shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Cry Like A Rainstorm / Linda Ronstadt

2010-02-22 | Rock & Pops (80's)
 80年代のリンロンは82年の「ゲット・クローサー」以降、突然の路線変更でネルソン・リドル・オーケストラをフィーチャーした例の “スタンダード・アルバム3部作” を作って我々をビックリさせたが、その後もドリー・パートンやエミルー・ハリスらと組んでコテコテのカントリー・アルバム「ザ・トリオ」を作ったり、自らのルーツとも言えるメキシコ音楽(←父親がメキシコ系で母親がドイツ系という珍しい血筋の持ち主です)に取り組んだ「ソングス・オブ・マイ・ファーザー」を作ったりと、まさに “我が道を行く” 的な活動をしていた。しかし70年代後半の怒涛のような活躍が忘れられない私は、昨日取り上げたシングル「サムホェア・アウト・ゼア」の大ヒットで一時的に渇きを癒せたものの、やはりポップ/ロックなリンロンのフル・アルバムが聴きたくてウズウズしていた。
 そんなこちらの気持ちを見透かしたかのようにリンロンが久々にポップ・フィールドに戻ってきたのが1989年のこと、それがこの「クライ・ライク・ア・レインストーム、ハウル・ライク・ザ・ウインド」で、何と7年ぶりのポップ・アルバムである。これでコーフンするなという方がおかしい。しかし私には一つだけ気になることがあった。アルバムからのリード・シングルとしてカットされ、ヒットチャートを急上昇中だった⑤「ドント・ノウ・マッチ」で彼女のデュエット相手を務めたアーロン・ネヴィルである。ハッキリ言ってこのオッサンのナヨナヨした声は私には絶対に無理(>_<) ヨーデル・ヴォイスだか何だか知らないが、あんなキモイ声、よぉ出るわ(笑) 昨日のジェームズ・イングラム君はリンロンの引き立て役として実にエエ仕事をしていたが、このアーロン・ネヴィルの声はちょっとねぇ... まぁ、これはあくまでも私の好き嫌いレベルの問題やけど。ひょっとすると、ちょうどマイルスが自分の繊細なトランペット・プレイを際立たせるために敢えてゴツゴツしたサウンドのコルトレーンを起用したように、リンロンも自分の艶やかなヴォーカルとのコントラストを考えてこのヨーデル・オヤジを起用したのかもしれない。とにかく突き詰めればヴォーカルとは声を楽しむ音楽なので、その声が嫌いではどうしようもない。
 そんなネガティヴな要素がありながらも私がこのアルバムを取り上げたのはひとえにその選曲の素晴らしさにある。まずは何と言っても④「アイ・ニード・ユー」だ。イギリス人シンガーソングライター、ポール・キャラックの知る人ぞ知る名曲で、1982年に全米37位まで上がった小ヒットなのだが、必殺の歌詞、必殺のメロディー、必殺のテンポと、どこをどう聴いても名曲だけが持つ風格のようなものが備わっている。ラッキーなことにたまたまFMエアチェックしたテープに入っていたものをダビングして擦り切れるほど聴いて “自分だけの名曲” として秘匿していたのだが、そんな隠れ名曲を探し出してきて必殺のヴォーカルで聴かせてしまうリンロンにはもう参りましたと言う他ない。これでアーロン・ネヴィルとのデュエットやなかったら完璧やったのにねぇ...(>_<)
 カーラ・ボノフの⑦「トラブル・アゲイン」もめちゃくちゃ嬉しい。高校時代に聴きまくった懐かしのこの曲をリンロンの豊潤な歌声で聴ける幸せを何と表現しよう!カーラのヴァージョンが淡い色調のパステル・カラーとすれば、リンロンのヴァージョンは艶やかな極彩色といった感じか。この伸びやかな歌声は、まさしく直球勝負と言っていいゴージャスなヴォーカルだ。原作者カーラもエエ味出していて大好きなのだが、リンロンが一声発すると曲が生き生きと躍動し始めるところが凄い。それにしてもこの「トラブル・アゲイン」、ホンマにエエ曲やなぁ... (≧▽≦)
 私的には上の2曲が飛びぬけて好きなのだが、それ以外にも聴き所が一杯ある。まず、⑥「アディオス」1曲のみに特別参加しているブライアン・ウィルソンのバック・コーラスに涙ちょちょぎれる。例の “ウゥ~♪” 一発で曲に深みが加わるのだからこの人はやっぱり凄い。リンロンのヴォーカルも艶々していて言うことナシだ。ポール・キャラックのもう1曲、アップテンポの⑨「ソー・ライト・ソー・ロング」ではゴスペル・コーラス隊を相手に素晴らしいコール&レスポンスを聴かせるリンロンがカッコイイ(^o^)丿 ゴスペル・コーラスと言えばもう1曲、アルバム・タイトル曲の②「クライ・ライク・ア・レインストーム」におけるスケールの大きな歌唱も聞き逃せない。貫録と言うか、余裕と言うか、まるで大排気量のアメ車でストレスなくグイグイ加速していくような圧倒的なヴォーカルだ。シングル・カットされてヒットした⑤「ドント・ノウ・マッチ」(2位)や③「オール・マイ・ライフ」(11位)だって、曲自体は非常に良く出来たバラッドなので、アーロン・ネヴィルの声が大丈夫な人なら十分楽しめると思う。
 このアルバムで聴けるのは、ポップス以外の音楽ジャンルへの挑戦を通して身に付けた豊かな感情表現力や圧倒的な説得力を携え、ヴォーカリストとして一回りも二回りも大きくなって戻ってきたリンロンの歌声である。そういう意味で、70年代後半のアルバムのような派手さはないが、リンロンの成熟したヴォーカルをじっくり聴きこむのに最適な渋い1枚だと思う。

アイ・ニード・ユー


トラブル・アゲイン

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2 コメント

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名盤です (shoppgirl)
2010-02-24 21:30:56
“ヨーデル・オヤジ”とは兄さんウマい事言わはりますね

私もあの粘着質な歌声はどうも・・・。
実写を見て余計「あかん!」と思いました。(失礼なのですが・・・)

このアルバムでは、カーラ・ボノフの「Goodbye My Friend」「Trouble Again」(I was blind~~~~~♪伸ばす所が最高!)

ジミー・ウエッブの曲も最高です!
特に「I Keep It Hid」と何と言っても「Adios」ですね。

ブライアンの美しいコーラスとドラマティックなリンロンの歌声は奇跡の様な切なさです。


とジミー・ウエッブの曲が好きです。



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選曲の勝利 (shiotch7)
2010-02-25 19:51:08
> “ヨーデル・オヤジ”とはウマい事言わはりますね

彦麻呂ですから...笑

この曲かなりヒットしたのであの声嫌いなの自分だけかと思ってました。
姐さんの感想を聞いて仲間が出来たようで嬉しかったです。

カーラ・ボノフ、もう懐かしすぎて涙ちょちょぎれますわ。

ブログで取り上げてはったジミー・ウエッブもそうですが、
この盤の成功要因は選曲にアリと言えそうです。
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