防衛大綱における、防衛力の果たすべき役割のうち、「あらゆる段階における宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応」の考え方は次のとおりである。
平素から、宇宙・サイバー・電磁波の領域において、自衛隊の活動を妨げる行為を未然に防止するため、常時継続的に監視し、関連する情報の収集・分析を行うとともに、かかる行為の発生時には、速やかに事象を特定し、被害の局限、被害復旧などを迅速に行う。また、わが国への攻撃に際しては、こうした対応に加え、宇宙・サイバー・電磁波の領域を活用して攻撃を阻止・排除する。
さらに、社会全般が宇宙空間やサイバー空間への依存を高めていく傾向などを踏まえ、関係機関との適切な連携・役割分担のもと、政府全体としての総合的な取組に寄与する。
宇宙領域での対応
1 政府全体としての取組
2016(平成28)年4月に内閣府に設置された宇宙開発戦略推進事務局が、政府全体の宇宙開発利用に関する政策の企画・立案・調整などを行っている。宇宙政策を巡る環境の変化や、13(平成25)年に閣議決定された国家安全保障戦略を踏まえ、20(令和2)年6月には、内閣に設置されている宇宙開発戦略本部において、宇宙基本計画が決定された。この計画は、宇宙安全保障上の観点からの施策も含め、必要な予算を十分に確保して、政府を挙げて宇宙政策を強化するための、今後20年程度を見据えた10年間の長期整備計画となっており、①多様な国益への貢献、②産業・科学技術基盤を始めとするわが国の宇宙活動を支える総合的基盤の強化を目標としている。そして、多様な国益への貢献として、①宇宙安全保障の確保、②災害対策・国土強靭化や地球規模課題の解決への貢献、③宇宙科学・探査による新たな知の創造、④宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションの実現を進めていくこととしている。
2 防衛省・自衛隊の取組
情報収集、通信、測位などのための人工衛星の活用は領域横断(クロス・ドメイン)作戦の実現に不可欠である一方、宇宙空間の安定的利用に対する脅威は増大している。
防衛省・自衛隊では、これまでも、人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力の強化、宇宙状況監視の取組などを通じて、効果的・安定的な宇宙空間の利用確保に努めてきたが、今後は、これまでの取組に加え、中期防に基づき、
①宇宙空間の安定的利用を確保するための宇宙状況監視(SSA:Space Situational Awareness)体制の構築、
②宇宙領域を活用した情報収集、通信、測位などの各種能力の向上、
③電磁波領域と連携して、相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力を含め、平時から有事までのあらゆる段階において宇宙利用の優位を確保するための能力の強化に取り組んでいくこととしている。
また、こうした取組に際しては、
④宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace Exploration Agency)などの関係機関や米国などの関係国との連携強化を図るとともに、宇宙領域を専門とする部隊や職種の新設などの体制構築や、宇宙分野での人材育成と知見の蓄積を進めることとしている。令和2(2020)年度においては、宇宙領域における統合運用にかかる企画立案機能を担う組織として、統合幕僚監部に「宇宙領域企画班(仮称)」を新設することとしている。
宇宙利用の優位を確保するための能力の強化
人工衛星の活用が、安全保障の基盤として死活的に重要な役割を果たしている一方で、一部の諸外国が、キラー衛星や衛星攻撃ミサイルなどの対衛星兵器の開発を進めているとみられていることから、防衛省・自衛隊においても、Xバンド防衛通信衛星などの人工衛星の抗たん性を向上させる必要がある。
このため、わが国衛星の脆弱性への対応を検討・演練するための訓練用装置や、わが国衛星に対する電磁妨害状況を把握する装置を新たに導入することとし、令和元(2019)年度予算には、そのための調査研究に必要な経費を計上した。また、電磁波領域と連携して、相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力を構築することとしている。
今後は、前述のわが国の人工衛星にとって脅威となる宇宙ゴミなどを監視するためのレーダーに加えて、相互補完的な監視を可能とする宇宙設置型光学望遠鏡であるSSA衛星や、低軌道の人工衛星との距離を計測する地上設置型SSAレーザー測距装置を導入することとしており、令和2(2020)年度予算においては、SSA衛星の構成品の取得に必要な経費を計上した。
一部割愛
@高市早苗を甘く見たらアカンぜよ。