shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Somewhere Out There / Linda Ronstadt

2010-02-21 | Rock & Pops (80's)
 ポップスの世界において80年代はまさに MTV の時代であり、ポップ・ミュージックと映画のスクリーンが有機的に結びつき、 Top40 アーティストが映画の主題歌を歌って大ヒットを飛ばすことが多かったが、そんな中でも特に目立ったのが大物同士のデュエットである。そのきっかけになったのは多分、1981年秋に9週連続全米№1を記録したライオネル・リッチー&ダイアナ・ロスの「エンドレス・ラヴ」だろう。そしてこのトレンドを決定的にしたのが翌82年の冬に3週連続全米№1に輝いたジョー・コッカー&ジェニファー・ウォーンズの「アップ・ホェア・ウィー・ビロング」ではないか。特にリチャード・ギアの名演技(←鬼軍曹との別れのシーン、そして軍服姿でデブラ・ウィンガーを工場へ迎えに行くシーンは何度見ても泣けます...)が光る「愛と青春の旅立ち」は映画の感動を更に盛り上げてくれるような見事なバラッドで、私なんか音楽と映像の相乗効果で映画にもサントラにもハマりまくっていた。
 その後も「フットルース」からアン・ウィルソン&マイク・レノの「オールモスト・パラダイス」('84)、「ホワイト・ナイツ」からフィル・コリンズ&マリリン・マーティンの「セパレイト・ライヴズ」('85)、「ダーティー・ダンシング」からビル・メドレー&ジェニファー・ウォーンズの「ザ・タイム・オブ・マイ・ライフ」('87)と、映画絡みのデュエットは挙げていけばキリがないが、そんな “サントラ・デュエット・ラッシュ” の中でも断トツの完成度を誇っているのが我らがリンロンと “クインシー・ジョーンズの秘蔵っ子” ジェームズ・イングラムのデュエット「サムホェア・アウト・ゼア」である。
 この曲は映画「アメリカ物語」の主題歌として1987年3月に全米2位まで上がる大ヒットになり、「ホワッツ・ニュー」以降のリンロンに味気なさを感じていたポップス・ファンに “リンロン健在なり!” を強くアピールしたが、本来ならば3週連続№1ぐらいになって当然の名曲名唱だと思う。勢いの差とはいえ、ヒューイ・ルイスの「ジェイコブズ・ラダー」ごときに首位を阻まれたなんて到底納得できない(>_<)
 相方のジェームズ・イングラムは確かクインシー・ジョーンズの「ザ・デュード(邦題:愛のコリーダ)」の中で「ジャスト・ワンス」というバラッドを熱唱しているのを聴いたのが最初だったと思う。確かに上手いのはわかるが、私は昔からブラコンの歌い上げるパターンがどうも苦手で、彼の歌も “ボク、歌上手いでしょ、声量あるでしょ、超大型新人即戦力でしょ!” と言っているような感じがして自分的にはNGだった。この人はデュエットが滅多やたらと多く、続くパティ・オースティンとのデュエット「ベイビー・カム・トゥ・ミー」はまだマシだったが、私の苦手中の苦手マイケル・マクドナルドとのデュエット「ヤー・モ・ビー・ゼア」なんかもう鬱陶しすぎて最悪だった。
 そんな苦手系ジェームズ・イングラムと愛しのリンロンのデュエットとなったこの曲は、映画音楽界随一の名作曲家ジェームズ・ホーナー(←「タイタニック」のスコアを書いた人)とバリー・マン&シンシア・ウェイルという60'sポップスの黄金コンビが組んで書き上げた、80年代屈指の名バラッドだ。絵に描いたような名曲とはこういう曲のことを言うのだろう。もちろん主役はネルソン・リドルとの3部作で表現力に磨きをかけたリンロン姐さんで、いつもは暑苦しいジェームズ・イングラムの歌声があんまり気にならないのは曲の良さと、姐さんの圧倒的な存在感を誇るヴォーカルのおかげだろう。特にジェームズ・イングラムのソロ・パートに続いて姐さんの艶やかな歌声が滑り込んでくる瞬間なんかもう鳥肌モノだし、中盤から後半にかけての盛り上がりも圧巻の一言だ。
 このシングル盤はちょうど世の中がアナログ・レコードからCDへと移り変わる過渡期に発売されたもので、CDシングルとアナログ45回転盤が混在していたややこしい時期だったのだが、私はコレを京都のタワレコで安く買って大喜びしたのを覚えている。因みにこの盤はアナログのみでリリースされたシングルとしては最後のミリオンセラーだという。大袈裟かもしれないが何だか歴史の一部を手にしているようで、色んな意味で私にとって思い出深い1枚なのだ。

Linda Ronstadt & James Ingram - "Somewhere Out There"
コメント (2)

Agent Provocateur / Foreigner

2010-02-15 | Rock & Pops (80's)
 先日レインボーのグラハム・ボネットの暑苦しいシャウトを聴いていて、この歌い方、誰かに似てるなぁ... と思った。額に青筋立ててがなりたてるようなこの感じ、誰やったっけ?と気になって仕方がない。この “どっかで聴いたことあるけど、それが何だか思い出せない状態” ほどイラつくものはない。キッスのポール・スタンレーっぽい気もするけど、なんかチョット違うよなぁ... と小一時間悩みまくった後(←アホ?)、ついにフォリナーのルー・グラムに辿り着いた。あースッキリした(^.^) ジョー・リン・ターナーの声質でグラハム・ボネットみたいにシャウトすれば(←するかそんなもん!)ルー・グラムの出来上がりなのだ。ということで急にフォリナーが聴きたくなり、CD 棚のFのコーナーを探す。一番好きなアルバムは以前取り上げた「4」なのだが、曲聴きする時はコレ... ということで今日は「4」に続く5枚目の、そして “私の好きなフォリナー” としては最後のアルバム「エージェント・プロヴォカトゥール」だ。
 このアルバムが出たのは1984年の冬だったが、私的にはこの頃からLPの買い直しとしてではなく新譜をCDで買い始めた記憶がある。同時期にリリースされたマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」のジャケット下部に記された FULL DIGITAL RECORDING の文字がやけに神々しく思えたものだ。ということで世はまさに80's ポップス全盛期、前作「4」が大好きだった私はこの新作を大いなる期待を持って購入した。
 まずは1曲目の①「トゥース・アンド・ネイル」、めちゃくちゃカッコエエやん!前作で大好きだった「ジュークボックス・ヒーロー」と「ナイト・ライフ」の良い所だけを抽出して濃縮還元したようなストレートアヘッドなナンバーで、まさに “ガツン!とくる1曲目” の典型と言えるだろう。フォリナーと言うとすぐにバラッドがスベッたとか産業ロックがコロンだとか言い出す連中にぜひ聴かせてやりたい痛快なロックンロールだ。フォリナーの曲にはいくつかのパターンがあるのだが、ハード系の中ではトップ3に入るぐらい気に入っている。
 コレに続くのが名曲中の名曲②「ザット・ワズ・イエスタデイ」だ。前作に入っていた「ブレイク・イット・アップ」を徹底的に磨き上げて細部にわたるまで完璧なアレンジを施したようなこの曲、何よりも胸を締め付けるような哀愁舞い散るメロディーがたまらない(≧▽≦) シンセ嫌いの私もこの曲にはもう参りました、私が悪ぅございましたと平伏すしかないぐらい見事なサウンド・プロダクションで、ルーのヴォーカルにそっと寄り添うようなバック・コーラスも実に効果的だ。
 3曲目は彼らにとって初の、そして念願の全米№1ソング③「アイ・ウォナ・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」だ。何としても前作「4」からのシングル「ウェイティング・フォー・ア・ガール・ライク・ユー」の10週連続全米№2というある意味不名誉な大記録の恨みを晴らさんと、ミック・ジョーンズが敢えて№1を狙いにいったフシのある入魂のパワー・バラッドなのだが、狙いに行ってちゃんと取ってしまうあたりはさすがと言う他ない。ミックは職業作家として見事に本懐を遂げたと言っていいだろう。特に後半部でゴスペル隊と一体となってルーが歌い上げるあたりの凄まじい盛り上がり様は圧巻の一言だ。
 とここまでのA面冒頭3曲の流れは完璧なのだが、残念なことに、ハード系であれバラッド系であれ、残りの曲に心に残るメロディーがない。決して悪い曲ではないが特に良くもない... そんな感じの曲ばかりで、アルバムは聴き進むにつれて尻すぼみ状態に...(>_<) ここら辺が粒揃いの名曲集だった前作との決定的な違いだろう。その中では②の流れをくむ哀愁の⑦「ア・ラヴ・イン・ヴェイン」とケレン味のないロックンロール⑩「シーズ・トゥー・タフ」が幾分マシ(←あくまでも過去の名曲群と比較しての話だが...)といった程度か。
 初期のアルバムでは旋律の薄い曲であってもギターやキーボードを中心としたバンド・サウンドでカヴァーしていたが、このアルバムでは無機質なシンセが幅を利かせてツマラン曲を余計にツマラなくしているように思う。ギター、ベース、ドラムスというロックの基本フォーマットではどうしても表現できなかった音作りがシンセによって容易に出来てしまったからこそ、メロディーの人、ミックは前作「4」以降積極的にシンセを導入したのだろうが、そのシンセが彼の、そしてフォリナーという偉大なるバンドの命取りになってしまうのである。シンセ依存症に陥る以前のフォリナーは最高だった。彼らがシンセと出会わなければよかったと思うのは私だけだろうか?

Foreigner - That Was Yesterday


Foreigner-I Want to Know What Love Is

The Dance (DVD) / Fleetwood Mac

2010-01-30 | Rock & Pops (80's)
 フリートウッド・マック/スティーヴィー・ニックス・ウイークもいよいよ最終回、今日は1997年の奇跡的なリユニオン・コンサートの模様を収録した DVD「ザ・ダンス~グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」である。洋楽暗黒時代の1997年にこのフリートウッド・マック再結成ライヴが出た時、ラップやオルタナだらけの洋楽とほぼ絶縁状態にあった私はそのリリースすら知らなかったし、たとえ知っていたとしてもそれまでと同じような期待感を持って CD を買いに走ったとは思えない。過去に栄華を極めたスーパー・グループの再結成、リユニオンというのは全盛期が凄ければ凄いほどその凋落ぶりが浮き彫りにされ、あまりの落差にガッカリということが多かったからだ。だからその後何かでこのアルバムの存在を知った時も食指は動かなかった。リンジー抜きの「ビハインド・ザ・マスク」(90年)がとてもマックとは思えないようなトホホなアルバムだったこともあって、私の中ではマックは87年の「タンゴ・イン・ザ・ナイト」で既に終わっていたも同然だったし、ライヴ盤なら80年の「フリートウッド・マック・ライヴ」があるから今さら同窓会的なリユニオン・コンサートのライヴ盤を聴いてもしゃあないわ、と思ったのだ。
 そんなある日のこと、ゲオの100円キャンペーンで店内を物色していた時、音楽 DVD コーナーで偶然この「ザ・ダンス~グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」DVD を見つけた。“マックか... 懐かしいなぁ... そー言えば DVD は1枚も持ってへんかったから試しに借りてみよか...” という軽~いノリでこの盤を借りてきた。私は単なる “懐メロ” と割り切って楽しもうと思っていたのだ。そんな気分は1曲目の①「ザ・チェイン」を見終わった時には完全に吹き飛んでいた。これは...凄い。金目当てのお気楽な同窓会なんかじゃない。その真剣勝負のテンションの高さがビンビン伝わってきてゾクゾクしてしまう。名曲②「ドリームス」は20年の時を経てその輝きを増しているように思えるし、大好きな③「エヴリホエア」は「タンゴ...」収録のスタジオ・ヴァージョンよりも活き活きと響く。クリスティンに寄り添うスティーヴィーとリンジーのバック・コーラスが絶妙な味を出しており、やっぱりマックはこの3人が揃ってナンボやなぁと改めて実感させられる1曲だ。
 このライヴで一番強いインパクトを残したのは大好きなスティーヴィーでもなければクリスティンでもなく、間違いなくリンジーだった。そのヴォーカルといい、ギター・プレイといい、全盛期を凌ぐ切れ味を見せており、 “リンジーってこんなに凄いギタリストやったんや...(゜o゜) ” と再認識させられた。⑤「アイム・ソー・アフレイド」における入魂の、そして大名曲⑧「ジプシー」(←典雅に回るスティーヴィーもたまりません!)における変幻自在のプレイも凄いが、何と言ってもコンサート中盤に設定された2曲のソロ・パフォーマンスが圧巻だ。他のメンバーが一旦ステージから引き揚げ、リンジーが語り始める;“次の曲を書いた時、僕はマックでの終わりを迎えていた。グループを抜けるのはツラかったけど、成長するためでもあった。そして皆成長し、僕も昔の自分とは違う。演奏の仕方も変わった...” と言っておもむろにアコギの弾き語りに突入... ⑨「ビッグ・ラヴ」だ。我々の知っているあの完全無欠なポップ・ソングがまるで違う曲のように聞こえる。心の内にあるものを曝け出すかのような彼の魂の叫びが会場に響き渡り、オーディエンスも水を打ったように静まり返っている。凄まじいまでの緊張感だ。彼が歌い終わると万雷の拍手が湧き起こり、何とここでスタンディング・オベーション! 続く⑩「ゴー・インセイン」も原曲の片鱗はもはやなく斬新なアプローチで歌い演奏される。その鬼気迫るパフォーマンスに表現者としてのリンジーの進化が表れているように思う。オーディエンスは連続スタンディング・オベーションという形で彼に最大限の賛辞を贈ったが、私も心を大いに揺さぶられた。この2曲だけでもこのライヴを見てよかったと思えるほどだ。
 再びメンバー全員がステージに揃って後半はヒット曲のアメアラレ攻撃で、中でも私が一番好きなのが⑫「セイ・ユー・ラヴ・ミー」だ。ポップスの楽しさ、素晴らしさをこれ以上ないぐらいに見事に表現したウキウキするようなメロディーを持ったマック屈指の名曲を、メンバー全員がステージに横一列に並んで楽しそうに歌い演奏するのだ。“ウ~ ラン ララ~♪” というコーラス・ハーモニーもたまらない(^o^)丿 フリートウッド・マックでどれか1曲選べと言われたら私は迷うことなくコレを選ぶ。⑯「オーヴァー・マイ・ヘッド」もグッとくる。この曲を聴いていると、クリスティンのホンワカしたヴォーカルこそがフリートウッド・マックというバンドに必要不可欠なものだと改めて痛感させられる。彼女抜きの今のマックは私にとってはもはやマックではない。
 アンコールでは南カリフォルニア大学のマーチング・バンドとの共演で⑳「タスク」と(21)「ドント・ストップ」を披露、会場はもう大盛り上がりだ。どちらもスタジオ録音版を遥かに凌駕するダイナミックで躍動感に溢れるヴァージョンに仕上がっている。音楽ってエエなぁ...と思わせてくれるこの素敵なライヴ盤は全米アルバム・チャート初登場1位を記録、結局500万枚を売りつくしマックにとって久々の大ヒットとなったのだが、まさにフリートウッド・マックという偉大なバンドの最後を飾るに相応しい傑作ライヴだと思う。尚、 CD よりも5曲多く収録された DVD が絶対的にオススメだ。

Fleetwood Mac - Say You Love Me - The Dance -1997


FLEETWOOD MAC/Сhristine McVie. Everywhere.


Fleetwood Mac - Big Love (Live: The Dance)


Fleetwood Mac - Go Insane - The Dance -1997


Fleetwood Mac "the Dance" TUSK
コメント (2)

Crystal Visions (DVD) / Stevie Nicks

2010-01-29 | Rock & Pops (80's)
 今日は「クリスタル・ヴィジョンズ」の DVD編だ。スティーヴィーのビデオクリップ集というのは単体では出ていないのでめっちゃ嬉しい。コレだけで元が取れてしまうくらいの凄いオマケだ。ベスト盤に過去のクリップ集DVDを付けるというのは他のアーティストもぜひマネをしてほしいフォーマットだ。特に彼女のようにヴィジュアル面での魅力が大きいアーティストなら売上アップにつながること間違いなし。とにかくコレは目と耳の両方で楽しめる至福の全13曲約60分なんである。
 ①「ストップ・ドラッギン・マイ・ハート・アラウンド」は彼女のソロ初ヒットで、艶めかしい黒のドレスに身を包み、物憂げなカメラ目線で(?)トム・ペティとデュエットするスティーヴィーに萌えてしまう。真横を向きながら身体を反らすポーズには荒川静香も顔負けだ。②「エッジ・オブ・セヴンティーン」は以前書いたように私のスティーヴィー狂いを決定的にしたライヴ映像。白いドレスで歌い踊るスティーヴィーがク~ッ、タマラン!!! 「スタンド・バック」は③スカーレット・ヴァージョンと④スタンダード・ヴァージョンの2種類が連続収録されているが、③はこの曲がヒットしていた当時には見たことがなかったもので、私にはストーリー展開がイマイチわかりにくい。やっぱりコレは躍動感溢れるダンス・シーン満載の④がいい。こっちは彼女の全ビデオの中で②と並ぶ私の超お気に入り映像で、 “ヒラヒラ、回転、イナバウアー(笑)” と、スティーヴィーの魅力を余すところなく捉えた傑作クリップだと思う。特に回転に関しては浅田真央もビックリの回りっぷりでトリプルアクセルを連発、数えてみたら24回転も回っていた。⑤「イフ・エニーワン・フォールズ」はセピア色の世界とのコントラストを巧く使い、カラーの世界で歌う彼女の姿を際立たせているのがワザありだ。それにしても彼女独特の身のこなしは何度見てもマニアにはたまらんわ(笑)
 ⑥「トーク・トゥ・ミー」は彼女の持ち味を100%引き出す必殺のテンポ設定により、アンニュイで寛ぎに溢れた歌声が楽しめる。こういうのを肩の力の抜けた名唱というのだろう。ビデオの方も軽やかにステップを踏むお姿が実にチャーミングやし、間奏でバックに大写しになるサックス・ソロの映像もめちゃくちゃ渋くてカッコイイ!!! このサックス、パーソネル・データではバルネ・ウィランってなってるけど、ホンマかいな(゜o゜) ⑦「アイ・キャント・ウエイト」はホール&オーツの「アウト・オブ・タッチ」を高速回転させて派手なビートでコーティングしたような(?)ナンバーで、それまでの彼女にはなかったような大胆なサウンド処理がカッコイイ(^o^)丿 激しく歌い踊る彼女の姿を捉えた映像は必見だ。
 ⑧「ルームズ・オン・ファイア」は③同様中世ヨーロッパっぽい設定の PV なのだが、これもやはりストーリー展開がよく分からない。曲は大好きなのだが...(>_<) ⑨「ホール・ロッタ・トラブル」は疑似ライヴ映像で、私はやはりこういう単純明快なビデオが好きだ。スラッシュみたいな帽子がめっちゃ似合ってます。⑩「サムタイムズ・イッツ・ア・ビッチ」はスティーヴィー版「ブリリアント・ディスガイズ」を想わせるスプリングスティーンっぽいナンバーで、まるでスティーヴィー・ニックスというアーティストの半生を振り返るかのように過去のビデオクリップの名場面が随所に挟まれているのがファンには涙モノ。コレはグッときますぜ(^.^) ⑪「ブルー・デニム」はフリートウッド・マックの薫りが強く感じられる曲で、コレはコレで十分エエのだけれど、出来ることならコレをリンジーのギターで、クリスティンのコーラスで、ミックの叩き出すリズムで聴いてみたかったと思ってしまう。逆に⑫「エヴリ・デイ」はメロディー展開がやや平板に聞こえてしまい、私的にはイマイチだ。ラストの⑬「ソーサラー」は彼女を深くリスペクトしているというシェリル・クロウとの共演(アメリカではスティーヴィーは同性からの支持が絶大だという...)で、ちょうど彼女の「チューズデイ・・ナイト・ミュージック・クラブ」みたいなサウンドながら、二人が並ぶとあのシェリル・クロウが霞んでしまうぐらいスティーヴィーの存在感は絶大で、例のドスの効いたべらんめぇヴォーカルにも益々磨きがかかっているようだ。男から見ても女から見てもカッコ良く、カリスマ的な雰囲気すら漂ってくるスティーヴィー... こりゃあロザリー校長じゃなくてもシビレますわ(≧▽≦) 人間、こんな歳の取り方したいモンですなぁ...(^.^)

Stevie Nicks - Talk To Me (Official Video)


Stevie Nicks - Blue Denim (Official Video)

Crystal Visions / Stevie Nicks

2010-01-28 | Rock & Pops (80's)
 スティーヴィー・ニックスのキャリアは長い。マック加入からもう35年の月日が流れ、その間にグループの一員として、そしてソロとして数多くのヒットを飛ばしてきたロック・ディーヴァである。80年代に活躍したアーティストの多くはグランジ/オルタナ系ロックやラップといった非メロディー志向のサウンドが台頭した90年代(私に言わせれば “洋楽暗黒時代” であり、ポップスは死んだも同然だった...)に失速し、21世紀に入って再評価されるというパターンが見受けられるのだが、多くのアーティストがそんな紆余曲折の中でベスト盤、それもたいていはレーベルの枠を超えたオールタイム・ベストを出しており、彼女も例外ではなかった。しかし 80'sに一区切りつけた「タイム・スペース」(91年)は正直言って選曲がイマイチだったし、ボックス・セット「エンチャンティッド」(98年)は3枚組ということもあってあまり一般向けとは言えなかった。そんな不満を一気に解消してくれてオツリまで来そうな究極のベスト盤が3年前にリリースされたこの「クリスタル・ヴィジョンズ」である。
 このCDは「ベラ・ドンナ」(81年)、「ザ・ワイルド・ハート」(83年)、「ロック・ア・リトル」(85年)、「ジ・アザー・サイド・オブ・ザ・ミラー」(89年)、そして「トラブル・イン・シャングリラ」(01年)という5枚のオリジナル・アルバムからのセレクション(94年の「ストリート・エンジェル」からは選ばれていない...)に加えて、未発表ライヴ音源も何曲か収録されているのが嬉しい。又、ライナーには曲ごとに彼女自身による解説がついており、ファンには興味深い内容だ。更にこのアルバムにはCDオンリーと、CD+DVDという2種類のフォーマットがあり(←最近こーゆーパターン多いよなぁ...)、DVDには過去のビデオクリップ13曲分(それぞれ彼女のコメント音声入りとナシの両方が選べます)にプラスして、1st アルバム「ベラ・ドンナ」制作時のレコーディング風景が30分も入っているのだ!!! コレ、ホームビデオで撮影されているので画質はあまり良くないが、私のようなスティーヴィー・マニアにはたまらない超お宝映像だ。ただ、日本盤はCDオンリー(←レコード会社はヤル気ないんか?)なので、ほぼ同価格で倍以上楽しめるリージョン・フリーDVD付き輸入盤の方を迷わずゲットだ。
 上記の未発表音源だが、「噂」からの 2nd シングルで全米№1を獲得した名曲⑦「ドリームス」は “ディープ・ディッシュ・クラブ・ミックス” という何のこっちゃわからん過激なハウス・リミックスによって換骨堕胎され、ダンス・ナンバーへと華麗な(?)変身を遂げている。最初聴いた時は “何じゃいコレは?” と思ったが、何度も聴くうちに違和感は雲散霧消し、気がつけばリズムに乗って首を振っている始末(笑) ファンとしての心の広さを試される面白いトラックだ。「ファンタスティック・マック」に入っていた彼女の出世作⑧「リアノン」は2005年サンタ・バーバラでのライヴ・ヴァージョンで、97年のマック・リユニオン・アルバム「ザ・ダンス」に似たアレンジだ。この曲は今まで何百回と聴いてきたが全然飽きない。彼女のヴォーカルも昔に比べて衰えは微塵も感じられず、むしろ円熟味も加わって魅力を増しているようにすら思う。
 ⑪「ランドスライド」と⑯「エッジ・オブ・セヴンティーン」は2006年のメルボルン交響楽団との共演ライヴ・ヴァージョンで、特に弦入りで聴く⑯が実に新鮮に響く。そして本盤最大の目玉がゼッペリンの⑭「ロックンロール」をカヴァーした2005年のライヴ・ヴァージョン。彼女の解説によるとゼッペリンは昔から大好きで、この曲をずぅ~っと歌いたかったのだそうだ。女性ロッカーの「ロックンロール」といえばハートの高音炸裂ヴァージョンがすぐに思い浮かぶが、スティーヴィーも負けず劣らずロックしている。ちょうどステージ袖で見ていたロバート・プラントが絶賛したということだが、還暦を迎えてますます盛んな彼女を突き動かすこの曲の、そしてロックという音楽の底知れぬパワーを痛感させられる。とにかく妖精のスティーヴィーしか知らない人はコレを聴いてブッ飛んで下さいな。もうめっちゃカッコエエでぇ~(^o^)丿 

Stevie Nicks - Rock 'n Roll (Live) HD


Deep Dish Feat. Stevie Nicks - Dreams [Official Video HD]

The Wild Heart / Stevie Nicks

2010-01-27 | Rock & Pops (80's)
 1983年の夏、私は大学の長期休みを利用してアメリカへ遊びに行った。もちろん留学とか語学研修などという眠たい旅行ではない。文字通り遊びに行ったのだ。ちょうどその前年に奈良へ観光に来ていたテリーという音楽好きのアメリカ人とたまたま知り合って意気投合し、 “次はアンタがアメリカへ遊びにおいで!” と言ってくれていたからだ。当時私はアメリカン・トップ40 の楽しさ溢れる80'sポップスにハマリまくっていて “いつかはアメリカに行ってみたいなぁ...” と思っていたが、当時のレートは $1=250円 という今からは信じられないような超円安だったので、貧乏学生だった私にとってホテル代も食事代も浮くこのお誘いは渡りに船だった。テリーの住んでいるフロリダのデイトナ・ビーチをメインにし、後は単純思考の私らしくニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、ホノルルといった大都市をハシゴしてアメリカを横断した。
 デイトナにいる間はテリーが車であちこち連れて行ってくれたのだが、何よりも嬉しかったのは、ハイウェイを飛ばしながらFMラジオから流れてくるヒット曲の数々を聴けることだった。DJのリズミカルな英語のお喋りに続いて好きな曲のイントロが流れてくる瞬間のゾクゾクするような感覚を味わった私は “やっぱりアメリカはエエわぁ” と大喜び(^o^)丿 中でも超へヴィー・ローテーションで1時間に1度と言っていいくらい頻繁にかかっていたのがスティーヴィー・ニックスの⑥「スタンド・バック」だった。とにかく曲のテンポ、リズムがハイウェイ・ドライヴの BGM にピッタリで、あのイントロが聞こえてくるたびにコーフンしまくっていた(←アホ!)。車を運転される方は一度この曲をかけながら時速80kmぐらいで流してみて下さい。結構エエ感じですよ。因みに車線変更しまくって他車を抜いていく “一般車スラローム” をやる時はマイケル・ジャクソンの「ジャム」がオススメです。何のこっちゃ!
 この曲は彼女のセカンド・アルバム「ザ・ワイルド・ハート」からの第1弾シングルで、シンセのイントロにドラムのビートが絡んでいく瞬間がたまらない、もう絵に描いたような80年代サウンドだ。私は基本的にシンセのサウンドはあまり好きではないのだが、これほど巧く使われるともう参りましたと言うしかない。結局全米チャートでは5位まで上がったが、私の中ではマイケルの「ビリー・ジーン」、「ビート・イット」と並ぶ1983年度トップ3であり、80年代通しでもトップ10入り確実なスーパー・ウルトラ愛聴曲だ。 2nd シングル②「イフ・エニーワン・フォールズ」はシングルとしてのインパクトには欠けるかもしれないが、繰り返し聴くうちに彼女の術中にハマり、気がつけば1日に1回どころか何回も聴かないと禁断症状を起こしてしまいそうな麻薬的な魅力を持ったアブナイ曲。彼女のアンニュイな魅力を見事に捉えたPVもファンは必見だろう。
 このアルバムはプロデューサーも参加メンバーも基本的に前作「ベラ・ドンナ」と同じなのだが、サウンド面ではカントリー色の強かった前作とは大きく異なり、シンセを多用しビートを強調した80年代っぽい音作りを推し進め、 “コケットリーな妖精” から “危険な薫りをふりまくロック・ディーヴァ” へと変貌を遂げており、アップテンポの曲が増えたのが何よりも嬉しい。①「ワイルド・ハート」はアタマから気合十分、 “このアルバムはロックでいくわよ宣言” みたいに響く力強いナンバーだし、④「エンチャンティッド」もノリノリのウエストコースト・ロックでライヴ感一杯だ。私この曲大好きですねん!(^.^)
 「スタンド・バック」みたいなイントロで始まり、コーラス面での工夫などその後の展開に結構ヒネリが効いていて思わず聴き入ってしまう⑤「ナイトバード」、トム・ペティーとのデュエットで、曲想も雰囲気も「嘆きの天使」そっくりな⑦「アイ・ウィル・ラン・トゥ・ユー」、彼女のロック・スピリットがビンビン伝わってくるミディアム調のロック・ナンバーで、このアルバム中でもひと際ワイルドな雰囲気を持った⑧「ナッシング・エヴァー・チェンジズ」と、ウエストコースト・ロックを巧く消化して自分のサウンドに昇華させている。⑨「セーブル・オン・ブロンド」はフリートウッド・マックを彷彿とさせるサウンドで、「噂」のスタジオ・アウトテイクだと言われたら信じてしまうかもしれない。ここまでガンガンやってきて、最後はスロー・テンポで切々と歌う⑩「ビューティ・アンド・ザ・ビースト」でアルバムをシメるなんて、実にニクイ演出だ。この余韻がたまりません。
 このアルバムはオリジナル・アルバムでありながらまるでベスト・アルバムみたいな感じで聴けてしまう捨て曲なしの超愛聴盤で、ウチの家には英米日それぞれの初版LPと独WEA盤CDが1枚あるが、残念ながらCDはカッティング・レベルが低くて音がヘタレなので、一番音の良いイギリス盤LPで聴いている。出来ることなら 24ビット・リマスターで再発してくれへんかなぁ...

いつもより余計に回っております↓
stand back. stevie nicks.


Stevie Nicks - If Anyone Falls (Official Video)
コメント (2)

Bella Donna / Stevie Nicks

2010-01-26 | Rock & Pops (80's)
 私がスティーヴィー・ニックスを初めて見たのはまだ高校生だった頃、たまたまテレビをつけたらNHK の “ヤング・ミュージック・ショー” で女性二人がフロントを務めるバンドのライヴをやっていた。 “誰やコレ?外人のバンドやけど、見たことも聞いたこともないなぁ...(>_<)” 当時の私は洋楽中心の音楽生活を送ってはいたが、情報源といえばミュージック・ライフや音楽専科といったティーンエイジャー向けの雑誌類だけだったので、毎号大々的に取り上げられるクイーン、キッス、エアロスミスやベイ・シティー・ローラーズといったアイドル系バンドの動向には詳しかったが、滅多に記事にならないフリートウッド・マックなんて名前すら知らなかった。
 そんな私の目を釘付けにしたのは画面に大写しになったスティーヴィー・ニックスの艶やかな姿だった。まるで中世ヨーロッパの魔女のような衣装をヒラヒラさせながら、例の低くハスキーな声で気だるそうに歌うその姿に私はすっかり心を奪われ、番組のエンディング時に画面隅に出た “フリートウッド・マック” というバンド名を必死でメモっていた。その後しばらくしてマックの新作「タスク」がリリースされ、ラジオでオンエアされたものをテープに録音した私は何度も何度も聴き込んだ。このアルバム、世間の評判はあまり良くなかったが、私はタイトル・トラックの「タスク」の大胆なまでにリズムを強調したユニークなサウンドに心惹かれるものがあったし、何よりもスティーヴィーが歌う「セーラ」の夢見心地のようなサウンドが頭から離れず、超へヴィー・ローテーションで聴きまくっていた。
 やがて80年代に入り “ベスト・ヒット・USA” がスタート、私の住む関西地区では確か81年の9月から放送が始まったと記憶しているが、その第1回放送時のカウントダウンUSAで「エンドレス・ラヴ」「スロー・ハンド」に次ぐ第3位に入ってたのがスティーヴィー・ニックスの「ストップ・ドラッギン・マイ・ハート・アラウンド(邦題:嘆きの天使)」(6週連続全米3位)だった。 PV で黒いドレスをヒラヒラさせ(笑)、共演のトム・ペティの方を見ながらほぼ横向きで歌うコケットリーなお姿に私は又々胸キュンしてしまった。尚、この2年後にウィアード・アル・ヤンコヴィックが歌詞の “ハート” を “カー” に変えて車をレッカー移動された不幸を嘆く傑作パロディー・ソング「ストップ・ドラッギン・マイ・カー・アラウンド(邦題:嘆きの点数)」もオモロイのでオススメだ。
 貧乏学生で今みたいにホイホイとレコードを買えなかった私は、当時全盛を誇っていた貸しレコード屋(黎紅堂やったっけ?)へと走り、この「ベラ・ドンナ」をレンタル→ダビングした。まずはジャケットに目が行くが、注目は裏ジャケ...もう小悪魔オーラ出まくりである。音の方を一言で表現するとカントリー・フレイヴァー溢れるウエスト・コースト・ロック。ワディ・ワクテル(g) にラス・カンケル(ds) といったL.A.の腕利き連中がバックを固め、先のトム・ペティやドン・ヘンリー、そしてE ストリート・バンドのロイ・ビタンなど、超豪華な顔ぶれが参加している。特にアルバム・タイトル曲①「ベラ・ドンナ」、⑤「アフター・ザ・グリッター・フェイズ」、ドン・ヘンリーとのデュエット⑧「レザー・アンド・レース」(2nd シングルで全米6位)、隠れ名曲⑩「ザ・ハイウェイマン」といったトラックは70年代リンロンやイーグルスのあのサウンドが好きな人間にはたまらない内容だと思う。
 私がこのアルバムで一番好きなのが 3rd シングルになった⑥「エッジ・オブ・セヴンティーン」(全米11位)。ワディ・ワクテルのワイルドなギターに乗せられて、妖精の殻をかなぐり捨てたスティーヴィーがロック・ディーヴァの本性むき出しのハイ・テンションなヴォーカルを聴かせてくれる。この曲はアルバム・ヴァージョンもいいが、ライヴ・ヴァージョンはもっと凄い。私が持っているレーザーディスク「スティーヴィー・ニックス・イン・コンサート」(←DVD化を激しく希望!)がそれだ。スティーヴィー・ファン必見のこの映像は9分という時間を全然長く感じさせない素晴らしさで、白いドレスをヒラヒラさせながら(笑)力強いヴォーカルを聴かせるスティーヴィーのお姿を何度繰り返し見たことか... もう彼女の一挙一頭足にシビレまくりで、私をスティーヴィー狂いにしたのがこの映像なのだ。後半部の “I hear the call of a nightbird~♪” の執拗なリフレインが生み出す高揚感なんかもう圧巻の一言に尽きるし、エンディングでプレゼントをいっぱい抱えながらオーディエンスに手を振る仕草(8分20秒あたり)もたまらない。バックの演奏もノリノリで、凄まじいグルーヴ感を生み出している。
 彼女のソロ・アルバムではこの1st アルバムと 次作「ザ・ワイルド・ハート」が双璧と言えるが、この2枚はホントにもうアホみたいに聴きまくった記憶がある。私の大学生時代の、いや80年代の思い出が一杯詰まったかけがえのない愛聴盤なのだ。

Stevie Nicks - Edge of Seventeen 1981 Live


【おまけ】S.Nicksファンのオウム出現!ロザリー校長も顔負けですね(^.^) ↓
Snowball (TM) and Stevie Nicks

Tango In The Night / Fleetwood Mac

2010-01-25 | Rock & Pops (80's)
 フリートウッド・マックは1982年に「ミラージュ」という素晴らしいアルバムでその健在ぶりをアピールした。リンジー、スティーヴィー、クリスティンという個性豊かなソングライター3人の傑出した作品がバランス良く収められ、アルバム全体がキラキラとポップな輝きに満ちていたが、それは又、この3人がソロ活動を通してそれぞれメインを張れるほど大きな存在になったことを意味しており、3つの大きく異なった個性をこれ以上1つのバンドの枠内にとどめておくことは至難の技に思われた。案の定、その後メンバーのソロ活動が活発になり、特にスティーヴィーはアルバムもシングルも大ヒットを連発してすっかりソロ・アーティストとしての地位を確立、マック解散説が流れる中、バンドは大いなる眠りについてしまった。
 それから約5年の月日が経った 1987年4月のこと、毎週聴いていたケイシー・ケイサムのアメリカン・トップ40で突然マックの新曲①「ビッグ・ラヴ」がチャート・インしてきた。これがもう5年のブランクなど瞬時に吹き飛ばしてしまうようなカッコ良い曲で、私の耳はスピーカーに釘付けになってしまった。トットコ トットコするマック独特のリズム(←コレ、結構ハマリます...)に乗ってリンジーの力感漲る歌声が炸裂、エキゾチックなメロディーも涙ちょちょぎれる素晴らしさで、まさにリンジー・バッキンガムここにありと言いたくなるような斬新さと攻撃性を前面に打ち出したキラー・チューンだ。その翌週、タワレコへこの曲の12インチ・シングルを買いに走ったのは言うまでもない。(久しぶりに聴こうと思ったらどこにいったのか分からへん...泣) 下にアップしたこの曲のPVも、エンディングに向けて逆再生で加速していく映像と唸りを上げるリンジーのギターが完璧にシンクロし、そこにミック・フリートウッドの怒涛のようにたたみかけるドラミングが絡んでいく様がめっちゃスリリング! リンジーの目ヂカラも強烈だ。この曲は全米5位まで上がったが、私の中ではそれ以上のインパクトがあった。
 少し遅れてリリースされたアルバムも当然買った。まずは内容云々よりもジャケットがセンス抜群でカッコ良い(^o^)丿 しかし左下に映っている白鳥を見た瞬間、コレはマックのスワン・ソング(最後の作品)なのか?という思いを強く抱かざるを得なかった。中身の方は表層的には相変わらずのマック・サウンドながら、それまでのアルバムとは微妙に雰囲気が違っていて、どこか達観したようなムードが漂っている。バラバラになっていたメンバーがもう一度再結集してバンドの最後にふさわしいアルバムを作ろうとしたように感じられるのだ。「噂」がマックの「ペパーズ」なら、さしずめこの「タンゴ」は「アビー・ロード」みたいなもんか。
 2nd シングルになったスティーヴィーの②「セヴン・ワンダーズ」は彼女にしては可もなし不可もなしといった平均点レベルの作品で、そのせいかチャート・アクションも鈍く、全米19位がやっとだった。全体的に見て今回は3人の中ではスティーヴィーの影がやや薄いが、ソロで頑張り過ぎた疲れが出たんかな?
 上記の 1st シングル①と比肩するほど素晴らしい出来なのが 3rd シングルになったクリスティンの⑦「リトル・ライズ」(全米4位)だ。私はマックを聴き始めた当初はスティーヴィーの妖艶な魅力にハマッていたのだが、前作あたりからクリスティンの温か味のある歌声に魅かれ始め、この「リトル・ライズ」で完全に彼女の魅力に参ってしまった。この歌声にはホンマに癒される。そしてお家芸の美しいコーラス・ハーモニー多重唱(←コレたまりません!)の後にさりげなく入るスティーヴィーの合いの手が、料理の甘みを引き出す微量の塩のような見事な効果を上げている。とにかく洗練の極みとでもいうべきこの⑦は非常にクオリティーの高いポップ・ソングであり、まさに絵に描いたような名曲名演だと思う。
 4th シングルの③「エヴリウェア」(全米14位)もクリスティン... もう大活躍だ。私には70年代の彼女よりも年齢を重ねてからの方が内面から滲み出るようなその美しさに磨きがかかったように思える。まるで年月を経て味わいが増すワインのようだ(^.^) 今の私は “クリスティン萌え” 状態(笑)なので彼女の歌声が聴けるだけで嬉しい。流れるようなメロディー・ラインは彼女ならではのものだし、彼女の歌に不可欠な美しいコーラス・ワークも存分に堪能できて言うことナシだ。そしてラストの⑫「ユー・アンド・アイ・パート2」、ウキウキするような曲想のこの曲をこんな風に小粋なポップスに仕上げられるのは世界広しと言えどもマックだけだろう。絶妙な味わいのコーラス・ハーモニーも聴きものだ。
 このアルバムの後、リンジー、スティーヴィー、クリスティンの3人は出たり入ったりを繰り返し、5人が鉄壁のチームワークでマック黄金時代のような傑作アルバムを作ることはなくなってしまったが、そういう意味でも稀代のスーパー・ポップ・バンド、フリートウッド・マックのスワン・ソングとして忘れられない1枚だ。

追記:ジャケットの鳥は白鳥ではなくサギとのことです。確かに、よ~く見ると白鳥とはちゃいますね(笑)

Fleetwood Mac - Big Love (Official Music Video)


Fleetwood Mac - Little Lies (HQ)


Fleetwood Mac - You And I (Part 2)
コメント (6)

Mirage / Fleetwood Mac

2010-01-24 | Rock & Pops (80's)
 フリートウッド・マックは実に不思議なグループである。彼らのサウンドはブリティッシュ・ブルース・バンドとしてスタートした60年代のものから度重なるメンバー・チェンジを経て大きく変貌していくのだが、私にとってのマックは自分がリアルタイムで経験してきた「ファンタスティック・マック」以降の、アメリカナイズされたポップ・ロック路線のマックであり、1つのバンドの中にリンジー、スティーヴィー、クリスティンと3人もの “歌えるソングライター” を擁したザ・ワン・アンド・オンリーなスーパーグループとしてのマックなのだ。その音楽性は他に類を見ないユニークなもので、例えば “ボン・ジョヴィみたいな感じのハードロック” とか、 “デュラン・デュランみたいなダンス・ポップ” という言い方はよく耳にするが、 “フリートウッド・マックみたいなサウンド” を持ったグループを私は他に知らない。彼らの音楽には真似したくても出来ないようなグルーヴがあり、ジャンル分け不可能な孤高の存在なのだ。
 マックといえば何はさておき「噂」(77年)である。全米チャートで31週№1を記録したこのアルバムは彼らの代表作であり、「ファンタスティック・マック」(75年)の続編的なジャケットとサウンドも含めて傑作には違いないのだが、彼らの全作品中ターンテーブルに乗った回数が最も多いのは間違いなくこの「ミラージュ」(82年)の方だ。商業的に大成功を収めた「噂」で行くとこまで行ってしまったマックの次作「タスク」(79年)が様々なアイデアを盛り込んだヴァラエティー豊かな内容の2枚組になったのは、私の中では何となくビートルズの「ホワイト・アルバム」とイメージがダブるところがあって、マックがこの時点で解散していても何ら不思議はない。80年には70's後半の黄金時代の総決算とも言うべき「フリートウッド・マック・ライヴ」さえ出している。しかし彼らはグループとして持ちこたえ、80'sポップス黄金時代の幕開けにこの「ミラージュ」をひっさげて戦線復帰したのである。82年といえば、楽しさ全開のポップスが雨後のタケノコのように続々と登場し全米チャートを賑わせていた頃だが、そんな中にあってマックの煌びやかなポップ性は際立っていた。売り上げやチャート成績では「噂」に遠く及ばないものの、各曲のクオリティーの高さではむしろこちらの方が上ではないかと思えるぐらい良い曲が揃っているし、そのサウンドはより洗練され、徹底的に磨き込まれている。
 アルバム冒頭を飾るのはクリスティンの①「ラヴ・イン・ストア」で、彼女のクリスタル・ガラスのように透明感の高い歌声にスティーヴィーが寄り添うようにコーラスをつけるパートにゾクゾクする。これはタマランなぁ...(^.^) この曲は3rd シングルとしてカットされ全米22位まで上がったが、シングルよりもアルバム1曲目としての存在感の方が遥かに大きい。アルバムからの 1st シングルは同じクリスティンの⑨「ホールド・ミー」で、いかにも彼女らしいキャッチーなメロディーを持ったこの曲を、ギターのサウンドひとつ取っても様々な音色を使い分けてオーヴァーダブしながら絶妙なサウンド・プロダクションでもって完全無欠なポップ・ソングに仕上げている。リンジーとクリスティンのツイン・リード・ヴォーカルに美しいコーラス・ハーモニーが幾重にも重ねられていくところなんかもうゾクゾクする。「アイ・オブ・ザ・タイガー」、「アブラカダブラ」、「素直になれなくて」といったウルトラ・メガ・ヒット曲の首位争いの割りを食って7週連続全米4位という珍しい記録を作ってしまった曲としても忘れられない。尚、メンバーが砂漠を彷徨うPVはストーリー性がイマイチ意味不明だが、各人のキャラが立っているので見ていて飽きない。2nd シングル⑤「ジプシー」は妖精スティーヴィーの魅力を凝縮したようなアップテンポのナンバーで、コワイぐらいに曲のイメージを表現したモノクロ基調のPVが何と言っても素晴らしい。ドリーミーでポップな曲想、ステーヴィーの魔性(?)ヴォーカル、リンジーの歌心溢れる速弾きソロ、弾けまくるリズム... そのすべてが圧巻で、名曲名演揃いのこのアルバムの中でも一番好きなナンバーだ。全米12位は不当なまでに低すぎると思う。
 シングル曲以外にもクオリティーの高い曲が多い。リンジーの②「キャント・ゴー・バック」は彼のポップ・センスが存分に発揮された名曲名演。弾むようなリズムに乗ったウキウキ・サウンドがたまらない(^o^)丿 私的には上記のシングル群に比肩するフェイヴァリット・トラックだ。スティーヴィーの③「ザッツ・オールライト」と⑧「ストレート・バック」はソロ・アルバムの成果が存分に発揮されているし、リンジーの⑩「ダイアン」や⑪「アイズ・オブ・ザ・ワールド」は新味はないもののいかにも彼らしいポップなナンバーだと思う。
 この「ミラージュ」はロック・ジャーナリズム的には歴史に名を残すような “大名盤” ではないかもしれないが、ファンが目を細めて聴き入るタイプの、長~く愛され続ける好盤だと思う。黒を基調としたシックなジャケットもカッコエエなぁ... (≧▽≦)

Fleetwood Mac - Gypsy [Official Video - Mirage CD Mix]


Fleetwood Mac - Hold Me High Definition (ORIGINAL)


Fleetwood Mac - Can't Go Back

Michael Jackson Live In Munich DVD

2009-12-18 | Rock & Pops (80's)
 マイケル・ジャクソンの「ディス・イズ・イット」はコンサートのリハーサル映像にもかかわらず、というかリハーサルだからこそ彼の人間的な優しさがスクリーンからダイレクトに伝わってきて、私のような昔からのファンはもちろんのこと、あまり彼に関心のなかった人やアホバカ・マスゴミの憶測記事に騙されて彼に対して偏見を抱いていた人に至るまで、本当に多くの人々に感動を与えた素晴らしい映画だった。しかしあれほどクオリティーの高いリハーサルを見せつけられると、もし彼が健在でロンドンで50公演(!)予定されていたコンサートが実際に行われていればさぞかし凄いモノになったであろうことは想像に難くない。そう考えると無性に彼のライブDVDが見たくなってくる。
 彼の大きなライブ・ツアーとしては84年の “ヴィクトリー・ツアー”(ジャクソンズの一員として) 、87年から89年の “バッド・ツアー” 、92年から93年の “デンジャラス・ツアー” 、そして96年から97年の “ヒストリー・ツアー” があり、オフィシャルDVDが発売されているのは92年の「ライブ・イン・ブカレスト」だけなのだが、残念なことに稚拙なカメラ・ワークのために見ていてあまり快適な映像とは言い難い。だから仕方なくブートレッグ、いわゆるひとつのコレクターズDVDで探すことになるのだが、これが中々難しい。まず同じライブが違ったメーカーから何種類も出ていてどれがエエのかサッパリ分からない。製品のインフォには美辞麗句が並んでいるが読んでいて笑けるような誇大広告の嵐である。しかもそのほとんどがDVD-R盤ということで、どんなメディアを使っているのかも分からない(←台湾製メディアやったらいらんしなぁ...)。コレクターズDVDを買うことはハッキリ言ってギャンブル以外の何物でもない。
 世間で出回っているのは“ヒストリー・ツアー” のものが多く、ドイツ・ミュンヘン公演、デンマーク・コペンハーゲン公演、そしてニュージーランド・オークランド公演が代表的なのだが、そのどれもが地元のテレビ局が収録し放送したもので、ブカレストDVDとは違ってカメラ・ワークもバッチリだ。そんな中、私はミュンヘンのオリンピック・スタジアムでのライブDVDのファクトリー・プレス盤を発見、Apocalypse Sound という聞いたこともないメーカーながらラッキーなことに「ディス・イズ・イット」のプロモDVD-Rをオマケで付けてくれるということで即購入、画質もまずまずで不満はない。
 セット・リストのベースとなる部分はオフィシャルのブカレスト公演とそれほど変わってはいないが、97年ということで最新のヒット曲「ブラッド・オン・ザ・ダンス・フロアー」(青い上着が新鮮!)を始め、95年リリースのベスト・アルバム「ヒストリー」から「スクリーム」(やっぱりこれはデュエット曲やなぁ...)や「アース・ソング」(後半の演出はベタやけど泣ける...)なども取り上げられている。又、95年のビルボード・ミュージック・アワードで大喝采を浴びた「デンジャラス」が新たに加えられたのも嬉しい。
 結局その後コペンハーゲンやオークランドのライブも買ってしまった(笑)のだが、どれを見ても “完璧” という言葉が相応しい素晴らしいエンターテイメントが展開されていて画面に釘付けになってしまう。又、随所に「ディス・イズ・イット」のリハーサル・シーンがオーバーラップしてくる場面があり、ファンとしては新たな楽しみが増えたような感じである。とにかくこのDVD、ブートとは思えない必要十分な音質 & 画質で、私としては実に良い買い物だった。現時点で出回っている80年代の “ヴィクトリー・ツアー”(←エディー・ヴァン・ヘイレン飛び入りのダラス公演を激しく希望!)や “バッド・ツアー” のブートDVDは画質が最悪らしいので、出来ればオフィシャルでその辺も出してくれたら絶対買うねんけど... (≧▽≦)

Michael Jackson - Blood on the dance floor live in Munich

This Is It (Pt. 2) / Michael Jackson

2009-12-17 | Rock & Pops (80's)
 今日も昨日に続いてマイケルの映画「ディス・イズ・イット」だ。わずか11才で全米№1になった約40年前と同じ振り付けで「ザ・ラヴ・ユー・セイヴ」を活き活きと歌い踊り、屈指の名曲「アイル・ビー・ゼア」でスーパースターのオーラをまき散らしながら熱唱するマイケルに、客席で見ていたダンサーたちも完全に一ファンに戻って両手を上げて左右に振っている。「アイ・ジャスト・キャント・ストップ・ラヴィング・ユー」でサイーダ・ギャレット役の女性のヴォーカルがやや弱いように感じるが、そのことが逆にマイケルの歌声の芯の強さを浮き彫りにしている。そう、マイケルのヴォーカルは細くて高い声と言うイメージがあるが、あれは声帯に負担をかけないためだそうで、地声は太くて力強いのだ。「スリラー」では毒グモタランチュラの中から登場する新ワザを披露、定番の “スリラー・ダンス” が懐かしいが、何度見ても引き込まれてしまうコリオグラフィーの大傑作だ。ここでもゾンビの役者の一人(←ステージ上ではone of them なのに...)に対して “カメラの方に手を伸ばして!” とアドバイスする完璧主義者ぶりには恐れ入った。
 マイケルがクレーンに乗って登場する「ビート・イット」では新進気鋭の女性ギタリスト、オリアンティに注目だ。この曲の一番のウリは何と言ってもエディー・ヴァン・ヘイレンが全世界に衝撃を与えた例のギター・ソロで、バッド・ツアー、デンジャラス・ツアー、そしてヒストリー・ツアーとマイケルを支えた爆発ヘアーの女性ギタリスト、ジェニファー・バトゥン(←ジェフ・ベックのサポート・ギタリストとして来日してタイマン張ってた凄腕!)の超絶プレイが圧巻だったが、このオリアンティもサンタナが絶賛する腕前だけあって涼しい顔してスリリングなプレイを聴かせてくれる。こんな凄い女性ギタリスト達を次々と見つけてくるマイケルの慧眼には脱帽だ。
 このオリアンティ嬢を始め、パーカッション、キーボード、ベース、そしてドラムスと、主要なバック・ミュージシャンたちが憧れのマイケル・ジャクソンと共にステージに立てる喜びを語るシーンを挟んで、曲は「ブラック・オア・ホワイト」へ。ここでも又々彼女が大活躍で、下から風を受けるシーン(← “30周年記念特番” でのスラッシュを思い出して下さい...)では髪を逆立ててマイケル以上に目立っている(笑)。ただ、マイケルが彼女に “もっと高い音を!” と要求するシーンを見ていて、この点ではジェニファーの超高音に一日の長アリかと思った。ただ、このオリちゃん(笑)は弱冠24才とのことなので、末恐ろしいギタリストには違いないし、この映画がキッカケで世界的にブレイクしそうな勢いだ。
 「アース・ソング」で崩れ逝く地球の映像をバックに絶唱するマイケルとコーラス隊の掛け合いは大げさではなく鳥肌モノ。これはぜひ正規版DVDのハイファイ・サウンドで聴きたい。早速アマゾンで予約せねば...(>_<) あのフレッド・アステアが絶賛し、ムーンウォークで全米にマイケル現象を巻き起こした “モータウン25” 以来何百回見たか分からない「ビリー・ジーン」は人類ダンス史上(?)最高ののパフォーマンスと信じて疑わない。神ワザ・ダンスを披露するマイケルにバック・コーラス隊の目が釘付け(笑)で、曲が終わるとステージ上やステージ下にいたダンサーたちから一斉に大歓声が沸き起こる。それを見たケニー・オルテガ(←製作総指揮)がステージに上がり “Church... church of rock n’ roll !” と呟くシーンがめっちゃ感動的だ(≧▽≦)。
 映画のエンディングでは全員で円陣を組むシーンにグッとくる... コンサートの成功にかけるマイケルの強い意志とファンを想う心、そしてスタッフへの気遣い... 今日のヤフー・ニュースでこの「ディス・イズ・イット」が映画の満足度年間総合ランキングでトップに輝いたという記事を読んだが、マイケルの卓越した歌とダンスの才能が堪能できるだけでなく、その愛に溢れた人間性がビンビン伝わってくる所が見る者を魅きつけてやまないのだと思う。この映画は改めて我々が失ったものの大きさを教えてくれる貴重なドキュメンタリーなのだ。

Orianthi shreds Michael Jackson


【オマケ】↓YouTube で見つけたオモシロ映像。死してなおこの絶対的影響力!まさにKing of Popである。
しかしその場に居合わせた観光客はさぞかしビックリしたやろなぁ...(゜o゜)
[OFFICIAL] Michael Jackson Dance Tribute - STOCKHOLM

This Is It (Pt. 1) / Michael Jackson

2009-12-16 | Rock & Pops (80's)
 マイケル・ジャクソンが今年の夏に行われる予定だったロンドン公演に向けて、急死する直前まで行っていたリハーサル風景とその舞台裏の映像を中心に構成されたドキュメント映画「ディス・イズ・イット」の DVD が来年の1/27に発売される。私にとって映画は基本的にレンタル DVD で借りてきて家で見るものなので、先月国内封切りされている時も “もう少し待てばDVDで見れる...” と考え、映画館へ足を運ぶことはなかった。そんなある日、ネットで彼の97年ヒストリー・ツアーにおけるベスト・パフォーマンスとの呼び声も高い “ミュンヘン・ライブ” の DVD を格安で見つけ、しかもそのセラーがオマケとしてタダでこの「ディス・イズ・イット」のロシア語字幕ヴァージョン(←正式発売前のロシア向けPromotional Copy) DVD-R を付けてくれるということで早速ゲット、時折インタビュー映像の場面で画面下部にロシア語の字幕が現れるが映画の大半はステージ・リハーサルのダンス・シーンなので気にならない。
 この映画はバックダンサーたちのインタビューで始まる。みんなマイケルと踊れることが嬉しくて大コーフンしているのが伝わってくる。「ワナ・ビー・スターティン・サムシン」ではシルバーのジャケットにオレンジのパンツといういかにもリハーサルっぽいラフな格好で歌い踊るマイケルがかえって新鮮に映る。そしてその動きのシャープさにビックリ(゜o゜) しかもあくまでも軽やかに、スルスルと横滑り(!)していくその姿は人間ワザとは思えない素晴らしさだ。ここ数年、大きなマスクを付けて顔にバンソコウを貼り弱々しく歩くマイケルの姿を見るたびに “もうあの神業のような動きは見れへんのやろか...(>_<)” と思っていたが、それはとんでもない誤解で、とても50才とは思えないキレの良さだ。バックを務めるベーシストに “もっとファンキーに...” と自分の求めるサウンドを口ベースで伝えるマイケルの徹底したプロフェッショナルぶりが凄い。
 まるで「コーラスライン」みたいなバックダンサーたちのオーディション・シーン、「ジャム」でそのダンサーたちがステージ下から飛び上がってくる舞台裏、「ゼイ・ドント・ケア・アバウト・アス」でダンサーたちにマイケル自ら振り付けの指導をするシーン、「ヒューマン・ネイチャー」でテキパキとまわりに指示を与えながらステージを作っていくシーン... 彼のライブは DVD で何十回と見ているのでその動きは私の脳裏に刻まれているが、あのパーフェクトといえるステージがどのようにして練り上げられていったのかが実によく分かる映像だ。彼こそまさに “120%の努力をする天才” だと思う。
 「スムーズ・クリミナル」でのダンスは相変わらず絶品だし、「ザ・ウェイ・ユー・メイク・ミー・フィール」で自分が納得いくサウンドになるまでキーボードにテンポの微妙なニュアンスまで注文を出すシーンなんか一切の妥協をしないプロ中のプロという感じだ。しかも厳しさの中にも相手への配慮というか優しさが言葉の端々に感じられて、マイケル、バック・ミュージシャン、ダンサー、そして様々な演出担当のスタッフが一つになって良いものを作り上げようというポジティヴな姿勢が伝わってくる。
 「ジャクソン5・メドレー」のシーンでは “まるで耳の中に拳を入れられてるようでやりにくい” と言ってイヤフォンを外してしまう。モニター・スピーカーで音を聴きながらやってきたマイケルにとっては耳のアジャストが大変なのだろう。そういったサウンド・エンジニアへの細かい指示の言葉の最後に “With love...L・O・V・E.” (怒ってるんじゃないよ)と一言添えるマイケル... この人はプロとしての厳しさと同時に常に相手を思いやる優しい心の持ち主なんだなぁと改めて感じ入った。(つづく)

Michael Jackson 'This Is It' Official Movie Trailer

Storytelling Giant / Talking Heads

2009-08-18 | Rock & Pops (80's)
 初めて聴いた時は “何じゃこりゃ?” 状態だったものが、ふと何らかのきっかけで好きになったりするアーティストがいる。私にとってトーキング・へっズはそういうバンドである。彼らとのファースト・コンタクトは高校時代だったと思うが、確かテレビの深夜番組で音楽評論家の今野雄二氏が彼らの「サイコ・キラー」を紹介していたのを聞いて、“変な音楽やなぁ... 何このファファファファーファファ ファファファーファーベタ♪ って?” といぶかしく思いながらも、彼らのサウンドを “先進的” と絶賛する氏の論調の前に自分の感性が鈍いのだろうと納得してしまった。私はポップで分かり易い音楽が好きな一方で、知的でアートの薫りがする音楽に弱い。例えば70年代のデヴィッド・ボウイとか、ブライアン・イーノとか、スノッブな感じがしてどうも苦手なんである。これがグランジ/オルタナ系のロックとかフリー・ジャズのような騒音雑音の類なら自信を持って “問題外!”と切って捨てることが出来るのだが、インテリ系ロックは一応ちゃんとした音楽の体をなしているのでそうもいかない(>_<) こんな複雑な音楽、聴いててどこが楽しいねん、どーせ単純バカのワシには一生ワカランわい!と諦めて、その手の音楽の話題になると貝のように口を閉ざしていた。
 彼らに対するそんな見方が変わったのはその数年後、「ベスト・ヒット・USA」で彼らの②「ワンス・イン・ア・ライフタイム」という曲のビデオクリップを見た時だった。これは1980年のアルバム「リメイン・イン・ライト」からのシングルで、デヴィッド・バーンの歌うある種つかみどころのない摩訶不思議なメロディーが妙に耳に残り、ポップ・ソングのあるべき姿からはかけ離れた異端なサウンドながら、今度はその変な味が病みつきになってくるのだ。それと同時に一度見たら忘れられないような彼の痙攣ダンスもインパクト絶大で、私は苦手だったトーキング・ヘッズをヴィジュアルの助けを借りながら徐々に好きになっていった。因みに小林克也さんがバンド名の由来(トーキング・ヘッズとは “喋る顔” 、つまりテレビ業界の専門用語で “クローズアップ” の意味)を教えて下さったのを今でもよく覚えている。
 次に見たのは彼ら初のミリオン・セラー・アルバム「スピーキング・イン・タングズ」からカットされ、彼らにとって唯一の全米Top 10ヒットとなった⑥「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」で、そのサウンドはアフリカン・ポリリズムを大胆に取り入れた複合リズムが面白いユニークなものだった。ビデオの方もワケがわからんストーリーながらやはり印象に残るもので、②と同様、 “ちょっと変やけど、そこがエエねん” という感じで繰り返し聴いていた。奇妙でユーモラスでエキセントリック... 今にして思えばこの頃がヘッズ中毒症状の初期段階だったのだろう。
 1985年にはエスニックな薫りを残しながらもアメリカのバンドであることを強く意識させるようなサウンドを大胆に導入した「リトル・クリーチャーズ」をリリース、何とダブル・ミリオンを記録して彼ら最大のヒット・アルバムになったのだ。 1st シングル⑪「ロード・トゥ・ノーウェア」もそれまでとは打って変わったように親しみやすいメロディーを持った行進曲調のナンバーで、日本でもホンダ・シティーのCMソングとしてテレビで頻繁に流れていたので覚えている方もおられるかもしれない。ビデオ・クリップもデヴィッド・バーンが前のめりになりながらひたすら曲のリズムに合わせて走り続ける姿が何とも滑稽で、録画したビデオを何度も繰り返し見て楽しんでいた。思えば②にせよ⑥にせよ⑪にせよ、ヘッズのクリップは彼の特異なキャラに負うところが大きい。そしてそれが音楽と一体となって映像に不思議な魅力を与えているのだ。ロック界広しといえども彼ほどキャラが立った存在はそうはいないだろう。同アルバムからの 2nd シングル⑦「アンド・シー・ワズ」もキャッチーなメロディーを持った曲で、一聴するととてもあのトンガリ系サウンドのバンドとは思えない変貌ぶりなのだが、カントリー・ミュージックのエッセンスを大量投下して外見のサウンドは聴き易くコーティングされていてもリズムへの拘りは相変わらずで、むしろより洗練されつつあったと言えるかもしれない。
 1986年のアルバム「トゥルー・ストーリーズ」はテックス・メックスなどアメリカ南部の薫りがうまく散りばめられた好盤で、 1st シングル③「ワイルド・ワイルド・ライフ」は曲そのものよりも当時全盛を極めていたMTVを意識したビデオ・クリップ(ビリー・アイドルやプリンスのソックリさんが出てた!)が面白かったが、逆に何でヘッズがここまで大衆に迎合せなならんねん(>_<)という気持ちにもなった。まぁ当時はあのピーガブでさえ「スレッジハンマー」でビデオ大賞取ってたぐらいやから、猫も杓子も MTV っていう時代の流れってやつなのかもしれない。続く 2nd シングル⑩「ラヴ・フォー・セール」はヘッズにしては実にストレートアヘッドなロックンロールで、彼らの私的ベスト3に入れたいぐらい大好きな1曲だ。ビデオクリップも凝っていて、アメリカのテレビCMを徹底的にパロッたようなその作りはまるでCM 優秀作品集のダイジェスト版を見ているかのような底抜けの面白さ。特にメンバーがチョコレートの海に飛び込むシーンがインパクト大だ。
 このようにトーキング・ヘッズを映像中心で楽しんできた私にとって、ヘッズは “見る対象” というイメージが強く、彼らのヒット曲を中心に編集されたLD「ストーリーテリング・ジャイアント」が出た時はすぐに買いに走ったものだった。残念なことに未だに DVD 化されていないので、勝手にLDからDVDに焼いて楽しんでいる。おかげで今ではすっかりトーキング・ヘッズの大ファンで、昔ワケがわからんかった「サイコ・キラー」もすっかり愛聴曲の仲間入り... これだから音楽は面白い!!!


Let's Dance / David Bowie

2009-07-30 | Rock & Pops (80's)
 世評はもの凄く高いのに自分にはその良さが分からない、いわゆる “苦手な名盤” の話は以前にしたことがあるが、アルバムだけでなくアーティストに関しても同じことが言える。このデビッド・ボウイという人も最初聴いた時はどこが良いのかサッパリ分からなかった。
 私が音楽を聴き始めた70年代半ば、彼はすでにビッグ・ネームだった。ネットが発達している今と違い、情報はラジオと音楽雑誌のみというある意味平和な時代だったが、どのメディアも彼のことを絶賛(それは今でも同じことで、彼に対するネガティヴな評価はあまり聞いたことがない...)していた。好奇心旺盛な私は彼の代表作を色々と聴いてみた。「スペース・オディティ」、「チェインジズ」、「ジーン・ジニー」、「ジギー・スターダスト」、「レベル・レベル」、「ヤング・アメリカンズ」、そしてジョン・レノンの助けを借りて書き上げ全米№1にも輝いたユーロ・ファンク・ナンバー「フェイム」と、どれを聴いても “別に嫌いってわけじゃないけど、取り立てて惹きつけられるものもない” 曲ばかりで、 “自分にはボウイの音楽を理解する感性が欠落してるんやろ...(>_<)” と諦めるしかなかった。
 そんな私が彼の音楽と再会したのは80年夏のこと、新譜アルバムを丸ごと1枚ノーカットでかけてくれるFM大阪の音楽番組「ビート・オン・プラザ」でボウイの「スケアリー・モンスターズ」を特集しており、その中の「イッツ・ノー・ゲーム(パート1)」を聴いて全身に電気が走るようなショックを受けたのだ。日本人女性によるシュールなアジテーションが衝撃的だったこの曲はとても耳当たりの良いポップ・ミュージックとは言えなかったけれど、何と言うかリスナーの気持ちをガンガン叩くようなところがありインパクト絶大だったし、シングル・カットされた「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」もボウイにしか表現できないような退廃的な美しさを湛えていた。更にクイーンとの共演シングル「アンダー・プレッシャー」はイギリスで見事№1を獲得、サウンド自体は当然ながらクイーン色が強かったがボウイの存在感はピカイチで、フレディーと共にテンションの高いヴォーカルを聴かせていた。
 そんなボウイがシックのナイル・ロジャースをプロデューサーに迎え、限りなくポップで売れ線のサウンドを追及して生まれたのが83年リリースのアルバム「レッツ・ダンス」である。先行シングルの③「レッツ・ダンス」は、マイケル・ジャクソンの「ビート・イット」とアイリーン・キャラの「フラッシュダンス」というウルトラ・メガ・ヒット2曲の間隙を突いて1週だけながら全米№1に輝いたのだが、私は「ツイスト・アンド・シャウト」なイントロから思いっ切り分かり易いファンキー・ビートが支配するこの曲を聴いてそのあまりのハジケっぷりに “これがあのデビッド・ボウイか?” と一瞬わが耳を疑ったものだった。まぁどちらかというとボウイの音楽というよりはナイル・ロジャースのお膳立てしたサウンドに乗ってボウイが気持ち良さそうに歌いまくっているという印象が強かったけど。
 セカンド・シングル②「チャイナ・ガール」は全米10位が最高だったが、私は「レッツ・ダンス」よりもむしろこっちの方が気に入っており、MTVでヘビロテ状態にあったビデオ・クリップも面白くて(←ボウイがラーメンを頭上に投げるシーンが意味不明で笑える)、ガンガン聴きまくったものだった。サード・シングル①「モダン・ラヴ」は明るくノリの良いストレートアヘッドなナンバーでコレも全米14位まで上昇、70年代のアート・ロック路線のボウイとは別人のような快進撃だ。これらのシングル以外ではカルト・ヒーロー時代の残り香が薫る④「ウイズアウト・ユー」や②の三軒隣りに住んでいるような⑥「クリミナル・ワールド」がエエ感じだが、私が大好きなのは⑦「キャット・ピープル(プッティン・アウト・ファイア)」だ。ハイ・テンションなボウイのヴォーカルといい、当時まだ無名だったスティーヴィー・レイ・ヴォーンのラウドでブルージーなギター・プレイといい、私の感性のスイートスポットをピンポイントでビンビン刺激するキラー・チューンで、“puttin' out fire with gasoline...”(ガソリンで火を消して...)と叫ぶボウイがめちゃくちゃカッコ良かった。
 そういえばこのアルバムのキャッチ・コピーに “時代がボウイに追いついた!” というのがあったが、私に言わせればこのアルバムの成功は、ナイル・ロジャースの起用からも明白なように、その時代で最もヒップだったアメリカン・ファンク・サウンドへとボウイの方から接近していった結果ではないか。又、ボウイが大衆を意識し、メロディアスな旋律を持ったナンバーを集中投下したことも大きい。この後も彼は「ブルー・ジーン」、「ダンシング・イン・ザ・ストリート」、「ジス・イズ・ノット・アメリカ」とヒット曲を連発していくのだが、メロディー復権の時代である80年代の流れを見切ったボウイの嗅覚はさすがと言う他ないだろう。
 このアルバムを聴けば音楽とともに真空パックされた80'sの空気までもが瞬間解凍されて目の前に立ち込める、私にとってはそんな懐かしさ溢れる1枚なのだ。

コメント (8)

Live In Bucharest / Michael Jackson

2009-07-12 | Rock & Pops (80's)
 マイケル・ジャクソンのDVDは数多いビデオ・クリップを集めて編集したものが主流であり、ライブ映像は極めて少ない。80年代以降、彼は“ヴィクトリー・ツアー”、“バッド・ツアー”、“デンジャラス・ツアー”、そして “ヒストリー・ツアー” と、大きなライブ・ツアーを4度行っているというのに、オフィシャルなコンサート・ライブ映像は92年の “デンジャラス・ツアー” ブカレスト公演(@ルーマニア)を収めたこのDVD「マイケル・ジャクソン・イン・ブカレスト」だけなのだ。
 ステージ下からマイケルが一気に飛び出す冒頭の演出はスーパーボウルの時と同じ、じっと立っているだけでもうスーパースターのオーラが出まくりだ。彼がサングラスを取ると同時に②「ジャム」のイントロが響き渡る。得意のムーヴを織り交ぜながらステージ上を激しく動き回るマイケル... お世辞抜きでめちゃくちゃカッコイイ!要所要所でドッカンドッカンと上がる火柱もコーフンを盛り上げる。バック・ダンサーたちと並んで激しく歌い踊る③「ワナ・ビー・スターティン・サムシン」を見ていると、口パクを使わずに生で歌いながらあれほどのダンスをこなしてしまうマイケルの体力は驚異的だと思ってしまう。じっくり聴かせる④「ヒューマン・ネイチャー」でクールダウンした後は、前半のクライマックスと言うべき⑤「スムーズ・クリミナル」だ。ステージ上にマイケルのシルエットが浮かび上がると会場のヴォルテージは最高潮に。それにしても映画「ムーンウォーカー」で魅せたあの神パフォーマンスをステージ上で再現するとは思わなんだ。もうカッコ良すぎて言葉も出ない(゜o゜)  これを見ればなぜ世界中の人々が彼に夢中になったのかがよくわかる。
それにしてもあの無重力ダンスは一体どーやってるんやろ?
 かな~り長いイントロでマイケルの体力回復を待った後、⑥「アイ・ジャスト・キャント・ストップ・ラヴィン・ユー」ではサイーダ・ギャレット役の女性ヴォーカリストとのデュエットで熱唱を聴かせてくれる。そして彼女がパッと消えてしまう唐突なエンディングに続いて唄われるのは⑦「あの娘が消えた」... もうさすがという他ない。観客の女性の一人をステージに上げて抱きしめる演出もお見事だ。 “古い曲を昔のやり方で歌うよ!” の掛け声に続いて⑧「アイ・ウォント・ユー・バック / ザ・ラヴ・ユー・セイヴ」というジャクソン5メドレーだ。4人のバックダンサーを兄弟たちに見立てて懐かしい振り付けで歌い踊るマイケルにシビれまくる(≧▽≦) 続いて歌われる名曲⑨「アイル・ビー・ゼア」で会場が一体となって大きく揺れる光景は感動的だ。
 ここからが中盤のクライマックス、泣く子も踊るモンスター・アルバム「スリラー」からのヒット曲つるべ打ちである。⑩「スリラー」ではステージ上に置かれた棺から4人の蛍光色ゾンビが登場、更に無数のスケルトンも加わって例のダンスを踊りまくる。途中マイケルも狼男に変身し、最後はマジックさながらにマイケルが消えてしまうというイリュージョン。あれっ、と思っていると聴きなれた⑪「ビリー・ジーン」のイントロと共にマイケルが再登場、モータウン25で魅せた華麗なムーンウォークを披露する。昔誰かが Nobody moves like Michael Jackson! と言っていたが、まさに60億分の1の天才にしか出来ないようなカッコ良いパフォーマンスだ。
 ステージ上のスクリーンに「ブラック・オア・ホワイト」の通称 “パンサー・パート” のダンス映像が流れた後、お色直しをしたマイケルは⑫「ワーキン・デイ・アンド・ナイト」でソウルフルな歌声を聴かせてくれる。金色の上着に水色のパンツはどう見ても合ってないけど...(笑) 本日2度目のイリュージョンで消えたマイケルが⑬「ビート・イット」のイントロと共にラダーに乗って客席上方から現れると会場はもう興奮のるつぼだ。おぉ、しっかり例の赤いジャンパーと黒パンツに着替えているではないか!間奏のギター・ソロではライオンみたいな金髪ヘアーがカッコイイ女性ギタリスト、ジェニファー・バートンがデビルマンのオバケみたいな電飾を背負って登場、ギターから緑色の光線を空に向かって放射するという凄い演出が圧巻だ。後半はお約束のウエストサイド・ストーリー・ダンスで魅せてくれる。いや~もう最高ですわ(^o^)丿
 又々長~いブレイクに続いて⑭「ウィル・ユー・ビー・ゼア」のスピリチュアルなヴォーカルを聴かせた後(ゴスペル隊の青いターバンが妙に気になる...)、大ヒット曲⑮「ブラック・オア・ホワイト」で会場は割れんばかりの大歓声に包まれる。しかしこの金髪ギタリスト、めちゃくちゃ絵になります(笑) バレリーナみたいな少女の球技ダンスから⑯「ヒール・ザ・ワールド」へとなだれ込み、観客はライターの火を灯して一体となって揺れている。ラスト曲⑰「マン・イン・ザ・ミラー」ではグラミー・パフォーマンスを彷彿とさせるソウルフルな歌声でこの驚異のショーを締めくくる。まさに絶唱と呼ぶにふさわしい入魂のステージだ。歌い終わると今度は宇宙服に身を包み、ロケット噴射で空中に舞い上がり飛び去っていく(当然スタントマンに入れ替わっているが...)という最後の最後までエンターテイメントに徹したプロフェッショナリズム溢れるステージだ。
 このようにコンサート自体は素晴らしすぎて言葉も出ないのだが、このDVDの映像編集に関しては大きな問題がある。カメラ・アングルを頻繁に切り替えすぎるのだ。特にコンサート前半はマイケルのパフォーマンスの最中にカメラを切り替えて観客を映すというド素人以下の編集がなされており、そのために気が散ってせっかくの神パフォーマンスに集中出来ない。これにはホンマにイライラさせられる。デンジャラス・ツアーでもヒストリー・ツアーでもいいから、もっと見やすいカメラ・ワークで処理された映像がいつかDVD発売されることを切に望みたい。
 このステージ・パフォーマンスを見れば彼がなぜ史上最高のエンターテイナーと言われるのかが分かるはずだ。時代を切り開き、奇跡と神話を創造したスーパースター、マイケル・ジャクソン... こんな凄い人はもう2度と現れないだろう。

Michael Jackson - Beat It Live 1992 Bucharest! (RIP Michael Jackson)