厚~いウォール・オブ・サウンドとの相乗効果で高揚感を煽りまくり、ドラムスが轟きわたるイントロからその音圧に圧倒されっぱなし(≧▽≦) 特に凄いのはダイナミックレンジを狭く取ることによって中音域が分厚く張り出してくる “あの時代” のモノラル・サウンドを忠実に再現していることで、本アルバム収録作品中最も音壁度の高いナンバーになっている。スペクターの座右の銘である “バック・トゥ・モノ” を極めた感のあるこの安田信二というアレンジャーは筋金入りのスペクター・マニアと見た。こりゃタマランわいと調子に乗ってヴォリュームをガンガン上げていくと、詰め込まれたいろんな音が混然一体となって襲い掛かってきて快感そのものだ。ホンマによーやるわ(゜o゜)
【YUI】 Ring Ring Ring 【浅香唯】 Wall of Sound Japan


 渡辺満里奈の⑭「うれしい予感」はエコー感もバッチリで音壁度は高いのだが、残念ながら歌声にイマイチ聴き手を魅きつけるものがない。この人はTVタレントとしては好感度が高いが、歌手にはあまり向いてないと思う。
 以前このブログでも取り上げた岡崎友紀の⑮「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」は日本人が作った音壁アイドル・ポップスの最高傑作で、キュートな歌声、キャッチーなメロディー、ドリーミーなサウンドと文句の付けようのないキラー・チューン。プロデューサー、加藤和彦の天才ここに極まれり!と言いたくなる絵に描いたような3分間ポップスで、これ以上の名演があったら教えを乞いたいくらいの素晴らしさである。尚、この曲の入った同名アルバムは他にもシルヴィ・バルタン「アイドルを探せ」やローリング・ストーンズ「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」の傑作音壁カヴァーが収録されている大名盤なのだが、1994年に一度CD化されたっきりずーっと廃盤のままで、私はラッキーなことに7年ほど前にヤフオクでLPを、3年前にソニー・オーダーメイドファクトリーでCDをそれぞれゲットできたが、今現在アマゾンでは1万円前後のボッタクリ価格で取り引きされているようだ。シリア・ポールの「夢で逢えたら」もそうだが、こんな名盤を廃盤のまま放置しておくというのはレコード会社の怠慢以外の何物でもないと思う。
ドゥ・ユー・リメンバー・ミー


 大瀧詠一の⑯「青空のように」は「ロンバケ」前夜のナイアガラ・サウンドといった感じでドドンパ・リズムが面白い1曲だが、どうせならナイアガラ・サウンドの最高傑作「君は天然色」を入れて欲しかったところ。あの曲こそ究極のスペクター・オマージュだと思うのだが...
 モコ・ビーバー・オリーブの⑰「わすれたいのに」は1961年にパリス・シスターズがフィル・スペクターのプロデュースで出した「アイ・ラヴ・ハウ・ユー・ラヴ・ミー」の日本語カヴァーで、ウォール・オブ・サウンド完成以前にリリースされた原曲に合わせたかのようなあっさりめのサウンド・プロダクションだ。1曲目をシリア・ポールで始め、最後をオリーブ(←シリア・ポールの愛称)で閉めるという仕掛けにもニヤリとさせられる(^o^)
 以上全17曲、とてもヴァラエティーに富んだ内容で、知らない歌手や曲も一杯聴けて大満足。私は数曲を差し替え・追加して自家製CD-R「ザ・コンプリート・音壁Japan」を作って楽しんでいる。今回は “イントロが「ビー・マイ・ベイビー」してる” 曲が中心に選ばれているが、次回はもっとマニアックな選曲で「音壁Japan 2」を作って欲しいものだ。まぁそれはともかくとして、こんな素敵なコンピ盤を教えて下さったみながわ最高顧問に感謝感謝の大感謝!!! おかげさまで、仕事で溜まりに溜まったストレスも音壁CDを大音量で聴いてスッキリ解消、毎日充実した音壁ライフを満喫しております(^.^) これからも何卒よろしくご指導下さいm(__)m
モコ・ビーバー・オリーブ/わすれたいのに
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音壁Japan (Pt. 2)

2012-06-13 | Wall Of Sound
 先週アマゾンからCDが届いて以来すっかりヘビロテ状態のこの「音壁Japan」、音壁フリークのプロデューサー達が腕の見せ所とばかりに細部に至るまで “スペクター愛” に溢れるアレンジを施し、レコーディング・エンジニアが秘術を尽くして作り上げたウォール・オブ・サウンドの数々が楽しめて実に面白い。ということで今日も前回に引き続き「音壁Japan」パート2だ。
 ポニー・テールというグループの⑥「二人は片想い」(1976)は70年代初期の雰囲気を湛えた女性フォーク・デュオの歌声をウォール・オブ・サウンドでコーティングするという発想が実にユニーク。この手のグループは一歩間違えると “どれを聴いてもみな同じ” ような無個性ソングに堕してしまう危険性を内包しているが、ここでは深いエコーやカスタネットといったスペクター的な要素によってピリリとスパイスが効いているし、エコーがスベッただのカスタネットがコロんだだのという以前に楽曲の出来自体が素晴らしい。それもそのはずで、作詞作曲は荒井のユーミン様だ。この曲は6年後に歌詞やアレンジをガラッと変えて「昔の彼に会うのなら」と改題してアルバム「パール・ピアス」に収録されているので、興味のある方は聴き比べてみて下さい。それにしてもユーミンはホンマにエエ曲を書くなぁ... (≧▽≦)
ポニーテール/二人は片想い

昔の彼に会うのなら 松任谷由実


 杉真理という人は竹内まりやの初期の3枚のアルバムに曲を提供していたこともあってそのポップな作風は昔からよく知っていたが、この⑦「夏休みの宿題」でもウキウキするようなメロディー・センスは相変わらず健在で、クリスタルズ風ウォール・オブ・サウンドの影響を巧く消化しながらオリジナルなサウンドを作り上げている。一言で言えばフィル・スペクターがプロデュースしたマージー・ビートといったところか。
 多岐川裕美の⑧「酸っぱい経験」、コレはめっちゃ懐かしい!!! 1981年頃にカゴメ・トマトジュースのCMソングとして頻繁にテレビから流れてきた曲で、長いこと聞いてなくてすっかり忘れていたが、出だしの “シャ~ツゥの ボ~タン♪” のワン・フレーズを聴いてすぐに記憶がよみがえってきた。CMソングの威力ってやっぱり凄いですな。当時は何も考えずに聞いていたが、今改めて聴くとイントロなんかもう「ビー・マイ・ベイビー」そのまんま(笑)で、曲想やメロディー展開はこの曲の半年前に出た⑮「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」の影響を強く受けていると思うがエコー感は極めて薄く、サウンド的にはフィル・スペクターというよりもむしろ尾崎亜美や門あさ美といった当時のニューミュージック系女性シンガーを想わせるものがある。女優さんの余技だけあって歌の方は上手くはないが、イイ女がイイ曲を歌うというただそれだけで十分ではないかと思う。
酸っぱい経験 多岐川裕美


 太田裕美の⑨「恋のハーフムーン」は大瀧氏プロデュースとはいえ、このコンピ盤の中ではちょっと浮いているというか、 “スペクター度数” はかなり低いと思うのだがどうだろう? 曲としてはシングル向きというよりはむしろアルバム中の1曲という感じで、同じ大瀧プロデュース作品なら前作シングル「さらばシベリア鉄道」のインパクトには遠く及ばないと思う。
 私はこれまで40年近くの長きにわたって色んな音楽を聴いてきたが、偏った聴き方をしてきたせいか “有名アーティストなんだけど、実はまだ聴いたことがない” という歌手やグループも結構多い。シュガー・ベイブもそんな未聴有名アーティストのひとつで、山下達郎が在籍していたグループということしか知らない。今回このコンピ盤に収録された⑩「雨は手のひらにいっぱい」で初めて聴いたワケだが、正直言ってあまり印象に残らなかった。
 原めぐみの⑪「涙のメモリー」、コレめっちゃ好き!!! 彼女は80年代初めにデビューした元アイドル歌手で、一旦引退したものの、このコンピ盤発売を機に “音壁アイドル” (←何やそれ...笑)として完全復活、28年ぶりにコテコテのウォール・オブ・サウンドで完全武装した新作まで発表してしまったというから驚きである。この「涙のメモリー」は81年にリリースされた2枚目のシングル「見つめあう恋」のB面曲で、コレがもう絵に描いたような音壁ガールズ・ポップスなのだ。特に音壁お約束満載のイントロはロネッツの「アイ・ワンダー」を想わせるものがあり、イントロに続いてヴェロニカの “Mama said, before I'd grown~♪” という歌声が聞こえてきそうな錯覚に陥ってしまう。ストリングスの使い方なんかスペクターそのものだし、ハル・ブレイン直系の3連ドラムにも涙ちょちょぎれる。やっぱりウォール・オブ・サウンドはこうでなくっちゃ(^o^)丿 (つづく)
音壁アイドル 原めぐみ ♪涙のメモリー  Wall of Sound Japan
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音壁Japan (Pt. 1)

2012-06-10 | Wall Of Sound
 デフレパ祭りも宴たけなわ(?)だった先週のこと、当ブログ最高顧問のみながわさんからいただいたコメントでこの「音壁Japan」というCDの存在を知った。これまでも “さすらいのギター特集” や “キャロル・キング特集” のきっかけを作って下さり、イエイエや昭和歌謡の祭りでも色々と貴重な情報を下さったのだが、今回はフィル・スペクター関連である。ビートルズやキャンディーズ、ドリス・デイも含め、ホンマに趣味かぶりますな(^.^)
 このCDに関して “内容はタイトルから想像出来る通りのものです” と書かれていたが、それにしても凄いタイトルだ。オトカベ = Wall Of Sound って、そのまんまやん(笑) しかもその後にジャパンを付けて読むと、まるでX-JAPAN かサッカーの日本代表(←私はトルシエ・ジャパンしか知らんけど...)みたいな響きで何とも語呂が良い。
 ジャケットがこれまた面白く、白い壁をバックに「音壁Japan」という文字そのものを図案化したかのようなそのデザインは、ブルーノート・レーベルにおけるリード・マイルスの一連の作品に通じるものがあり、右上へ向かって歪曲させたタイトル文字はリー・モーガンの「ザ・ランプローラー」を思い起こさせる。収録アーティスト名の配置も何となくジャズのコンピ盤っぽい。
 内容の方はみながわさんが仰っているようにフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドの影響を強く受けた邦楽ソングを集めたコンピ盤で、どこを切ってもカスタネットが鳴り響き、深いエコーのかかったドラムスが轟きわたるという、スペクター・ファンにはたまらない1枚だ。どの曲も判で押したように「ビー・マイ・ベイビー」のクローンみたいなイントロで始まるというのが実に面白い(^o^)丿
 数多い音壁ソングの1曲目を飾るのは本CDの目玉と言うべきシリア・ポールの①「夢で逢えたら」だ。私にとってシリア・ポールと言えば中学生の頃、毎週土曜の午後にFMでやっていた「ポップス・ベストテン」という番組のDJのおねーさんという印象が強く、このレコードがリリースされた1977年当時はまさか彼女が歌も歌っているなんて夢にも思わなかった。彼女がこの曲を歌っていると知ったのは数年前だが(←遅い!!!)、彼女がモコ・ビーバー・オリーブのオリーブだとは今の今まで知らなかった(←恥)。因みにこのCDのラストにはモコ・ビーバー・オリーブの⑰「わすれたいのに」が入っており、曲の配置までしっかりと考え抜かれてるなぁという感じである。
 プロデュースはもちろん日本におけるウォール・オブ・サウンド実践の第一人者、大瀧詠一氏。親の仇でもとるかのような勢いで打ち鳴らされるカスタネット連打といい、音壁にはなくてはならない深~いエコーのかかったドラム・サウンドといい、大瀧氏を始めとする製作スタッフはさぞや楽しかったろうなぁ... と思わせる逸品だ。そんな分厚い音壁の中でフワフワと浮遊する彼女のヘタウマ彷徨ヴォーカルがこれまた絶品で、聴き手を夢見心地へと誘う絵に描いたような胸キュンポップスに仕上がっている。
 彼女のこのシングルはそんなに売れなかったようだが、その後女性シンガーを中心に数多くのアーティスト達にカヴァーされており、まさに “記録” よりも “記憶” に残る名曲の典型と言えるだろう。尚、このコンピ盤に入っているのはアルバムとはミックスが違うシングル・ヴァージョンの方を「音壁」用にリマスターしたものだ。
夢で逢えたら ~ シリア・ポール.wmv


 私は松田聖子という歌手が大の苦手。あの声と歌い方がどうしてもダメなのだ。まぁルックスが全然好みでないことも大きいけれど...(笑) ただこの②「一千一秒物語」は曲自体の良さとスペクター流のストリングス・アレンジのおかげでストレスなく聴けてしまうところがある意味凄い。
 佐野元春の③「SOMEDAY」の元ネタはブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」だが(←間奏のサックス・ソロなんかモロにクラレンス・クレモンズしてます...笑)、フィル・スペクターを超リスペクトしているスプリングスティーンの作品中でもとりわけスペクター色の強い曲を模しただけあって、孫コピー(?)にあたるこの曲でも正調ウォール・オブ・サウンドが楽しめる。まぁ音壁云々を抜きにしても、この人の説得力溢れる歌声にはついつい引き込まれてしまうのだが。
 この「音壁Japan」で初めて聴いた曲の中で断トツに気に入ったのが須藤薫という女性シンガーの④「つのる想い」だ。この人のことは名前すら知らなかったが中々雰囲気のある歌い方で、その伸びやかな歌声は小西康陽一派が作り上げたコテコテのウォール・オブ・サウンドに見事に溶け込んでいる。それにしてもこのイントロ、もう笑うしかおまへんな(^.^) 3分32秒から炸裂する“ウォウ ウォウ ウォウ~♪” はヴェロニカへのオマージュか???
つのる想い  須藤薫


 ミポリンの⑤「世界中の誰よりきっと」が大ヒットした1992年当時、私は邦楽を全くと言っていいほど聴いていなかったが、この曲だけはテレビか何かで耳にしてそのあまりの素晴らしさに感激し、速攻でCDシングルを買いに走った覚えがある。「ビー・マイ・ベイビー」そのまんまの “ドン・ド・ドン♪” というドラムから始まり、カスタネットが鳴り響くというイントロは音壁アイドル・ポップスのお約束だが、この曲のキモは何と言っても3分間ポップスの王道を行くようなそのキャッチーなメロディー展開に尽きるだろう。中でもサビのハモリ・パートが好きで好きでたまらない。私にとっては90年代邦楽ポップスの中でも三指に入る大名曲だ。それにしてもミポリンってホンマに美人やなぁ... (つづく)
中山美穗 Miho Nakayama 世界中の誰よりきっと
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Philles Album Collection

2011-12-27 | Wall Of Sound
 みなさんこんにちは。ヒッピーな、じゃなかったハッピーなクリスマスを過ごされましたでしょーか? デートしてくれる可愛い彼女もいない私は家でコタツに入って音楽を聴くという “いつものメリークリスマス” 状態だったのだが、コタツにはミカンとネコが欠かせないように、音楽ファンにとってのクリスマスといえば何はさておきフィル・スペクターである。ウォール・オブ・サウンドなんである。聖夜には轟き渡る分厚いエコーがよく似合うのだ(←何という強引な展開...)。ということで今日は2011年の私的 “リイシュー・オブ・ザ・イヤー” といえるフィル・スペクターの7枚組ボックス・セットをご紹介。
 この「フィレス・アルバム・コレクション」はフィル・スペクターがフィレス・レーベルからリリースした全アルバムから例のクリスマス・アルバムを除いた下記の6枚を紙ジャケ(←私の EU 盤は結構ソリッドな作りになってます...)でオリジナル通りに復刻、更に7枚目としてシングル B 面に収録されたインストルメンタル音楽を集めた「フィルズ・フリップサイズ(← flipside とは “シングル B 面” という意味)by フィル・スペクター・ウォール・オブ・サウンド・オーケストラ」というボーナス・ディスクまで付いた、まさにオールディーズ・ファン垂涎モノのボックス・セットなのだ。
 1) Twist Uptown / The Crystals
 2) He's A Rebel / The Crystals
 3) Zip-A-Dee-Doo-Dah / Bob B. Zoxx And The Blue Jeans
 4) The Crystals Sing The Greatest Hits
 5) Philles Records Presents Today's Hits
 6) Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica
因みに日本盤はありがたい解説付きの(←皮肉です)Blu-Spec CDとやらで1万円を超える超ボッタクリ価格だったので私は迷わず輸入盤をチョイス。アマゾン・マーケットプレイスのイギリス直送便で新品が何と3,000円ポッキリだ!!! ということは1枚当たり430円... 円高サマサマというか、ホンマに良い世の中になったものだ(^.^) 
 上記の6枚は個々に独立した作品だし、今ここでそれぞれの盤についての感想を書く気力も体力も無いのでそれは又の機会に譲るとして、7枚目のボーナス・ディスクについて少し触れたい。フィレス・レーベルのシングル B 面用インストは、リハーサルの合い間に録ったジャム・セッション音源に身内や関係者の名前をテキトーにタイトルに付けただけ、というものがほとんどで、中には “何じゃこりゃ?” というトラックもあるが、興味深い音源も少なくないので油断できない。
 スタイル的には大きく分けてロックンロール風とフォービート・ジャズ風の2種類に大別され、前者ではクリスタルズの「ヒーズ・ア・レベル」とジョンの「ロックンロール」を足して2で割ったみたいな雰囲気の③「ドクター・カプランズ・オフィス」(←スペクターがかかっていた精神科医の名前から取ったもので、「GO! GO! ナイアガラのテーマ」としても有名ですね...)が気に入ったが、何よりも面白かったのは後者のジャズっぽい演奏だ。 “スペクター・サウンドでジャズ” というのも中々オツなもので、バーニー・ケッセルのギターを大きくフィーチャーした⑨「ミス・ジョーン・アンド・ミスター・サム」、フレディー・グリーンみたいにザクザク刻むリズム・ギターが快感を呼ぶ⑫「ギット・イット」、ガンガン弾きまくるパウエル直系のピアノとビッグ・バンド風の爆裂ドラム・ソロに圧倒される⑭「チャビー・ダニー・D 」、ブンブン唸るベースとスインギーに乱舞するピアノの絡みがたまらない⑯「アーヴィング」など、結構面白い音源が多くて楽しめた。
 このようにいいことずくめに思えるこのボックス・セットだが、唯一不満なのがモノラル音源から最新リマスターを施したというその音質だ。常日頃 iPod で音楽を聴くような人達には無縁のハナシだが、オリジナル盤 LP のスピーカーから迸り出るような迫力満点のモノラル・サウンドと比べるとその差は歴然(>_<) 月とスッポン、ラオウとジャギ、レッドブルと HRT ぐらいの違いがある。ノペーッとしていて平面的というか、脱脂綿で拭いたような清潔な感じのサウンドで、全体的にガッツに乏しいのだ。ジャズで言うと ECM みたいな音作りなのだが、ウォール・オブ・サウンドはやはりブルーノートのような無骨な音で聴きたい。あの “音の壁” はあくまでも十分な音圧あってのもので、エコー感だけが残った薄っぺらいサウンドではその魅力が半減してしまうように思う。せっかくの好企画なのに、それだけが惜しい。画龍点睛を欠くとはまさにこのことだ。
 このようにリマスタリングには不満が残るものの中身の方は文句の付けようがない珠玉の名曲名演アメアラレ攻撃で、オリジナル盤 LP はその人気と希少性ゆえに数万円で取引されているため余程のコレクターでない限り聴けないようなフィレス・レーベルの貴重な音源が、ヘタレな音とはいえ(←しつこい!)手軽に楽しめるようになっただけでも感謝せねばならないだろう。それに7枚組といっても1枚30分前後の盤ばかりなので、今年の大晦日はコタツに入って(←ホンマにコタツ好きやなぁ...)スペクター・サウンドを一気聴きするというのもエエかもしれない。

Phil Spector jukebox


Phil Spector house band - Dr. Kaplan's Office


GO! GO! Niagaraのテーマ~Dr.Kaplan's Office


Chubby Danny D
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ゴフィン&キング特集2 【ガール・グループ編】

2011-11-16 | Wall Of Sound
 ゴフィン&キング特集のパート2は【ガール・グループ編】です(^.^)

①Will You Love Me Tomorrow / Shirelles
 私とシュレルズとの出会いはビートルズがきっかけだった。デビュー・アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」で彼女たちのヒット曲「ベイビー・イッツ・ユー」と「ボーイズ」をビートルズがカヴァーしていたのだ。それから何年か経ち、オールディーズのガール・グループにハマッて色々と聴き漁っていくうちに再会したのがこの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」。その甘いメロディーと “明日もまだ愛してくれるのかしら?” と問いかける切ない乙女心を見事に表現した歌詞はまさにドリーミィなポップスの王道と言えるもので、ガール・グループとしては初の全米№1に輝いたというのも十分頷ける名曲だ。キャロル・キングが1971年のアルバム「タペストリー」でセルフ・カヴァーしたヴァージョン(←曲名表記に still が加わります)の素朴な味わいも捨て難い。
The Shirelles - Will You Love Me Tomorrow (Live, 1964)

carole king will you still love me tomorrow lyrics


②One Fine Day / Chiffons
 私とシフォンズとの出会いもやはりビートルズ絡みだった。例の「マイ・スウィート・ロード」の盗作問題から元ネタとされる彼女たちのヒット曲「ヒーズ・ソー・ファイン」に興味を持ち、FM番組の特集をエアチェックしたのがそもそもの始まりで、「ヒーズ・ソー・ファイン」の他にも「スウィート・トーキング・ガイ」やこの「ワン・ファイン・デイ」など、“ガール・グループ・ポップスかくあるべし!!!” と叫びたくなるようなウキウキワクワク感溢れるキラー・チューンのアメアラレ攻撃に完全 KO されたのだ。そんな名曲名演揃いの中でも一番好きなのがこの「ワン・ファイン・デイ」で、思わず口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディー、爽快な気分にさせてくれるコーラス・ハーモニー、躍動感あふれるピアノ(←キャロル・キングがデモ録音用に弾いたものをそのまま流用したらしい...)、弾むようなハンド・クラッピングと、すべてが完璧にキマッている。ブリッジのサックスとコーラスの絡みなんかもう鳥肌モノだ。私的にはゴフィン&キングの全作品中ベスト・オブ・ベスト、これ以上の名曲名演があったら教えを乞いたい。
The Chiffons - One Fine Day - 1963

Carole King / One Fine Day


③Chains / Cookies
 私とクッキーズとの出会いは当然ビートルズがカヴァーした「チェインズ」である(笑) デビュー当時に “イギリスのゴフィン&キングになりたい” と語っていたジョンとポール(←“レノン=マッカートニー” という表記もそこからきているらしい...)がアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」で彼らの作品を取り上げたのは当然といえば当然だが、それにしても先のシュレルズやマーベレッツ、そして超マイナーなドネイズに至るまで、ビートルズのガール・グループ好きはハンパない。このクッキーズはスタジオ・コーラス隊からの叩き上げ(?)で、リトル・エヴァの「ロコモーション」やニール・セダカの「悲しき慕情」、イーディ・ゴーメの「恋はボサノバ」のバックコーラスを担当したのも彼女たち... まさにゴフィン&キング夫妻の秘蔵っ子といえるガール・グループだ。ただ、コーラスは上手いのだが、グループとしての強烈な個性というか、決定的な吸引力に欠けているように感じられるところがあり、そのあたりがグループとしてブレイクしきれなかった原因かもしれない。
The Cookies - Chains - 1962 - Original Version - Later Done by The Beatles


④Ronettes / Is This What I Get For Loving You
 1965年にリリースされたロネッツ末期のシングルがこの「イズ・ジス・ホワット・アイ・ゲット・フォー・ラヴィング・ユー」で、前年までのロネッツらしさは影を潜め、この時期フィル・スペクターが執心していたライチャス・ブラザーズっぽいサウンドになっている。私的にはヴェロニカの “ウォッ オッ オッ オー” という掛け声がないとロネッツを聴いた気がしないので少々不満の残る出来なのだが、一説によるとロニーがこれ以上成功すると自分が捨てられるのではないかと恐れたスペクターがロネッツに力を注がなくなったということらしい。そういう意味では重厚なロネッツよりも、シンプルなアレンジで曲の魅力を上手く引き出したマリアンヌ・フェイスフルのラヴリーなヴァージョンの方が堅気のポップス・ファンには聴きやすいかも。
The Ronettes - Is This What I Get For Loving You

Marianne Faithfull - IS THIS WHAT I GET FOR LOVING YOU


⑤Crystals / He Hit Me (And It Felt Like A Kiss)
 クリスタルズが1962年にリリースした 3rd シングル「ヒー・ヒット・ミー」は、心ウキウキするような素敵なポップスを生み出すゴフィン&キングの作品とは思えないような暗い内容の曲で、夫妻のベビーシッターだったリトル・エヴァの実体験を元に書かれたもの。 “彼は私を殴ったわ。でも嬉しかったの...” というまるでデート DV そのもののマゾヒスティックな歌詞に抗議が殺到し、すぐに市場から回収されたという曰く付きのナンバーだ。この曲の登場人物に共感するというフィル・スペクター(←怖っ!)のアレンジも歌詞と同様にラジカルで、過剰なエコーのかかったドラムとベルのサウンドはまるで女を殴る拳のようだし、突き刺さるようなストリングスにも、ロニーを虐待し続けた狂気の人、フィル・スペクターの心のダーク・サイドを垣間見る思いがする。
The Crystals - He Hit Me (And It Felt Like A Kiss)
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Golden Hits Of The Paris Sisters

2009-06-08 | Wall Of Sound
 先週だったか、ネットの音楽ニュースでフィル・スペクターの記事が載っていた。6年前の女優射殺事件の判決がついに下ったというのである。それにしてもあの事件の一報を聞いた時は本当に驚いた。2003年2月といえば私がまだ海外オークション eBay にドップリとハマッてLPレコードを取りまくっていた時期で、彼がプロデュースした「プレゼンティング・ロネッツ」や「クリスマス・ギフト・フォー・ユー」、「クリスタルズ・グレイテスト・ヒッツ」なんかのオリジナル盤を手に入れた直後で大はしゃぎしていた私にとって“フィル・スペクターが人を殺した”というニュースは衝撃的だった。彼の伝記本「甦る伝説」にジョン・レノンの「ロックンロール」セッションで遅々として進まないレコーディングに業を煮やしたスペクターが天井に向けて拳銃を発射した様子や、アルコールとドラッグまみれのラモーンズ「エンド・オブ・ザ・センチュリー」セッションで彼がディー・ディー・ラモーンの顔に銃口を向けた件が生々しく描かれていたが、まさかホンマに人を殺ってしまうとは思いもしなかったので、一緒に “スペクター・フィーバー” で盛り上がっていたplincoさんと共に “音楽は圧倒的に素晴らしいのになぁ... 殺人プロデューサーかよ(>_<)” と呆れたものだった。確かに彼が異常な性格で、結婚したロニーを彼の屋敷に幽閉して誰とも接触させず、死ぬような思いで彼の支配から何とか逃げ出した彼女をあの手この手で執拗に追い詰めた話は有名だし、常にピストルを持ち歩いておりキレるとあたりかまわずぶっ放していたことも周知の事実だ。おぉこわ...(>_<)  結局禁固刑19年ということで現在69才の彼は塀の中で晩年を過ごすことになりそうだ。
 このように私生活では悪評だらけのスペクターだが、こと音楽になると本当に素晴らしい仕事をする。まさに “狂気の天才” だ。上記のフィレス・レーベル以外でのプロデュース作品で有名なのは「レット・イット・ビー」、それにジョンやジョージのソロ初期の作品群だが、やはり彼のワザが最も活きるのは60年代初期のガール・グループ諸作だと思う。ロネッツやクリスタルズは以前に取り上げたので、今日はパリス・シスターズにしよう。
 彼女らのレコードやCDを聴いていて最も特徴的なのは、他のガール・グループのようなティーンエイジャー向けのいわゆる“元気印”なサウンドが極端に少ないことである。典型的なガール・グループ・サウンドはグレッグマーク・レーベル時代の「オール・スルー・ザ・ナイト」ぐらいで、他はすべてリード・ヴォーカルのプリシラの喉を鳴らすような声質を反映したスロー・テンポの落ち着いた楽曲ばかりだ。彼女らの原点はマクガイア・シスターズ、いわゆるジャズ・コーラス・グループのスタイルなので当然と言えば当然だろう。61年にグレッグマーク・レーベルからリリースされたシングル「ビー・マイ・ボーイ」(56位)、「アイ・ノウ・ハウ・ユー・ラヴ・ミー」(5位)、「ヒー・ノウズ・アイ・ラヴ・ヒム・トゥ・マッチ」(34位)はすべて似たような曲想のナンバーなのだが、これらはすべてスペクターがかつての自分のグループ、テディ・ベアーズのサウンドを再現しようとしたものだ。中でも「忘れたいのに」(最初は「貴方っていい感じ」という邦題だったらしい...)のタイトルでも有名な②はテディ・ベアーズの58年の№1ヒット「トゥ・ノウ・ヒム・イズ・トゥ・ラヴ・ヒム」の続編のような曲で、作者のバリー・マンを始め、ボビー・ヴィントンや日本のモコ・ビーバー・オリーブらもカヴァーしている彼女らの代表作だ。
 このアルバムはキャピトル・レコードの傍系レーベルであるサイドウォークからリリースされたもので、グレッグマーク時代の再演が中心なのだが、何といってもジャケットが素晴らしい!尚、彼女らはこれらのレーベル以外にMGMやリプリーズにも録音しており、中でもボビー・ダーリンのカヴァー「ドリーム・ラヴァー」やダスティ・スプリングフィールドのカヴァー「サム・オブ・ユア・ラヴィン」は出色の出来だ。
 結局ガール・グループ・ブームの去った60年代後半にプリシラはソロに転向、ハッピー・タイガー・レコードから名盤「プリシラ・ラヴズ・ビリー」(69年)を出し、持ち前の蕩けるような歌声でジャズ・ヴォーカル・ファンを萌えさせることになるのだが、それはまた別の話。

The Paris Sisters - Dream Lover


モコ・ビーバー・オリーブ/わすれたいのにI Love How You Love Me

ドゥー・ユー・リメンバー・ミー / 岡崎友紀

2009-01-18 | Wall Of Sound
 私の高校~大学時代にはまだ CD なんてものは存在せず、丹念にラジオのヒット番組をエアチェックし、気に入ったものだけをレコードで買うようにしていた。ある時 YUKI というシンガーの「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」という曲がかかった。それはキュートな歌声、キャッチーなメロディー、60'sの古き良きオールディーズを想わせるドリーミーなサウンド... その完全無欠といえるポップ・チューンに私はすっかりハマッてしまい、そのテープをヘビー・ローテーションで聴きまくった。しかし何故かその時はレコードを買いそびれてしまい、音楽環境もCD時代へと移り変わっていった。
 それから約20年後、ある時この曲のカヴァーを耳にしてめちゃくちゃ懐かしさがこみ上げてきた。それはキタキマユという歌手がテレビドラマの主題歌としてリリースしたもので、YUKIヴァージョンに近い歌い方とアレンジが気に入り即購入した。う~ん、やっぱり素晴らしい!透明感のある歌声もこの曲にピッタリだ。そーなると今度は当然オリジナル・ヴァージョンを聴きたくなるのが人情というものだ。早速ネットで調べてみると既に廃盤ということで超高値のプレミアが付いていた。CD は1万円近かったので LP に狙いを絞り、何とか4,800円で落札した。
 YUKI の正体は「おくさまは18才」の岡崎友紀で、彼女のLPが届いていよいよ念願の①「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」を聴く。「そんな気がぁしてぇたぁ~♪」と語尾の母音を伸ばす囁きヴォーカルがめちゃくちゃ可愛い。ん?このエコーのかかった奥行きのあるサウンドは私の大好きなウォール・オブ・サウンドやん!彼女のふんわりした歌声が醸し出す甘酸っぱい雰囲気といい、まるで80'sの「ビー・マイ・ベイビー」だ(≧▽≦) プロデューサーは何とあの加藤和彦... 60'sのフォーク・クルセダーズから70'sのサディスティック・ミカ・バンドと、日本のポップス界をリードしてきた鬼才である。これはもう期待に胸が膨らむ。
 ②「ウォッカ・ツイスト」は①とは打って変わってロカビリー調のナンバーで、イメージとしては加山雄三&ランチャーズの「夜空の星」にザ・ヴィーナスの「キッスは目にして」をふりかけ、それをYUKI のヴォーカルでかき混ぜたような、オールディーズ・ファンにはたまらない曲。思わず「ザ・ガードマンかよ!」とツッコミを入れたくなるような間奏部のギターのエレキな歌心に涙ちょちょぎれる。身をよじるように語尾を上げてアップテンポで歌う YUKI は私の知っていたアイドル・岡崎友紀とは別人のようだ。③「YOU MAKE ME HAPPY」は60'sと80'sが交差したようなどこか懐かしいサウンドで、YUKI のダブル・トラッキングを駆使した囁きヴォーカルがたまらない。
 ④「アイドルを探せ」は言わずと知れたシルヴィ・バルタンのカヴァーで、めちゃくちゃ深いリバーブをかけて加工処理された YUKI のヴォーカルが夢見心地へと誘う。ドタバタさせたドラムのビートも良いアクセントになっており、この辺りにも「フィル・スペクターごっこ楽しいです感」が横溢している。⑤「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」は何とあのローリング・ストーンズのカヴァー。意表を突いた選曲だが、YUKI のヴォーカルは曲の髄を見事に引き出しており、絶妙なサウンド・プロダクションも含め、私の知る限りこのベスト・カヴァー・ヴァージョンだと思う。⑥「メランコリー・キャフェ」はまるでヨーロッパのオシャレな映画を見ているようで、当時の加藤のサウンド志向を色濃く反映した仕上がりになっている。
 モダンでありながらどこかノスタルジックな雰囲気を味わえるこのアルバム、隠れた名盤の筆頭に挙げられてしかるべき大傑作だ。
YUKI  『ドゥー・ユー・リメンバー・ミー』

キタキマユ - Do You Remember Me

岡崎友紀 アイドルを探せ

Leader Of The Pack

2009-01-07 | Wall Of Sound
 「リーダー・オブ・ザ・パック」は、フィル・スペクターと共に数々の名作を世に送り出したエリー・グリニッチが85年にボブ・クリュー(フォー・シーズンズやダイアン・リネイ、ハニーズetcのプロデューサーとして有名)と製作したミュージカル作品で、この2枚組アルバムはそのミュージカルの歌部分だけを改めてスタジオ録音したもの。エリーが旦那のジェフ・バリーとのコンビで書いた名曲の数々... ロネッツ、クリスタルズ、ダーレン・ラヴ、シャングリラス、レインドロップス、ディキシー・カップス、といったガール・グループ・クラシックスから、トミージェイムズ&ションデルズやマンフレッド・マンといったロックンロールに至るまで、懐かしい60'sヒッツのリメイクが満載の、オールディーズ・ファンにとってはたまらない企画盤なのだ。最大の聞き物は何と言ってもダーレン・ラヴ本人が参加して過去のヒット曲をセルフ・カヴァーしていることで、特に「ウェイト・ティル・マイ・ボビー・ゲッツ・ホーム」「トゥデイ・アイ・メット・ザ・ボーイ・アイム・ゴナ・マリー」「ノット・トゥー・ヤング」「クリスマス・ベイビー・プリーズ・カム・ホーム」で聴かせる伸びやかな歌声は60年代よりもパワーアップしており、スピーカーの前でただただ圧倒される。この人はホントに上手い。ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」そしてシャングリラスの「リーダー・オブ・ザ・パック」の3曲でリードを取るアニー・ゴールデンのヴォーカルは瑞々しい感じで好感が持てる。もちろんロニーとは比べるべくもないが、「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」の「ウォッ、オ~♪」にはモノマネ大賞をあげたいくらいドキリとさせられた(>_<) エリー自らがリードを取るのはクリスタルズの「ダ・ドゥー・ロン・ロン」とレインドロップスの「ホワット・ア・ガイ」だが、まったく衰えを知らない彼女の歌声が60'sの空気を運んできてくれる。バックのサウンドもゴージャスで、その音圧は凄まじいの一言。まさに現代に蘇ったウォール・オブ・サウンドだ。何でも有名なクラブDJがイベントでかけたのをきっかけにオルガンバー/サバービア関連のサイトで紹介され、今ではとんでもないプレミアがついているらしいが、幸いなことにeBayでわずか$10で落札できてラッキーだった\(^o^)/ それにしてもこんな名盤が入手困難とは嘆かわしい。CD化したら絶対に売れると思うけどなぁ...

ダ・ドゥー・ロン・ロン

A Christmas Gift For You From Phil Spector

2008-12-21 | Wall Of Sound
 クリスマス・アルバムを出せれば一流の証明といわれる。誰でも知っているメロディーだからこそ、上手下手がすぐにバレてしまうからだ。しかも長年にわたって世界中で歌い継がれ親しまれてきた個々の楽曲の持つ “チカラ” はハンパではない。並みのアーティストでは曲を消化するどころか何度噛んでも飲み込めず、力負けするのは火を見るよりも明らかだ。だからクリスマス・アルバムは一見どれも同じように見えても実は意外な奥深さがあり、シンガー/プレイヤー/プロデューサーの音楽的センスが試される一種の試金石といえるだろう。
 そこで登場するのが我らがフィル・スペクターである。彼は伝統的なクリスマス・ソングに大編成のストリングスやビッグバンドを使ったウォール・オブ・サウンドで活力を与え、現代によみがえらせたのだ。ダーレン・ラヴが歌う①「ホワイト・クリスマス」では、本来ならヴァース(前歌)で歌われる歌詞...「太陽が輝き芝生は青々としてオレンジやヤシの木が揺れてるこのロスじゃ雪は望めそうにないから、12月24日には北の方へ行って私だけのホワイト・クリスマスを迎えるわ」...を間奏部分で、しかもダーレン・ラヴの語りで聴かせるスペクター・アレンジが素晴らしい。②「フロスティー・ザ・スノウマン」はロニーのヴィブラートの効いた歌声とハル・ブレインの豪快なドラム連打が分厚いエコー処理によってスペクター色にまとめ上げられていく快感がたまらない。名演揃いのこの盤の中でも特に気に入ってる1曲だ。
 クリスタルズの④「サンタが街にやってくる」は「ダ・ドゥー・ロン・ロン」そっくりのアレンジで、ここでもハル・ブレインの大爆発は続く。36秒あたりからアップテンポに転じると、もうドッカンドッカンと自由奔放に連打の嵐。このアルバムの陰の MVP は間違いなく彼だと思う。ロネッツの⑤「スレイ・ライド」では弾むようなサウンドに乗ってロニーが飛ばし、バック・コーラスも一緒に転がるように疾走する。隠し味的に使われているストリングスはスペクターの得意技だ。⑦「ママがサンタにキッスした」ではロニーが憧れのフランキー・ライモン風ヴォーカルを聴かせてくれる。ホントにこの人の声は魅力的だ。クリスタルズの⑧「赤鼻のトナカイ」はもろ「ゼン・ヒー・キスド・ミー」。こーゆーの、ハッキリ言って大好きです。
 ⑨「ウインター・ワンダーランド」は①やこのアルバム唯一のオリジナル曲⑪「クリスマス・ベイビー・プリーズ・カム・ホーム」と同じくミディアム・テンポの曲で、それらはすべて歌唱力№1のダーレン・ラヴが歌っている。確かにクリスタルズやロネッツでは間が持たない。スペクターの眼力は大したものだ。⑬では「サイレント・ナイト」をバックにスペクター自身が自慢げにご挨拶。さすがは自己顕示欲の塊り、 “俺様・スペクター” である。
 そんなスペクター・ファミリー総出演によるウォール・オブ・サウンドの集大成といえるこのレコード、発売から45年近く経った今でも色褪せない、クリスマス・アルバムの最高峰だ。

Frosty The Snowman-ロネッツ
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The Crystals Greatest Hits

2008-12-07 | Wall Of Sound
 60年代ガール・グループの中でロネッツと共にフィル・スペクターのフィレス・レーベルを支えたのが今日取り上げるクリスタルズ。だからレーベルの発足時から彼女らのシングル盤を時系列に沿って聴いていけば、スペクター・サウンドの変遷が手に取るように分かる仕掛けになっている。
 バーバラ・アルストンがリードをとる初期のシングル⑤「ゼアズ・ノー・アザー」や④「アップタウン」はエコーのかかったカスタネットが耳に残る “ウォール・オブ・サウンド前夜” といえるようなサウンドが面白い。全米№1になった③「ヒーズ・ア・レベル」は「ルイジアナ・ママ」で有名なジーン・ピットニーの作品で、クリスタルズのメンバーが一人も参加していない、というかこの曲の存在すら全く知らされていなかったというから驚きだ。歌っているのはスペクターのお気に入りで元ブロッサムズのダーレン・ラヴ。ツアー中のクリスタルズがカーラジオを聞いていると「さぁ、次はクリスタルズの新曲です」と突然この曲が流れてきて大ショックを受けたという、ウソのような本当の話だ。スペクターは自分が作ったレコードを好きなように「クリスタルズ」名義で出せる権利を持っていたということで、さすがは “俺様・スペクター”(笑)である。
 スペクター・サウンドはこの頃からハンド・クラッピングを多用するホーン・セクション中心の音作りへと変化していく。それに続くシングル②「ヒーズ・シュアー・ザ・ボーイ・アイ・ラヴ」もリードはダーレン・ラヴ、もうやりたい放題だ。暴君スペクターの下、そんな屈辱・不遇にもめげず、彼女らは一世一代の傑作①「ダ・ドゥー・ロン・ロン」で大ヒットを飛ばす。リードを取っているのは最年少メンバーのララ・ブルックスで、若い女の子のドキドキするハートがそのまま歌っているような熱っぽい感じに胸が高鳴る、絵に描いたようなガール・グループ・クラシックだ。バックではリズム隊と複数のホーン・ピアノ・ギターが響き合いながら作り出したエコーがハンド・クラッピングの中で波打っており、ここにウォール・オブ・サウンドの1つの完成形を見る思いがする。
 あのキッスがアルバム「ラヴ・ガン」でカヴァーした⑦「ゼン・ヒー・キスト・ミー」では、パワーアップしたカスタネットといい、逆巻くようなエコー処理といい、ウォール・オブ・サウンドの更なる熟成が感じられる。クリスタルズといえばこの2曲①⑦でキマリ、といえるくらいの大名曲だ。上記のシングル曲以外にも、ノリノリのハンド・クラッピングに踊りだしたくなる⑨「マッシュト・ポテト・タイム」や⑫「ガールズ・キャン・テル」(←2曲とも実際に歌ってるのはロネッツなんやけど、一体どーなってるねん?)やクリスマス・アルバムのバック・トラックをそのまま流用したような⑩「リトル・ボ-イ」などが入っており、イタリアの怪しげなレーベルから出ているブートレッグながら、ガール・グループ・ファンなら絶対に聞き逃せない、楽しいポップ曲が満載の1枚だ。

Crystals Da Doo Ron Ron

Presenting The Fabulous Ronettes

2008-11-01 | Wall Of Sound
 ガール・グループと聞いてまず頭に浮かぶのがこのロネッツである。ロネッツといえばフィル・スペクター抜きには語れない。特に63年に作られたこのアルバムこそまさに究極のスペクター・サウンドであり、「悲しき雨音」みたいな効果音で始まるA①「Walking In The Rain」からいきなりウォール・オブ・サウンドが全開だ。A②「Do I Love You?」は典型的な60'sポップスをウォール・オブ・サウンドでコーティングしたような曲。大瀧詠一も泣いて喜びそうなナイアガラ・サウンドだ。スペクター版ブリル・ビルディング風ポップスのA③「So Young」に続くのはブライアン・ウィルソンがそのコーラス・アレンジをまるごとパクッたA④「Breaking Up」、まるでビーチ・ボーイズがバック・コーラスで参加しているかのような(?)サウンドだ。A面のベスト曲といえるA⑤「I Wonder」は、ガール・グループかくあるべしという感じのキャッチーなメロディーといい、きらびやかなコーラス・ハーモニーといい、すべてが素晴らしい! A⑥「What'd I Say」はスタジオ録音に歓声をかぶせたライブ仕立てヴァージョンだ。
Do I Love You- The Ronettes- 1964

The Ronettes-I Wonder


 B①「Be My Baby」はもう何の説明も要らない、スペクター・サウンドの、いや、オールディーズ・ポップスの代名詞といっていい程の大ヒット曲。 “完璧な” とはまさにこの曲のためにある言葉だろう。イキそうでイカない不思議な展開のB②「You Baby」、3分間芸術の極みB③「Baby, I Love You」、 打楽器のリズムが印象に残るB④「How Does It Feel?」、テディ・ベアーズの「会ったとたんに一目惚れ」をロネッツで再現したかのようなB⑤「When I Saw You」と怒涛の展開が続き、アルバムラストを飾るB⑥「Chapel Of Love」、しかしさすがにここまでやると残響音がキツすぎてまるで風呂場で聴いているような感じがする。過ぎたるは何とやらで、この曲に関しては有名なディキシー・カップスのヴァージョンの方が優れていると思う。
 何やらスペクター・サウンドの話ばかりになってしまったが、やはりロネッツの一番の魅力はロニーの歌声、これに尽きる。1986年、エディー・マネーのヒット曲「Take Me Home Tonight」に参加した彼女の「ウォッ、オッ、オッ、オー」という声を聴いただけでノックアウトされたのは私だけではないだろう。尚、このアルバムは今現在単独では CD 化されておらず、青レーベルのオリジナル盤は5万円を下らない。全曲が不滅のガール・グループ・クラシックスといえる、フィレス・レコードの最高傑作だ。
The Ronettes - Be My Baby (Shindig 1965)

BABY I LOVE YOU (ORIGINAL SINGLE VERSION) - THE RONETTES
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